就職事例

公開日:2022/7/28更新日:2023/3/29
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現在地を知るところから、集団の一員として物事を捉えられるようになった

品質管理職/食品業界
知的障害の20代男性 Vさんの就職事例

知的障害の20代男性 Vさんの就職事例

20代/男性/知的障害

今回紹介するのは、知的障害の20代男性の就職事例です。コミュニケーション面などで課題のあったVさんが、企業に求められるスキルと自分の現在地を認識し就職するまでのストーリーと現在の様子を紹介します。

一般枠で公務員試験を受けるも、筆記試験が通らず断念

小学校低学年のとき、担任の先生からの指摘で受けた検査の結果、知的障害と診断されたVさん。サポートなしで行動できていたこともあり、高校まで普通学級に通います。

高校卒業後は、公務員を目指して専門学校へと進み、一般枠で公務員試験を受けたそうです。しかし、筆記試験が通らなかったことで家族から障害者雇用枠での就職を勧められ、就労移行支援事業所を探し始めることになったそうです。

障害者雇用枠での就職を目指して就労移行支援と出会う

最初の就労移行支援事業所に通所を始めた矢先に事業所の閉所が決まり、支援員の方が閉所後の行き先を探す中で、ミラトレと出会います。他にも複数の施設を見学されましたが、ミラトレのプログラムが気に入ったことと、支援員の家族のような心遣いや対応が決め手となり入所を決めていただきました。

実際にはたらくことをイメージし、週5日の安定通所が実現

持病もなく、体力に問題もなかったことから、週4日の通所からスタートしました。ミラトレ通所当時、はたらくことに対してぼんやりとしたイメージしかできず、家族からの勧めで通所している状態だったことが、週5日通所に踏み切れなった理由です。就職先は基本的に週5日の就労であることを伝え、面接時に週5日通えているか質問されるケースがあることや、就職後のためにもミラトレ利用期間に週5日の通所に慣れていた方が良いことを伝えると、素直に受け止めてくれました。Vさん自身の意識が変化したことで、週5日の安定通所が叶います。

ミラトレでは、メンタルケアやコミュニケーション、PCなど基本的な講座や疑似就労などのプログラムに参加してもらいました。就労経験がなかったため、TPOに合わせた敬語の使い方やビジネスマナーにも取り組んでもらいます。ミラトレを利用する上でのマナーや社会のルールを伝えることで、学校とは違った社会の一員として過ごし、物事に取り組む経験を重ねていきました。

プログラムに参加していく中で、自分の現在地を認識していく

通所当時のVさんには自身が障害者であるという認識があまりなく、一般雇用枠で就職できるだろうと考えていたようです。しかし、第三者からは就労するラインには至っていないという認識でした。時間管理や言葉遣い、態度などのビジネスマナー向上のため、社会人として見直してほしい言動や行動が見られたときは、支援員が都度声掛けをしていきます。

また、面談の頻度を上げて自身の現状を知ってもらうことと、就労するためのレベル感を伝えました。自分のことを客観的に見られず、未来のイメージを描きにくい特性に合わせて、「一般雇用で就職したとして、すぐに辞めてしまうとまた就職活動から始めることになる」「次の面接では辞めた理由を聞かれる」と具体的な例を挙げることで、自分事として捉えられるようにアプローチしていきます。

丁寧に繰り返してトレーニングを重ねるごとに自身の現在地に気付き、障害者雇用での就職のために改善すべきことや、新たに身に付けることを理解してくれました。

就労移行支援の残り期間を意識して就職活動を始める

週5日の通所が安定し、ミラトレ利用開始から10カ月が経過した時期に就職活動を開始します。Vさんは1社ずつ準備し、応募や結果待ちといった流れで就職活動を進めたい希望を持っていましたが、就労移行支援を受けられる期間は2年間しかありません。

前事業所に5カ月、ミラトレで10カ月通所していることも踏まえ、終了期間を考えると同時並行で2社、3社に応募していこうと伝えると、状況を理解してくれました。元々公務員系やPCを使う仕事を希望していましたが、長期的な就労を目指し、特性やできることを意識して作業系の仕事も候補に入れていきます。

支援員と二人三脚で応募書類の作成や面接の練習を行う

履歴書作成の際には、支援員がインタビュー形式で聞き取りして本人に記入してもらいました。面接練習では、ノックの仕方やドアの開け方、お辞儀の仕方などの基本から学びます。面接担当者が緊張を和らげようとしてフレンドリーな声掛けをしてくれることもありますが、面接を受ける側はビジネスマナーを意識することの大切さも伝えています。

言葉遣いが気になる時は「周りの人が聞いたらどう思う?」「初めて会った人が聞いたらどう感じる?」と伝え、本人に考えてもらうこともありました。ミラトレでの疑似就労で、やる気が感じられない態度や言動が課題となった時、「そのような態度では、グループで取り組んでいるのに一緒にやっていきたいと思えないよ」「〇〇という方向で話が進んでいるから、流れに沿った発言をしよう」など、状況に合わせて具体的な声掛けをしています。

そして、ミラトレ利用開始から1年2カ月が経ったころ、食品加工の企業に内定をいただきました。工場内で品質チェックや出荷などをする仕事です。同時期に、ミラトレ利用前から希望していた県職員にも応募し内定を獲得。しかし、県職員は期限が決まったチャレンジ雇用枠であることから、任期満了後に1人で就職活動をすることも考えてもらいました。
Vさんは長期的にはたらくことを第一に考え、納得した形で食品工場の企業に就職する意思を固めます。

信頼する上司のもとで、正社員登用を目指して取り組んでいる

コロナ禍で就職前の実習がない状態での入社となり、実際にはたらき始めてから課題が見えてきました。身だしなみや勤務態度に対して厳しい言葉をいただいたことがきかっけで、ミラトレ支援員が週1回面談を行うなど伴走しています。指摘されたことを忘れてしまうこともあるため、何度も注意を受けることもあるようですが、その都度素直に受け止められる性格や、仕事で使うラベルに書いた字の綺麗さなど、Vさんの良いところにも気付いてくれる方もいるようです。

就職から1年が経過した頃には、「自分が役に立っているのか」「今のはたらき方で良いのか?」と周りも含めた考え方ができるようなり、「はたらいたお金を家族のために使いたい」とも話しています。課題に対して愛情を持って声掛けをしてくれる上司のもとで、正社員を目指して自分らしくはたらいています。

※プライバシー保護のため、事実を元に文章を一部再構成しています。

執筆 : ミラトレノート編集部

パーソルダイバースが運営する就労移行支援事業ミラトレが運営しています。専門家の方にご協力いただきながら、就労移行支援について役立つ内容を発信しています。