就職事例

公開日:2022/11/29更新日:2023/3/29
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自分自身と向き合うことで視野が広くなった

事務職/医療業界
体幹機能障害の20代女性Zさんの就職事例

体幹機能障害の20代女性Zさんの就職事例

20代/女性/体幹機能障害

今回紹介するのは、体幹機能障害の20代女性の就職事例です。自分や周囲に関心をもてなかったZさんが、障害と付き合いながら就職するまでのストーリーと現在の様子を紹介します。

体幹機能障害による下半身麻痺で車椅子生活を送っていた

Zさんは生まれつきの体幹機能障害により下半身が麻痺状態で、幼少期から車椅子での生活を送っています。医療サービスを受けながら特別支援学校に進学し、卒業後の進路は就職を選択しました。しかし、在学中に就職先が決まらなかったため、先生やご家族と相談し、就労移行支援事業所という選択肢を知ったそうです。

就労移行支援事業所選びの決め手は日常生活の送りやすさ

就労移行支援事業所を選ぶ際、ポイントになったのは車椅子での過ごしやすさでした。ミラトレの2カ所の事業所を見学した際、通路の広さやお手洗いの使いやすさを確認されます。建物のオーナーとも相談し、利用しやすいように配慮してもらえたことが決め手となり、高校卒業後からミラトレの利用をスタートすることになりました。

通所当初は就労移行支援を自分事として捉えることが難しかった

ミラトレに通い始めた頃は、他者だけでなく自分にも関心が薄かったZさん。就労移行支援を利用して就職したいという本人の希望はありましたが、学校の先生やご家族に促されて通い始めたため、トレーニングについての希望はとくにありませんでした。最初は、トレーニングや就職を自分事として捉えることが難しかったようですが、ミラトレに通い続けるうちに「一人暮らしがしたい」という目標ができました。

講座や疑似就労を経験し、得意分野のスキルを伸ばす

ミラトレでは基本的なプログラムを受けていただきました。例として、人との関わり方や物事の捉え方について学ぶメンタルケア講座や、自分の適性に合った就職先を探す際にも役立つビジネスマナー講座、ExcelやWordの基礎から始めるPC講座などがあります。その中でも、PCスキル面は支援員も目を見張るほどの成長が見られました。

擬似就労では2つの部門を体験していただきます。備品などを管理する管理部と、ブログの作成や事業所内の広報誌を作成する広報部を3カ月ごとに担当してもらいました。最初こそ苦手だった広報部でのブログ作成は、回数を重ねることで1件あたりの作成時間がかなり短縮されました。

苦手な自己発信やコミュニケーションにも向き合う

自分の考えを相手に伝えることが苦手だったため、支援員からの声掛けなどのアプローチで、まずは関係性づくりに取り組みました。最初は支援員が話しかけるばかりでしたが、少しずつ自分の興味のあることや、自宅での過ごし方などを話してくれるようになります。また、広報部でのブログ作成が自分の考えをまとめて第三者に伝える経験になったことも大きかったようです。通所当初には見られなかった自ら手を挙げて発言する姿が、徐々に事業所内で見られるようになりました。

他者に関心が薄いというコミュニケーション面の課題に対しては、まず「就職したら最低限のコミュニケーションも必要だよ」と伝えます。ミラトレ支援員とはコミュニケーションが取れていたので、他の利用者たちが雑談している際、本人も加われそうな話題であれば支援員と一緒に輪に入れてもらうことから始めました。その結果、表情が明るくなり、少しずつ自分の想いを伝えてくれるようになりました。

他には、土台ができている作業の手順を説明すると取り組むスピードが速い一方で、自分で考えて作り出す作業に苦手意識があったようです。悩んで手が止まってしまっている時は、支援員が「何を考えているの?」と声掛けをするように意識しました。一緒に考えてもなかなか本人から言葉が出てこない場合は、支援員から提案やヒントを出すこともありました。支援員が答えを渡すことは簡単ですが、就職後に本人が困らないように自分で考えてもらう時間や経験を大切にしたそうです。

体調を優先し、無理のないペースで就職活動をスタート

高校卒業後、すぐにミラトレへ通い始めたため、生活リズムや体力に問題はなく、週5日の通所から始めてもらいました。しかし、ケガによる入院で通所を複数回中断されます。退院後は訪問介護や医療機関と連携し、体調を優先して週1日や半日の通所から再開。慣れてきた頃から、無理のない範囲で1週間あたりの通所日数を増やしていきました。

入院で精神的にも落ち込んでしまったこともありましたが、支援員と今後についての面談を重ねた結果、就職活動の前準備として履歴書や職務経歴書の作成を始めることにします。企業見学もいくつか体験していただきました。

前に進んでみたいという気持ちが整った時期に実習へ

少しずつ体調が整い、以前のようにミラトレ利用者同士での関わりも見られるようになったタイミングで、企業実習の機会を作りました。今すぐ就職するかは一旦横に置き、「まずは実習を経験して、気付いたことを今後の就職活動に活かしていこう」と前進することにしたのです。

企業実習では、書類の三つ折りやステープラーの針外しなどの軽作業を3日間体験します。手先が器用なことや、作業スピードの速さが高く評価されました。褒められることに慣れていなかったため、恥ずかしそうにしていたZさんでしたが、企業からの好意的な言葉が自信につながり、活き活きと作業に取り組むことができたようです。

実習先の企業とマッチングし、トライアル雇用が決定

実習終了後、企業の担当者からトライアル雇用の話をいただきます。応募書類を作成する際は、志望動機を文章にすることに時間がかかった様子が見られました。実習を経験した企業で就職したいという気持ちを言葉にすることが難しかったようですが、実際に就職する前に考えを整理する経験にもなったと感じています。そして、通所から2年3カ月後にこちらの企業でのトライアル雇用が決まりました。

企業からは、どのような時にどういったサポートをしたら良いか共有してほしいとの声がありました。配慮していただきたい内容などについて、訪問看護師を含めた担当者会議を開催し、万が一に備えて会社に電動車椅子の予備バッテリーを置かせてもらいたいことや、介助が必要になった時のためのすり合わせをおこないました。コミュニケーション面では、環境に慣れるまでは自己発信が少ないかもしれないため、こまめに確認してほしいことなどをお伝えしています。

興味の幅を広げ、目標に向かって前向きにはたらいている

現在は、調剤薬局でパートタイマーとして事務補助の仕事をしています。就職後の定着支援期間中でもあるため、ミラトレでは長期的にはたらくためのサポートを継続中。出勤前と退勤後それぞれに電話で状況を報告してもらっていますが、声色は明るく、日報からも前向きにはたらいている様子が伝わってきます。

ミラトレ通所当初は自分にも関心が薄かったのですが、卒業する頃には「ここが自分の居場所になっている」と話してくれるまでになりました。担当した支援員は、「これからも何かあった時には居場所として在り続けたい」と笑顔を見せます。Zさんは、グループホームで共同生活を送りながら、将来的には一人暮らしをしたいという目標に向かって日々前進しています。

※プライバシー保護のため、事実を元に文章を一部再構成しています。

執筆 : ミラトレノート編集部

パーソルダイバースが運営する就労移行支援事業ミラトレが運営しています。専門家の方にご協力いただきながら、就労移行支援について役立つ内容を発信しています。