基礎知識

公開日:2024/7/31
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就職ガイド –はたらく選択肢-

就労継続支援A型とは?利用方法や他サービスとの違いについて

就労継続支援A型とは?利用方法や他サービスとの違いについて

障害との折り合いに不安を感じ、「一般企業ではたらくことが難しい」「一般企業への就職を目指す前に、はたらくことに対して自信をつけたい」という人もいることでしょう。はたらく意欲がある人にとって、就労系の障害福祉サービスは心強い制度です。一方、就労支援には就労継続支援A型のほかにも就労継続支援B型や就労移行支援などさまざまなサービスがあり、どれを選べば良いか迷うかもしれません。そこで今回は、就労継続支援A型の利用方法や事業所の選び方、他の支援サービスとの違いについて解説します。

就労継続支援A型とは

就労継続支援A型は、障害や難病のある人にはたらく機会を提供する福祉サービスのひとつです。障害がある人のはたらき方は、「福祉的就労」「中間的就労」「一般就労」に分けられ、就労継続支援A型は福祉的就労に含まれます。
福祉的就労 中間的就労 一般就労
就労継続支援A型
就労継続支援B型
非雇用型
支援付雇用型
一般雇用
障害者雇用

厚生労働省の資料によると、2023年12月時点で就労継続支援A型の事業所数は4,575事業所、利用者数は8万8,967人となっており、 いずれも増加傾向です。就労継続支援A型の事業所では利用者の健康管理など日常生活の支援もおこなっているので、自分の体調と仕事の折り合いをつけやすいでしょう。一般就労を目指して、職業訓練や就労支援に力を入れている事業所も多く、ビジネススキルの向上を図れます。


出典:厚生労働省『就労移行支援

就労継続支援A型の利用方法とは

就労継続支援A型の利用を検討している人に向けて、概要を説明します。

就労継続支援A型の利用対象者

利用対象者は、身体障害や知的障害、精神障害(発達障害を含む)、難病がある18歳以上65歳未満で、以下の条件に当てはまる人です(ただし一定の条件を満たせば、65歳以上でも利用が可能です)。
また、就労継続支援A型は雇用契約に基づく就労のため、「一定の支援があれば雇用条件に則って継続的にはたらける」という人が対象です。
  • 就労した経験があるが、今は離職している人
  • 特別支援学校を卒業して就職活動をおこなったが、企業などでの雇用に結びつかなかった人
  • 就労移行支援を利用したが、企業などでの雇用に結びつかなかった人

就労継続支援A型の利用料と利用期間

就労継続支援A型の利用料は、原則として1割が利用者の自己負担となりますが、前年度の世帯収入や通所日数によって負担額が変わります。また、世帯の収入状況に応じて負担額の上限が定められているので、以下の表を参考にしてください。
世帯の収入状況 月額利用料の上限
生活保護受給 0円
市町村民税非課税 0円
市町村民税課税(所得割16万円未満)
※入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者を除く
9,300円
上記以外 3万7,200円

利用者負担減免措置実施の届出をおこなっている事業者の場合、事業者の判断で利用者負担が減額されることもあります。また、利用期間の制限はありませんが、有期契約の場合は更新の有無によって利用期間が変わることもあるようです。雇用契約の際、事業所に確認してください。

出典:厚生労働省『障害者の利用者負担
出典:厚生労働省『就労継続支援A型事業における利用者負担減免事業実施要綱について

就労継続支援A型の賃金

就労継続支援A型は雇用契約に基づく就労のため、各都道府県の最低賃金が保障されています。2022年度の平均賃金は、月額8万3,551円、時給947円となっており、いずれも前年と比べて2.3%上昇しました。ただし、事業所や仕事内容によって賃金が異なるほか、給料から社会保険料などが引かれることもあります。

出典:厚生労働省『令和4年度工賃(賃金)の実績について

就労継続支援A型を利用するまでの流れ

就労継続支援A型利用のおおまかな流れは、以下の通りです。
  • 利用までの流れ
    1)就労の可否を医師に相談する

    2)自分に合った事業所を探す

    3)見学・体験を利用する

    4)事業所の選考を受ける

    5)自治体に障害福祉サービス受給者証(受給者証)を申請する

    6)サービス等利用計画書を提出する

    7)サービス利用を開始する
1)まず医療機関で心身の状態を確認し、継続的にはたらいても問題ないか医師と相談しましょう。

2)事業所の求人情報は、市区町村の福祉課やハローワーク、インターネットなどで調べられます。

3)見学や相談のほか、数日間の利用体験をおこなっている事業所もあります。当日の持ち物や服装は事業所の案内に従いましょう。

4)応募方法や選考の流れを確認し、書類選考や面接などを受けます。自分の特性や必要な配慮、勤務形態の希望など、面接で伝えるべき事柄を事前に整理しておきましょう。

5)選考を通過して、ご自身でも利用したいと思えた場合は、利用手続きをはじめます。利用にあたり、自治体へ受給者証の発行を申請します。手続きには、身分証明書や健康保険証のほか、障害を証明する書類が必要です。障害者手帳を取得していない場合は、障害の状態や程度を証明するために、自立支援医療受給者証や医師の診断書などを用意します。申請から支給決定まで2週間から2カ月ほどかかるため、事業所探しと並行して申請をおこなうケースもあるようです。自治体の担当者と相談の上で進めましょう。

6)自治体の調査員から生活状況やサービス利用について聞き取り調査を受けた後、サービス等利用計画書を提出します。書類は自分で作成するほか、家族に書いてもらう、特定相談事業者に依頼する、という方法があります。

7)サービス利用が決定したら、受給者証を受け取ります。事業所で労働条件を確認して、納得してから雇用契約を結びましょう。

就労継続支援の事業所を選ぶポイント

就労継続支援A型の事業所を選ぶとき、仕事内容と職場環境が自分の希望や特性に合っているかどうかが大切なポイントです。就労継続支援A型の職種は、軽作業、データ入力、清掃など多岐にわたります。「体を動かすことが好き」「単純作業に没頭できる」など自分の特性を踏まえて、職種を検討しま
しょう。

スキル不足で選考に通らない場合もあるため、自分の得意分野を活かせる事業所があるか、ハローワークの障害者窓口などで相談してみてはいかがでしょうか。細かな作業手順や職場の雰囲気など、はたらいてみなければわからない部分もあるので、体験利用をおすすめします。

そのほか事業所選びの際に確かめておきたい事柄として、賃金や支援内容、通勤アクセスなどが挙げられます。最低賃金は保障されていますが、事業所や仕事内容によって賃金が異なるため確認が必要です。また、通いやすさも事業所選びの基準となります。週に何度も通所することを考え、交通手段や経路、所要時間、交通費支給の有無について調べてみると良いでしょう。事業所によっては在宅勤務を取り入れていたり、障害特性を踏まえて送迎をおこなっていたりすることもあります。

就労に関する障害福祉サービスの種類とそれぞれの違い

就労系の障害福祉サービスには、次のような種類があります。
  • 就労継続支援A型
  • 就労継続支援B型
  • 就労移行支援
  • 就労定着支援
  • 就労選択支援(2025年10月開始予定)

就労継続支援B型、就労移行支援との違い

就労継続支援にはA型とB型がありますが、主な違いは雇用契約の有無です。B型も生産活動の対価として工賃を受け取りますが、仕事内容は軽作業が中心で、最低賃金の保障はありません。

就労移行支援は、福祉的就労ではなく一般就労を希望する人に向けたサービスです。事業所によって支援内容は異なりますが、はたらくためのスキルを身につけるトレーニングや就職活動のサポート、就職後の定着支援などをおこなっています。離職している人を対象としているため、就労継続支援A型との併用はできませんが、就労継続支援A型ではたらく自信をつけたあと、就労移行支援に切り替えて本格的に就労を目指すケースもあります。

就労継続支援A型・B型と就労移行支援の主な違いを表にまとめました。
利用対象者 雇用契約 賃金 利用期間の制限 年齢制限

就労継続支援A型
一般企業への就労は難しいが、雇用契約の下ではたらける人 あり あり なし 原則65歳未満
就労継続支援B型 一般企業や就労継続支援A型での就労が難しい人 なし あり なし なし
就労移行支援 一般企業への就労を目指す人 なし 原則なし 上限2年間 原則65歳未満

就労定着支援、就労選択支援とは

就労定着支援とは、就労移行支援などを利用して一般就労した人が長く安定的にはたらけるよう支援するサービスです。支援員が、仕事や生活の不安に対してアドバイスしたり、会社や医療機関と連携しながらはたらきやすい環境づくりをサポートしたり、さまざまな支援をおこないます。利用期間の上限は3年間です。

就労選択支援は、障害者総合支援法の改正によって新設されたサービスで、運用開始は2025年10月を予定しています。障害のある人が自分に合った支援機関やはたらき方を選べるよう支援するサービスです。たとえば、就労継続支援A型を利用してはたらく力を養った人に対し、就労移行支援への切り替えを促すことも支援のひとつでしょう。就労継続支援A型の事業所に通所している人は、希望に応じて就労選択支援を利用できるようになります。また2027年4月以降、新たに就労継続支援A型の利用を申請する人は、就労選択支援も原則利用となる予定です。

関連記事:『就労選択支援とは?

適切な福祉サービスと事業所を選ぶことが大切

就労継続支援A型とは、一定の支援を得られる福祉的就労によって、賃金を得ながらはたらける制度です。就労継続支援B型も生産活動の対価を得られますが、雇用契約を結ばないため最低賃金を下回ることがあります。ほかにも、福祉的就労ではなく一般就労を希望する人が利用できる就労移行支援や、一般就労した人が安心してはたらくための就労定着支援という制度が存在しています。

「障害や疾病と折り合いながら長くはたらきたい」という方は、どの制度を利用すると良いか市区町村の障害福祉窓口などで相談してみてはいかがでしょうか。就労継続支援A型の利用が決まったら、事業所見学や体験を通じて自分に合った事業所を選びましょう。


執筆 : ミラトレノート編集部

パーソルダイバースが運営する就労移行支援事業ミラトレが運営しています。専門家の方にご協力いただきながら、就労移行支援について役立つ内容を発信しています。