仕事にやりがいを感じながら、長期就労を目指したい
ミラトレ梅田
I.Yさん
統合失調症
- 通所期間
- 11カ月
- 就職先企業
- 株式会社グロップ
就職までの道のり
- 利用開始
- 週5日利用
- 8カ月後
- 就職活動をスタート
- 11カ月後
- 就職内定!ミラトレ卒業
就労移行支援事業所を知り、社会復帰がより具体的に
療養せずに転職したことで、さらに体調が悪化
統合失調症の診断を受けたのは、印刷業界ではたらいていた前々職時代です。至って普通に勤務していたのが、ある日を境に眠れなくなったり、朝の通勤電車で腹痛が出るようになったりして、友人の勧めで病院を受診したところ病気がわかりました。当時を振り返ると、仕事量の多さや職場の人間関係が体調悪化につながっていたように思います。倦怠感が強く、身支度はもちろん家から出られなくなり、退職することになりました。
当時は療養するよりも「早く次の仕事を探さなければならない」との思いが先立ち、すぐにアルバム制作会社に転職しました。服薬を続けながら約2年間勤務しましたが、徐々に体調が悪化。はたらけない状態になってようやく、しっかり療養して体調を安定させることの重要性に気づきました。失業保険と傷病手当を受けながら1年半休業し、退職に至ります。
ミラトレを見学して、再就職の道筋が見えた
体調を崩した折に受診を勧めてくれた友人が障害者雇用ではたらいており、障害者雇用専門の就職エージェントの存在を教えてくれました。dodaチャレンジに登録した際に、当時の担当者が勧めてくれたのがミラトレです。この時初めて就労移行支援について知りました。「就労継続支援」とも比較しましたが、就労移行支援では賃金が発生しないため、生活面での不安を覚えました。迷いはありつつ、「見学だけでも」と背中を押されて訪ねたのが「ミラトレ梅田」でした。
ミラトレの第一印象は「大変賑やか」です。というのも、私は人の話し声が自分の悪口に聞こえてしまう症状があるため、賑やかな環境で人が話す声を苦手としています。しかし社会復帰を考えると、いずれはそのような環境に身を置くことになるのは想像できました。自分にとって厳しい環境を逆手に取り、職場環境に慣れるための訓練にしようと考え、ミラトレの利用を決めました。
失業保険を受給しながら就労移行支援を利用できると知り、生活面での不安が和らいだのを覚えています。また、見学時の面談で「Iさんの場合は一般企業の障害者雇用枠ではたらく方が長い目で見るとプラスになる」とお話しいただき、納得できたのも決め手の一つです。ミラトレ利用者の就職率や定着率の高さ、多彩な講座内容も後押しになりました。
自己理解が深まり、配慮事項を明確化できた
配慮を求めるだけでなく、工夫次第で対応できる
ミラトレの通所期間は11カ月間で、利用当初から週5日通所しました。ミラトレを利用して一番良かったのは、自己理解が深まったことです。以前は必要な配慮について具体的にイメージできていませんでしたが、自分の体調や特性をふまえて、通院やトイレ休憩の頻度に関する配慮などを具体化できるようになりました。
また、配慮事項だけではなく、工夫すれば自分で対応できることにも気づけました。私が特に配慮を求めるのは「耳栓の可否」です。配慮の求め方として、「静かな環境がいい」と伝えるか、「周囲の声を必要に応じて遮断できるように、耳栓の利用を許可してほしい」と伝えるのとでは、印象が大きく違います。
切望して取り組んだ「アンガーマネジメント講座」
ミラトレの講座で特に役立ったのが、アンガーマネジメントです。私は怒りっぽい性質があることを自覚しているので、メンタルヘルス系の講座に「アンガーマネジメント」を見つけて、ぜひ取り組んでみたいと支援員に伝えました。怒りを抑えてコントロールするために、「怒りの感情が湧いたら6秒間待つ」を、今も実践しています。
ミラトレのPCスキル講座でOfficeソフトを使えるようになったのも自信につながっています。前職では業務に関連した専門的なソフトを使っていたので、スキルアップとしてExcelやWordの習得を目標に掲げていました。現在の実務でも役立っています。
就職活動は「積極性」が大事と実感
書類作成や模擬面接は試行錯誤の連続
ミラトレの利用開始から8カ月経った頃に就職活動を始めました。当初は前職の経験を活かしてデザインや印刷関連の仕事に就きたいと考えていましたが、なかなか書類選考に通らず、支援員に提出書類の添削をお願いすることに。メリハリや簡潔さを意識して改善を図ることで、書類選考を通過できるようになりました。
書類の改善と並行して注力していたのが模擬面接です。面接問答集を元にアドリブをつけ加えたり、必要事項をしっかり話せるように意識したりと、試行錯誤しました。支援員との定期的な模擬面接とは別に、センター長に本番さながらの面接をしていただく機会がありました。その際に「特に指摘することはなく、素晴らしい」とのフィードバックを受けたことも、大きな自信になったのを覚えています。
ミラトレでは「はたらく力」を身につけるために、実践的なトレーニングを行える環境をご用意しています。
ミラトレの実践的トレーニング
企業実習に参加して業種へのこだわりがなくなった
企業実習に積極的に参加する中で出会ったのが、今の就職先企業です。体験した業務の中で、前職時に習得した納期の計算や印刷機の操作などのベーススキルを活用できたことで、印刷業界でなくても活躍できる場があることを実感。業種へのこだわりがなくなりました。業務の正確性を褒めていただいたのも嬉しかったです。
職場の雰囲気は賑やかで、常に話し声が飛び交うような環境でしたが、ミラトレで慣れていたので慌てることはありませんでした。オフィス環境での音の許容範囲がわかるようになったのも、成長を感じる部分です。実習時は、担当者や職場の方に話しかけることに戸惑いもありましたが、不明点があればすぐに聞いてほしいとの声掛けもあり、職場の風通しの良さやはたらきやすさを感じられました。
業務への理解が深まることにやりがいを感じる
新しい仕事を覚えるのが楽しい
現在は業務管理の部署で、契約書の印刷や契約更新のデータ処理を担当しています。未経験の業種で難しさも感じますが、業務を通じて理解が深まっていくところにやりがいを感じています。入社して約1年2カ月になりますが、今は同じ仕事をずっと続けるだけでなく、複数業務を掛けもって、新しい仕事を覚えていくことが楽しいです。少しずつ業務の幅を広げられるよう、先輩が担当している業務の一部を受けもつこともあります。
契約書関連の仕事を進める上で、特に重視しているのが「納期」です。締め切りはしっかり守るようにスケジュールを確認しながら進めています。
ミラトレの定着支援を活用
定着支援の一環として、就職後もミラトレ支援員の方に相談にのっていただき、大変助かっています。私はもともと相談するのが苦手だったのですが、定着支援に入ってからは、つまずいた時や困っていることへの相談相手として心強く感じています。時には「職場の上司の方に直接話しましょう」と背中を押してくれることもあり、実際に職場の上司への相談につながったケースもありました。
第一の目標は長期就労。その上で、スキルアップを目指す
上司や同僚の良いところを真似て、吸収したい
前職で長く仕事が続かなかったこともあり、長期就労を第一の目標にしています。以前は自分の体調を度外視してはたらきすぎてしまうことが多かったですが、今は体調への配慮を心がけるようになりました。自分のキャパシティを考慮して、仕事量を調整できるようになったのは、仕事と長くつき合うためにも必要なことだと感じます。また、私の場合、長期休みで生活リズムが崩れてしまう傾向にあるため、休日も規則正しい生活習慣を心がけています。
業務に関する目標は、契約業務のベースにある法律の知識を身につけること。書類の間違いを指摘する際に、相手にわかりやすくフィードバックができるようになりたいです。上司や同僚から学ぶことも多く、皆さんのはたらく姿やコミュニケーションの取り方を見て、真似るところから実践しています。
ミラトレで自己理解を深めてほしい
一人で再就職を目指していた頃は、行き詰まることも多々ありました。ミラトレには親身になって相談にのってくれる環境があり、時には頼ることも必要だと気づかされました。自分の障害について理解が曖昧だと、面接でも苦労します。私はミラトレで自己理解を深め、自分をアピールする術や、これまで対応しきれなかった症状への対策を見つけることができました。そして今、社会復帰できたおかげで自己肯定感も上がっています。ミラトレを活用して、自信をもって就職活動に臨んでほしいです。
※企業の表記ルールに合わせ、「働く」と記載しております。
※所属・役職ほか記事の内容は取材当時のものです。
企業担当者コメント
業務進捗や全体を見渡すようなリーダーシップにも期待
高崎浩一様
森田有美様
(2024年5月時点)
株式会社グロップは、各種アウトソーシングや人材派遣事業、人材紹介事業、テレマーケティング事業など、「人」を基軸とした幅広い事業を展開しています。岡山に本社を置く企業として初めて特例子会社を設立。ノーマライゼーションを推進するフロンティア企業として地域社会に認知されています。障害者雇用の方針には、「一人ひとりが豊かな個性をもって働きながら成長ややりがいを感じ、それぞれの能力を十分に発揮していくこと」を掲げています。
Iさんが所属する関西・中部営業本部の業務管理課は、主に人材派遣における契約管理業務を担当。同部署では、Iさんを含めて6名の方が障害者雇用で勤務しています。現在、Iさんにはデータ入力や書類の出力などをお願いしていますが、ミスも少なく、正確性の高さに信頼を置いています。
まずは勤怠の安定を目指すため、体調の見極めやメンタルの負担にならないはたらき方を考えながら、徐々に業務の範囲を増やしていってほしいです。後輩の教育や優先順位をつけて仕事を推進するなど、リーダー的役割も担っていってくれることを期待しています。
長期就労を目指すためにも仕事のやりがいを見つけて、自信をつけていってほしいです。今後も定期的な面談や困りごとを相談できる機会を設けて、問題が生じた際は一緒に解決できるように関わっていきたいと考えています。