基礎知識2021/8/18

  • Twitter
  • Facebook
  • はてなブックマーク
  • LINE
  • Email

就労移行支援の制度解説

合理的配慮とわがままの違いは?10の実例を交えてポイントを解説

合理的配慮とわがままの違いは?10の実例を交えてポイントを解説

「合理的配慮」とはどのようなものか、ご存知でしょうか?障害のある方が、長くはたらき続けるためには、この合理的配慮をきちんと理解し、就職先の企業から合理的配慮を得ることが大切です。今回は、合理的配慮を求める際に気をつけたいポイントについて、紹介します。

合理的配慮とは

障害者雇用では、障害による困りごとへの配慮を、「合理的配慮」として事業主に求めることができます(この場合の事業主とは、一般企業や自治体、教育機関等を指します)。障害のある人は、社会の中にあるバリアが原因で、生活しづらさやはたらきづらさを感じることがあります。「合理的配慮」は、障害のある人が感じるバリアを取り除いたり軽減したりすることで、環境や状態を整え、その人らしくイキイキとはたらくことができるようにする取り組みです。企業等には、負担が重すぎない範囲で合理的配慮の実施が求められています。
合理的配慮は、「障害者差別解消法」や「障害者雇用促進法」で保障されています。「障害者差別解消法」には、企業等に対して「合理的配慮」の提供を行うよう求める規定があります。また「障害者雇用促進法」でも、障害者が自分の能力を発揮して仕事をスムーズに進められるよう、企業等に対し、合理的配慮の提供を求めています。これらの法律によっても、障害者は事業主に合理的配慮を求めることができるのです。
※2021年5月に、合理的配慮の提供を民間事業主に義務付ける改正障害者差別解消法が、参議院本会議で可決・成立しています。

合理的配慮を進めるためのステップ

障害のある人がはたらく上で、企業側に合理的配慮を求めたい場合、どのように進めればよいのでしょうか。ここでは、合理的配慮を進めるための4ステップを解説します。

ステップ1:採用時に申し出る

障害者本人や家族、支援者から、合理的配慮を求めることを申し出ます。採用面接時に、合理的配慮についての希望を聞かれることがあるので、その際にきちんと伝えましょう。また、履歴書の本人希望記入欄に、求める配慮を記載することもできます。就労移行支援事業所などを利用している場合は、支援員と求める配慮事項について相談することもできます。申し出が原因で不採用になることはないので、どのような配慮を求めたいのか、自身の障害特性を踏まえて合理性を検討しましょう。

ステップ2:企業側と話し合う

希望する配慮事項について、企業側と話し合います。求めた配慮が、マンパワーや資金力などさまざまな理由から、実現が難しい場合もあるかもしれません。その場合、可能な範囲での配慮案が企業側から提示されることもあります。双方が納得した上で、どのような配慮事項を得られるかを確定することが重要です。

ステップ3:情報共有やフォロー体制を構築してもらう

合理的配慮の運用にあたり、話し合いで決定した配慮の内容について、職場の同僚や上司に共有してもらいましょう。配属部署にどこまで伝えてほしいかの意思表示を行い、理解を広げてもらうことが大切です。サポートの担当者を決めてもらえれば、フォロー体制も構築されるため、問題が生じた際にも相談しやすくなります。

ステップ4:定期的に見直しの機会を作ってもらう

合理的配慮の内容は、定期的に見直し・更新してもらうことが可能です。当初求めた配慮事項が現在も適切か、現在はたらく上で支障となっていることがないかを検証してもらいましょう。そのために必要となってくるのが、企業担当者との定期的な面談や評価面談の機会です。障害者自身が、長くはたらき職場に定着できるよう、企業側と相談しながら配慮内容も更新していきましょう。

合理的配慮を求める際の準備

合理的配慮を求めたい場合、障害者が自分から申し出なければなりません。特に精神障害については、障害の有無や困難さが、周囲から目に見えづらいことから、障害者の「当事者としての意思表示」が重要とされています。配慮を求める際の事前準備として、仕事上の困難さや自己対処法、求めたい配慮事項について、まとめてみましょう。仕事上で困難と感じることは何か、それについて自己対処できる方法はないかをまず検討します。その上で、自己対処が難しい事柄について、企業側にどのような対応をしてもらえれば解決できるのかを考えます。「いつ・誰が・どのようにすればよいか」を具体的に書き出すようにしましょう。
配慮内容を企業側と話し合う場面では、医師の診断書や意見書が必要となるケースもあります。企業側から求められた場合は、主治医に相談し、合理的配慮の根拠を明記した診断書や意見書を書いてもらいましょう。就労移行支援事業所を利用している場合は、支援員とともに準備することも可能です。通所中の様子などから、どのような配慮を求めたらよいかアドバイスがもらえるでしょう。どのような配慮が求められるか、複数プランを用意しておくと、企業側との着地点が見つけやすくなります。

はたらくための配慮とわがままの違い10例

合理的配慮は、企業ではたらくための配慮であるため「企業が配慮してくれれば仕事ができる」という点に重きを置いていることを覚えておきましょう。企業側は、障害者の求める配慮を提供することで、本人が本来持っている力を発揮できるようになる、生産性があがる、周囲と本人が安心・安定してはたらけるようになる、といった効果を考慮して、内容を確定します。求める配慮の内容が、企業側にわがままと捉えられないよう、はたらくための配慮とわがままの違いについて考えてみましょう。
下の例を参考に、伝え方にも注意するとよいでしょう。
合理的配慮 わがまま
就労スタート時は環境の変化などでストレスが溜まりやすい状態だと思うので、時短勤務から始めていきたい。 環境が変わると緊張感が高まりストレスが溜まりやすいので、しんどいと感じた日はそのタイミングで退社したい。
自己発信が苦手で不安が強いので、定期的に面談や相談の場を設けてほしい。 自己発信が苦手で不安が強いので、担当の方などから積極的に声をかけてほしい。
口頭指示だけだと業務理解に時間がかかるため、具体的な手順書や指示書などの作成をお願いしたい。その上で業務に取り組みたい。 口頭指示の理解ができず業務を進めることが難しい際は他者へ代わってほしい、または別業務に取り組みたい。
指摘を受けることに敏感なので、ミスをした際の指摘は、声がけなどの方法に一定のルールを事前に設けてほしい。 人に注意されると萎縮して行動が制限されてしまうので、ミスをしても注意ないでほしい。
自分から人に声をかけるのが苦手なので、周囲から声をかけてほしいが、日によっては人との会話が負担に感じる。スタッフ予定を書くホワイトボードに×マークを書いたときは、「今日は声をかけずに、そっとしておいてほしい」というサインであることを職場に共有してほしい。 自分から人に声をかけるのが苦手なので、周囲から声をかけてほしい。でも、日によっては人との会話が負担に感じるので、朝の自分の表情や態度をみて、声をかけるかどうか判断してほしい。
定時で帰宅しようとすると、同じ部署の人たちと駅のホームで一緒になってしまって緊張してしまう。このため、一駅をウォーキングのつもりで歩くことにした。または、少しだけ商店街で時間をつぶしてから帰宅することにした。 定時で帰宅しようとすると、同じ部署の人たちと駅のホームで一緒になってしまって緊張してしまう。自分だけ、少しだけ早く帰宅させてもらうか、他の人が少し遅く会社を出るようにしてもらいたい。
クーラーの冷風が苦手。直接冷気があたらない席に移動させてほしいと希望を出した。または、長そでのカーディガンを着たり、ひざかけをかけて対応するようにした。 クーラーの冷風が苦手。外から帰ってくる人が暑そうにしているのはわかるが、夏は汗をかくのが当たり前だし、冷え症になったら困るので、真夏日であったとしてもクーラーはとめて、自然の風が入るように窓をあけるだけにしてほしい。
隣のチームの人たちは、一緒に帰ったり、休日にみんなで出かけたりして楽しそう。私も誘ってほしいので、帰宅時に勇気を出して「今日は帰る時間が一緒ですね。私もご一緒してもいいですか?」と話しかけてみた。 隣のチームの人たちは、一緒に帰ったり、休日にみんなで出かけたりして楽しそう。私も誘うように言ってほしい。
聴覚過敏があるので、状況に応じて耳栓の使用やイヤホンの使用を認めて欲しい。又は相談させていただきたい。 聴覚過敏があるのでイヤホンで音楽を聴きながら仕事がしたい。
昼休憩は12-13時と決まっているけれど、まだお腹がすかない状態であった。このため、朝食の量を減らすことにした。または、朝食の時間を1時間早めた。 昼休憩は12-13時と決まっているけれど、まだお腹がすかない。このため、時間をずらして14時から休憩をとらせてほしい。

配慮を受けた事例

就労移行支援事業所「ミラトレ」を利用して就職を叶えた卒業生たちは、どのような配慮を企業側に求めたのでしょうか。合理的配慮の成功事例をご紹介します。

ミラトレを利用していく中で「スケジュール管理」や「優先順位をつけること」が苦手だと気づいたIさん。手帳やエクセルを使ってスケジュール管理をしてみるなど、自己対処法も探ります。その上で、企業には「マルチタスクにならないようにしてほしい」「相談しやすい環境を整えてほしい」といった配慮事項を求めています。
就労実習の中で、企業側から「メモを取ろうとしない」「指示待ちの姿勢だ」などの厳しいフィードバックを受けたGさん。課題として受け入れ、自己対処法も探る中で、本人からは「メモを取る時間を作ってほしい」などの配慮事項を企業に求めています。

まとめ

障害者がはたらく上で、支障となるものを可能な限り減らすことのできる「合理的配慮」ですが、伝え方や理解によってはわがままと捉えられてしまうかもしれません。自己対処できる方法があるなら、過剰な配慮は求めないことも大切です。その上で、配慮が得られれば安定した成果を出せる、長期就労が可能、といった点に着目して、配慮事項を考えましょう。

長期就労のためには、採用時や契約社員であれば契約更新時に企業側としっかりと話し合い、配慮事項について合意することが重要です。また、合理的配慮は更新可能なものなので、定期的に見直ししてもらえるよう企業の担当者に相談できるとよいですね。就労移行支援事業所の定着支援サービスを利用する場合は、支援員とも相談しながら、自分に合った合理的配慮を活用し、長期就労を目指しましょう。

執筆 : ミラトレノート編集部

パーソルチャレンジが運営する就労移行支援事業ミラトレが運営しています。専門家の方にご協力いただきながら、就労移行支援について役立つ内容を発信しています。