Interview

ミラトレで得た「知」が、新たな道を切りひらく力になった

ミラトレ金山

Y.Yさん

ASD(自閉スペクトラム症)

通所期間
約1年6カ月
就職先企業
株式会社セカンドストリート

就職までの道のり

利用開始
週5日利用からスタート。
9カ月目
就職活動をスタート
1年6カ月後
就職内定!ミラトレ卒業

コミュニケーションスキルの向上を目指してミラトレへ

未就学児のとき障害が明らかに

私が自分の障害名を知ったのは10代になってからでした。ASD(自閉スペクトラム症)と診断されたのは、幼稚園児のときだったと聞いています。幼稚園の教諭から障害の可能性を指摘されたことをきっかけに、医師の診断を仰いだそうです。特別支援学級の指導を受けながら義務教育を修了し、高校卒業後は短期大学へ進学しました。

社会に出る準備として就労移行支援を利用

2年生のとき、卒業後の進路が定まらずかかりつけ医に相談したところ、就労移行支援制度を活用して職業訓練が受けられることを知りました。私には感覚過敏の特性や、相手の意図をうまく汲み取れないという困りごとがあったので、「コミュニケーションスキルを身につけたい」との思いから就労移行支援の利用を決意しました。

3カ所の就労移行支援事業所を見学しましたが、ミラトレは支援員のやさしい人柄と雰囲気の良さが印象的でした。そして何より、実際の職場を想定した擬似就労で、報告・連絡・相談がしっかりおこなわれている点に魅力を感じました。自宅から事業所まで、電車で片道1時間半の距離がありましたが、それも就労訓練の一環だと考えミラトレを選びました。

物事の見方が変わったことで、メンタルが安定

支援員のサポートを受けながら、片道1時間半の通所を継続

通所の電車移動中にストレスを感じたときは、いったん下車して外の空気を吸い、次の電車に乗るようにしていました。それでも長い移動が負担となって、体調を崩すことも少なくありませんでした。週5日の通所を続けられたのは、支援員が常に寄り添ってくれたおかげです。

大切にしているのは、「自分を苦しめない考え方」

私は、通所の抱負を「知」という一文字に込めました。進むべき道を選び取る前に、まず自分自身や社会について知らなければ、何も始まらないと考えたからです。ミラトレでは、はたらくスキルやビジネスマナー、物事の捉え方や考え方など、さまざまな「知」を得ました。

中でも大切にしている学びは、「自分を苦しめない考え方」です。以前の私は、人の本心を勝手に推測して、遠慮したり傷ついたりしていました。しかし、講座を通じて「相手の本心は誰にもわからないのだから、自分が良かれと思うふるまいをしよう」と考えられるようになりました。

自分のスキルが形になる喜びを実感

実践的なトレーニングを通じて報告・連絡・相談を習得

価値観の違いを受け入れる方法を学べたことも、メンタルの安定につながっています。感覚過敏なのでタバコの煙も苦手なものの一つですが、「自分にとって音楽やゲームが心の支えになっているように、喫煙者にはタバコがなくてはならないものかもしれない」と考えられるようになりました。それから、自発的に喫煙所から距離を置くなど、工夫しています。人の大切なものを奪ってしまわないよう、異なる価値観も尊重していきたいと思っています。

通所前に予想していた通り、擬似就労はコミュニケーションスキルを磨ける場でした。わからないことをそのままにして作業すると間違った方向に進んでしまうので、自然と報告・連絡・相談の習慣が身につきました。擬似就労だけでなく、ほかの通所生と力を合わせて一つの目標を達成するグループワークも、協調性を養える場でした。

障害を受け入れることで、気持ちが前向きに

ミラトレで得た学びを形として残せたことも、達成感につながっています。ミラトレにいらしたお客様にインターホンの場所を案内するポップを作ったときは、短大とミラトレで学んだパソコンスキルが役立ちました。お客様が気づきやすい角度やデザインを試行錯誤しながら作ったので、実際に活用されている場面を見るたびうれしく思いました。

以前の私にとって、障害は「克服すべきもの」でした。しかし、ミラトレで障害との向き合い方を教えていただいてからは、「障害とともに生きていく」というスタンスに変わりました。

企業実習を通して見つけた「自分に合うはたらき方」

「企業まかせにしない」姿勢で臨んだ就職活動

ミラトレに通所したことで、自分の適性が少しずつわかってきました。コミュニケーションスキルは向上したものの、初対面は今でも緊張しますし、音や匂いに対する感覚過敏があるので、接客や工場作業は適職と思えませんでした。しかし、往復3時間の通所をやり抜いた継続力や几帳面さ、好奇心は自分の強みです。「長所を活かしながら裏方ではたらきたい」と考えるようになりました。

配慮事項を整理する際は、「何もかも企業にお願いするのではなく、自分で頑張れるところもアピールしましょう」という支援員のアドバイスを参考にしました。私は腹痛を起こしやすいので、トイレの回数に対する合理的配慮が望まれます。しかし、主治医に胃腸薬を処方してもらうなど、自分でも体調管理に努めようと考えました。また、「選考は企業に見定めてもらうのではなく、自分をアピールする場」という講座の教えを肝に銘じて、就職活動に臨みました。

丁寧に作業を続けた日々が、はたらく自信につながった

初めての企業実習は、医療機関内での調理補助でした。作業の丁寧さを評価していただいたものの、すみやかな対応が求められる職場だったため、周囲のスピードに追いつけないことがありました。次こそはと挑んだのが、セカンドストリートの企業実習でした。

ゲオビジネスサポートの求人は、障害者雇用の説明会に参加された支援員から紹介してもらいました。ゲオビジネスサポートは、ゲオグループの特例子会社です。求人内容は、総合リユースショップ「セカンドストリート」におけるバックオフィス業務でした。ゲオグループは障害者雇用に真剣に取り組んでいる企業なので、障害に対する理解を得ながら長くはたらけそうだと感じました。

また、セカンドストリートは衣類や家電、楽器など幅広い商品を展開しているので、自分の好奇心を活かせるのではないかと考えました。企業実習に参加した際、「作業が丁寧」というフィードバックをいただいたときの喜びは言葉になりません。正直に言うと、実習前まで「自分がはたらくという事を実感しづらい」という気持ちが心の片隅にありましたが、実習を通じてはたらく自信が湧いてきました。

社会に出て、自由とともに責任を実感

職場で感じる苦労とやりがい

無事、採用していただき、現在はセカンドストリートで店舗の清掃やユーズド商品のメンテナンス、撮影などを担当しています。撮影の際は、お客様に「買いたい」と思っていただけるよう見映えにこだわりながら、傷の有無や使用感などの状態もきちんと伝えられるよう心がけています。お客様が気持ちよく使えるようメンテナンスした商品が売れたときは、やりがいを感じる瞬間です。

社会に出てから、「価値観の違い」を感じる場面が増えました。そのようなときは、ミラトレで学んだ「自分を苦しめない考え方」を思い出して、メンタルの安定を図っています。苦労もありますが、制服を着て店内に立つと「店舗の一員だ」という意識をもてるようになりました。

周囲からエネルギーをもらって、自分の殻を破りたい

仕事だけでなく私生活でも、社会人としての自覚が芽生えるようになりました。特に、お給料を自分で管理し、計画的に買い物をしたり、税金を収めたりするようになってから、自由とともに重い責任を感じます。しかし、生活管理を自分でできるようになることがこんなに誇らしいだなんて、思いも寄りませんでした。

現在は当初の希望通り裏方のお仕事をさせていただいていますが、ほかのスタッフに接客を任せきりにしてしまって、申し訳なく感じることがあります。楽しくエネルギッシュにはたらいている先輩や同僚を見習いながら、いずれは接客もできるようになることが今の目標です。

これからミラトレを利用する人に向けて

以前は、「こんな自分でもはたらけるだろうか」と不安になることもありましたが、ミラトレで学んだおかげで社会人になれました。ミラトレでは、自分に自信をもてず立ち止まっている方も、一歩を踏み出せる力と知識をもらえると思います。「自分がどのようなことに喜びを感じるのか」を自己分析してみると、やりがいを見つけるヒントを得られますよ。

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ミラトレの確かな実績 ミラトレの確かな実績

企業担当者コメント

継続力と好奇心を活かし、長く活躍していただきたい

  • 株式会社セカンドストリート
  • セカンドストリート恵那店 店長 生嶋凌大様
    (2025年7月現在)

「セカンドストリート」は、衣料品から服飾・キッズ・生活雑貨など生活に関わるあらゆる商品を取り扱う総合店や、衣料服飾に特化した専門店などを展開しています。そのほか、アウトドア専門の「セカストアウトドア」や家具・家電・生活雑貨専門の「セカストインテリア」など、店舗の形態は多岐にわたります。リユース商品へのニーズにお応えするため、「使わなくなったけれど、捨てるのはもったいない」という品物を一点から査定して買い取っています。2025年7月現在、店舗数は全国約900店舗で、海外も含めると1,000店舗を達成しました。

セカンドストリートでは、障害のある方に活躍できる場を提供し、お客様の「豊かで楽しい日常の暮らし」に貢献できるよう取り組んできました。清掃業務や商品加工、メンテナンスなど、さまざまな業務がありますが、一人ひとりの希望や特性に合わせて業務の幅を広げられるよう支援しています。

セカンドストリートの仕事は、立ち仕事を続けられる体力と、孤立しないためのコミュニケーションスキルが必要です。その点、Yさんはほとんど無遅刻・無欠席でミラトレに通所した実績がありますし、企業実習でも報告・連絡・相談を実践できていました。

入社後、「カウンター内の仕事も覚えたい」と自ら申し出てくれたことが印象に残っています。率先して業務の幅を広げていただけると、一人ひとりのペースに合ったキャリアアップを実現できるので、自己発信は大歓迎です。Yさんは接客業務にも前向きなので、接客補助からスタートして徐々に慣れていただければ、積極的な接客につながっていくのではないでしょうか。今後に期待しています。

※所属・役職ほか記事の内容は取材当時のものです

就労移行支援事業所
ミラトレ金山
所在地 :
愛知県名古屋市中区金山1-9-19 ミズノビル 7階
営業時間:
8:45 – 17:45
電話番号:
052-684-9590