自分を客観的に評価できれば、未経験の分野でも力を発揮できる

ミラトレ名古屋
髙田潤一さん
ADHD(注意欠如・多動性障害)、うつ病
- 通所期間
- 1年8カ月
- 就職先企業
- JAGフィールド株式会社
就職までの道のり
- 利用開始
- 週5日利用からスタート。
- 6カ月目
- 就職活動をスタート
- 1年8カ月後
- 就職内定!ミラトレ卒業
障害がわからないまま就職し、はたらきづらさに悩んだ日々
社会人になってからADHDが明らかに
ADHD(注意欠如・多動性障害)の診断を受けたのは社会人のときですが、子どもの頃から忘れ物が多かったり、変わり者に見られたりすることがありました。コンピュータの専門学校を卒業した後、ソフトウェア開発会社にプログラマーとして入社しましたが、ミスを繰り返してしまい、たびたび叱責されるようになりました。
精神的に追い込まれて心療内科を受診したところ、初めて障害が明らかになりました。ちょうど、発達障害に対する認識が社会的に広まりつつある頃でした。診断を受けたときは「やっぱりそうだったのか」と、どこかスッキリする気持ちもありました。その後、タクシー会社に転職しましたが、はたらきづらさを感じて退職し、改めてはたらき方を見直すことにしたのです。
苦手意識を克服しようと、就労移行支援の利用を決意
就労移行支援制度を初めて知ったのは、障害者雇用の転職支援サービス「dodaチャレンジ」を利用し、エージェントと面談したときでした。就労移行支援は、社会人としてのマナーやスキル全般を向上できるだけでなく、自己理解を深められるサービスだと教えてもらいました。
障害者雇用の就職・転職フェアでも就労移行支援を活用している人と出会い、いっそう関心が高まったことを覚えています。口ベタなので、前職でも「話が回りくどい」と言われることがありましたが、自分一人で苦手意識を克服することは難しいと感じていました。就労移行支援事業所で話のまとめ方を一から学びたいと思い、申請手続きをおこなうことにしたのです。
見学に訪れた就労移行支援事業所は2カ所でした。1カ所はセカセカしている人が多く落ち着かない印象を受けましたが、一方のミラトレ名古屋は静かな雰囲気が自分に合っていると感じ、通所を決意しました。
「ミラトレ」のトレーニングを通じて、生活や考え方が一変
通所生同士の交流で、さまざまな考え方にふれられた
通所を開始した当初は、支援員のアドバイスを受けながら生活リズムの改善に取り組みました。通所前は昼夜が逆転し、日中は何もできない生活だったので、夜ふかしせず3食きちんと食べることを徹底。すると、心身ともに安定してミラトレに通所できるようになり、生活がガラリと変わりました。
毎日、トレーニング開始時刻の30分前にはミラトレに到着していたので自然と顔を覚えてもらい、他の通所生と言葉を交わすようになりました。会話を通じていろいろな考え方をもてるようになったことは、今も財産になっています。
実践的なトレーニングでコミュニケーション力をアップ
コミュニケーション力のスキルアップに役立ったのが、グループディスカッションです。「聞くとき」と「話すとき」をきちんと区別して、「聞くとき」は黙って相手の話に耳を傾け、「話すとき」は丁寧な言葉遣いで伝えるよう心がけました。
擬似就労で報告・連絡・相談の方法や文章の書き方を学べたことも、今につながっています。ミラトレ通所生のブログ記事作成を担当し、講座や就職活動のことを発信していました。文体を統一したり、誤字脱字をチェックしたり、さまざまな点に気を配りながら文章を作成したことは良い経験です。
自分の得意・不得意を洗い出すうちに、コミュニケーションに課題はあるものの、何ごとも自ら調べて結論を導き出す探究心は長所だと気づきました。防災訓練を兼ねたハイキングがおこなわれた際は、ルートや所要時間、ルート上のスポットなどを調査しました。自分の探究心を実践で活かせたことによって、得意分野を伸ばす術を見つけたように思います。
入院によって、焦りを感じた日々
支援員から福祉サービスの利用をサポートしてもらえた点も、大きな助けになりました。自立支援サービスを活用して清掃や金銭管理を援助してもらうようになってから、生活の質が向上しています。
実りある通所生活を送っていましたが、その年の夏、内臓疾患をわずらって入院することになってしまいました。同室の患者さんが退院して一人になったときは、何もできない焦りと心細さでいっぱいでした。しかし、「焦らなくても大丈夫。健康を取り戻せるよう、今はゆっくり療養に専念して」という支援員の言葉に元気づけられ、3週間後、無事退院できました。
ミラトレでは「はたらく力」を身につけるために、実践的なトレーニングを行える環境をご用意しています。
ミラトレの実践的トレーニング
採用の喜びを分かち合った日は、忘れられない思い出に

自分自身を振り返り、就職活動の心構えが整った
退院後、本格的に就職活動の準備を始めましたが、苦心したのは職歴の棚卸しと合理的配慮の洗い出しです。就活準備シートを使い、箇条書きにしてから一つの文章にまとめていく作業に力を注ぎました。苦労したおかげで、自分自身を客観的かつ多角的に見られるようになったと感じています。
私は地道に黙々と取り組むタイプなので、裏方として人を支える仕事に就きたいと思うようになりました。支援員からも「興味のある分野に積極的に挑戦して、適性を見定めてみては」とアドバイスをもらっていたので、業種は絞りませんでした。就職活動を始める前は「どの職種なら自分のキャリアを活かせるだろう」と考えていましたが、自分を分析・評価できるようになってからは「未経験の業種にも踏み出せる」と思えるようになりました。
企業実習で自分の持ち味を発揮
2社の企業実習を体験し、「コツコツとがんばるタイプだね」というフィードバックをいただいたことも励みになっています。障害に対して理解のある会社で長くはたらきたいと思い、障害者雇用枠の求人を探すことにしました。支援員との面接練習で特に指摘されたのは、「合理的配慮の内容や自分の強みをもっと具体的に伝えよう」という改善点でした。繰り返し練習し、わかりやすく伝えられるよう工夫しました。
「ありのままの自分を出そう」と臨んだ面接選考
JAGフィールド株式会社の求人は、自治体の福祉窓口に掲示されていた求人票で見つけました。仕事内容も労働条件も自分の希望に合っており、「この会社であれば、自分の人生をやり直せそうだ」と応募の意欲を固めました。 面接はやはり緊張しましたが、「面接練習の成果と、ありのままの自分を出そう」と意を決して臨んだことが良い結果につながったと感じています。採用通知を受け取ったときは本当にうれしくて、入院中にどん底だった私を知る支援員や母と喜びを分かち合いました。
社会や人を支えられる人材を目指して

責任感とともにやりがいを感じる仕事
入社後、管理本部総務課 業務グループという部署ではたらいています。JAGフィールドでは建設技術者を派遣する事業をおこなっており、私の仕事内容は派遣契約に関わるさまざまな書類の作成やチェック業務です。契約内容が突発的に変更されることもありますが、契約書に誤りがあると会社の信用問題に関わるため、一字一句、間違いがないよう神経を払っています。
日々の仕事のなかで、ミラトレで身につけたコミュニケーション力や客観的な視点の重要性を実感しました。以前の私なら書類の不備を指摘できませんでしたが、今は作成担当者に「間違っていますよ」と率直に伝えられます。
当社は、公共施設や商業施設、マンションなど幅広い建設プロジェクトをサポートしているので、仕事を通じてさまざまな業界を垣間見られるのです。社会貢献の一端を担っているという実感が、仕事のやりがいになっています。自分らしいはたらき方を見つけるまで遠回りをしましたが、今は職場環境にも恵まれ、充実した毎日を送っています。
人とのつながりを大切に、長期就労を目指したい
当社には資格手当などのキャリアアップ支援制度が整っているので、総合実務検定や簿記、衛生管理者といった資格の取得を目指したいと考えています。また、同じ境遇の人にアドバイスできるようなやさしい先輩が理想像です。
今も定着支援は続いており、支援員に仕事や日常生活の近況を報告したり、ミラトレの集まりに誘っていただいたりしています。ミラトレを中心とした人とのつながりは、大切に育んでいきたいものの一つです。相談できる場があるので、これからはつらいことを抱えこまず、人生を楽しみながら長期就労を目指したいと思っています。
ミラトレの利用を検討している方へ
これからミラトレを利用する方も、私と同じように焦りを感じることがあるかもしれません。「早くはたらきたい」という気持ちはよくわかりますが、急ぐことはありません。自分を見つめ直して、「何がプラスになり、どれがマイナスなのか」を見極めてください。支援員と一緒に考え、その答えをもとに就職活動をおこなえば、おのずと結果がついてきます。少しでも迷うことがあれば、支援員に相談してみてください。
※所属・役職ほか記事の内容は取材当時のものです
企業担当者コメント
持ち前の責任感と丁寧な仕事ぶりを活かし、業務の幅を広げてほしい
(2025年5月現在)
JAGフィールド株式会社は、建設業界に特化した労働者派遣業・有料職業紹介事業を全国で展開しています。クライアントのニーズ分析と求職者のヒアリングを徹底的におこない、満足度の高いマッチングを実現。付加価値の高い新たな人材サービスや、既成概念にとらわれないユニークな人材活用法の創造に取り組んでいます。
障害者雇用では、障害の種類や等級で一概に判断するのではなく、人間性やスキルを重視。一人ひとりの能力や特性に応じて職場環境を整え、やりがいをもって働けるよう努めています。障害者雇用を拡大するにあたり、信頼と実績がある就労移行支援事業所と連携したいと考え、ミラトレに相談しました。
面接時の髙田さんは活力にあふれ、対応もハキハキとしていたので、健康面やコミュニケーション面の不安を感じさせませんでした。入社後も責任をもって業務に取り組んでおり、書類に不備があると自ら問い合わせて確認するなど、丁寧な仕事ぶりが印象的です。また、細やかな報告・連絡・相談によって進捗状況がわかるため、業務の振り分けがおこないやすい点も助かっています。髙田さんは率先して仕事の幅を広げているので、より専門性を高めながら、周囲から頼られる存在になってほしいと期待しているところです。今後も、障害者雇用を促進し、一人ひとりに合った働き方を提案していきたいと考えています。