一つひとつの仕事を楽しみながら、安定して長くはたらき続けたい
ミラトレ藤沢
菊池 秀幸さん
自閉症
- 通所期間
- 1年5カ月
- 就職先企業
- 外務省
就職までの道のり
- 利用開始
- 週4日終日利用
- 2カ月目
- 週5日終日利用に変更
- 5カ月目
- 就職活動をスタート
- 1年5カ月後
- 就職内定!ミラトレ卒業
職業能力開発校でパソコンスキルを身につけ、総合電機メーカーにて26年間勤務
3歳の時に自閉症と診断。職業能力開発校を経て総合電機メーカーに就職
私は、3歳の時に大学病院で自閉症と診断され、中学校3年生まで通院しました。日常生活では、人と会話するのが苦手です。特に、自分から話しかけるのが得意ではないため、電話にはあまり出ません。ただ、話しかけられて答えるのは問題ないので、メールや文章でのやり取りは得意です。
高校卒業後は、障害者職業能力開発校へ入校しました。簿記やパソコンについて学び、在校中に「パソコン検定3級」を取得。職業能力開発校からの紹介で、20歳の時に総合電機メーカーに就職しました。一般事務として携わった仕事は、パソコンでの入力作業やWord作成、工数入力、写真編集、郵便物集配、文書のPDF化など多岐にわたります。26年間勤務しましたが、会社都合により早期退職となりました。
パソコンを使った高度な訓練に惹かれ、ミラトレ利用を決意
退職時、前職でお世話になった方から紹介されたのがパーソルチャレンジです。「この先も障害者雇用ではたらきたい」と希望を伝えたところ、ミラトレ藤沢を紹介してもらいました。ミラトレ藤沢を見学した際に印象的だったのは、パソコンを使った高度な訓練です。前職からパソコンを使った仕事が好きだったので、難しい内容でも「楽しい」と感じたのを覚えています。「まだ取り組んだことがないパソコン作業に挑戦したい」と思い、ミラトレ利用を決めました。
ミラトレ支援員の丁寧なサポートで苦手なことにも向き合えた
ミラトレでは実務に即した訓練でパソコンスキルを向上
ミラトレは、前職を退職して約1カ月後から利用を開始し、1年5カ月間通所しました。はじめは週4日の終日利用からスタートしましたが、早い段階で週5日終日利用に切り替えています。前職では週5日勤務していたので体力的にも問題なく、自宅から市営地下鉄とJR東海道線を経由して毎日通所できました。
ミラトレの講座で実務に役立っているのは、グラフ作成やビジネス文書作成、PPTデザイン入門などを学ぶ「PC講座」です。タイピングやWord、Excelの関数など、スキルアップにもつながりました。他にも、セルフマネジメントに関する「メンタルケア講座」、応募書類作成や模擬面接会などに取り組む「就活講座」などを受講しました。私の場合、座学よりも実際に手を動かして学ぶ講座の方が、スキルを身につけやすかったように感じています。
ミラトレでは「はたらく力」を身につけるために、実践的なトレーニングを行える環境をご用意しています。
ミラトレの実践的トレーニング
苦手な電話応対にも前向きに取り組めた
ミラトレの訓練で苦労したのが、「ビジネス講座」の一つの電話応対です。落ち着いて話せるように、前もってメモに必要な項目を書き出して話す練習をしました。苦手だった電話応対にも前向きに取り組めたのは、支援員の皆さんがとても丁寧に教えてくださったからです。支援員のアドバイスを踏まえて、自分でも工夫できたと思います。
パソコンスキルを活かせる仕事への再就職を希望
問答集を作成し、面接練習に励んだ
ミラトレ利用開始から5カ月後くらいに、ハローワークから求人を紹介していただき、就職活動を始めました。目標にしていたのは、前職での経験を活かせるようにパソコンが使える仕事に就くことです。新しいことに挑戦していきたいとの思いもありました。
就職活動で苦労したのは、志望動機を言葉にすることと、面接での受け答えです。面接時の会話について支援員の皆さんに教えていただき、問答集を作成。自宅や電車での移動時間に読み込み、何度も練習しました。模擬面接では「相手の目をよく見ること」とのアドバイスをいただき、下を向かないように意識できるようになりました。自身で心がけていたのは、身だしなみを整えることです。就職した外務省の面接選考では、練習通りに落ち着いて話すことができ、手応えを感じました。
新しい仕事にもどんどん挑戦していきたい
できる仕事が増えて、はたらくのが楽しい
2年半前に非常勤の国家公務員として採用され、外務省に入省しました。2023年4月に3回目の再雇用を控えているところです。現在は人事課オフィスサポートチーム第1に所属し、主な業務として英文入力や行嚢袋(こうのうふくろ)の仕分け、清掃作業、シュレッダー作業などを担当。中でも、英文入力で間違いがなかった時には、やりがいを感じます。英文入力ではWordを使用しますが、間違いなく行うために「入力後は2回見直しすること」を心がけています。
現在の職場でも支援員の方が細かく指導してくださるので、パソコンを使った業務以外にもできる仕事が増えて楽しいです。10名以上のチームメンバーと一緒にはたらいていますが、業務を進める上で必要な声かけをして、業務を円滑に進められるように努力しています。支援員の方から頼まれた仕事をきちんとやりきり、新しい仕事にもどんどん挑戦していきたいです。業務の幅を広げていくことは大変さもありますが、今は楽しさの方が勝っています。
安定して長くはたらき続けることが目標
今後の目標は、安定して長くはたらき続けることです。どのような仕事でも、落ち着いて行えばできると信じて取り組んでいます。次のステップとして、時間を意識できるようになることも目標です。やりたい仕事を頑張りながら、安定して長くはたらき続けられるように、食事や規則正しい生活も心にとめています。
ミラトレを利用して実感しているのは、一生懸命に取り組めば、自分に合った就職先が見つかるということ。ミラトレには「就職する」という同じ目標を持った仲間がおり、良い刺激を与え合える環境があります。ミラトレで出会った仲間とは卒業後も交流があり、近況報告をしています。
※所属・役職ほか記事の内容は取材当時のものです
※パーソルチャレンジ株式会社は、2023年4月1日付でパーソルサンクス株式会社と統合のうえ、「パーソルダイバース株式会社」となりました。
企業担当者コメント
チャレンジ精神を活かして、これからも仕事の幅を広げていってほしい
東京・霞が関の外務本省では、多くの職員が世界各地に置かれた在外公館と連携しながら、日本および世界の安全と繁栄を確保するため、外交政策の企画・立案やさまざまな外交活動を推し進めています。障害者雇用の方針として、外務省に勤務する全ての障害のある職員が能力を有効に発揮すること、また職員が障害の有無にかかわらず相互に人格と個性を尊重し合いながら、共に業務を推進する職場を目指して取り組みを行っています。
菊池さんは、前向きに業務に取り組む姿が印象的です。「やりたい仕事はありますか」と尋ねると、「何でもやってみたい」と返答されます。自分からお話しされることは多くありませんが、チームメンバーと順番に行う業務の際は、「次、交代です」「お願いします」というように自分から声かけされています。
コツコツと真面目に業務を進められる点も評価しております。
英文入力業務では、正確さだけではなく、体裁を整えるなど丁寧な仕事も目にとまります。
朝の支援員とのミーティングでは1日の業務スケジュールをお伝えいただいております。1日のやるべき業務をご自身がノートに書き出し、その中で気分転換を図りながら、考え、工夫し、組み立てて行っております。
今ではイレギュラーな業務の依頼があっても、落ち着いて、ご自身でスケジュールに組み込み、柔軟に対応出来るようになっております。
菊池さんが、健康で長く働いていきたいという目標を第1に考え、ミラトレの定着支援や、所属する課の運営職員とも連携をとりながら支援を続けていけたらと思っております。その上で、チャレンジ精神とパソコンスキルを活かして、業務の幅を広げていってくれることを期待しております。