基礎知識

公開日:2024/8/30
  • X
  • Facebook
  • はてなブックマーク
  • LINE
  • Email

就労移行支援の制度解説

自立訓練(生活訓練)とは?詳しく知りたい方へ利用方法や就労移行支援との違いを解説

自立訓練(生活訓練)とは?詳しく知りたい方へ利用方法や就労移行支援との違いを解説

自立訓練は障害福祉サービスのひとつなので、障害のある人は耳にしたことがあるかもしれません。しかし、就労移行支援などさまざまな障害福祉サービスがある中で、「自分はどれを利用すべき?」と迷う人もいるでしょう。そこで今回は、自立訓練の中でも「自立した生活に向けて生活能力の維持・向上」を図る「生活訓練」について説明します。この記事を参考に、自分に適した障害福祉サービスを見つけてください。

自立訓練とは

自立訓練とは、障害のある人が自立した生活を送るための能力を身につけることです。自立訓練には、生活能力の維持・向上を目的とした「生活訓練」と、身体機能の維持・向上を目的とした「機能訓練」の2種類があります。訓練を受けられる事業所の数は、2022年10月時点で生活訓練が1,583、機能訓練が401でした。今回は、主に生活訓練について紹介します。

出典:厚生労働省『令和4年社会福祉施設等調査の概況

自立訓練(生活訓練)対象者や利用期間、利用料金

自立訓練(生活訓練)の利用を検討している人に向けて、対象者や利用できる期間、利用料金などの基本情報を紹介します。

自立訓練(生活訓練)の対象者と利用期間

自立訓練(生活訓練)の対象者は、精神・知的障害のある65歳未満の人です。主に、入所施設や病院、特別支援学校を出たあとに、生活能力の維持・向上に向けた訓練を必要としている人が対象です。

自立訓練(生活訓練)の対象となりうる生活面の困難をチェックリストにまとめました。多く当てはまる人は、自立訓練(生活訓練)の利用を検討してみても良いでしょう。
  • 生活リズムが不規則
  • 身だしなみに気を配れない
  • 身の回りのことは家族まかせ
  • 周囲の人との会話が不得意
  • 怒りや悲しみなど感情のコントロールが苦手
  • 対人トラブルが多い
  • 医師の指示どおりに、通院や服薬をおこなうことが難しい
  • 無駄遣いが多い、金銭管理ができない
  • 健康保険や年金など社会保障制度につ
  • 一人で公共交通機関を利用したり、外出したりすることが難しい
  • 自分がはたらくイメージを思い描けない
  • 将来の目標がはっきり定まっていない
標準の利用期間は2年間ですが、長期入院などの理由で3年間利用できる場合もあります。

自立訓練(生活訓練)の利用料金

自立訓練(生活訓練)は、利用者の約9割が無料で利用していますが、前年度の世帯収入によって自己負担が発生します。具体的には以下の表を参考にしてください。
区分 世帯の収入状況 負担上限月額
生活保護 生活保護受給世帯 0円
低所得 市町村民税非課税世帯(※1) 0円
一般1 市町村民税課税世帯
(所得割16万円 ※2 未満)
9,300円
一般2 上記以外 3万7,200円

(※1)3人世帯で障害者基礎年金1級受給の場合、収入がおおむね300万円以下の世帯が対象
(※2)収入がおおむね670万円以下の世帯(18歳以上の場合は、障害のある当事者とその配偶者)が対象
出典:厚生労働省『障害者の利用者負担

自立訓練(生活訓練)の種類

自立訓練(生活訓練)の事業所は、大きく分けて3種類あります。
通所型と訪問型を組み合わせた支援がおこなわれることもあります。
事業所の種類 特徴
通所型 自宅から週5日ほど通い、終日利用できる事業所です。継続的に通うことで、生活リズムや活動能力の向上を期待できます。体調などに応じて週1日・短時間から通所を開始できる場合もあります
訪問型 支援員が自宅を訪問し、1対1で訓練をおこないます。体力的に外出できない人や引きこもりがちの人、グループワークに抵抗感をもつ人も、安心して訓練を受けられるでしょう
宿泊型 一定期間、事業所に宿泊して、夜間に訓練や支援を受けられます。仕事やほかの障害福祉サービスと両立したい人向けのサービスです

自立訓練(生活訓練)を利用する流れ

自立訓練(生活訓練)を利用するには、必要な書類を用意し手続きする必要があります。以下の流れを参考にしてください。
  • 利用までの流れ
    (1)まずは、自分の課題と自立訓練(生活訓練)のサービスがマッチしているか、専門家に相談してみることをおすすめします。市区町村の福祉窓口や障害者福祉センター、社会福祉協議会などで相談できます。利用の意思が固まったら、自分に合った事業所を紹介してもらいましょう。

    (2)自立訓練(生活訓練)を利用するには、障害者手帳や自立支援医療受給者証、医師の診断書・意見書など、障害の状態を証明する書類が必要です。障害者手帳を取得していない人は、医師に診断書の作成を依頼しましょう。診断書の作成には2週間ほどかかる場合があります。

    (3)発達障害に特化した事業所や、青年層を中心に受け入れている事業所など、特色のある事業所も増えています。資料請求や問い合わせ、見学・体験利用などを通して、複数の事業所を比較検討した上で選びましょう。

    (4)自立訓練(生活訓練)の利用には、障害福祉サービス受給者証(受給者証)が必要です。利用したい事業所が決まれば、市区町村の福祉課で受給者証を申請します。その際、「サービス等利用計画」という計画書を作成し、障害を証明する書類とあわせて提出します。

    (5)受給者証の審査が通ると、1~2週間後に受給者証が届きます。事業所に連絡して契約日を決めたのち、受給者証などの必要書類を持参して契約を結びましょう。

    (6)利用開始後は、本人の希望を考慮しながら個別支援計画が作成されます。その計画に沿って、訓練や相談がおこなわれます。
1)まず医療機関で心身の状態を確認し、継続的にはたらいても問題ないか医師と相談しましょう。

2)事業所の求人情報は、市区町村の福祉課やハローワーク、インターネットなどで調べられます。

3)見学や相談のほか、数日間の利用体験をおこなっている事業所もあります。当日の持ち物や服装は事業所の案内に従いましょう。

4)応募方法や選考の流れを確認し、書類選考や面接などを受けます。自分の特性や必要な配慮、勤務形態の希望など、面接で伝えるべき事柄を事前に整理しておきましょう。

5)選考を通過して、ご自身でも利用したいと思えた場合は、利用手続きをはじめます。利用にあたり、自治体へ受給者証の発行を申請します。手続きには、身分証明書や健康保険証のほか、障害を証明する書類が必要です。障害者手帳を取得していない場合は、障害の状態や程度を証明するために、自立支援医療受給者証や医師の診断書などを用意します。申請から支給決定まで2週間から2カ月ほどかかるため、事業所探しと並行して申請をおこなうケースもあるようです。自治体の担当者と相談の上で進めましょう。

6)自治体の調査員から生活状況やサービス利用について聞き取り調査を受けた後、サービス等利用計画書を提出します。書類は自分で作成するほか、家族に書いてもらう、特定相談事業者に依頼する、という方法があります。

7)サービス利用が決定したら、受給者証を受け取ります。事業所で労働条件を確認して、納得してから雇用契約を結びましょう。

自立訓練(生活訓練)と就労移行支援との違い

自立訓練(生活訓練)も就労移行支援も障害福祉サービスのひとつであり、障害のある人に訓練や支援を提供します。しかし自立訓練(生活訓練)の目標は「自立した生活」ですが、就労移行支援は「一般企業などへの就職」を目指す点が異なります。

自立訓練(生活訓練)の場合、「自立した生活を送るために、どのような能力を向上したいか」というニーズに合わせてプログラムが提供されます。就労移行支援は、ビジネススキルや特性への理解、コミュニケーションスキル、体調管理など、さまざまな「はたらく力」を総合的に高めていきます。
サービスの種類 目指すゴール 利用者の目的 プログラム内容の一例 主な次のステップ
自立訓練(生活訓練) 自立 生活能力の向上 ●入浴や食事、家事などの訓練
●金銭の管理
●社会生活のマナーやルール
●就職活動
●福祉就労
●進学・復学
●療養
自己管理能力の向上 ●障害特性への理解
●メンタルコントロール
●自己理解
コミュニケーション能力の向上 ●伝える力、聞く力
●非言語コミュニケーション
●グループミーティング
体力の向上 ●スポーツ
●リラクゼーション
●生活リズムの改善
レクリエーション ●ダンス
●調理
●音楽
就労の準備 ●ビジネススキル
●ビジネスマナー
●就職活動のサポート
就労移行支援 就労 就労に向けた能力の向上 ●ビジネススキル
●体調管理
●就職活動のサポート
●就職
 

自立訓練(生活訓練)と就労移行支援、どちらを選ぶか迷ったときは

原則として、自立訓練(生活訓練)と就労移行支援の併用はできません。そのため、自立訓練(生活訓練)と就労移行支援のどちらを利用すべきか迷う人もいるでしょう。自立訓練(生活訓練)でしっかりと生活の基盤を固めてから、就労移行支援で就労を目指す道もあります。決めかねるときは、自立訓練(生活訓練)と就労移行支援の両方を見学して、比較検討してみてはいかがでしょうか。

就労移行支援事業所「ミラトレ」では、一人ひとりの能力や特性に合わせたトレーニングをおこなっています。健康管理や生活管理の方法を身につけながら、パソコンスキルやビジネスマナーなどのビジネススキルを習得できます。実際にはたらくイメージをもてるよう、擬似就労などの実践的なトレーニングを重視。就職活動のサポートはもちろん、就職後の定着支援にも力を入れています。「就労移行支援について詳しく知りたい」「どの福祉サービスを利用すべきかアドバイスがほしい」という方はお気軽にご相談ください。

執筆 : ミラトレノート編集部

パーソルダイバースが運営する就労移行支援事業ミラトレが運営しています。専門家の方にご協力いただきながら、就労移行支援について役立つ内容を発信しています。