基礎知識

公開日:2020/9/17更新日:2024/2/9
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就労移行支援事業所の選び方

就労移行支援事業所って何?利用を検討する際のメリットと8つの判断チェックポイントを紹介

就労移行支援事業所って何?利用を検討する際のメリットと8つの判断チェックポイントを紹介

就労移行支援事業所とは、どのような就労支援を受けられる場なのでしょうか。利用を検討する方の中には、何をする場所なのか、どういったことを身につけられるのか、知りたい方もいるでしょう。そこで今回は、「そもそも就労移行支援事業所とは、どのような福祉サービスなのか?」を軸に、就労移行支援事業所を利用するメリットや、企業の採用担当者が考える利用をおすすめする人の特徴などを紹介します。

就労移行支援事業とは、国の法律で定められた福祉サービス

就労移行支援事業は、障害のある方の社会参加をサポートするために運営されている通所型の福祉サービスです。

一般企業への就職を目指す障害がある方や難病がある方に対し、就職に向けた準備から就職活動、就職後の定着支援まで、さまざまなサポートをしています。

実際に就職のサポートを行っている「就労移行支援事業所」は、全国に約3,300カ所あります。就労移行支援の対象と利用期間は次の通りです。


参考:「障害者総合支援法における就労系障害福祉サービス
  • 対象者
    ・精神障害/発達障害/知的障害/身体障害/難病(障害者総合支援法の対象疾病)のある人
    ・18歳以上65歳未満の人
    ・一般企業への就職を希望する人
  • 利用期間
    ・原則、最長24カ月(2年)
    ・事業所によっては、就職後も最大3年6カ月まで「就労定着支援」でサポート

障害者総合支援法とは何か?

障害者総合支援法とは何か?
就労移行支援は「障害者総合支援法」(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律)に基づく障害福祉サービスの一つです。

障害者総合支援法の目的は、障害のある方が地域社会で個人としての尊厳にふさわしい日常生活または社会生活を営むことができるよう、総合的に支援を行うことです。2006年から施行されていた「障害者自立支援法」を改正する形で、2014年4月に施行されました。

障害者総合支援法により、地域の障害福祉サービスの整備が進んだほか、「障害支援区分」(障害の多様な特性や状態に応じて必要とされる支援の度合いを示すもの)が創設されるなど、個々のニーズに応じた福祉サービスを受けられるようになりました。

サービス利用料は多くの方が無料

就労移行支援事業所は、国からの補助を受け、障害のある方や難病の方の就職・復職(リワーク)を支援するサービスです。就労移行支援などの障害者総合支援法による各種サービスは、利用料の総額の1割を上限として、世帯の所得に応じて月ごとの負担上限額が設けられています。

参考として、パーソルダイバースが運営する就労移行支援「ミラトレ」では、9割以上の方が自己負担なしで利用されています。ただし、前年に就業しており収入があった場合や、一定の世帯収入を超える場合には、所得に応じて自己負担が発生することもあります。

就労移行支援と「就労継続支援」の違い

就労移行支援と似た言葉に、「就労継続支援」というサービスがあります。同じ就労系の福祉サービスであるものの、2つには支援の対象者や期間に違いがあります。

「就労移行支援」では、訓練を受けて2年以内に一般企業への就職を目指します。対して、「就労継続支援」は利用期間の制限がなく、現時点で一般企業への就職が難しい方が対象です。就労継続支援はさらにA型とB型に分かれ、「雇用契約の有無」や「年齢・体力」によって選択する型が変わります。
就労移行支援 就労継続支援A型 就労継続支援B型
目的 就職するために必要なスキルを身につける 就労の機会の提供および生産活動の機会の提供 就労の機会の提供および生産活動の機会の提供
対象者 障害のある方、難病のある方で、一般企業へ就職することを希望する方 一般企業での就労は難しいが、雇用契約を結んではたらくことが可能な方 一般企業での就労が難しく、かつ、雇用契約を結んではたらくことが難しい方
雇用契約 なし あり なし
賃金 基本なし
(一部では場合によりあり)
給与が発生 工賃が発生
年齢制限 18歳以上65歳未満 18歳以上65歳未満 18歳以上(条件により15歳以上も利用可)
利用期間 原則2年間以内 定めなし 定めなし

就労移行支援と「ハローワーク」の違い

「ハローワーク」との違いが気になる人もいるでしょう。両方とも職業訓練や職業紹介を行う施設であるものの、2つには大きな違いがあります。

「ハローワーク」とは、すぐに就職を考える人を対象に、就業紹介や求職活動の支援を行う機関です。前段階として、就業に関する知識やスキルを習得できるよう、職業訓練を受けることも可能です。自分の力で定期的に通ったり、申し込みなどを行ったりする必要があるため、通うには自己管理が必要といえます。

対して、「就労移行支援」は、職業訓練の前段階である「生活リズムを整えること」や「集中力を習得すること」、「適性や課題を見つけること」といった就労準備性を整える訓練を受けられます。就労移行支援による総合的な支援を通し、就労の準備が整ったら、ハローワークの協力を得ながら職業を探すといった方法が一般的です。


関連記事:「就労移行支援と就労継続支援の違い

就労移行支援事業所を利用するメリットは?

就労移行支援事業所を利用すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。3つにわけてご紹介します。

職務スキルや労働習慣を身につけることができる

就労移行支援事業所では、基本的なビジネスマナーやスキルを習得するための講座やワークなどのプログラムを実施しています。そのため、一般企業ではたらくために必要な労働習慣を身につけることができるでしょう。

また、事業所によっては特定分野に特化したプログラムを用意している場所もあるため、希望する企業や職種が明確な方は、訓練を通してそれらのスキルを補完・習得できます。企業が求めるスキルを身につけられる就労移行支援事業所を選べば、就職にも繋がりやすくなるでしょう。

はたらき続けるための自己管理ができるようになる

長くはたらき続けるためには、日常生活の管理や健康維持が欠かせません。就労移行支援事業所では健康管理や生活リズムを整えるためのアドバイスも行っているので、一般就労に向けた準備を徐々に進めることができます。

また、はたらく上では自分の変化にいち早く気づき、障害特性をコントロールするスキルも必要です。就労移行支援事業所では、自己管理やセルフコントロールの訓練を実施しているところもあります。自分の特性を深く理解し、対処方法を実践できるのは、就労移行支援事業所を利用する大きなメリットといえるでしょう。

コミュニケーションスキルを身につけることができる

職場では、はたらく人たちとのコミュニケーションが重要です。受け身にならず、主体的に行動する姿勢が求められます。就労移行支援事業所ではコミュニケーションスキルを身につける、あるいは向上させるためのグループワークをプログラムに取り入れている施設も多くあります。

コミュニケーションスキルは、相手がいないと訓練できません。そのため、グループでトレーニングを受けることができる就労移行支援事業所の利用は有効であると考えられます。

採用担当者の話から考える「こんな人は就労移行支援事業所の利用がおすすめ」

就労移行支援事業所を利用した方が良いのはどのような人なのでしょうか。障害者の採用業務に携わっている、パーソルダイバースの採用担当者の話をもとに、採用する企業側の観点から考えてみましょう。

自分と深く向き合い、自身で解決する力を身につけたい方

パーソルダイバースの採用では、「自分の障害をきちんと把握し肯定的に捉えられているか」「障害受容がきちんとできているか」を最も重視しているそうです。まずは、自分自身の得意・不得意を認識し、その上で、不得意なことに直面したときやストレスが発生しそうなときの対処法を見つけましょう。問題やストレスに対して自分でどう解決できるかを知っている人は、就職後にも活躍しているのが実情です。

また、「自ら発信できること」もはたらき続ける上で重視されています。自分一人で解決することが難しい状況に陥った際に、一人で抱え込まず、職場の同僚や上司、必要に応じて支援機関などに相談できるとよいでしょう。

就労移行支援事業所を利用することで、自分の特性や個性と向き合い、課題に対して自ら乗り越えられる方法を習得できるとよいのではないでしょうか。

企業の採用ニーズを把握し、情報や就職実績が高い事業所で訓練したい人

採用担当者の話では、企業側は様々な事業所と連携を取り、自社の採用要件や採用したい人材像を事業所に伝えているそうです。

そのような企業側のニーズを理解し、日々の訓練や就職活動の支援に活かしている事業所は就職実績やマッチング精度が高い傾向にあります。従って、自分の目指す業界や職種が明確な人は、企業とよく連携していて情報を豊富に持っている事業所や就職実績の高い事業所を選ぶと良いでしょう。

また、目指す業界や企業が明確な人は、自分に不足しているスキルや課題を一緒に考えてプログラムを実施できる就労移行支援所であれば、就職に繋がりやすくなるでしょう。

就労移行支援事業所を利用した方がよいかを知るための8つのチェックポイント

就労移行支援事業所は、就労に向けてのさまざま訓練や準備を行い、就職に繋げるサポートを行っています。以下に、就労にむけて準備するポイントをチェックリストにまとめました。
この中で「できていないこと」が3つ以上ある人は、就労移行支援事業所を利用し、就職するために必要な準備をすることをおすすめします。
  • チェックリスト

    (1)体力面:週30時間以上の労働に向けて、体力づくりと生活リズムを心がけ日々実践している

    (2)自己コントロール:適度な休憩を取り、集中して勤務ができる。オンとオフのバランスの取り方を心得、実施している。

    (3)精神安定:通院回数や薬の量などが安定している

    (4)フォロー体制:サポートしてくれる人(医師・家族・支援機関)がいる

    (5)自己理解:自分の発症時の状況や症状、主体的な対策方法を話せる

    (6)ストレッサー:苦手な人やストレッサーと、主体的な対処方法を話せる

    (7)素直さ:業務指示や指摘に対して素直に聞く姿勢や、オープンマインドな姿勢を持てている

    (8)向上心:仕事に対して前向きに挑戦する姿勢、貪欲に学ぼうとする意欲を持っている

就労移行支援事業サービスを利用するには?

先述したように、就労移行支援事業所は約3,300カ所あります。サービスを利用するには、見学や体験を通して実際に通うイメージを掴むことが大切です。「就職後も定期的な面談がある事業所を選びたい」「専門資格を持つ支援員のもとでトレーニングを受けたい」など、自分が通いたいと思う優先順位を決めておくと探しやすいかもしれません。

就労支援事業所に通うための優先順位が決まったら、実際に通える範囲にあるか、以下のような方法で探してみましょう。

市区町村に相談する

市区町村には、障害や難病のある方に対して、国や市町村と連携して日常生活や社会生活をサポートする「障害福祉課」が設けられています。この障害福祉課は、手帳や支援費制度の受付、訪問などを行うだけでなく、就職に関する相談も可能です。

「自分の住む市区町村や通える範囲に、どのような就労移行支援事業所があるのか」「それぞれの就労移行支援事業所の特徴は何か」などを尋ねてみると、希望に合った事業所の紹介を受けられるでしょう。

専門機関に相談する

障害や難病で通院している場合は、主治医やケースワーカーなどの通院先に相談する方法もあります。また、障害者就業・生活支援センターや、就労支援センター、相談支援事業所、ハローワークのように、専門的な知識をもつ就業紹介事業所に相談することもおすすめです。自分が目指す業種や職種が明確な場合は、具体的に伝えることで、より理想に合った就労移行支援事業所が選べるでしょう。

検索サイトで調べる

インターネットで検索するのも、自分にマッチした就労移行支援事業所を見つける方法の一つです。検索する際は、「就労移行支援事業所 ○○市」と住んでいる地域を入れたり、「就労移行支援事業所 パソコンスキル」など自分が得意とすることや身につけたいことなどと合わせたりすると、よりマッチしたものが見つかりやすいでしょう。

また、就労移行支援事業所を検索できるサイトや、地域ごとに一覧で紹介しているサイトもあります。パーソルダイバースでも、現在首都圏を中心に就労移行支援事業所を運営しています。気になる方はお気軽にお問い合わせください。

> 就労移行支援事業所のご案内

就職準備に就労移行支援事業所の利用を検討しよう

障害者総合支援法が定める福祉サービスである就労移行支援事業を利用することで、一般就労のための職務スキルやコミュニケーションスキルの習得、生活リズムの改善といったメリットを得ることができます。また、事業所の利用で企業が求めるスキルについて知れれば、より雇用に繋がりやすい就活を行えるでしょう。

今回の記事でご紹介したチェックリストを活用し、就労に必要な準備ができているかどうかを把握した上で、事業所の利用を検討してみてください。

執筆 : ミラトレノート編集部

パーソルダイバースが運営する就労移行支援事業ミラトレが運営しています。専門家の方にご協力いただきながら、就労移行支援について役立つ内容を発信しています。