適応障害の方が、就職し長くはたらき続けるためには、どのような工夫が必要なのでしょうか。産業医科大学教授、江口尚先生の解説のもと、適応障害の基礎知識や、仕事選びのポイント、長くはたらき続けるためのコツを紹介します。
目次
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1.適応障害について
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1-1.適応障害の主な症状
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1-2.適応障害の発症要因
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1-3.適応障害の主な治療方法
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2.生活するために活用したいサポート
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3.周りの人が理解するべきこと
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3-1.家族ができるサポートについて教えてください
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3-2.適応障害の方への接し方で、注意すべき点はありますか?
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3-3.適応障害の方の就職に向けて、家族はどうサポートしたらよいでしょう?
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4.仕事選びのポイント
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4-1.適応障害の方はどのようなステップを踏んで就職を目指したらよいでしょうか?
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4-2.適応障害の方に向いている仕事や、注意が必要な仕事はありますか?
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5.はたらき方の形、仕事を続けるコツなどを解説
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5-1.適応障害の方が、長くはたらき続けるために必要なことは何でしょうか?
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5-2.どのようなはたらき方をすれば、長期就労につながりますか?
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6.まとめ
適応障害について
適応障害は、ストレスが原因で短期間の不適応反応が起こるストレス障害の一つです。どのようなきっかけで、どのような症状があらわれるのか、主な治療方法とともに解説します。
適応障害の主な症状
適応障害では、気分の落ち込みや意欲低下などの精神症状と、頭痛、腹痛、食欲不振、不眠などの身体症状がみられます。症状が進むと、職場や学校への外出が困難となり、うつ病を発症する可能性が高くなります。適応障害は、うつ病になる前の段階と言い換えることができるでしょう。
適応障害の症状は、ストレスを感じてから3カ月以内に発症し、ストレス因子の消失後6カ月以内に改善するとされています。適応障害はストレスの原因が取り除かれれば改善するのに対して、うつ病は原因が取り除かれてもなかなか改善しないのが一番の違いです。
また、適応障害の場合、ストレス源から離れた場面では元気に過ごせる一方、うつ病の場合はストレス源のあるなしに関わらず、気分の落ち込みなどの症状があらわれるといった違いもあります。
適応障害の症状は、ストレスを感じてから3カ月以内に発症し、ストレス因子の消失後6カ月以内に改善するとされています。適応障害はストレスの原因が取り除かれれば改善するのに対して、うつ病は原因が取り除かれてもなかなか改善しないのが一番の違いです。
また、適応障害の場合、ストレス源から離れた場面では元気に過ごせる一方、うつ病の場合はストレス源のあるなしに関わらず、気分の落ち込みなどの症状があらわれるといった違いもあります。
適応障害の発症要因
適応障害は、ある対象(人間関係や仕事の内容など)に対してストレスを感じ、心に大きな負担がかかることで発症します。
ストレス要因は、職場の部署異動に伴う強い不安や人間関係によるストレス、親しい人との死別など、人によりさまざまです。
ストレスとは、嫌なことや辛いことだけを指すのではなく、進学、就職、結婚、出産、引っ越しなど、一般的に祝い事といわれるような出来事も含みます。一見すると喜ばしい出来事も、生活上の変化が大きいと、ストレスとなることもあるのです。
ストレス要因は、職場の部署異動に伴う強い不安や人間関係によるストレス、親しい人との死別など、人によりさまざまです。
ストレスとは、嫌なことや辛いことだけを指すのではなく、進学、就職、結婚、出産、引っ越しなど、一般的に祝い事といわれるような出来事も含みます。一見すると喜ばしい出来事も、生活上の変化が大きいと、ストレスとなることもあるのです。
適応障害の主な治療方法
適応障害の場合、ストレス要因を取り除けば、元の状態に戻ることができます。そのため、まずはストレス因子を取り除きます。職場や学校にストレスの原因があるのであれば、休職・休学を選択することも大切です。
また、薬物療法により精神を安定させるという治療方法もあります。自身が偏った見方をしているという認知のゆがみを理解し、それを行動に起こしていく認知行動療法により、ストレス耐性(自分がもともと持っている気持ち面の耐性)を高めていくことも効果があります。
また、薬物療法により精神を安定させるという治療方法もあります。自身が偏った見方をしているという認知のゆがみを理解し、それを行動に起こしていく認知行動療法により、ストレス耐性(自分がもともと持っている気持ち面の耐性)を高めていくことも効果があります。
生活するために活用したいサポート
適応障害の方の生活を支えるためには、さまざまなサポートがあります。眠れない、食欲不振などの症状があらわれたら、まずは精神科や心療内科といった医療機関を受診しましょう。
適応障害と診断された場合、本人がストレスの原因を認知しているかを医師が確認します。ストレス要因がわかっていないと、回復に時間がかかる場合があるためです。ストレス要因から離れるために、休養や休職、休学し、精神的なエネルギーの回復を待ちましょう。
ある程度取り戻したら、自分自身の振り返りをすることが大切です。認知行動療法などで、ストレスを軽減するためのルーティン(習慣や日課)を作ることも有効でしょう。
職場の産業医や学校の精神科医、スクールカウンセラーなどにも相談できます。産業医を置いていない会社の場合は、都道府県に設置されている産業保健総合支援センター(さんぽセンター) が労働者のメンタルヘルスについての相談窓口となってくれることもあります。これらを上手に活用し、働きやすい職場環境を整えましょう。
適応障害と診断された場合、本人がストレスの原因を認知しているかを医師が確認します。ストレス要因がわかっていないと、回復に時間がかかる場合があるためです。ストレス要因から離れるために、休養や休職、休学し、精神的なエネルギーの回復を待ちましょう。
ある程度取り戻したら、自分自身の振り返りをすることが大切です。認知行動療法などで、ストレスを軽減するためのルーティン(習慣や日課)を作ることも有効でしょう。
職場の産業医や学校の精神科医、スクールカウンセラーなどにも相談できます。産業医を置いていない会社の場合は、都道府県に設置されている産業保健総合支援センター(さんぽセンター) が労働者のメンタルヘルスについての相談窓口となってくれることもあります。これらを上手に活用し、働きやすい職場環境を整えましょう。
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周りの人が理解するべきこと
適応障害の方を支える家族や周りの人は、どのような困りごとがあるのでしょうか。家族ができるサポートや職場の方に理解してほしいことについて、産業医科大学教授 江口尚先生に解説いただきます。
【監修者】
産業医科大学 産業生態科学研究所
産業精神保健学研究室 教授
江口 尚氏
【専門分野】
職場の心理社会的要因、治療と仕事の両立支援、障害者や中小企業の産業保健
家族ができるサポートについて教えてください
家族の方には、まず、見守る意識を持ってほしいです。無理に仕事や学校に行かせることはやめましょう。ストレスなく、穏やかに過ごせる環境を整えてあげることが大切です。また、身近にいる家族だからこそ気づける小さな変化もあるでしょう。
食欲不振や不眠、意欲の減退などに気づいたら、医療機関の受診を勧めてください。本人が嫌がらなければ、通院にも同行してほしいです。家での様子や心配なことを主治医に相談するとよいと思います。
食欲不振や不眠、意欲の減退などに気づいたら、医療機関の受診を勧めてください。本人が嫌がらなければ、通院にも同行してほしいです。家での様子や心配なことを主治医に相談するとよいと思います。
適応障害の方への接し方で、注意すべき点はありますか?
適応障害の方に限らずですが、腫れ物のように扱うのは避けた方がよいでしょう。本人のストレス要因を避けるために、家族や職場の同僚に理解を求める場面もあるかもしれません。
できる限りで対応し、難しい場合は妥協案を提示するなどしましょう。
周りの負担は増えるかもしれませんが、その不満を本人にぶつけてしまうと別のストレスになりかねません。本人に不満を伝えたり、伝えずとも本人がさっしたりすることのないように、気をつけていただきたいです。
できる限りで対応し、難しい場合は妥協案を提示するなどしましょう。
周りの負担は増えるかもしれませんが、その不満を本人にぶつけてしまうと別のストレスになりかねません。本人に不満を伝えたり、伝えずとも本人がさっしたりすることのないように、気をつけていただきたいです。
適応障害の方の就職に向けて、家族はどうサポートしたらよいでしょう?
症状が回復し、本人がはたらきたいと自然に思い始めたら、家族は生活リズムの改善をサポートしてください。日中の活動量が増えるようなサポートや、食事・睡眠のサポートが可能でしょう。決して焦らせる必要はありませんが、抑制もすることなくサポートできるとよいと思います。
そして、就職後も家族の声がけは有効です。本人の状況を一番近くで客観的に見守っているサポーターである家族から、頑張りすぎる本人に対し「休職前の状況に近いよ」などと伝えてあげるとよいでしょう。本人の良い状態も悪い状態も、両方知っている家族だからこそできるサポートといえます。
そして、就職後も家族の声がけは有効です。本人の状況を一番近くで客観的に見守っているサポーターである家族から、頑張りすぎる本人に対し「休職前の状況に近いよ」などと伝えてあげるとよいでしょう。本人の良い状態も悪い状態も、両方知っている家族だからこそできるサポートといえます。
仕事選びのポイント
適応障害の方が就職する際、仕事を選ぶときのポイントはあるのでしょうか。就職活動をする上で大切にすべきことなど、江口先生に解説いただきます。
適応障害の方はどのようなステップを踏んで就職を目指したらよいでしょうか?
休職からの復帰や再就職を目指す場合、まずは焦らずに自分の状況を確認しましょう。
主治医や家族に意見を求めてもよいと思います。客観的に見てはたらける状態となったら、通勤に合わせた生活習慣となるよう、日々の生活リズムを整えましょう。通勤が可能で、日中活動できる元気さがあるかが重要です。
また、適応障害を発症した際と同じような状況となったときの、対処方法を考えることもよいでしょう。周囲に相談する、リラックスするなど、さまざまな対処方法を自分で考え実践できる状態が理想です。
断り方や周りとのコミュニケーションなど、本人にトレーニングが必要なこともあるかもしれません。
トレーニングを実践するためにも、自分がしっかりと原因を認識しているかが大切です。
主治医や家族に意見を求めてもよいと思います。客観的に見てはたらける状態となったら、通勤に合わせた生活習慣となるよう、日々の生活リズムを整えましょう。通勤が可能で、日中活動できる元気さがあるかが重要です。
また、適応障害を発症した際と同じような状況となったときの、対処方法を考えることもよいでしょう。周囲に相談する、リラックスするなど、さまざまな対処方法を自分で考え実践できる状態が理想です。
断り方や周りとのコミュニケーションなど、本人にトレーニングが必要なこともあるかもしれません。
トレーニングを実践するためにも、自分がしっかりと原因を認識しているかが大切です。
適応障害の方に向いている仕事や、注意が必要な仕事はありますか?
障害発症以前に、個人の能力によって向いている仕事もあるかと思います。しかし、適応障害の方にとっては、「安心してはたらける」「楽しくはたらける」「自分に合っていると思える」職場であることが何より重要でしょう。給与や企業規模よりも、この3点を重視して仕事を選べればよいと思います。
そのためには、自分にとって何がストレスとなり得るかを、自分で説明できないといけません。また、対人関係を円滑にするためのトレーニングなどを積み、ソーシャルスキルを向上させることによって、忙しい職場に適応できる場合もあります。
そのためには、自分にとって何がストレスとなり得るかを、自分で説明できないといけません。また、対人関係を円滑にするためのトレーニングなどを積み、ソーシャルスキルを向上させることによって、忙しい職場に適応できる場合もあります。
はたらき方の形、仕事を続けるコツなどを解説
就職自体がゴールではありません。本当に重要なのは、就職後に長くはたらき続けることです。適応障害の方が仕事を続けるコツについて、江口先生に解説いただきます。
適応障害の方が、長くはたらき続けるために必要なことは何でしょうか?
適応障害は、完璧主義の方が比較的なりやすいといわれています。長くはたらき続けるためには、「自分は適応障害になりやすい」と認識することが大切です。
適応障害になりやすい方には、人一倍努力できるなどの強みもあるでしょう。頑張りすぎてしまうことでバランスが崩れ、適応障害となることもあります。
自分と向き合い、自分自身を知ることが重要です。すると、ストレスとなる原因を避けるようになったり、ストレスに気づきやすくなったりします。ストレスを感じやすい自分を知り、ストレスに対処できるようになることが、長くはたらくコツといえるでしょう。
適応障害になりやすい方には、人一倍努力できるなどの強みもあるでしょう。頑張りすぎてしまうことでバランスが崩れ、適応障害となることもあります。
自分と向き合い、自分自身を知ることが重要です。すると、ストレスとなる原因を避けるようになったり、ストレスに気づきやすくなったりします。ストレスを感じやすい自分を知り、ストレスに対処できるようになることが、長くはたらくコツといえるでしょう。
どのようなはたらき方をすれば、長期就労につながりますか?
自分に合った仕事や職場で、安心してはたらくことが長期就労につながるでしょう。個人の特性や性格を理解し、多様性を許容する職場が望ましいと考えます。
適応障害は長く続く障害ではありませんが、日頃のコミュニケーションの中で、自分の取り扱い説明書のようなものを伝える、自分を理解してもらうなどすることで、長期就労につながるでしょう。
また、再発しないためには認知行動療法が有効です。ストレスを感じる状況となった場合の対処方法を、多く持っていたほうがよいと考えます。誰かに相談する、助けを求めるなど、無理なく続けていける対処方法を見つけておきましょう。普段と様子が違う場合に指摘してもらえるような、信頼できる仲間が職場にいると安心です。
適応障害は長く続く障害ではありませんが、日頃のコミュニケーションの中で、自分の取り扱い説明書のようなものを伝える、自分を理解してもらうなどすることで、長期就労につながるでしょう。
また、再発しないためには認知行動療法が有効です。ストレスを感じる状況となった場合の対処方法を、多く持っていたほうがよいと考えます。誰かに相談する、助けを求めるなど、無理なく続けていける対処方法を見つけておきましょう。普段と様子が違う場合に指摘してもらえるような、信頼できる仲間が職場にいると安心です。
まとめ
適応障害の方が就職し、長くはたらくためのさまざまなコツを紹介しました。長くはたらくためには、自己理解や障害受容など、まずは自分を知ることが大切です。
独りではどうしたら良いかわからないときは、就労移行支援事業所などの外部サービスを利用し、サポートを受けることもよいでしょう。
独りではどうしたら良いかわからないときは、就労移行支援事業所などの外部サービスを利用し、サポートを受けることもよいでしょう。
執筆 : ミラトレノート編集部
パーソルダイバースが運営する就労移行支援事業ミラトレが運営しています。専門家の方にご協力いただきながら、就労移行支援について役立つ内容を発信しています。
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