自身の障害に向き合う日々を、就職活動の自信に
ミラトレさいたま
佐藤桂輔さん
反復性うつ病性障害
- 通所期間
- 6カ月
- 就職先企業
- ポラスシェアード株式会社
就職までの道のり
- 利用開始
- 利用当初から週5日通所
- 3カ月間
- 自身の障害に向き合い、健康管理の重要性を認識
- 4カ月目
- 就職活動をスタート
- 6カ月後
- 就職内定!ミラトレ卒業
突然倒れるまで、無理をしていることに気づかなかった
転職よりも先に身体が限界に
現在の職場は、埼玉県の越谷市に本社を置く大手ハウスメーカー、ポラスグループの特例子会社「ポラスシェアード株式会社」です。ビジネスサポート課ビジネス3係に所属し、主な業務として4,000名超のグループ人材基盤を支える事務サポートを担当しています。
前職は、新卒採用で入社した企業でシステムエンジニアとしてはたらいていました。過酷な職場環境に危機感を抱き、本気で転職を考えていましたが、入社から6年が経ったころ、転職よりも先に身体が限界に。倒れてはじめて「自分は無理をしていた」と理解しました。思い返すと、頭痛や手足のしびれ、もの忘れ、判断力の低下など、不調を感じていたにも関わらず、自分ではそれを検知できない状態になっていました。無理をすることが常態化していたのだと思います。
医師から反復性うつ病との診断を受け、8カ月間休職しました。復職するにあたって部署替えなども考慮されましたが、発症後は以前の自分とはまったく違う自分になっていると感じ、ここで一旦区切りをつけようと決意。復職から1年後に退職しました。
「はたらき続ける体力がある」と証明するために、就労移行支援を選択
退職後は、家庭の事情もあり、早く再就職したいと考えていました。ミラトレを利用する前から就職活動を始めていましたが、採用には至りませんでした。当時利用していた転職エージェントから指摘されたのは、復職して1年で退職し、すぐに就職活動をしている状況がマイナスになっているということ。企業からすると、もし採用してもすぐに退職してしまうのではないかという印象を受けてしまうとのことでした。
就労移行支援事業所の存在を知ったのは、転職エージェントに相談しているときです。就労移行支援を利用することで「はたらき続ける体力がある」と証明できるとアドバイスを受け、まずは実績づくりから始めようと気持ちを切り替えることができました。
ミラトレでの学習や訓練が自身の障害や特性と向き合うきっかけに
体験利用などで接した支援員のやさしさに惹かれて入所を決意
就労移行支援事業所についてはインターネットで検索し、ミラトレを含めいくつかの事業所を比較しました。ミラトレを選んだ決め手は「就職率と定着率の総合的な実績の高さ」です。また、実際に「ミラトレさいたま」を見学し、体験利用した際に、支援員の方のやさしさに惹かれました。前職での人間関係がわりと殺伐としていたこともあり、ミラトレさいたまの雰囲気がとても新鮮で。利用しやすい事業所だと感じ、すぐに入所を決めました。
就職活動を見据えて意識したのは「通所率」。利用当初から週5日を目標に通所
ミラトレさいたまに通所していた期間は、2020年9月から2021年2月末の約6カ月間です。はじめの3カ月間は、「事業所に慣れること」「自身の障害や特性に向き合うこと」に取り組みました。今後、自身の障害と向き合いながらはたらいていくための準備期間を経て、4カ月目から就職活動を開始しました。
ミラトレを利用する以前の就職活動で一番苦労した点は、復職を経て退職した自分が「今は、はたらけます」と証明すること。口ではなんとでも言えますが、信じてもらうのは難しかったです。その経験もあり、ミラトレ利用中は就職活動を見据えて「通所率」を意識していました。
利用当初から週5日を目標に通所していましたが、自分の体調と真摯に向き合うには正直しんどい面もありました。ただ、早く社会復帰をして家族を支えたいとの思いが強く、多少は無理をしてでも頑張ろうという心持ちでいました。体調を崩さず週5日通所を続けられたのは、ミラトレで健康管理能力の向上を軸においた訓練ができたからだと思います。
価値観を180度変えた「職業準備性ピラミッド講座」
ミラトレの講座で印象に残っているのは「職業準備性ピラミッド講座」です。職業準備性ピラミッドとは、障害の有無に関わらずはたらく上で必要とされる基礎的な能力を表す概念のこと。はたらき続けるために備えなければならないスキルとして、ピラミッドの根底にあるのが「健康管理」です。講座を通して、これまで自分の健康をないがしろにしてきたことにあらためて気づきました。
「無理をしてでも仕事をする」という価値観を、180度変えるほどの学びだったと思います。現在は、自身の健康を意識するために、自分の体調をウォッチングするのが日課です。ちょっとした不調の兆候も見逃さず、報告や相談ができるようになりました。
やりがいのある仕事を任され、前向きな日々
最終面接でもありのままの自分を表現
就職活動では業種や職種にこだわらず、一般的に重視する年収や業務内容、通勤距離などの希望がかなう企業として、現在勤務している企業に出会えました。
最終面接時に人事部長から「エンジニアに戻る気はありますか?」と聞かれたときは、考えもしなかった質問に内心慌てたのを覚えています。「ある」と答えると落とされそうですし、「ない」と答えると白々しい。回答に迷いましたが、「まったく考えていなかったのでわかりません」と正直に答えました。結果的に入社できているということは、素直に答えてよかったのだと感じています。
業務自動化の開発を担い、改善策までデザインするのが楽しい
現在担当している主な業務は、パソコンのキッティング作業やグループ内の配送業務、各種季節業務のヘルプ、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)による業務自動化の開発です。電子申請表を確認しながらチームの3人で業務を分担しています。一人で担う業務も多いです。
弊社は特例子会社とはいえ、業務の種類は多岐に渡り、業務ごとに勘どころや取引先が異なります。さまざまな業務に携わりながら、課題に対する改善策をデザインしていくことにやりがいを感じています。
自分らしくはたらき、これからも会社の役に立ちたい
頑張りすぎてしまわないように、体調のウォッチングを継続中
現在は、月に1度、午後に半休をもらって通院しています。体調のウォッチングを続けており、自分でも不調につながるパターンがわかるようになってきました。頑張っている間は問題ないのですが、頑張りすぎた1〜2週間後に急に不調をきたします。体調が悪くなりそうなときは無理をしないよう、コントロールできるようになりました。
ミラトレには、就職後の定着支援でもお世話になっており、3カ月に1度、3者面談の機会をいただいています。ミラトレさいたまが土曜日に開所しているときは、2カ月に1度くらいのペースで子どもを連れて顔を出しています。
目標はリーダーとして課を支える人材になること
5年後にはリーダークラスの人材となり、課を支える存在になることが目標です。そして、10年後には弊社のサービスで家を購入できるようになっていたいです。実は、この目標は履歴書に書いたものですが、より現実的なものとして考えられています。今は何をもってリーダークラスの人材といえるのかを探っている段階です。
具体的に取り組んでいるのは、手順書やトラブルシューティングの資料などを作成し、データ化して残すこと。自分以外のメンバーも活用できる資料を量産しています。また、システムエンジニアのキャリアを活かしながら、引き続き業務自動化の開発にも力を入れていきたいです。会社は私を拾ってくれた命の恩人のような存在なので、これからも会社の役に立ちたいと考えています。
ミラトレは、利用者一人ひとりの「目的」を大事にしてくれる就労移行支援事業所です。私のように「一刻も早く就職したい」という目的には、それに合わせたプランニングや就職情報を共有してくれます。「まずは通所しながら体調を整えたい」という人には、健康管理について支援してくれます。目的があれば目標も決まり、自分の行動にも自信がついてくると思います。うっすらでもいいので目的を定めながら利用してみてください。
※所属・役職ほか記事の内容は取材当時のものです
企業担当者コメント
リーダー的存在として、今後も活躍を期待
佐藤さんは、システムエンジニアとしての実績も含め、極めて優秀な人材です。面接では、自身の障害や将来について率直に語ってくれましたし、こちらからの質問に対する回答にも違和感がなく、誠実さを感じました。
佐藤さんにはリーダーとしての特性を感じています。以前、佐藤さんが「全国障害者技能競技大会(アビリンピック)」の全国大会に出場した際、大会の結果を受けてすぐに次年度の傾向と対策を出してくれました。瞬間的に次の行動を考えられる人だという点も強みだと感じています。
佐藤さんがリーダー的存在として活躍できるよう、タイミングを見極めながら担ってほしい役割や仕事をつくっていきたいと考えています。また、特例子会社の新しいカタチを一緒につくっていってくれる人材としても期待しています。