基礎知識

公開日:2024/8/30更新日:2026/6/30
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就労移行支援の制度解説

自立訓練(生活訓練)とは?就労移行支援との違いや対象者・利用方法を解説

自立訓練(生活訓練)とは?就労移行支援との違いや対象者・利用方法を解説

障害福祉サービスの利用を検討しているものの、「自立訓練と就労移行支援は何が違うのか」「自分にはどちらが向いているのか」と疑問に感じている方もいるのではないでしょうか。自立訓練(生活訓練)は、生活リズムの安定や日常生活に必要なスキルの習得を目指すサービスです。一方、就労移行支援は一般企業への就職を目標に、就職活動や職業訓練をサポートするサービスです。

どちらも障害のある方や難病のある方を支援する障害福祉サービスですが、目的や対象者、支援内容には違いがあります。そのため、自分の状況や目標に合わせてサービスを選ぶことが大切です。

本記事では、自立訓練の中でも「自立した生活に向けて生活能力の維持・向上」を目指す「生活訓練」を中心にサービスの概要や就労移行支援との違いについて解説します。

【この記事で分かること】
●自立訓練の概要と、生活訓練事業所の種類
●自立訓練(生活訓練)と就労移行支援との違い
●自立訓練(生活訓練)と就労移行支援の併用や移行はできるのか

自立訓練とは

自立訓練とは、障害のある方が自立した生活を送るために必要な能力の維持・向上を支援する障害福祉サービスです。自立訓練には、生活能力の維持・向上を目的とした「生活訓練」と、身体機能の維持・向上を目的とした「機能訓練」の2種類があります。訓練を受けられる事業所の数は、2024年10月時点で生活訓練が1,681事業所、機能訓練が399事業所でした。今回は、主に生活訓練についてご紹介します。

出典:厚生労働省『令和6年社会福祉施設等調査の概況

自 立訓練(生活訓練)事業所の種類

自立訓練(生活訓練)の事業所は、大きく分けて「通所型」「訪問型」「宿泊型」の3種類があります。自立訓練では、通所型と訪問型を組み合わせた支援が行われることもあります。
事業所の種類 特徴
通所型

基本的に、自宅から週5日ほど通い、終日利用できる事業所です。継続的に通うことで、生活リズムや活動能力の向上を期待できます。体調などに応じて週1日・短時間から通所を開始できる場合もあります

訪問型 支援員が自宅を訪問し、1対1で訓練を行います。体力的に外出できない人や引きこもりがちの人、グループワークに抵抗感をもつ人も、安心して訓練を受けられるでしょう
宿泊型 一定期間、事業所に宿泊して、夜間に訓練や支援を受けられます。仕事やほかの障害福祉サービスと両立したい人向けのサービスです

自立訓練(生活訓練)と就労移行支援との違い

自立訓練(生活訓練)と就労移行支援はどちらも障害福祉サービスの一種であり、障害のある人に訓練や支援を提供します。しかし、自立訓練(生活訓練)の目標は「自立した生活」であるのに対し、就労移行支援は「一般企業などへの就職」を目指す点が異なります。
  • 自立訓練(生活訓練)
    ●目指すゴール:自立
    ●利用者の目的:生活能力の向上、自己管理能力の向上、コミュニケーション能力の向上、体力の向上、レクリエーション、就労の準備
    ●プログラム内容の一例:入浴や食事、家事などの訓練、障害特性への理解、伝える力・聞く力を身につける、スポーツ、ビジネスマナーなど
    ●主な次のステップ:就職活動、福祉就労、療養
  • 就労移行支援
    ●目指すゴール:就労
    ●利用者の目的:就労に向けた能力の向上
    ●プログラム内容の一例:ビジネススキル、体調管理、就職活動のサポート
    ●主な次のステップ:就職
自立訓練(生活訓練)の場合、「自立した生活を送るために、どのような力を身につけたいか」というニーズに合わせてプログラムが提供されます。就労移行支援は、ビジネススキルや特性への理解、コミュニケーションスキル、体調管理など、さまざまな「はたらく力」を総合的に高めていきます。

自立訓練(生活訓練)と就労移行支援の比較表

自立訓練(生活訓練)と就労移行支援は、目標だけでなく対象者やプログラム内容などが異なります。
ここでは、自立訓練(生活訓練)の利用を検討している人に向けて、対象者や利用できる期間、利用料金などの基本情報を就労移行支援と比較しながらご紹介します。
自立訓練(生活訓練) 就労移行支援
目的 自立 就労
対象者 主に知的障害・精神障害のある方 一般就労を目指している障害のある方
利用期間 原則2年(条件により最長3年) 原則2年(条件により最長3年)
種類 通所型、訪問型、宿泊型 通所型
利用料金 0~3万7,200円
※前年度の収入によって異なる
0~3万7,200円
※前年度の収入によって異なる
工賃・賃金 原則なし(一部事業所では支給される場合あり) 原則なし(一部事業所では支給される場合あり) 
通所頻度・主なプログラム 生活リズムの安定、コミュニケーション訓練、金銭管理など ビジネスマナー、職業訓練、就職活動支援など
卒業後の主な進路・就職後の支援 就職活動、進学、福祉就労、療養 一般企業への就職一般就労、復職

自立訓練(生活訓練)の対象者

自立訓練(生活訓練)の対象者は、主に精神・知的障害のある65歳未満の人です。入所施設や病院、特別支援学校を出たあとに、生活能力の維持・向上に向けた訓練を必要としている人が対象となります。就労移行支援の場合、一般企業などへの就職を希望する障害のある方や難病のある方が対象です。

自立訓練(生活訓練)の対象となりうる生活面の困難をチェックリストにまとめました。多く当てはまる人は、自立訓練(生活訓練)の利用を検討してみても良いでしょう。
生活リズムが不規則 □ 
身だしなみに気を配れない
身の回りのことは家族まかせ
周囲の人とのコミュニケーションに苦手意識がある
怒りや悲しみなど感情への対処が苦手
対人トラブルが多い
医師の指示どおりに、通院や服薬を行うことが難しい
金銭管理に不安がある
健康保険や年金など社会保障制度について理解できていない
一人で公共交通機関を利用したり、外出したりすることが難しい
自分がはたらくイメージを思い描けない
将来の目標がはっきり定まっていない

自立訓練(生活訓練)の利用期間

自立訓練(生活訓練)の標準利用期間は2年間ですが、長期入院などの理由で3年間利用できる場合もあります。この期間中に、自立できるよう生活リズムの安定や対人関係、日常生活に必要なスキルの習得を目指します。就労移行支援も原則として利用期間は2年間ですが、条件を満たした場合はさらに1年間の延長が認められるケースがあります。

自立訓練(生活訓練)の利用料金

自立訓練(生活訓練)は、多くの利用者が自己負担なく利用していますが、前年度の世帯収入によって自己負担が発生します。具体的には以下の表を参考にしてください。
区分 世帯の収入状況 負担上限月額
生活保護 生活保護受給世帯 0円
低所得 市町村民税非課税世帯(※1) 0円
一般1 市町村民税課税世帯
(所得割16万円 ※2 未満)
9,300円
一般2 上記以外 3万7,200円

(※1)3人世帯で障害者基礎年金1級受給の場合、収入がおおむね300万円以下の世帯が対象 (※2)収入がおおむね670万円以下の世帯(18歳以上の場合は、障害のある当事者とその配偶者)が対象 出典:厚生労働省『障害者の利用者負担』 上記は障害福祉サービスに共通しているため、就労移行支援も同様です。交通費は自治体によって助成となる場合や、交通費補助を行う事業所もあります。

自 立訓練(生活訓練)の工賃・賃金

原則、工賃・賃金は発生しません。ただし、事業所によっては軽作業や訓練の一環として作業プログラムを実施しており、内容によっては工賃が支給される場合があります。就労移行支援も同じく原則として、工賃・賃金は発生しませんが、事業所によっては支給されるケースもあります。

通所頻度・主なプログラム

自立訓練の通所頻度は、週1~5日ほどが一般的で、利用者の体調や目標に応じて調整することが可能です。主なプログラムは、生活リズムの安定、コミュニケーション訓練、金銭管理、家事訓練、公共交通機関の利用練習などがあります。
就労移行支援では、通所型が一般的で、ビジネスマナーやパソコンスキルの習得、就職活動のサポートなど、就労に向けたプログラムが中心となっています。

卒業後の主な進路・就職後の支援

自立訓練(生活訓練)の利用終了後は、一般企業への就職や復職、就労移行支援や就労継続支援への移行など、それぞれの目標に応じた進路を選択します。大学や専門学校に復学・進学するケースや、もともと入所施設で生活していた方が地域での一人暮らしをはじめるケースもあります。
就労移行支援の場合は、利用終了後は一般企業への就職や職場復帰を目指します。就職後は職場定着に向けた支援を受けられます。

自立訓練(生活訓練)と就労移行支援の併用はできる?

原則として、自立訓練(生活訓練)と就労移行支援は併用できません。ただし、自治体の判断や利用計画次第では、例外的に認められる場合があります。例えば、宿泊型自立訓練(生活訓練)との併用が認められていることがあります。併用を検討する場合は、自治体に確認するようにしましょう。

自立訓練(生活訓練)から就労移行支援への移行は可能

基本的に併用は難しいですが、自立訓練(生活訓練)から就労移行支援へ段階的にステップアップすることは可能です。
まずは自立訓練(生活訓練)で生活リズムや体調を整え、その後に就労移行支援へ移行して就職準備を進めるケースも少なくありません。
  • 移行の例
    ●1年〜1年半ほど自立訓練(生活訓練)に通所後、就労移行支援に移行する
    ●自立訓練を半年ほど利用して生活が安定したため、支援計画を見直し、就労移行支援に切り替える
    利用者の状況や目標に応じて、支援機関や相談支援専門員などに相談しながら適切なサービスを選択することが大切です。

自立訓練(生活訓練)と就労移行支援に関するよくある質問

Q.自立訓練(生活訓練)と就労移行支援を併用する場合は何に気を付ければ良いですか?

A.自治体の判断やサービス等利用計画によっては、例外的に併用が認められる場合があります。まずは、担当相談支援専門員に確認しましょう。利用する場合は、通所日数や訓練内容が重ならないよう調整することが大切です。また、体調や目標の変化に応じて利用計画を見直しながら進めましょう。

Q.自立訓練(生活訓練)と就労移行支援、どちらを先に利用すべき?切り替えのタイミングを教えてください。

A.自身の状態によって異なりますが、生活リズムや外出に不安がある場合は、自立訓練(生活訓練)を先に行うことをおすすめします。特に週5での通所が難しい場合や、体調の波が大きい場合は、自立訓練が向いているケースがあります。
一方、就労移行支援は、継続して通所できる状態にあり、はたらく目標がある場合に向いています。多くの事業所では見学や体験利用ができるため、実際の雰囲気や通所の負担感を確認してみましょう。さらに迷うときは計画相談支援や医師に相談し、無理なく進めてください。

Q.自立訓練(生活訓練)や就労移行支援を利用したい場合、まずどうすれば良いですか?

A.自立訓練や就労移行支援といった福祉サービスを利用する場合は、まずはお住まいの市区町村や相談支援事業所に相談してみましょう。利用するためにはへ「障害福祉サービス受給者証」が必要です。
受給者証の申請と並行して、自分に合った事業所を探し、見学や体験利用を行います。

自立訓練(生活訓練)と就労移行支援、どちらを選ぶか迷ったときは

自立訓練(生活訓練)と就労移行支援は、目的やゴールが異なる障害福祉サービスです。生活リズムの安定や対人関係など、まずは生活基盤を整えたい場合は自立訓練(生活訓練)が向いているケースがあります。一方で、一般就労を目指して就職準備を進めたい場合は、就労移行支援が選択肢となるでしょう。
原則として、両サービスの併用はできませんが、自立訓練(生活訓練)でしっかりと生活の基盤を固めてから、就労移行支援で就労を目指す道もあります。どちらが自分に合っているか迷う場合は、自立訓練(生活訓練)と就労移行支援の両方を見学して、比較検討してみてはいかがでしょうか。

就労移行支援事業所「ミラトレ」では、一人ひとりの能力や特性に合わせたトレーニングを行っています。健康管理や生活管理の方法を身につけながら、パソコンスキルやビジネスマナーなどのビジネススキルを習得できます。実際にはたらくイメージをもてるよう、擬似就労などの実践的なトレーニングを重視しています。また、就職活動のサポートはもちろん、就職後の定着支援にも力を入れています。「就労移行支援について詳しく知りたい」「どの福祉サービスを利用すべきかアドバイスがほしい」という方はお気軽にご相談ください。

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監修者:戸田 幸裕(とだ ゆきひろ)

パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 事業戦略部 ゼネラルマネジャー
上智大学総合人間科学部社会学科卒業後、損害保険会社にて法人営業、官公庁向け営業に従事。2012年、インテリジェンス(現パーソルキャリア)へ入社し、障害者専門のキャリアアドバイザーとして求職者の転職・就職支援に携わったのち、パーソルチャレンジ(現パーソルダイバース)へ。2017年より法人営業部門のマネジャーとして約500社の採用支援に従事。その後インサイドセールス、障害のある新卒学生向けの就職支援の責任者を経て、2024年より現職。
【保有資格】
■国家資格キャリアコンサルタント
■障害者職業生活相談員