人とのつながりを大切に、会社を「人」の側面から支えたい

ミラトレさいたま
K.Cさん
双極性障害
- 通所期間
- 約12カ月
- 就職先企業
- 株式会社JTBコミュニケーションデザイン
就職までの道のり
- 利用開始
- 週3日利用からスタート。
- 4カ月目
- 週5日終日利用に変更
- 9カ月目
- 就職活動をスタート
- 12カ月後
- 就職内定!ミラトレ卒業
営業職から事務職へのキャリアチェンジを決意
人材系のプロフェッショナルを目指すも、体調を崩して入院
新卒入社した人材系の会社で営業兼キャリアアドバイザーの職に就きましたが、自分でも気づかないうちに躁状態になってしまいました。その反動でうつとなり、異変に気づいた家族が「医療機関に行こうと思っているのだけれど、一緒に行かない?」とさりげなく受診を勧めてくれたのです。通院を続ける中で双極性障害が明らかになりました。障害の原因がわからず転職をしていましたが、キャリアを重ねるにつれて、仕事内容ではなく残業の多さが障害の原因となっていることに気づき、フリーランスに転向しました。直後はうまくいっていたものの、突然薬疹(やくしん)となり、治療のため入院することになったのです。
「自己理解を深めたい」と就労移行支援の利用を決意
退院後、家族から「1年くらい離職して、健康を取り戻してから社会復帰を目指しては」と勧められました。離職期間中、「自分のことをもっとよく知りたい」とインターネットで自己理解の方法を調べていたところ、就労移行支援の存在を知ったのです。これまでの知識と経験を活かし人材業界ではたらきたいという気持ちは変わりませんでしたが、営業職ではなく事務職を目指して就労移行支援を利用することにしました。数字を上げるために労働時間が長くなりがちな営業職より、守りの事務職の方が無理なくはたらけるだろうと考えたからです。「事務職の経験がなくても就職できるだろうか」と不安でしたが、まずは就労移行支援事業所を見学し、相談してみることにしました。
ミラトレで人材業界の事務職を目指し再出発
「未経験者でも大丈夫」のひと言が後押しに
4カ所の事業所を見学しましたが、中でもミラトレは充実したプログラムとパソコンスキル向上につながる擬似就労があったことが印象的でした。当時のセンター長から「未経験者でも大丈夫ですよ」という力強い言葉をいただき、安心感が芽生えたことを覚えています。支援員の接し方も安心材料の一つでした。体調を気遣いながら、相談や要望には全力で応えてくれましたが、個人の事情や気持ちを詮索されることはありませんでした。「ここなら支援員との信頼関係を築きながら、自分の望む仕事を見つけられそう」と思い通所を決意したのです。
講座を通じてパソコンスキルとコミュニケーションスキルを向上

通所開始から4カ月経つと週5日通所できるようになり、パソコンスキルも向上。WordやExcelなどの利用スキルを証明する国際資格「MOS」を取得できました。パソコンスキルと並行してコミュニケーションスキルやセルフケアを学べたことが、はたらくための基礎力になったと感じています。人間関係で摩擦が生じたときどのように解消すれば良いか支援員に相談したところ、“アイメッセージ”というコミュニケーション方法を教えてもらいました。「あなたの言葉でこうなった」と言うよりも「私はこういう気持ちです」とアイ(私)を主語にして伝える方が角が立ちにくいのだそうです。
それ以来、相手に配慮しながら自分の気持ちや考えを伝えたいときは、アイメッセージを心がけています。また、困りごとを抱え込んでしまうことも課題の一つでしたが、周囲にサポートを求められるようになりました。ミラトレが相談しやすい場だったからこそ、成長できたのだと感じています。
ミラトレでは「はたらく力」を身につけるために、実践的なトレーニングを行える環境をご用意しています。
ミラトレの実践的トレーニング
自分を客観視することを意識した就職活動
ミラトレ支援員のサポートで面接対策を徹底
通所開始から9カ月目に就職活動をスタートしました。事業会社の人事と人材業界の事務職に応募しましたが、なかなか書類選考に通りませんでした。それでもあきらめず、支援員とdodaチャレンジのキャリアアドバイザーにお願いして、面接練習を重ねることにしました。「声のトーンや表情に気をつけると、話の内容にメリハリが出ますよ」という支援員からのアドバイスは、今も心にとめています。
また、一歩引いて自分を見る練習をしたり、周囲の人に自分の印象をたずねたりして、自己分析をおこないました。そのように自分を客観視しながら面接質問問答集を作成し、どのような質問にも答えられるよう準備を整えていったのです。
企業実習で気づいた自分の強み
また、3社の企業実習に参加したことで、自分の得手不得手に対する理解が深まりました。業務スピードを意識するとミスが多くなるという課題はありましたが、相手に好感をもってもらえるコミュニケーションが自分の強みだと気づいたのです。
その後、dodaチャレンジの紹介でJTBコミュニケーションデザインを知り、採用と人材開発支援の分野で自分のキャリアを活かしたいと応募することに。端的でわかりやすい伝え方を意識しながら面接に臨みました。面接官に会社の長所をうかがったところ、「人の良さ」だとおっしゃったことが印象に残っています。また、障害を開示していたものの面接では一切ふれられず、障害者ではなく一人の人として見ていただいていることに好感をもちました。無事、採用通知をいただけて本当に良かったと思います。
人材系のプロフェッショナルを目指しステップアップ
「人の良さ」に恵まれた環境でやりがいを感じる日々
入社から一年を迎えますが、社員の皆さんはわからないことがあると丁寧に教えてくださいます。面接官が話していた「人の良さ」は本当だと実感する場面がたくさんありました。現在は、公共施設や観光案内所の運営に取り組むエリアマネジメント部に所属。面接の調整や応募者への対応、面接といった採用業務と、研修を担当しています。以前はミスの多さが課題でしたが、たとえ失敗しても同じミスを繰り返さないようセルフチェックの徹底を心がけ、ダブルチェックをお願いするようにしました。
まだまだ課題は残っていますが、「業務スピードが上がったね」「仕事ぶりが落ち着いていて、何でも任せられる」という上司の言葉に励まされています。採用業務を通じて人とのつながりが増え、候補者にさまざまなアドバイスができるようになりました。候補者の気持ちが前向きになり、内定までのプロセスを一緒に歩めたときには喜びもひとしおです。
また、研修を企画する際は「何のために学ぶのか」という目的やゴールをはっきり定めることを意識しています。行きづまったときはそれを周りの人に伝えて改善策を教えていただき、企画力や実行力を磨いてきました。参加者から「新たな学びを得られました」と感想をいただいたときに、やりがいを感じます。
ミラトレで学んだセルフケアを実践し、ストレスを解消

仕事で悩みや不安を感じたときには、ミラトレの面談でおこなっていた「認知行動療法」が役立っています。一つの物事をさまざまな角度からとらえることで、建設的な考え方に発展させる手法です。一人で考え込んでいると思考がかたよってしまいがちですが、別の視点をもつことで新たな気づきを得られます。また、セルフケアのワークを通じてストレスをためないノウハウを学びました。休日には、美術館や友人とのランチに出かけたり本を読んだりして、余暇を大切に過ごすようにしています。
一歩踏み出せば、はたらく自信につながる
業務の改善点を自ら発信できる人材を目指し、ゆくゆくは人事系のスペシャリストになりたいと考えています。また、採用業務の改善に向けてデータ分析をおこなっていますが、数字の大切さを日々実感しており、データ活用のスペシャリストにも興味をもつようになりました。スキルの幅を広げ、事業を人の側面で支えることが今の目標です。
ミラトレでは、訓練で学びを得たり、客観的な意見によって気づきを得たりしながら、自分の考え方やはたらき方を見つめ直すことができました。就労移行支援の利用を検討している人は、「コミュニケーション力を高めたい」「パソコンスキルを向上したい」「特性への対処法を考えたい」など、さまざまな目的をもっていることでしょう。ミラトレは意欲さえあればどれも叶えてくれる就労移行支援事業所です。定期的に通所するだけでもはたらく自信につながるので、ご自身のペースで通所を始めてみてはいかがでしょうか。
※所属・役職ほか記事の内容は取材当時のものです
企業担当者コメント
新しい価値の創造に向けて、チャレンジを続けてほしい
(2025年2月現在)
JTBコミュニケーションデザインは、ミーティング・イベントの企画運営をはじめとするMICE事業や組織開発・人材開発支援など多様な事業を展開。「人」と「企業」と「地域」を結び、「価値あるコミュニケーションの提供」に日々挑戦しています。障害者雇用においては、障害の有無よりも一人ひとりのやる気と能力を重視。「コミュニケーションを通じて世の中に新しい価値を提供することにチャレンジしたい」という人材を求めています。
Kさんの採用試験では、日々の業務で必要となるパソコンスキルや積極的にコミュニケーションをとる姿勢、やる気などを評価させていただきました。何ごとにおいてもより良くしていきたいという気持ちが強く、チャレンジ精神でぶつかっています。また、どんなにいそがしくても周囲と穏やかにコミュニケーションをとる姿は、チームに落ち着きと安心感を与えているようです。普段の仕事ぶりは、障害があることなど感じさせません。それでも頭痛などの症状が現れることもあるため、1on1面談やリモートワークなどの社内制度を活用しながら体調管理に取り組んできました。
私たちよりミラトレとの付き合いが長いので、支援員からKさんに適切なアドバイスをしてくださったり、支援員のフィードバックを通じてKさんの小さな変化に気づけたりすることもあります。Kさんと支援機関、会社の三者でバランスの良い連携を取れている状態です。障害者雇用は積極的に続けていきたいと考えており、今後もミラトレとのお付き合いが採用につながることを望んでいます。