ミラトレで人と接する楽しさを知り、接客業の道へ
ミラトレ尼崎
S.Aさん
心的外傷後ストレス障害
- 通所期間
- 約2年
- 就職先企業
- エルソニック株式会社
就職までの道のり
- 利用開始
- 週2日利用からスタート。
- 1年2カ月目
- 就職活動をスタート
- 2年後
- 就職内定!ミラトレ卒業
「はたらくことへの不安をやわらげたい」とミラトレへ
就職への第一歩として就労移行支援を選択
責任感が強く、ささいなミスでも落ち込むタイプだった私は、10代のときから生きづらさを感じていました。障害が明らかになったのは12歳の頃です。その後も体調は安定しませんでしたが、高校に進学し、将来について考えるようになりました。
「社会に出てはたらけるだろうか」と不安を感じていた私に、就労移行支援制度の存在を教えてくれたのは相談支援員でした。右も左もわからない場所に飛び込むのは勇気が必要でしたが、「はたらくことに対する不安をやわらげたい」と利用を決意しました。
居心地の良さにひかれて、ミラトレへの通所を決意
3カ所の就労移行支援事業所を見学し、ミラトレを選びました。ほがらかな支援員や広くて明るい事業所を見て、「ここなら過ごしやすそうだ」と感じたからです。人と向かい合うと緊張してしまいますが、体験利用の間、支援員が対面ではなくずっと隣にいてくれたことが、とてもうれしく感じました。
そのときの体験利用は、謎解きで打ち解けるコミュニケーション講座だったのですが、私はクイズ番組が好きだったので一人で次々と解いてしまったんです。でも、私が正解するたび支援員が「すごいですね!」とほめてくださって、とても楽しい時間を過ごすことができました。
「引っ込み思案」から「リーダー」へ。一年間の大きな成長
ミラトレで体調管理法とコミュニケーション術を習得
開始当初の通所ペースは週2日でした。睡眠にも課題があったので、支援員から就寝時間の前倒しや睡眠環境の改善に向けたアドバイスをもらいながら、体調管理につとめました。体調不良をがまんして通所してしまい、支援員から「無理をしてはだめですよ。今日は早く帰りましょう」とさとされたこともあります。そのうち、自分自身で体調と相談しながら通所ペースをコントロールできるようになり、10カ月目には週5で通えるようになりました。
ミラトレに通い始めてから、体調だけでなく内面にも大きな変化がありました。通所開始当初は緊張して部屋の隅にいるタイプでしたが、1年経つ頃にはリーダーとして人を引っ張っていくほど、前向きな姿勢に変わっていました。
コミュニケーション講座でさまざまな人と会話するうち、対人不安をやわらげられたことがきっかけです。どちらかというと聞き上手なので、皆さんの話に耳を傾けながら「面白い案ですね」と相づちを打ったり、「この案も良いのでは」と提案したりしながら、会話をつなげられるようになりました。
「誰かの役に立ちたい」という思いを形に。リーダー業務でサポート力を強化
講座だけでなく、普段の雑談もコミュニケーションスキルを磨く場でした。みんなで休憩していたとき、「ここにいる人たちの共通点を見つけてみよう」という支援員のひと言からゲームが始まることもありました。今振り返ってみると、そんな他愛もない雑談が、コミュニケーションスキルの向上につながっていたのだと思います。
もともと「誰かの役に立ちたい」「人助けがしたい」という思いが強かったので、コミュニケーションの壁を取り払ってからは、積極的にリーダーをつとめるようになりました。ミラトレのリーダー制は、ワンマンよりも協力を重視していたため、周りの人に支えてもらいながらリーダー業務を楽しむことができました。
人の目線や気持ちに敏感なタイプだったので、困っている人を見つけやすいのだと思います。擬似就労の手順で迷っている人のもとに駆けつけて「ありがとう」と喜んでもらったり、「手伝ってもらえませんか」と頼られたりすることが多くなるとともに、やりがいも大きくなっていきました。リーダー業務を通じてサポート力を伸ばせたことは、ミラトレでの大きな収穫です。
「自分の長所」と「自分に合うはたらき方」を見つめ直した就職活動
模擬面接を重ねたことが、就職活動の自信に
就労移行支援の利用期間は原則2年以内なので、通所開始から1年を過ぎると、就職への焦りが生まれ始めました。とは言え、就職活動準備は順調に進んでいたので、「なるようになるさ」と思うようにしました。
就職活動の経験がない私にとって最も助けになったのは、模擬面接でした。支援員から、「大きな声を出せていますね。あとは、面接官の目を見て話せるようがんばりましょう」とアドバイスを受け、目線を意識しながら面接練習を繰り返しました。最初は、「面接官の前に立つと、緊張でうまく話せないのではないか」と苦手意識をもっていましたが、模擬面接の回数を重ねるうちに、「どんな面接にも対応できそうだ」という自信が生まれました。
職場見学や企業実習に参加して、職業適性を分析
就職活動準備で最も苦労したのは、「自分の長所を見つけること」です。客観的な視点で自分を分析する難しさを感じました。でも、ほかの利用者や支援員が、私の長所として「周りをよく見て細かなことに気づくところ」や「人助けの精神」を挙げてくれたのです。
おかげで自己分析は進んだものの自分の職業適性がわからなかったので、積極的に職場見学や企業実習へ参加することに。5社ほど見学した結果、「人と関わる仕事って楽しい!自分には接客業がマッチしそうだ」と思うようになりました。
ミラトレでは「はたらく力」を身につけるために、実践的なトレーニングを行える環境をご用意しています。
ミラトレの実践的トレーニング
自身の得意分野を活かせる会社との出会い
実習で積極的に質問しながら、スキルをアピール
見学させていただいた会社の中で、最も好印象をもったのがエルソニックでした。女子中高生に人気の雑貨ストア「サンキューマート」を運営しており、短時間でしたが店舗で商品棚の整理も体験させていただきました。スタッフの皆さんがハキハキと会話する様子や、笑顔で接客する光景を見て、「とても楽しそうだな」と感じたことを覚えています。
整理整頓は得意な作業ですが、「せっかく良い会社にめぐり会えたのだから失敗したくない!」と、細かな点も確認しながら作業を進めました。終了後、スタッフの方から「並べ方がとてもきれいですね」とほめていただけたことも、入社意欲が高まった理由のひとつです。
「第二の家」として過ごしたミラトレを卒業
面接では、「緊張しなくても大丈夫ですよ」と笑顔で声をかけていただき、話しやすい環境をつくっていただきました。おかげで肩の力を抜いて、自分の長所をアピールできたと思います。内定通知をいただいたときはとてもうれしくて、真っ先にミラトレの支援員に報告したのですが、「本当に良かった!」と私以上に喜んでくれました。
就職を機に卒業しましたが、今でもミラトレは「第二の家」だと思っています。支援員は、私の良いところも悪いところもしっかり見て指摘してくれる、貴重な存在でした。
頼られる存在を目指して、業務の幅を広げたい
相手に寄り添うコミュニケーションを大切に
入社後、「サンキューマート」の店舗スタッフとして、店内の整理や清掃といった業務を中心に、納品の振り分けや品出しもおこなっています。体調が悪いとき欠勤を申し出ると、とてもやさしく対応していただけますし、スタッフ同士のコミュニケーションも取りやすく、はたらきやすい職場です。
入社3年目を迎え、仕事にも慣れてきました。商品棚の乱れをパズルのように整えたり、バックヤードの在庫を減らせたりすると、気持ちもスッキリします。人と接することの多い職場ですが、「話しかけてほしくない」のか「本当に困っている」のかを見極めながら、相手の気持ちを尊重するコミュニケーションを心がけてきました。後輩スタッフには、「わからないことがあったらすぐ聞いてね」とやさしく話しかけるようにしています。
一歩踏み出す勇気が大切
今の目標は、業務の幅を広げてレジ業務や電話対応にも挑戦することです。電話越しの会話は緊張しますし、お金の管理は気を抜けませんが、一歩ずつ前進して業務全般をこなせるようになりたいと思っています。
仕事だけでなく、プライベートも自分らしく楽しめるようになりました。休日は、スマートフォン向け位置情報ゲームを攻略しながら街を歩いたり、動画を鑑賞したりと、趣味を満喫しています。長時間歩いた日は昼寝で体力を回復するなど、体調管理も欠かしません。
4年前、思いきって就労移行支援の利用を決めたからこそ、公私ともに充実した日々を過ごせています。ミラトレの利用を検討している方も最初は不安でいっぱいだと思いますが、ミラトレは一歩踏み出す勇気を与えてくれる場所です。まずは見学から始めてみてください。
※所属・役職ほか記事の内容は取材当時のものです













企業担当者コメント
一人ひとりがキラキラ輝くために。新たなチャレンジを全力でサポート
(2025年11月現在)
エルソニック株式会社が全国86カ所に展開する「サンキューマート」は、「好きなものに囲まれて毎日を自分らしくHAPPYに過ごしたい」という女の子たちを応援する雑貨ストアです。SNSで話題のアイテムや、思わず笑顔になるおもしろ雑貨など、バラエティ豊かなアイテムを全品390円(税抜)の「サンキュープライス」でそろえています。サンキューマートは、「ともにはたらく仲間として学び合い、成長すること」を目標に、障害者雇用に取り組んでいます。
Sさんは、コミュニケーション能力が高く自己理解も進んでいたので、採用させていただきました。新入社員の受け入れには責任が伴いますし、障害のある方であればなおさら心構えが必要なのではないかと不安を感じていたのも事実です。しかし、Sさんは自分の気持ちや考えを明確に言葉にして伝えてくれるので、今では私も店舗スタッフも「障害者雇用」を意識する必要性をまったく感じていません。
入社当初はSさんの体調面に考慮して短時間勤務を取り入れていましたが、勤務時間と給与のバランスについて本人の希望を聞きながら、徐々に勤務時間を増やしています。また、過集中を防げるようアラームを活用することにしました。一つひとつの作業に対する割当時間を設定して、アラームが鳴ったら次の作業に切り替えてもらっています。Sさんは、作業がスピーディーかつていねいなので、とても助かっています。新たに業務が増えても「できることが増えてうれしい」と言ってくれるので、これからも興味が湧いたことにどんどんチャレンジしていただきたいです。
ミラトレの支援員の方は、卒業生一人ひとりの特性を理解し、メンタルの状態に合わせた対応を心がけていらっしゃるところが、とても素敵だと思っています。支援員の方と連携してSさんの考えや思いを汲み取り、特別扱いすることなく一スタッフの意見として取り入れていく考えです。
現在、ミラトレを利用している方も、自分の得意分野を活かせる仕事に出会えれば、「自分はできるんだ!」と胸を張ってはたらけるのではないでしょうか。ぜひ、好きなことに夢中になって、キラキラ輝いてほしいと思います。