就職事例

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「仕事がしたい」という強い意思

事務職/人材業界
厳しい評価も前向きに 課題認識し内定へ

厳しい評価も前向きに 課題認識し内定へ

20代/男性/発達障害

今回紹介するのは、ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)のある20代男性の就職事例です。小さい頃から人付き合いの面で難しさを感じており、就職先を半年で退職されたGさんが、ミラトレを利用して就職するまでのストーリーと現在の様子をご紹介します。

「ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)」の診断に納得。障害者手帳を取得

Gさんは大学卒業後、食品関係の企業に正社員として就職し、店頭販売などの仕事をされていました。しかし、来店客が多く忙しい職場であったことが、ストレスとなったようです。上司とのコミュニケーションがうまくいかなかったり、同時にたくさんのことを指示されて理解に時間がかかったりといったことが原因で、半年ほどで退職されます。その後体調を崩され入院し、医師より「ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)」と診断され、障害者手帳を取得しました。

小さい頃から人付き合いの面で、難しさや生きづらさを感じていた違和感から、診断に納得できたと言います。その後、体調がだんだんとよくなり、コンビニエンスストアでアルバイトを始めた頃から、次に就職するなら障害者雇用枠ではたらきたいと思うようになったそうです。

「仕事がしたい」という強い意思。母に連れられてミラトレを訪問

そのような折、お母様が病院の家族会でミラトレのセンター長による講演を聞く機会があったようです。お母様は「販売・接客などではなく、事務所ではたらくイメージを持ってほしい」と希望されており、ご本人も「社会人としてのマナーやパソコン操作を学びたい」と感じていたことから、お二人揃って見学にいらっしゃいました。お話を聞いてみると、仕事をしたいという意思だけでなく、「人前に出ない仕事」や「事務や軽作業」「プレッシャーのかからない仕事」がしたいなど、はたらく上での希望や条件が明確であることがわかりました。見学を通してお二人ともミラトレを気に入ってくださり、利用を決意されます。

環境に慣れることを優先し、感情のコントロールを身につける

当初、1年後を目処に就職したいという希望があったのですが、まずは環境に慣れることを意識してもらいました。慣れない環境の中で思い通りにいかないと、感情を表に出してしまい、他の利用者が影響を受けたことがあったためです。時間の経過とともに環境に慣れ、イライラすることもだんだんと減ってきたように感じました。その他にも、「パソコン操作がうまくいかないときには別のパソコンに変えてみる」「深呼吸してみる」などを提案し、イライラしたら別の行動に移るよう促しました。こうしたことを通じて、自ら対処方法を身につけられたのではないかと感じています。

また、話し相手に「視線を合わせる」「相槌をうつ」といったことが苦手な様子も見られました。人の輪の中には入るものの、誰かの発言を受けて反応することはほぼなかったように思います。一方で、自分のことを伝えたり文章にしたりするのは得意でした。ただし、自分の発信によって相手がどう感じるかまでは意識が及ばないようだと感じられました。

通所開始当初の様子やその後の変化

ミラトレ利用前からアルバイトをされていたGさんは、生活リズムに大きな乱れはなく、最初から安定して通所できていました。アルバイトを継続しながら※アルバイト等、はたらきながらの就労移行支援事業所利用は、自治体の判断が必要となりますミラトレに通っていましたが、両立できるように調整する程度で、休むことはありませんでした。これは、大きな強みだったと思います。しかし、社会人を半年しか経験していなかったため、ビジネスマナーや報連相などの社会人としての基本的なコミュニケーションは、利用当初はほとんどできていませんでした。

困ったことがあっても直接相談してくることがほぼなかったため、支援員は「自ら発信してほしい」と伝え続けました。日報で報告ができても、困った時にすぐに相談することができなかったためです。このような相談が苦手な上に、障害特性から疲れを感じにくいようでしたので、支援員から「疲れていないか」「大丈夫か」と声をかけるようにもしました。

疑似就労やグループワークを通し、目線も少しずつ合わせられるようになってきました。もともと責任を持って物事に取り組む姿や、人の助けになろうとする姿が見られ、徐々に他の利用者からの信頼を得るようになりました。みんなを引っ張っていくリーダーというよりは、土台から支えてくれるような存在だったように感じています。Gさん自身も、このような変化を実感していたようです。

就労実習を経験するも厳しい評価を得る

他の利用者の就職活動に関する発表などを聞く中で、「そろそろ自分も就職活動を始めたい」という思いが芽生えてきた様子のGさん。支援員としても、まずははたらく現場を見て、学んでもらいたいという思いがあり、就労実習を勧めました。3日間の実習を経験しましたが、企業からのフィードバックは厳しいものでした。「メモを取ろうとしない」「指示待ちの姿勢だ」などの指摘があったのです。これらの指摘は、ミラトレの中でも支援員が感じていたものと同じでした。企業からのフィードバックを、自身でしっかりと課題として受け入れます。そして、改めて実習先の企業へ応募することを決意されたのです。

前向きに課題に取り組む姿が評価された

実習で厳しい評価を受けた企業への応募を決め、応募書類の準備や面接練習などを重ねました。まだ1社目ということもあり、準備万端で望んだ面接ではありませんでしたが、自分の伝えたいことを物怖じせず堂々と伝える様子が見られました。就職活動も数をこなさないと結果が得られないと思っていたので、切り替えて次の応募先を選んでいたところ、内定の通知が届きます。課題をきちんと認識し改善に向けて行動している点が評価されたのです。内定先の企業は、現在の姿だけでなく、伸びしろへの期待も込めて、内定を出してくれたようでした。

求めた配慮は「指示は一つずつ」「メモを取る時間を」

ミラトレ利用開始から約1年で見事内定を得た就職先の企業は、人材サービスの会社です。もともと希望していた事務の仕事であること、自分のできる範囲の仕事であること、個人でする仕事も多いことからこの企業を選んだようでした。

企業側からは、実習中受け身の姿勢が見られたことで、自主的に動いてくれるかという不安の声が挙がっていました。そこで支援員は企業に対し、ミラトレでもそうだったように環境に慣れることにより徐々に改善するはずだと伝えました。本人からは「指示は一つずつ出してほしい」「メモを取る時間を作ってほしい」などの配慮事項を企業に求めています。

フィードバックやアドバイスを素直に受け入れ改善している

現在のGさんは、人材の登録業務や書類のマスキング作業などを担当されているそうです。当初は入力ミスなども多かったようですが、業務に慣れてきた今では、自分でチェックができるようになったと話しています。また、リモートワークをせざるを得ない環境の中で、報連相のタイミングが図りづらかったようでしたが、支援員が具体例を交えながら「こういうことがあったら、こうするといい」とアドバイスを送ると、素直に受け入れ改善していく様子も見られました。

「新しい業務を任させるようになりたい」「色々な業務を覚えていきたい」と意欲的に仕事に取り組んでいます。ミラトレを利用した約1年間はとても良い時間だったそうです。ミラトレでの日々を振り返り、「自分の居場所が作れた」「一つひとつトライしてできなかったことができるようになり、自信がついた期間だった」と話してくれています。

※プライバシー保護のため、事実を元に文章を一部再構成しています。