気分障害の方が、就職し長くはたらき続けるためには、どのような工夫が必要なのでしょうか。産業医科大学教授、江口尚先生の解説のもと、気分障害の基礎知識や、仕事選びのポイント、長くはたらき続けるためのコツを紹介します。
目次
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1.気分障害について
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1-1.気分障害の主な症状
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1-2.気分障害の発症要因
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1-3.気分障害の主な治療方法
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2.生活するために活用したいサポート
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3.周りの人が理解するべきこと
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3-1.家族ができるサポートについて教えてください
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3-2.気分障害の方への接し方で、注意すべき点はありますか?
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3-3.気分障害の方の就職に向けて、家族はどうサポートしたらよいでしょう?
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4.仕事選びのポイント
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4-1.気分障害の方はどのようなステップを踏んで就職を目指したらよいでしょうか?
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4-2.気分障害の方に向いている仕事や、注意が必要な仕事はありますか?
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5.はたらき方の形、仕事を続けるコツなどを解説
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5-1.気分障害の方が、長くはたらき続けるために必要なことは何でしょうか?
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5-2.どのようなはたらき方をすれば、長期就労につながりますか?
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5-3.再発しないためにはどのような工夫がありますか?再発したらどうすればよいでしょう?
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6.まとめ
気分障害について
気分障害は、長期間にわたって過度に気持ちがふさぎ込む「うつ状態」や、過度に気持ちが高揚する「躁状態」、またはその両方を示す「双極性障害」といった感情的な障害のことを指します。なお現在、アメリカ精神医学会が出版している、精神疾患の診断基準・診断分類の最新版「DMS-5」からは「気分障害」という診断名が消えています。しかし、双極性障害と抑うつ障害群の断定がしづらい場合などは「気分障害」とした方がイメージしやすいこともあり、現在も気分障害は双極性障害や抑うつ障害群の通称として使われることがあります。今回の記事でも、双極性障害や抑うつ障害群を指す通称として気分障害という表現を使っています。
気分障害の主な症状
気分障害の主な症状としては、意欲低下や気分の落ち込み、食欲不振、不眠などがあります。これは一般的な抑うつ障害の場合にみられます。また、双極性障害では、気分が過剰に高揚する、突然思い切った行動をとる、気分の振れ幅が大きいといった症状があらわれやすいです。
不眠や食欲不振が継続してみられたら、気分障害のサインです。特に不眠は、最初にあらわれやすい症状といえます。「眠れなくなる」「朝早くに目が覚める」状態が2週間続いたら、心療内科等を受診しましょう。最初のうちは、本人は変化を感じていても、周りはそれに気づかないこともあります。しかし、症状がある程度進行すると、家族や同僚など身近な人も、表情の変化やため息といった変化を感じやすくなります。
不眠や食欲不振が継続してみられたら、気分障害のサインです。特に不眠は、最初にあらわれやすい症状といえます。「眠れなくなる」「朝早くに目が覚める」状態が2週間続いたら、心療内科等を受診しましょう。最初のうちは、本人は変化を感じていても、周りはそれに気づかないこともあります。しかし、症状がある程度進行すると、家族や同僚など身近な人も、表情の変化やため息といった変化を感じやすくなります。
気分障害の発症要因
気分障害は、遺伝的要因もありますが、ストレスなどの環境的要因によって発症しやすいといわれています。同じストレスがかかっても、気分障害になる人とならない人がいます。発症リスクが異なるのは、遺伝的要因やストレス耐性など、もともとの性質によるものが大きいです。また、ストレスの種類も人それぞれで、長時間労働やハラスメント、人間関係、仕事上の大きなトラブル・事故などの仕事に関するストレスが原因の場合もあれば、身内やペットの死、家庭内の不和などが原因の場合もあります。
ただし、ストレスだけの原因や一人ひとりの性質だけが原因で、障害を発症するわけではありません。一般的に、社会や家庭のストレスである「心因性」、もとの性格や気質などの「内因性」、身体的な疾患による身体の不調といった「外因性」の3つが組み合わさることで、発症につながると考えられています。
ただし、ストレスだけの原因や一人ひとりの性質だけが原因で、障害を発症するわけではありません。一般的に、社会や家庭のストレスである「心因性」、もとの性格や気質などの「内因性」、身体的な疾患による身体の不調といった「外因性」の3つが組み合わさることで、発症につながると考えられています。
気分障害の主な治療方法
気分障害の主な治療方法は薬物療法です。睡眠を促す薬や抗不安薬、抗精神病薬などが一般的ですが、あらわれる症状により、処方される薬も異なります。薬の効果も人によってそれぞれなので、自己判断で薬を減らしたり飲むのを止めたりしないようにしましょう。
また、認知行動療法によって、自分の認知の「癖」を認識して対処する経験を積んでいく治療方法もあります。症状が完全に治まることは難しいですが、障害のある自分と向き合うことにより、少しずつ付き合い方がわかってくるはずです。加えて、しっかりと休養をとることも大切な治療方法の一つです。
また、認知行動療法によって、自分の認知の「癖」を認識して対処する経験を積んでいく治療方法もあります。症状が完全に治まることは難しいですが、障害のある自分と向き合うことにより、少しずつ付き合い方がわかってくるはずです。加えて、しっかりと休養をとることも大切な治療方法の一つです。
生活するために活用したいサポート
気分障害のある方の生活を支えるためには、さまざまなサポートがあります。これらを上手に活用し、生活基盤を整えましょう。
その他、職場の産業医や学校の精神科医、スクールカウンセラーなどにも相談できます。産業医を置いていない会社の場合は、都道府県に設置されている産業保健総合支援センター(さんぽセンター) が相談窓口となっています。
その他、職場の産業医や学校の精神科医、スクールカウンセラーなどにも相談できます。産業医を置いていない会社の場合は、都道府県に設置されている産業保健総合支援センター(さんぽセンター) が相談窓口となっています。
- 医療費のサポート
・自立支援医療
精神科の治療のため、定期的・継続的に通院している場合、かかった医療費を補助してもらえる制度です - 暮らしと社会生活のサポート
・精神障害者保健福祉手帳
税金の優遇制度や交通機関の割引、公営住宅への優先入居など経済的・福祉的なサービスを利用することができます - 生活費のサポート
・障害年金
病気やケガによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に受け取ることができる年金です - 就労のサポート
・就労移行支援事業所
・ハローワーク
・地域障害者職業センター
・障害者就業・生活支援センター(なかぽつ) - さまざまな相談ごとのサポート
・保健所
└都道府県別の保健所一覧
・精神保健福祉センター
└全国精神保健福祉センター一覧
・病院の患者会や家族会
└みんなねっと
周りの人が理解するべきこと
気分障害の方を支える家族や周りの人は、どのような困りごとがあるのでしょうか。家族ができるサポートや職場の方に理解してほしいことについて、産業医科大学教授 江口尚先生に解説いただきます。
【監修者】
産業医科大学 産業生態科学研究所
産業精神保健学研究室 教授
江口 尚氏
【専門分野】
職場の心理社会的要因、治療と仕事の両立支援、障害者や中小企業の産業保健
家族ができるサポートについて教えてください
本人の意見や意向、考えなどを聞きましょう。どのように過ごすと安心したり、気持ちが落ち着いたりするのか本人に聞いた上で、本人の過ごしやすい状態をつくっていただきたいです。例えば、不眠や食欲不振などがあれば、仕事を休むことを勧めてあげても良いでしょう。
家族から見て、無理をしていると感じることがあったら、無理をしないようにアドバイスしてあげてください。もし本人が「大丈夫」といっていても、家族が大丈夫に見えていなければそれはきっとよい状態ではありません。本人の話を聞き尊重する対応も大事ですが、無理をし続けてしまう場合は、「2週間食欲不振が続いたら休む」などのルールを決めて、休むように促すとよいと思います。
家族から見て、無理をしていると感じることがあったら、無理をしないようにアドバイスしてあげてください。もし本人が「大丈夫」といっていても、家族が大丈夫に見えていなければそれはきっとよい状態ではありません。本人の話を聞き尊重する対応も大事ですが、無理をし続けてしまう場合は、「2週間食欲不振が続いたら休む」などのルールを決めて、休むように促すとよいと思います。
気分障害の方への接し方で、注意すべき点はありますか?
本人を無理に動かそうとしないでいただきたいです。「ゴロゴロしている」「怠けている」と指摘し、動くように促すのはやめましょう。決して焦らせないことや、プレッシャーをかけないことが大切です。休日の活動量が激減しているのは、心身の不調を訴える警告であると考え、無理をせず、ゆっくりと休むようにアドバイスするとよいと思います。
気分障害の方の就職に向けて、家族はどうサポートしたらよいでしょう?
まずは、本人が「就職したい、はたらきたい」と思うまで待ってあげましょう。ご家族には相談相手になっていただきたいです。フルタイムではたらけそうか、それとももう少し休養が必要そうかなど、家族の目から見てどうかを本人に伝えてあげるのもよいと思います。就労移行支援事業所のサポートを受けるなど、就職を目指す方法も本人と一緒に考えられるとよいですね。
仕事選びのポイント
気分障害の方が就職する際、仕事を選ぶときのポイントはあるのでしょうか。就職活動をする上で大切にすべきことなど、江口先生に解説いただきます。
気分障害の方はどのようなステップを踏んで就職を目指したらよいでしょうか?
気分障害のある方が就職を目指す場合、まずは障害との付き合い方を習得できるとよいと思います。症状が落ち着いていても、医師から服薬継続の指示があれば従いましょう。認知行動療法を通して、症状があらわれたときの対処方法を知り、実践できる状態になると就職を目指しやすいと思います。
就職活動を進める上では、できる限り実習や職場見学などへ行き、自分に合っている職場環境かを確認するとよいでしょう。具体的には、丁寧に仕事を任せてくれそうか、キツイことをキツイと言えるか、フォロー体制は整っているか、自分のストレスに対する脆弱さを理解してくれるかといったことを確認します。すべてを満たす職場は少ないでしょうが、少しでもこれらの条件に一致する職場があれば、気分障害のある方にとってはたらきやすさにつながると思います。
就職活動を進める上では、できる限り実習や職場見学などへ行き、自分に合っている職場環境かを確認するとよいでしょう。具体的には、丁寧に仕事を任せてくれそうか、キツイことをキツイと言えるか、フォロー体制は整っているか、自分のストレスに対する脆弱さを理解してくれるかといったことを確認します。すべてを満たす職場は少ないでしょうが、少しでもこれらの条件に一致する職場があれば、気分障害のある方にとってはたらきやすさにつながると思います。
気分障害の方に向いている仕事や、注意が必要な仕事はありますか?
自分に合っていれば、職種や業種を限定することなく、どのような仕事でも「向いている」といえるでしょう。一般的には、納期が長く定型的な仕事や自分のペースで作業ができる仕事が、気分障害の方がはたらきやすいともいわれますが、一概には言い切れません。就労移行支援事業所で培った経験やスキルを活かせる仕事もよいでしょう。自分がきちんと振り返りができていて、同じような状況になった場合の対処行動もとれるのであれば、元の職場への復帰や、同じ職種・業種への就職も問題ないと思います。
注意が必要なのは、無理をしなければならない仕事です。元の職場環境が原因で障害を発症したのであれば、同じ環境に再び身を置くのは望ましくありません。夜間勤務や交代勤務があるなど、薬の服用のタイミングが難しく、生活習慣の乱れがおこる可能性のある仕事についても、注意が必要です。薬を服用している方も多いと思いますので、運転する必要のない仕事が望ましいでしょう。
注意が必要なのは、無理をしなければならない仕事です。元の職場環境が原因で障害を発症したのであれば、同じ環境に再び身を置くのは望ましくありません。夜間勤務や交代勤務があるなど、薬の服用のタイミングが難しく、生活習慣の乱れがおこる可能性のある仕事についても、注意が必要です。薬を服用している方も多いと思いますので、運転する必要のない仕事が望ましいでしょう。
はたらき方の形、仕事を続けるコツなどを解説
就職自体がゴールではありません。本当に重要なのは、就職後に長くはたらき続けることです。気分障害の方が仕事を続けるコツについて、江口先生に解説いただきます。
気分障害の方が、長くはたらき続けるためのコツはありますか?
気分障害は、障害を発症する前の状態に戻るわけではありません。長くはたらき続けるためには、今の状態でできることに合わせていくことが大切です。気分障害という自分の障害や状態を、しっかりと受容しましょう。自分の得意や不得意、どのようなことにストレスを感じるのかを自他ともにわかっていれば、障害とうまく付き合いながらはたらき続けることができると思います。
もちろん家族など支援者のサポートがあることも重要でしょう。自分で「もう大丈夫」と思っていても、大丈夫ではない場合もあります。そのようなときに、家族や同僚など第三者の目線でフィードバックしてくれる存在があれば、仕事のペースや進め方などを要所要所で考えることもできるでしょう。
もちろん家族など支援者のサポートがあることも重要でしょう。自分で「もう大丈夫」と思っていても、大丈夫ではない場合もあります。そのようなときに、家族や同僚など第三者の目線でフィードバックしてくれる存在があれば、仕事のペースや進め方などを要所要所で考えることもできるでしょう。
どのようなはたらき方をすれば、長期就労につながりますか?
自分の体力なども考慮し、最初のうちは8時間のフルタイム勤務ではなく、時短勤務の契約社員や、週4日勤務の非正規雇用などを選択するとよいと思います。無理せずにはたらける時間や日数からはじめることが、はたらき続けるためには大切です。
また、天気の変化などがきっかけで突発的な休みが必要な場合もあるので、急に自分が休んでも代理が効くと、罪悪感や不安の軽減に効果があるでしょう。例えば、ペアでの仕事などであれば、安心してはたらけます。勤務時間についてあらかじめ職場へ伝えておくこととしては、残業がまったくできないのか、週に1回1時間程度であればできるのかなど、自分の限界を伝えておくとはたらきやすさにつながります。
また、天気の変化などがきっかけで突発的な休みが必要な場合もあるので、急に自分が休んでも代理が効くと、罪悪感や不安の軽減に効果があるでしょう。例えば、ペアでの仕事などであれば、安心してはたらけます。勤務時間についてあらかじめ職場へ伝えておくこととしては、残業がまったくできないのか、週に1回1時間程度であればできるのかなど、自分の限界を伝えておくとはたらきやすさにつながります。
再発しないためにはどのような工夫がありますか?再発したらどうすればよいでしょう?
気分障害に限らず、多くの精神障害は再発の可能性があります。再発しないためには、無理をしないことが一番です。よく寝て、よく食べて、しっかりと気分転換をしましょう。再発のサインとして、一番わかりやすいのは不眠です。睡眠が乱れたり、眠れない日があったりしたら注意が必要ですので、無理をせずに、主治医に相談するとよいでしょう。
少しでも不安なことや心配なことがあったら家族に相談できるよう、日々コミュニケーションをとっておきましょう。家族から見て心配なことも、伝えてもらえるとよいですね。職場の同僚や上司などに、自分のできることと難しいことを伝えておくことも、無理をしないための工夫といえます。もし再発してしまったら、産業医や主治医に相談しましょう。休職も選択肢に入れつつ、つらくなりすぎる前に有給休暇などを使って休養するのも大切です。
少しでも不安なことや心配なことがあったら家族に相談できるよう、日々コミュニケーションをとっておきましょう。家族から見て心配なことも、伝えてもらえるとよいですね。職場の同僚や上司などに、自分のできることと難しいことを伝えておくことも、無理をしないための工夫といえます。もし再発してしまったら、産業医や主治医に相談しましょう。休職も選択肢に入れつつ、つらくなりすぎる前に有給休暇などを使って休養するのも大切です。
まとめ
気分障害のある方が就職し、長くはたらくためのさまざまなコツを紹介しました。長くはたらくためには、自己理解や障害受容など、まずは自分を知ることが大切です。一人ではどうしたらよいかわからないときは、精神科や心療内科といった医療機関、就労移行支援事業所などの外部サービスを利用し、サポートを受けることもよいでしょう。
執筆 : ミラトレノート編集部
パーソルダイバースが運営する就労移行支援事業ミラトレが運営しています。専門家の方にご協力いただきながら、就労移行支援について役立つ内容を発信しています。
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