障がいがあるからと仕事の幅を狭めるのではなく、キャリアアップを目指したい
ミラトレ三鷹
I.Aさん
双極性障害
- 通所期間
- 1年1カ月
- 就職先企業
- SOMPOチャレンジド株式会社
就職までの道のり
- 利用開始
- 最初の半年は週2日利用
- 6カ月目~
- 1カ月ごとに1日ずつ利用日数を増やす
- 8カ月目~
- 就職活動をスタート
- 1年1カ月後
- 就職内定!ミラトレ卒業
ミラトレと出会い、再就職への不安を自信に変えられた
前職での業務過多により、体調を崩してしまう
前職は、小売業の店舗にて販売業務を行っていました。体調を崩すきっかけになったのは、退職する上司の業務を引き継ぐことになり、自分の業務との両立で業務過多になってしまったことです。プライベートでも子どもの受験や団地の役員が重なって睡眠時間が少ない状態だったのも、追い打ちをかけてしまったと思います。動けなくなったり、泣き崩れてしまったりなどの症状を心配した家族が受診を勧めてくれ、障がいがわかりました。気分の浮き沈みによって考え方や業務の許容量が違ってくることに、働きづらさを感じていましたが、家族からの指摘がなければ、自分の状態を自覚するのは難しかったかもしれません。
診断後は、部署を異動して様子を見ながら勤務を続けていましたが、仕事で手を抜けない性格や職場の忙しさに波があることで、体調を安定させるのが難しい状況でした。職場から休職を勧められましたが、家族で相談し、治療に専念するために、約12年間勤めた会社を退職しました。
再就職への自信をつけるため、「擬似就労」があるミラトレを選択
退職後はハローワークに通い、「MOS Master 2016」の資格を取得。体調管理には気をつけているつもりでしたが、頑張りすぎてしまったことで再び体調を崩し、ドクターストップがかかりました。約1年間の休養が必要となりましたが、仕事から遠ざかってしまったことで不安が大きくなり、うつの症状が悪化してしまったのです。再就職への強い不安を落ち着かせるために、職業訓練が受けられる施設を調べる中でミラトレを知りました。ミラトレを通じて就労移行支援を知り、安心感につながったのを覚えています。
説明会と3日間の体験利用を経て、ミラトレ利用を決めました。他の事業所と比べて魅力を感じたのが、「擬似就労」と「プレゼン大会」です。擬似就労ではチームでの広報誌づくりを体験し、再就職への自信になると実感。プレゼン大会では、発表者の方が活き活きと自分の考えを語っている姿や、それを見守る周囲の温かい雰囲気に好印象を持ちました。自分のやりたいこととマッチしたのが大きな決め手です。
就労移行支援員の親身なサポートで多くの気づきを得られた
体調を安定させてから就職活動をスタート
ミラトレの通所期間は1年1カ月間です。最初の半年は週2日利用から開始し、その後は支援員と相談しながら1カ月ごとに1日ずつ利用頻度を増やしていきました。すぐにでも就職したいと考えていましたが、支援員から「今後長く働き続けるためにも無理をしないこと」とのアドバイスをいただき、体調を安定させることに注力できました。
利用開始から8カ月が過ぎた頃に医師からの許可もでて、就職活動をスタート。私は働くことが好きですし、働いて家族を支えたいとの気持ちが先走っていたのだと思います。再就職へのはやる気持ちを抑えて、十分に体調を安定させてから就職活動を始めてよかったと実感しています。
安定して長くはたらくための土台である健康管理や生活管理をサポートするプログラムをご用意しています。
ミラトレの健康管理・日常生活管理
支援員との面談で気づけた「自分の考えを言語化すること」の大切さ
支援員の方には大変親身になってサポートしていただきました。私は頭の中でいろいろな考えが浮かんでまとまらないことが多かったのですが、メモを使って考えを整理できるようになりました。メモを取るようになったのは、面談をしてくれた支援員の方の影響です。私が話すことを書き出し、細かいところまで整理してくれました。家族や友人に話すのとは違い、私の考えを尊重し、私のやりたい方向に導いてくれるようでした。面談の後は頭がスッキリと整理され、自分の考えを言語化することの大切さを実感。今も続けている習慣の一つです。
企業が実施する模擬実習の「1日体験」に参加し、仕事のやりがいを実感
就職活動を通して自己理解が深まり、自分の軸を見つけられた
就職活動で苦労したのは、自分の軸を探すことです。障がい特性により、体調の変化が考え方にも影響してしまうため、まずは体調を安定させることに注力しました。体調管理に役立ったのが、日報をもとにした振り返りです。支援員に気分の浮き沈みを指摘してもらったり、体調によって変化していた考えを深掘りしてもらったりすることで、自身の状態を分析できるようになりました。また、体調を安定させるためには睡眠時間が重要だとアドバイスをいただき、アプリを活用した睡眠時間の管理も継続しています。
日報とアプリを併用して体調管理がしやすくなったことで、自分の軸となる「障がいがあっても、やりがいを持って働きたい」との思いを見つけられました。障がい者だから仕事の幅を狭めるのではなく、キャリアアップを目指したいとの思いが強かったように記憶しています。さらに、キャリアアップについて考えたことを言語化して生まれた目標が、学生時代に目指した金融業界にもう一度チャレンジすること。体調の安定によって、本当の願いにも気づくことができました。
志望業界の企業が実施する模擬実習にやる気満々で臨んだ
SOMPOチャレンジド株式会社との出会いは、支援員の方からの紹介です。志望業界の企業が実施する模擬実習の「1日体験」に参加できるとのことで、当日はやる気満々で臨みました。実は、大学のゼミや卒業論文で損害保険を取り扱っていたので、ご縁も感じていたのです。実際に参加してみて、「障がいがあってもこのような仕事を任せてもらえるのか」という驚きとともに、大きなやりがいを感じました。
「1日体験」の半年後、選考を兼ねた企業実習の機会をいただきました。企業実習はより実務に近い内容で仕事の楽しさを感じるとともに、和やかな雰囲気の職場にも惹かれて、この会社で働きたいとの意欲は高まる一方でした。
企業実習後の最終面接では、面接官4名を前に圧倒されましたが、中には企業実習でお世話になった方もいたので、思いのたけをすべて出し切ろうと決意。支援員も同行してくださったので、安心して普段通り落ち着いて会話ができ、後悔なく面接を終えることができました。
イレギュラーにも対応できるよう、業務の理解を深めていきたい
一人ひとりのよい部分を活かせるチームにしたい
入社後は事務サポートチームに配属されました。自賠責課の事務補助として、書類の仕分けや収納、封入作業などを担当しています。ミスがないように正確・丁寧な対応を心がけるとともに、生産性の向上も意識しています。チームで業務を進めるため、自分ひとりで突っ走ってしまわないように、周囲の状況を見ながら自分の意見も言えるように留意しています。同僚の皆さんは親切な方ばかりなので、関係性も大切に育んでいきたいです。
今後の目標は、体調を安定させて長く勤めること
入社してもうすぐ1年になります。まずは体調を安定させて、長く勤めることが目標です。アプリで睡眠時間や気分の変化を管理して、余裕があれば一日の出来事も記録しています。約1年間、体調管理を続けてこられたことも、自信の一つになっています。安定的な長期就労とともに、今後はイレギュラーな業務にも対応できるよう、業務の理解を深めていきたいです。日々の業務では、チームリーダーの対応を見て学び、わからないことがあれば質問し、自分のものにできるように心がけています。
支援員や一緒に学ぶ仲間の存在が励みに
ミラトレでは支援員の皆さんが専門家の立場からアドバイスやサポートをしてくれるので、安心して利用してほしいです。「就職したいけど、どうすればよいかわからない」などさまざまな悩みに対して、親身になって相談にのってくれる人がいるのは、大きな支えになります。また、ミラトレでは就職という同じ目標を持った仲間との出会いも励みになりました。就職してミラトレを卒業した後も、土曜開所で会うと食事に行ったり、お互いの趣味の話をしたりと交流が続いています。
※企業の表記ルールに合わせ、「障がい」「働く」と記載しております。
※所属・役職ほか記事の内容は取材当時のものです
企業担当者コメント
さらにリーダーシップを発揮し、メンバーによるチームの自主運営を牽引していってほしい
SOMPOチャレンジド株式会社は、SOMPOホールディングスの特例子会社として2018年4月に設立し、今年の4月で5周年を迎えました。現在は、本社のある西東京市のほか、新宿、日本橋、池袋に拠点を構えています。主な業務は、損害保険の事務サポート業務やメールセンター業務、シュレッダー業務、印刷業務などです。メンバー※それぞれが強みを活かして、働く喜びを持って活躍しています。設立当初9名だったメンバーは2023年7月には125名に。今後も増員していくとともに、受託する業務範囲をさらに拡大し、社会全体における障がい者の活躍支援にも貢献したいと考えております。
※障がいのある社員を「メンバー」と呼んでいます。
その一環として定期的に実施しているのが、就労体験の場を提供する「半日体験」や「1日体験」です。Iさんも「1日体験」に参加され、当社の業務の一部を模擬実習として体験されました。実習に取り組む姿から「素直さ」や「積極性」が見受けられ、当社にマッチする方との印象を持ちました。その後の選考を兼ねた企業実習では、現場のチームリーダーや先輩社員が指導しますが、Iさんについては現場からの評価も高く、一緒に働きたいとの声も聞かれました。面接では、しっかり自己発信ができること、社会人としての礼儀やマナーが身についていることなどが評価したポイントです。
入社後は、素早く業務を習得し、チーム業務の安定運営に貢献するとともに、他チーム業務の応援でも成果を上げています。入社1年未満でありながら、全体を把握してメンバーそれぞれに気を配りながら仕事を遂行でき、将来的にはチームリーダーとしての活躍も期待しています。今後はさらにリーダーシップを発揮し、メンバーによるチームの自主運営を牽引していってほしいです。そのためにも、頑張りすぎたり無理しすぎたりしないよう、会社は必要な配慮を行っていくので、Iさん自身でも体調管理に努めてほしいです。ミラトレとも連携しながら、Iさんが自立して、長く働き続けられるように支援していきます。