基礎知識2021/11/16

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就職ガイド –はたらく選択肢-

【シリーズ:障害×仕事】うつ病_仕事選びのポイントや長くはたらき続けるコツ

【シリーズ:障害×仕事】うつ病_仕事選びのポイントや長くはたらき続けるコツ

うつ病の方が、就職し長くはたらき続けるためには、どのような工夫が必要なのでしょうか。産業医科大学教授、江口尚先生の解説のもと、うつ病の基礎知識や、仕事選びのポイント、長くはたらき続けるためのコツを紹介します。

うつ病について

うつ病は「心の風邪」といわれるように、誰もがかかる可能性のある気分障害の一つです。どのようなきっかけで、どのような症状があらわれるのか、主な治療方法とともに解説します。

うつ病の主な症状

うつ病の症状には、精神症状と身体症状の2種類があります。精神症状の具体例は、元気がなくなる、気持ちが鬱々とする、やる気がなくなる、怒りっぽくなる、興味または喜びの喪失などです。身体症状には、不眠、食欲不振、頭痛、腹痛、下痢が続く、関節痛などがあります。
いずれの症状も2週間以上続くと、自力での回復が見込みにくいと判断されます。うつ病は、アメリカ精神医学会による「DSM-5」という分類に基づいて、判断されることが多いです。あらわれている症状に当てはまる項目を選択し、その種類や数に応じて診断されます。
※参考:DSM-5

うつ病の発症要因

本人にとって落ち込む要因となれば何でも、うつ病の発症要因となりえます。具体的には、親しい人との死別や大きな事故、過重労働、パワハラ、異動・昇進など、多種多様です。また、SLE(全身性エリテマトーデス)やパーキンソン病などのホルモンバランスを乱すような病気、脳腫瘍や脳へダメージを与える病気が、うつ病を引き起こすこともあります。
事業主の自主的な労働災害防止活動を促進するための事業を行っている中央労働災害防止協会では、過重労働による健康障害防止のためにセルフチェックツールを作成しています。自身の仕事に対する負担度を確認することで、自分自身で不調に気づけて、うつ病の予防にも効果があるとされています。
※参考:労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト

うつ病の主な治療方法

うつ病になったら、まずは、休むことが治療になります。はたらいているのであれば休職し、ストレスの原因となりうる場所から可能な限り離れましょう。そして、薬の服用も代表的な治療方法です。ホルモンのバランスを整えるような薬が用いられます。元気がないとき、不眠のときなど、それぞれの症状に合わせて、薬を使い分けます。
カウンセラーとの対話を通して、ものごとの見方や捉え方を学んでいく「精神療法」も、うつ病の治療方法として取り入れられています。偏った見方をしているという認知のゆがみを理解し、それを行動に起こしていく「認知行動療法」もあります。この療法では、認知のはたらきにアプローチする方法と、行動によって回復を目指す方法があり、症状に合わせた手段を用いてストレス耐性を高めていきます。

生活するために活用したいサポート

うつ病の方の生活を支えるためには、さまざまなサポートがあります。これらを上手に活用し、生活基盤を整えましょう。
  • 医療費のサポート
    ・自立支援医療(精神通院医療)
     精神科の治療のため、定期的・継続的に通院している場合、かかった医療費を
     補助してもらえる制度です。所得に応じて1月当たりの負担額が設定されています。
  • 暮らしと社会生活のサポート
    ・精神障害者保健福祉手帳
     税金の優遇制度や交通機関の割引、公営住宅への優先入居など経済的・福祉的な
     サービスを利用することができます。
  • 生活費のサポート
    ・障害年金
    病気やケガによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に受け取る
    ことができる年金です。
  • 就労のサポート
    ・就労移行支援事業所
    ・ハローワーク
    ・地域障害者職業センター
    ・障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)
  • さまざまな相談ごとのサポート
    ・保健所
     └都道府県別の保健所一覧
    ・精神保健福祉センター
     └全国精神保健福祉センター一覧
    ・病院の患者会や家族会
     └みんなねっと

周りの人が理解するべきこと

うつ病の方を支える家族や周りの人は、どのような困りごとがあるのでしょうか。家族ができるサポートや職場の方に理解してほしいことについて、産業医科大学教授 江口尚先生に解説いただきます。
産業医科大学 産業生態科学研究所  産業精神保健学研究室 教授 江口 尚氏

【プロフィール】
産業医科大学 産業生態科学研究所
産業精神保健学研究室 教授
江口 尚氏

【専門分野】
職場の心理社会的要因、治療と仕事の両立支援、障害者や中小企業の産業保健
 

家族ができるサポートについて教えてください

家族や親しい関係の人は、うつ病の方をまずは見守ってあげてほしいです。腫れ物に触るように接するのではなく、通常のコミュニケーションをとりましょう。本人にとって「ちょうどよい」距離感やコミュニケーション方法を聞いてみてもよいと思います。

うつ病の方への接し方で、注意すべき点はありますか?

うつ病の方は、頑張りたいのに頑張れない、いわば「ブレーキとアクセルを同時に踏んでいる状態」です。励ましたり無理をさせたりはせず、本人のペースを尊重してあげましょう。そして、配慮と気遣いをもって接するとよいと思います。メールではなく直接会って話すなども大切です。

うつ病の方の就職に向けて、家族はどうサポートしたらよいでしょう?

うつ病の方がはたらくことに、家族が同意しているかどうかが重要です。本人と家族の意思が一致していないと、家族もサポートできないでしょう。もし心配なことがあれば本人に率直に伝え、心配がなくなったと感じてから就職を目指すでもよいと思います。家族だからこその「もうちょっと待って」という視点を伝えてあげるのも大切なポイントです。

仕事選びのポイント

うつ病の方が就職する際、仕事を選ぶときのポイントはあるのでしょうか。就職活動をする上で大切にすべきことなど、江口先生に解説いただきます。

うつ病の方はどのようなステップを踏んで就職を目指したらよいでしょうか?

まず初めに「生活リズムを整える」ことです。会社に出勤できるよう、規則正しい生活を送れなければなりません。日中も昼寝などをせずに活動できるかもポイントです。就きたい仕事の内容にもよりますが、日中活動すると帰宅時にはぐったりしてすぐに寝てしまうようでは、体力が戻ったとはいいがたいでしょう。日中は図書館などに出かけ、帰宅してからテレビを見られるくらいの体力があるのが理想です。

1日2万歩以上を復職の目安とする産業医の先生もいます。自分だけでなく、家族や主治医、一緒にはたらく同僚からも「大丈夫」といってもらえるくらい安定した生活リズムを送れることが、就職へのステップとなります。
他には、認知力が回復してきているかどうかです。本をある程度読み続けられるとか、集中力を一定時間維持できるなどが就職の目安となるでしょう。

うつ病の方に向いている仕事や、注意が必要な仕事はありますか?

うつ病は環境要因が非常に大きいため、どんな仕事でもうつ病になる可能性があります。職場環境や仕事内容にストレスの源があると、長くはたらき続けるのは困難でしょう。ですので、うつ病の方に向いている仕事とは、本人が安心してはたらける職場環境といえます。慣れている業務内容であれば、職種は問いません。業務量が適正で、ある程度本人の裁量で仕事ができ、適切に周囲がサポートしてくれる環境が理想です。

ただし、元の職場への復職を考えているならば、うつ病となった原因が改善されることが大切です。例えば、人間関係が原因でうつ病となった場合、復帰によって再発しないように、ご自身で対策がとれるようになっておくことが必要です。仕事内容や勤務時間の調整など、安心して復職できる条件について、医師に相談し、職場にも伝えていけると良いでしょう。休職前と同じ状況の職場へ復帰しても、再発する懸念があります。また、復職に合わせて他部署への異動を検討する場合は、環境の変化によるストレスがあることを意識しておきましょう。いずれにせよ、自分の意向をきちんと提示し、納得した上で安心してはたらける職場だとよいですね。

うつ病の方が就職活動をする上で、大切にすべきことは何でしょうか?

うつ病であることを受け入れ、理解してくれる職場を見つけることが大切だと思います。採用面接の際、前職ではうつ病で退職したことは伝えたほうが良いでしょう。そのうえで、現在はどのように回復しているのか、どのような合理的配慮を受ければ安定してはたらけるのか、を伝えることがポイントです。その内容について企業側から合意が得られるなら、ながく安心してはたらける可能性が高いでしょう。うつ病であることをクローズにした場合、入社はできても、継続してはたらき続けることは難しいかもしれません。障害をオープンにして受け入れてもらえる職場を選ぶことをお勧めしたいと思います。

はたらき方の形、仕事を続けるコツなどを解説

就職自体がゴールではありません。本当に重要なのは、就職後に長くはたらき続けることです。うつ病の方が、障害と向き合いながら仕事を続けるコツについて、江口先生に解説いただきます。

うつ病の方が、長くはたらき続けるために必要なことは何でしょうか?

自分のことをよく理解することが大切です。自分の状況を理解し、人にも説明できる状態が理想でしょう。うつ病を経験した人は、少なからずストレスを受けやすい気質があります。どうしたら自分の弱い部分を補えるのか、補うためのスキルをなるべく多く身に付けることが、長くはたらくためのコツでしょう。

うつ病を経験し、はたらいている人の中には、自分の行動を変えていった人が多いです。発症前の状態に戻るために頑張るという方も多いのですが、元の状態に戻るのではなく、今の自分の状況に合わせてはたらき方や行動を変えていく方がよいと思います。自分自身との付き合い方を見直し、自分に合ったはたらき方をすることが重要です。

どのようなはたらき方をすれば、長期就労につながりますか?

正規雇用・非正規雇用問わず、本人が「自分に合ったはたらき方ができている」と思えることが、精神的な健康にいいと思います。何かあったら気分転換できるかなど、ストレスに対応するための武器をいくつかもっておくとよいでしょう。職場には、話し合いの場を定期的にもてるようお願いできればよいと思います。そして決して無理をしないことが、再発の予防にもつながるでしょう。以前のような無理はせず、無理の程度をなるべく低くしておくのもよいですね。

もしも、食欲や睡眠に異変があったら注意しましょう。遅刻や欠勤が増えるなど、勤怠に乱れが生じたら再発を疑います。無理をしていないか、ストレスを感じていないかを見直し、必要であれば産業医や主治医に相談してくだい。勤務先に産業医がいない場合は、産業保健総合支援センター(さんぽセンター)にも相談できますので、問い合わせてみましょう。
※参考:産業保健総合支援センター(さんぽセンター)

まとめ

うつ病の方が就職し、長くはたらくためのさまざまなコツを紹介しました。長くはたらくためには、自己理解や障害受容など、まずは自分を知ることが大切です。独りではどうしたらよいかわからないときは、就労移行支援事業所などの外部サービスを利用し、サポートを受けることもよいでしょう。

執筆 : ミラトレノート編集部

パーソルチャレンジが運営する就労移行支援事業ミラトレが運営しています。専門家の方にご協力いただきながら、就労移行支援について役立つ内容を発信しています。