基礎知識

公開日:2021/11/16更新日:2026/7/31
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就職ガイド –はたらく選択肢-

うつ病のある方に向いている仕事とは?仕事選びのポイントと長くはたらき続けるコツ

うつ病のある方に向いている仕事とは?仕事選びのポイントと長くはたらき続けるコツ

うつ病を抱えながら、仕事とどう向き合うべきか悩む方は少なくありません。「向いている仕事はどんな職種?」「逆に避けたほうがよい仕事はある?」といった疑問や不安を持つ場合もあるでしょう。
今回は、うつ病のある方に向いている仕事・向いていない仕事の特徴を整理した上で、産業医科大学教授である江口尚先生の解説のもと、仕事選びのポイントや無理せず長くはたらき続けるためのポイントを紹介します。

うつ病のある方が安心してはたらくためには、自分の特性や体調に合った仕事や職場環境を選ぶことが大切です。業務内容が明確で、無理のないペースではたらける環境はポイントの一つです。また、仕事内容だけでなく、職場の理解やサポート体制、勤務時間なども、無理なく長くはたらき続けるための大切な条件です。

  • この記事で分かること
    ●うつ病のある方に向いている仕事・向いていない仕事
    ●うつ病のある方が活用できるサポート・支援機関
    ●うつ病のある方の仕事選びと長くはたらき続けるためのポイント
    ●家族や周囲の人ができるサポートの方法

目次

うつ病による仕事への影響

うつ病は、気分の落ち込みや意欲の低下などが続く精神疾患の一つです。
うつ病の症状には、精神症状と身体症状の2種類があり、うつ病になると、仕事の場面でさまざまな不調や困りごとが生じやすくなります。
  • 仕事での困りごと
    ●集中力が続かず、業務でミスが増える
    ●判断力や決断力が低下し、作業が滞る
    ●朝起きられない、出社する気力が出ない
    ●疲れやすく、以前と同じ業務量をこなせない
    ●人と接することにストレスを感じやすくなる
これらの症状が2週間以上続くと、自力での回復が見込みにくいと判断されます。無理をして仕事を続けると症状が悪化するおそれがあるため、まずは休養を優先しましょう。必要に応じて心療内科や精神科を受診し、医師の判断のもとで休職などを検討することが重要です。

うつ病のある方に向いている仕事は?

うつ病のある方には、定型作業がメインの仕事、在宅勤務ができる仕事、短時間の勤務が可能、または自分でスケジュール調整ができる仕事などが向いています。
代表的な職種としては、以下が挙げられます。
職種 向いている理由
事務・データ入力 決められた手順に沿って進める定型業務が多い
軽作業 業務内容が明確で、自分のペースで進められる
Webライター・デザイナー 在宅勤務が可能で業務量を調整しやすく、人間関係のストレスを減らせる
専門職(研究職・開発職など) 自分のペースではたらける。ただし、自己管理能力が必要

上記は、うつ病のある方すべてに当てはまるわけではなく、あくまで一例です。適性は人によって異なるため、自分の特性や状況に合わせて検討することで、心身への負担を抑えながらはたらき続けやすい仕事を見つけられます。

うつ病のある方に向いていない仕事は?

以下の仕事は、うつ病のある方にとって負担が大きくなりやすい傾向があります。

※参考:労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト
  • 負担が大きくなりやすい仕事
    ●ノルマや成果主義が強い仕事:常にプレッシャーがかかり、精神的負担が大きい
    ●クレーム対応が多い仕事:不特定多数とのやり取りが多い
    ●夜勤やシフト制中心の仕事:生活リズムが崩れやすく、症状の悪化につながりやすい
    ●長時間労働が前提の仕事:休養の時間が確保しにくい
これらの仕事であっても、職場環境や配慮の内容によっては問題なくはたらける場合もあります。職種そのものよりも、本人にとってストレスの少ない環境かどうかを見極める姿勢が大切です。

うつ病のある方が活用できるサポート・支援機関

うつ病のある方が活用できる支援機関には、医療費、暮らしと社会生活、生活費、就労、そのほかさまざまな相談に関するサポートを受けられるものがあります。これらを上手に活用し、生活の基盤を整えていきましょう。
  • うつ病のある方が活用できる支援機関
    ●医療費のサポート
    ・自立支援医療(精神通院医療)
    精神科の治療のため、定期的・継続的に通院している場合、かかった医療費を補助してもらえる制度です。所得に応じて1カ月当たりの自己負担上限額が設定されています。
    ●暮らしと社会生活のサポート
    ・精神障害者保健福祉手帳
    税金の優遇制度や交通機関の割引、公営住宅への優先入居など経済的・福祉的なサービスを利用することができます。
    ●生活費のサポート
    ・障害年金
    病気やケガによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に受け取ることができる年金です。
    ●就労のサポート
    ・就労移行支援事業所
    ・ハローワーク
    ・地域障害者職業センター
    ・障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)
    ●さまざまな相談ごとのサポート
    ・保健所
    └都道府県別の保健所一覧
    ・精神保健福祉センター
    └全国精神保健福祉センター一覧
    ・病院の患者会や家族会
    └みんなねっと

うつ病のある方の仕事選びのポイント

うつ病のある方が仕事を選ぶ際は、以下の5点を確認することが重要です。
項目 チェック
通院を継続できる勤務体制か
残業が少なく、労働時間が安定しているか
体調が悪いときに相談できる窓口や上司がいるか
うつ病について理解のある上司や同僚がいるか
業務量を本人の状態に応じて調整できるか

周りの人が理解するべきこと

うつ病の方を支える家族や周りの人は、どのような困りごとがあるのでしょうか。家族ができるサポートや職場の方に理解してほしいことについて、産業医科大学教授 江口尚先生に解説いただきます。
産業医科大学 産業生態科学研究所  産業精神保健学研究室 教授 江口 尚氏

【監修者】
産業医科大学 産業生態科学研究所
産業精神保健学研究室 教授
江口 尚氏

【専門分野】
職場の心理社会的要因、治療と仕事の両立支援、障害者や中小企業の産業保健
 

家族ができるサポートについて教えてください

家族や親しい関係の人は、うつ病の方をまずは見守ってあげてほしいです。腫れ物に触るように接するのではなく、通常のコミュニケーションをとりましょう。本人にとって「ちょうどよい」距離感やコミュニケーション方法を聞いてみてもよいと思います。

うつ病の方への接し方で、注意すべき点はありますか?

うつ病の方は、頑張りたいのに頑張れない、いわば「ブレーキとアクセルを同時に踏んでいる状態」です。励ましたり無理をさせたりはせず、本人のペースを尊重してあげましょう。そして、配慮と気遣いをもって接するとよいと思います。メールではなく直接会って話すなども大切です。

うつ病の方の就職に向けて、家族はどうサポートしたらよいでしょう?

うつ病の方がはたらくことに、家族が同意しているかどうかが重要です。本人と家族の意思が一致していないと、家族もサポートできないでしょう。もし心配なことがあれば本人に率直に伝え、心配がなくなったと感じてから就職を目指すでもよいと思います。家族だからこその「もうちょっと待って」という視点を伝えてあげるのも大切なポイントです。

仕事選びのポイント

うつ病の方が就職する際、仕事を選ぶときのポイントはあるのでしょうか。就職活動をする上で大切にすべきことなど、江口先生に解説いただきます。

うつ病の方はどのようなステップを踏んで就職を目指したらよいでしょうか?

まず初めに「生活リズムを整える」ことです。会社に出勤できるよう、規則正しい生活を送れなければなりません。日中も昼寝などをせずに活動できるかもポイントです。就きたい仕事の内容にもよりますが、日中活動すると帰宅時にはぐったりしてすぐに寝てしまうようでは、体力が戻ったとはいいがたいでしょう。日中は図書館などに出かけ、帰宅してからテレビを見られるくらいの体力があるのが理想です。

1日2万歩以上を復職の目安とする産業医の先生もいます。自分だけでなく、家族や主治医、一緒にはたらく同僚からも「大丈夫」といってもらえるくらい安定した生活リズムを送れることが、就職へのステップとなります。
他には、認知力が回復してきているかどうかです。本をある程度読み続けられるとか、集中力を一定時間維持できるなどが就職の目安となるでしょう。

うつ病の方に向いている仕事や、注意が必要な仕事はありますか?

うつ病は環境要因が非常に大きいため、どんな仕事でもうつ病になる可能性があります。職場環境や仕事内容にストレスの源があると、長くはたらき続けるのは困難でしょう。ですので、うつ病の方に向いている仕事とは、本人が安心してはたらける職場環境といえます。慣れている業務内容であれば、職種は問いません。業務量が適正で、ある程度本人の裁量で仕事ができ、適切に周囲がサポートしてくれる環境が理想です。

ただし、元の職場への復職を考えているならば、うつ病となった原因が改善されることが大切です。例えば、人間関係が原因でうつ病となった場合、復帰によって再発しないように、ご自身で対策がとれるようになっておくことが必要です。仕事内容や勤務時間の調整など、安心して復職できる条件について、医師に相談し、職場にも伝えていけると良いでしょう。休職前と同じ状況の職場へ復帰しても、再発する懸念があります。また、復職に合わせて他部署への異動を検討する場合は、環境の変化によるストレスがあることを意識しておきましょう。いずれにせよ、自分の意向をきちんと提示し、納得した上で安心してはたらける職場だとよいですね。

うつ病の方が就職活動をする上で、大切にすべきことは何でしょうか?

うつ病であることを受け入れ、理解してくれる職場を見つけることが大切だと思います。採用面接の際、前職ではうつ病で退職したことは伝えたほうが良いでしょう。そのうえで、現在はどのように回復しているのか、どのような合理的配慮を受ければ安定してはたらけるのか、を伝えることがポイントです。その内容について企業側から合意が得られるなら、ながく安心してはたらける可能性が高いでしょう。うつ病であることをクローズにした場合、入社はできても、継続してはたらき続けることは難しいかもしれません。障害をオープンにして受け入れてもらえる職場を選ぶことをお勧めしたいと思います。

はたらき方や仕事を続けるコツなどを解説

就職自体がゴールではありません。本当に重要なのは、就職後に長くはたらき続けることです。うつ病の方が、障害と向き合いながら仕事を続けるコツについて、江口先生に解説いただきます。

うつ病の方が、長くはたらき続けるために必要なことは何でしょうか?

自分のことをよく理解することが大切です。自分の状況を理解し、人にも説明できる状態が理想でしょう。うつ病を経験した人は、少なからずストレスを受けやすい気質があります。どうしたら自分の弱い部分を補えるのか、補うためのスキルをなるべく多く身に付けることが、長くはたらくためのコツでしょう。

うつ病を経験し、はたらいている人の中には、自分の行動を変えていった人が多いです。発症前の状態に戻るために頑張るという方も多いのですが、元の状態に戻るのではなく、今の自分の状況に合わせてはたらき方や行動を変えていく方がよいと思います。自分自身との付き合い方を見直し、自分に合ったはたらき方をすることが重要です。

どのようなはたらき方をすれば、長期就労につながりますか?

正規雇用・非正規雇用問わず、本人が「自分に合ったはたらき方ができている」と思えることが、精神的な健康にいいと思います。何かあったら気分転換できるかなど、ストレスに対応するための武器をいくつかもっておくとよいでしょう。職場には、話し合いの場を定期的にもてるようお願いできればよいと思います。そして決して無理をしないことが、再発の予防にもつながるでしょう。以前のような無理はせず、無理の程度をなるべく低くしておくのもよいですね。

もしも、食欲や睡眠に異変があったら注意しましょう。遅刻や欠勤が増えるなど、勤怠に乱れが生じたら再発を疑います。無理をしていないか、ストレスを感じていないかを見直し、必要であれば産業医や主治医に相談してくだい。勤務先に産業医がいない場合は、産業保健総合支援センター(さんぽセンター)にも相談できますので、問い合わせてみましょう。
※参考:産業保健総合支援センター(さんぽセンター)

まとめ

うつ病の方が就職し、長くはたらくためのさまざまなコツを紹介しました。長くはたらくためには、自己理解や障害受容など、まずは自分を知ることが大切です。独りではどうしたらよいかわからないときは、就労移行支援事業所などの外部サービスを利用し、サポートを受けることもよいでしょう。

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監修者:戸田 幸裕(とだ ゆきひろ)

パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 事業戦略部 ゼネラルマネジャー
上智大学総合人間科学部社会学科卒業後、損害保険会社にて法人営業、官公庁向け営業に従事。2012年、インテリジェンス(現パーソルキャリア)へ入社し、障害者専門のキャリアアドバイザーとして求職者の転職・就職支援に携わったのち、パーソルチャレンジ(現パーソルダイバース)へ。2017年より法人営業部門のマネジャーとして約500社の採用支援に従事。その後インサイドセールス、障害のある新卒学生向けの就職支援の責任者を経て、2024年より現職。
【保有資格】
■国家資格キャリアコンサルタント
■障害者職業生活相談員