Interview

社会復帰も就職活動も、スモールステップで取り組めたから「今」がある

ミラトレ梅田

M.Kさん

不安障害
強迫性障害

通所期間
1年9カ月
就職先企業
株式会社スミセイハーモニー

就職までの道のり

利用開始
週5日利用
1年後
就職活動をスタート
1年9カ月後
就職内定!ミラトレ卒業

社会復帰に向けて歩み始めた30代

長期間のひきこもりを経験。社会復帰に向けて市の相談窓口へ

中学時代の不登校をきっかけに、約20年間のひきこもりを経験しました。当時は何をするにも不安や恐怖が先立ち、行動に移せないことの方が多かったように思います。自分一人での社会復帰は難しいと考え、34歳の時に、市の「ひきこもり地域支援センター」に相談。支援員に勧められて受診すると、「不安障害」「強迫性障害」と診断されました。長年ひきこもりの原因がわからずに悩んでいたため、自分がどのような状態にあるのかがはっきりしたことで、少し安心したのを覚えています。社会復帰に向けて、まずは散歩など外出の練習から始めました。

就職を見据えて、就労継続支援B型事業所からA型事業所へステップアップ

35歳の時、主治医と相談して就労継続支援B型事業所の利用を決めました。軽作業や清掃を担当しながら1年間安定して通所できたため、次のステップとして就労継続支援A型事業所へ移籍。この頃には就職を考えていたこともあり、フルタイム勤務を意識して週5日利用しました。A型事業所には2年間通所し、パソコンを使った業務を担当するなど、より高い給与をいただきながら自分のペースで働くことを経験でき、大きな自信につながったと感じています。

就労継続支援を利用するまでは、働くことに対して「週5日フルタイムで働かなければならない」といった固定観念がありました。しかし、さまざまな障がいのある人が働く姿を見て、多様な働き方があることに気づかされたのです。自分らしい働き方を見つければよいのだと考えられるようになり、障がい者雇用を目指すきっかけにもなりました。

「擬似就労」に惹かれ、37歳でミラトレ利用を決意

実践的な訓練でビジネススキルが身につく「擬似就労」

A型事業所を利用中に特例子会社を見学した際、障がいのある方が軽作業以外の業務に取り組まれる様子に感銘を受けました。同時に、社員の対応や職場環境を見て、自分には社会人としての基本的なマナーが身についていないと実感。まずは就職に向けた準備や訓練ができる場所が必要だと考えました。障がい者向けの職業訓練などを調べる中で就労移行支援事業所を知り、「ミラトレ梅田」の情報にたどり着きます。

ミラトレのプログラム内容や「擬似就労」の取り組みに惹かれて利用を決意。他の事業所よりも支援員が多く、細やかなフォローを受けられそうだと感じた点も決め手の一つです。ミラトレの擬似就労ではExcelや書類を扱うなど、事務職への就職も視野に入れた実践的な訓練を受けられました。

無理なくステップアップできる環境が自分に合っていた

ミラトレの利用期間は、2020年1月から2021年9月までの1年9カ月間です。A型事業所に通所していた頃の生活リズムを崩すことなく、スムーズに移行できました。はじめから週5日利用し、途中からは土曜日開所にも参加。試験勉強の自習などにも取り組みました。

ミラトレでは、支援員が個人の障がい特性に合わせて対応してくれるのも魅力です。私はグループワークなど大人数で行う講座が苦手で参加を見合わせたこともありましたが、支援員がそばで内容を説明してくれるなどのフォローがあり、心強かったことを覚えています。また、毎日の振り返り時間やスモールステップでの目標設定により、無理なくステップアップできたのもよかったです。

擬似就労と企業実習を経験し、目指す職域を広げられた

支援員のサポートにより克服できたことの一つが、障がい受容や配慮事項の言語化です。「なんとなく苦手」ではなく、「こういうことが苦手」と伝えられるようになり、「自分にはどのような配慮が必要か」「どこまでなら一人でできるのか」などについても言語化できるようになりました。

3社の企業実習に参加しましたが、自分には定型的な業務やスケジュールが見える化されている環境が向いていると理解でき、目指す職域が広がりました。企業実習では実務の緊張感を肌で感じ、改めて仕事への責任を感じられたことも貴重な経験です。就職に向けて「働く」という経験不足が一番の課題だと考えていたため、擬似就労と企業実習は非常に有意義な時間だったと思います。

繰り返し面接練習を行うことで、不安を自信に変えていった

支援員に背中を押されて、一度見送った企業に応募

ミラトレ利用から1年後くらいに就職活動を開始。職種は絞らずに、通勤時間や自分に合った職場環境を主に考えました。就職先企業は、一度企業見学をさせていただき興味が湧いたのですが、人気のある企業だと聞いて諦めてしまった経緯があります。ミラトレの利用期間が残り少なくなった頃、ハローワークで同社のミニ面接会があると知り、迷っている旨を支援員に相談したところ、後悔しないように挑戦した方がいいと背中を押してもらいました。ミニ面接会の後は、最終面接まで驚くようなスピードで選考が進み、最終面接後すぐに内定をいただきました。

就職活動で少しネガティブに感じていたのが、当時30代後半という年齢です。どの企業でも年齢の離れた方と一緒に働くことが想定できたため、面接官に質問されても答えられるように準備していました。支援員からの「ミラトレでは若い利用者とも問題なく一緒に訓練できています。その経験を履歴書や面接で伝えれば大丈夫」とのアドバイスが励みとなり、自信を持って面接に臨めました。

模擬面接で学んだことは、自分の言葉で伝える大切さ

就職活動で力を入れて取り組んだのが模擬面接です。初歩的な質問例を繰り返して場に慣れることから始め、徐々に応用編にステップアップしていきました。最初は作成した面接質問例を読むだけで精一杯でしたが、支援員からフィードバックをもらい、注意点や改善点を確認。声の抑揚や表情を指摘してもらえたことで、自分の言葉で伝える大切さに気づきました。受け答えがスムーズにできるまで繰り返し練習したからこそ、不安を自信に変えられたのだと思います。

新規業務へのチャレンジは職域を広げるチャンス

部署の垣根を越えて業務をやり遂げたときに喜びを感じる

現在は株式会社スミセイハーモニーの業務開発部に所属し、主に「ダイレクトメールの発送業務」「官公庁からの問合せ対応の周辺業務」「お客様からの感謝の声をデータ化する業務」を担当。直接お客様の手元に届く情報や個人情報を扱うため、自分でも多重チェックをするなど、緊張感を持って業務に取り組んでいます。

複数の部署で協力して完成する業務が多く、中でも私の部署は発送前の明細入力など、最終段階を担当することが少なくありません。ミスなく、無事に最後まで業務をやり遂げられたときに達成感や喜びを感じます。また、担当案件ではペア業務も多く、コミュニケーションが苦手な私にとってはハードルが高いものでしたが、二人でスムーズに業務を進められたときは達成感や自信につながっています。

相手を理解することで、自分らしい働き方も探究できる

今後の目標は、自分のできることを増やすとともに、いずれは実習生の指導役を担うことです。業務開発部では、新規業務に取り組むなど大変な面も多いですが、チャレンジすることは自分の職域を広げるチャンスだと考えています。

また、現在の部署では、お互いの障がい特性を理解し合うことで業務を進めやすくするために「自己紹介会」という取り組みを行っています。私も「自己紹介会」をきっかけに自分の特性を周囲に伝えられるようになり、一緒に働くメンバーを理解することで自分らしい働き方の探究にもつながっています。同僚にはろう者が多く、少しでもスムーズなコミュニケーションができればと手話を勉強中です。社内の取り組みとして毎朝5分間の手話練習を行い、自宅でも動画配信サービスを活用して練習しています。

ミラトレは、年齢に関係なく新たな一歩を後押ししてくれる場所

ミラトレでは、一人で努力するのと同じくらい、周囲の人を頼ることも大切だと学びました。私は長期間のひきこもりを経て社会復帰を目指すことになりましたが、自身の年齢を気にしてミラトレ利用を悩んだ経緯があります。しかし、どうしても自分だけでは対処しづらい問題があり、ミラトレはそのような時に頼れる場所の一つだと知りました。加えて、障がい者雇用での就職を目指す方にとって、さまざまな特性がある方と一緒に訓練できることは大切な機会になると思います。

企業担当者コメント

成長を感じられるからこそ、より高い業務にチャレンジしてほしい

  • 株式会社スミセイハーモニー 
  • 業務開発部 業務開発課 課長代理 
    山本孝様(写真:右)
  • 業務開発部 業務開発課 
    業務開発第1グループ グループ長 
    梶村精一様(写真:左)

当社は、住友生命グループの100%特例子会社として2001年に大阪で設立しました。当時は約30名だったメンバーも現在は290名(※1)を超え、来年度には300名以上になる見込みです。Mさんが所属する業務開発部では、生命保険の事務補助や各種保険手続き時の書類の確認など、住友生命の職員が担当していた業務を担っています。当社は東京と高松にも拠点を設け、より多くの障がい者が安定して長くやりがいを持って働ける会社を目指しています。本社からの熱い支持のもと、今後も採用拡大を推進していく方針です。

Mさんには、2週間の企業実習で業務開発部の「業務開発課」と「業務推進課」の仕事を経験してもらいました。その時の印象は、報連相や質問ができ、既存職員とのやりとりも丁寧だということ。パソコンのスキルも高く、何より正確性を重視する仕事に対応できる人材である点を評価しました。業務開発課は新規業務が多く、変化も多いです。Mさんにとって大変な面もあるかと思いますが、自分から何ができるかを考えて動くなど、成長も感じられます。会社説明会でも堂々と説明する姿を見て、頼もしく感じることもありました。総じて能力が高いので、今後もさまざまな業務にチャレンジするとともに、実習生や新人の世話役も担っていってほしいと期待しています。

(※1)2022年12月時点
※企業の表記ルールに合わせ、「障がい」「働く」と記載しております。

※所属・役職ほか記事の内容は取材当時のものです

就労移行支援事業所
ミラトレ梅田
所在地 :
大阪府大阪市北区梅田1-2-2 大阪駅前第2ビル 11F
営業時間:
8:45 – 17:45
電話番号:
06-6131-9693