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公開日:2022/4/20更新日:2026/5/31
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就職ガイド –はたらく選択肢-

アスペルガー症候群の特性がある方の仕事選びのポイントや長くはたらき続けるコツ

アスペルガー症候群の特性がある方の仕事選びのポイントや長くはたらき続けるコツ

アスペルガー症候群は、自閉スペクトラム症(ASD)のうちの一つで、コミュニケーションや社会性に難しさを感じる発達障害です。知的発達や言語発達に遅れが見られないことが多いため、社会に出て初めて生きづらさを感じて発覚するケースもあります。
アスペルガー症候群の特性がある方が、就職し長くはたらき続けるためには、どのような工夫が必要なのでしょうか。
産業医科大学教授 江口 尚先生の解説をもとに、基礎知識や仕事選びのポイント、長くはたらき続けるためのコツをご紹介します。

【この記事で分かること】
●アスペルガー症候群の基礎知識と主な特性
●アスペルガー症候群の特性がある方がはたらきやすい仕事の選び方
●アスペルガー症候群の特性がある方の就労支援や周りの人のサポート方法

目次

アスペルガー症候群の基礎知識

アスペルガー症候群とは、知的発達や言語発達に遅れが見られないものの、社会性やコミュニケーションに特性があらわれる発達障害です。
なお、かつて自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー症候群などの名称で呼ばれていた特性は、現在は、「自閉スペクトラム症(ASD)」の診断名に統一されています。

生まれつきの特徴のため、幼少期に診断を受けることが多いですが、大人になってから判明するケースもあります。これは、子どもの頃は「子どもだから」と「個性」と見過ごされていたものの、社会人になって直面する仕事上のトラブルなどをきっかけに、アスペルガー症候群の診断を受けることがあるためです。知的発達や言語発達に遅れが見られず、障害に気づきにくいケースが多いようです。

アスペルガー症候群の主な特性

アスペルガー症候群の主な特性は3つ挙げられます。
  • 主な特性
    ・コミュニケーション・社会性の難しさ
    ・感覚過敏や感覚鈍麻
    ・興味・関心の狭さや偏り
アスペルガー症候群の特性がある方に多く見られるのが、社会性やコミュニケーションの問題です。相手視点で考えることが苦手であったり、微妙な言い回しや表情から意図を汲み取るのが難しく、社交辞令や冗談が伝わりづらいケースも見られます。人との社会的な相互関係を築くことが苦手な傾向があります。

コミュニケーションの問題以外にも、同じ行動を繰り返す、単純作業を極端に好む、特定のことへの興味やこだわりが強いといった行動のユニークさが見られます。
その他、視覚や聴覚、嗅覚、触覚、味覚などの感覚に敏感さや鈍感さが見られることも多いです。例えば、太陽や照明の光が強くまぶしく感じられたり、タバコや化粧品、インクなどのにおいにより体調が悪くなったりする方もいます。
反対に感覚が鈍い場合もあり、空腹感や疲労を感じにくい、熱いものに触れても気づかないといった特性のある方もいます。

アスペルガー症候群の要因

ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)は、先天的な脳の機能異常により引き起こされると考えられています。胎児の頃の影響や分娩時の低酸素による影響などが、関係する場合もあるようです。
また、遺伝的な要素も発症に関与すると推定されています。ただし、何がきっかけとなりASDの特徴があらわれるかは定かではありません。

アスペルガー症候群の主な治療方法

アスペルガー症候群は、「個性」の一つです。治療により治るものではないことを前提に、社会生活を送る上での困難さを軽減するための手段として、「療育」という方法があります。療育では、自分の特性を知った上で、社会への適応方法や、他の人が感覚で理解できることなどを、学びを通して理解できるようになります。
療育はできるだけ早い時期から始められるとよいものの、大人になってからソーシャルスキルトレーニングなどを受ける方法もあります。ソーシャルスキルトレーニング(SST)とは、人と人とが関わりながら生活していく上で必要とされる能力を身につけるための訓練です。

就労移行支援事業所や障害者職業センターなどでも、ソーシャルスキルトレーニングを受けることが可能です。また、発達障害に詳しいクリニックなどでのカウンセリングも、自己理解・障害理解を助ける上で有効です。

アスペルガー症候群そのものに対する薬はありませんが、二次的に不眠や抑うつなどの症状がある場合には、それに応じた薬を服用し、症状を和らげることが可能です。

アスペルガー症候群の特性がある方の仕事選びのコツ

ここからは、産業医科大学教授 江口先生の解説を交えながら、アスペルガー症候群の特性がある方の仕事選びのコツを解説します。
産業医科大学 産業生態科学研究所  産業精神保健学研究室 教授 江口 尚氏

【監修者】
産業医科大学 産業生態科学研究所
産業精神保健学研究室 教授
江口 尚氏

【専門分野】
職場の心理社会的要因、治療と仕事の両立支援、障害者や中小企業の産業保健
 

アスペルガー症候群の特性がある方が比較的はたらきやすいのはどのような環境ですか?

ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)の特徴はさまざまですので、本人に合った仕事がはたらきやすさにつながると考えます。自分の強みを整理した上で、強みをいかせる仕事に就けるのが理想です。例えば、単純作業を好む特徴のある方だったら、単純作業を根気よく繰り返すような仕事が、自分の強みもいかせてはたらきやすいかもしれません。

特定のものごとへの興味やこだわりが強い場合、細かな部品の管理などで力を発揮できることもあります。自分に合った仕事を見つけるため、まずは、しっかりと自分の強みを認識することが大切です。

アスペルガー症候群の特性がある方にとって注意が必要な仕事はありますか?

ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)の方は、変化の多い仕事に就くことに難しさを感じる場合が多いです。仕事の手順も、自分で決めたルールに沿って進めるなど、強くこだわる傾向があります。
急に手順を変えなければならなかったり、新たな作業を追加せざるを得なかったりする状況には、うまく対応できない場合が多いです。そのため、さまざまな人に対応しなければならない接客業なども注意が必要でしょう。

ただし、イレギュラーが発生した場合には別の人が対応を担ってくれる、接客業の中でも単純作業を中心におこなうなどの配慮に対応できる場合であれば、はたらくことが可能です。
そのためには、自分に必要な配慮事項を、きちんと言語化して職場に求めることが大切でしょう。

アスペルガー症候群の特性がある方が向いている仕事の例

アスペルガー症候群の特性がある方は、「自分の強みを活かせる仕事」がはたらきやすさにつながります。アスペルガー症候群の特性から考えると、論理的思考や集中力、こだわりの強さなどを活かせる仕事が向いているでしょう。ここでは、アスペルガー症候群の特性がある方が向いている仕事の例をご紹介します。
  • ・論理的思考・集中力を活かせる仕事
    ・プログラマー・システムエンジニア
    ・Webライター・デザイナー
    ・データアナリスト・データサイエンティスト
    ・ゲームテスター・品質管理
プログラマーやシステムエンジニアなどの業種は、一人で作業を完結できることが多く、対人関係が苦手な方でもはたらきやすい傾向があります。また、Webライター・デザイナーは、アスペルガー症候群の特性がある方が持つ独自の感性を活かせることがあります。
  • こだわりの強さ、専門知識を活かせる仕事
    ・研究職
    ・CADオペレーター
研究職やCADオペレーターといった仕事は、アスペルガー症候群の特性がある方が持つ、こだわりの強さや専門知識を活かせる傾向にあります。細部まで正確に作業を進めることや、決められた手順に沿って業務を行う場面が多く、特定の分野に深く集中して取り組みたい方に向いているといえます。
  • 正確性・ルール遵守を活かせる仕事
    ・データ入力・経理
    ・校閲者
正確性やルール遵守に対して強いこだわりを持っている方は、正確さが求められるデータ入力や経理、校正・校閲の仕事で、その特性を活かせる可能性があります。また、ルール遵守が求められることが多いことから、仕事がしやすいと感じやすいでしょう。

これらはあくまでも、アスペルガー症候群の方の一般的な傾向をもとにした目安であるため、ご自身の得意分野や興味関心に合った仕事を選ぶことが大切です。

アスペルガー症候群の特性によって注意が必要な仕事例

アスペルガー症候群の特性がある方は、変化の多い仕事や複数人を相手にする仕事は向いていない場合があります。すべての人に当てはまるわけではありませんが、ここでは特性によっては不向きな仕事の例をご紹介します。
  • 対人コミュニケーションが多く発生する仕事
    ・接客業
    ・営業
接客業や営業といった対人対応が求められる仕事は、単に人を相手にするだけではありません。相手の反応によって言葉を選んだり、その場の雰囲気や状況からニーズを汲み取る必要があります。マニュアルにはないような、柔軟な対応が求められることが多く、ルール遵守などこだわりが強い場合は向いていない可能性があります。
  • マルチタスクが発生する仕事
    ・レジ打ち
    ・受付、事務
レジ打ちや受付・事務といった仕事は、一度に複数のタスクをこなすことが求められます。単純作業を好むという方は、合わないと感じる場面があるでしょう。また、急なトラブルへの臨機応変な対応が求められる場面では、アスペルガー症候群の特性がある方は難しいと感じる可能性があります。

アスペルガー症候群の特性がある方が仕事を続けるコツ

アスペルガー症候群の特性がある方が就職後に長くはたらき続けるには、自分の特性を理解し、周囲への相談も積極的に行うことが重要です。ここでは、産業医科大学教授 江口 尚先生にアスペルガー症候群の方が仕事を続けるコツについてもお聞きしました。

アスペルガー症候群の方が、長くはたらき続けるためのコツはありますか?

「アスペルガー症候群の方が長くはたらき続けるためには、自身の障害をきちんと受け入れられていることと、自分の特性を職場に伝えられることが大切です。
得意なことと苦手なことをきちんと整理し、必要な配慮を職場に伝えましょう。

例えば、音やにおい、光などの刺激に対して過敏に反応してしまい、仕事に支障が出てしまう場合には、それらを緩和できる環境の工夫を求めるとよいです。苦手なことについては、職場に配慮を求めるだけでなく、自身でトレーニングすることにより、対処できるようになる場合もあります。

就労移行支援事業所や障害者職業センターなどでの、ソーシャルスキルトレーニングも有効でしょう。」

※関連記事:「就労移行支援とは
※関連記事:「SST(ソーシャルスキルトレーニング)とは?職場でのコミュニケーション改善に役立てるには

アスペルガー症候群の特性がある方が、はたらけなくなる状態を避けるためにはどうすればよいでしょう?

「アスペルガー症候群の特性がある方は、仕事上のトラブルなどが原因で、二次的に抑うつなどの精神症状があらわれることもあります。症状が重くなると、はたらけなくなる場合もあるでしょう。

そのような状態を避けるためには、自分と職場の相性を考えて就職することです。実際にはたらいてみないとわからないこともありますが、うまくいかないことなどがあれば、家族や支援者に相談するとよいでしょう。

もし、アスペルガー症候群の特性が強くあらわれるようになったり、不眠や食欲不振などの抑うつ症状があらわれたりした場合には注意が必要です。そのような症状が出た場合には、主治医に相談して、ストレス源を突き止める、休職するなどの対応を考えなければなりません。
とは言え、自分では気づけない場合もありますので、家族や周りの方に指摘してもらえるよう伝えておくとよいでしょう。」

アスペルガー症候群の特性がある方の家族や周りの人のサポート

アスペルガー症候群の特性がある方を支える家族や周りの人は、どのように本人に接するとよいのか、迷うかもしれません。
産業医科大学教授 江口 尚先生に、家族や周りの人のサポートについてもお聞きしました。

家族や周りの人ができるサポートについて教えてください

「アスペルガー症候群の特性がある方は、独特なコミュニケーションや行動をとることが特徴です。本人の気持ちを理解し何でも肯定するような関わり方よりも、家族や周りの方は本人が自分で気づきを得られるよう促すことが大切だと考えます。
どのような関わりができるか悩む場合は、主治医の先生や支援センターなどに相談し、本人との接し方を学ぶとよいでしょう。

アスペルガー症候群は、人によっても特徴のあらわれ方がさまざまなので、本人の状況に応じた対応を学ぶとよいと思います。そのためにも、医療機関や発達障害者支援センター、障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)などの相談機関で、専門家の意見を聞いてみてほしいです。」

アスペルガー症候群の特性がある方への接し方で、注意すべき点はありますか?

「アスペルガー症候群の特性がある方と接する際、過剰に気をつけなければならないことは特にありません。ただ、少しコミュニケーションをとりづらい可能性もあると認識して接することが、時には必要かもしれません。前提として捉えておけば、トラブルを減らすことにもつながるでしょう。

対人コミュニケーションにおいては、誰しもがトライ・アンド・エラーで接し方を学んでいくところがあると思うので、アスペルガー症候群の方と接する際にも、さまざまな方法を試しながら、お互いにとってストレスの少ないコミュニケーションを模索してほしいです。」

アスペルガー症候群の特性がある方の就職に向けて、家族はどうサポートしたらよいでしょう?

「アスペルガー症候群の特性がある方の就職に向けて大切なのは、本人が自分の強みや課題を認識することです。自分の強みをしっかり発見し、苦手な点を具体的に整理できると、就職活動も進めやすくなります。

家族は、本人が強みや課題を見つけられるよう、客観的にフィードバックするとよいでしょう。周囲は苦手な点に目が向きがちです。意識的に本人の強みも意識してフィードバックしましょう。
どのように伝えればよいか悩む場合は、病院やさまざまな支援機関に本人と一緒に訪れ、相談できればよいと思います。」

アスペルガー症候群の特性がある方が仕事をするためのサポート

アスペルガー症候群の特性がある方の就労や生活を支える、さまざまなサポートがあります。例えば、就労に関するサポートとして、就労移行支援事業所やハローワークなどの支援機関が挙げられます。支援を上手に活用し、安定した就労につなげましょう。

法的に定められた合理的配慮とは

「合理的配慮」という法的に定められているサポートがあります。これは、障害のある方が能力を発揮して業務を行えるよう、事業者に過度な負担とならない範囲で、勤務時間や業務内容、職場環境などを柔軟に調整することが求められています。ただし、障害のある方からの申し出が前提となるため、早めに会社側へ相談する必要があります。

※関連記事:「※関連記事:「合理的配慮とは?就職時の流れや企業での具体例をわかりやすく紹介

アスペルガー症候群の特性がある方が活用できる支援

精神科医や職場の産業医、スクールカウンセラーなどに相談できます。勤務先が産業医を選任していない場合は、都道府県に設置されている産業保健総合支援センター(さんぽセンター)に相談するとよいでしょう。さらに、就労に関してお困りの場合は、以下のサポート先も活用できます。
  • 就労のサポート
    ・就労移行支援事業所:障害のある方が一般企業への就労を目指すための福祉サービス
    ・ハローワーク:障害者雇用専用の窓口が設置されている無料の職業安定所
    ・地域障害者職業センター:障害のある方の特性に応じた専門的な就労支援を行う施設
    ・障害者就業・生活支援センター(なかぽつ):障害のある方の就労と生活を支援する専門機関
就労移行支援事業所は、障害のある方が一般企業で長くはたらくためのスキルを身につける場所です。一般企業への就職や復職を考えている方は、就労移行支援事業所の利用をおすすめします。
また、保健所や精神保健福祉センターなどでも、生活のことなどさまざまなことの相談が可能です。

アスペルガー症候群の特性でお悩みの方は就労移行支援事業所「ミラトレ」に相談しよう

アスペルガー症候群の特性がある方が就職し、長くはたらくためのさまざまなコツをご紹介しました。長くはたらくためには、自己理解や障害受容など、まずは自分を知ることが大切です。一人ではどうしたらよいかわからない場合は、精神科や心療内科といった医療機関、就労移行支援事業所などの外部サービスを利用し、サポートを受けるとよいでしょう。

アスペルガー症候群の特性により、はたらきにくさを感じているなら就労移行支援事業所の「ミラトレ」にご相談ください。ミラトレでは、各分野の専門家が連携し合い、一人ひとりの課題や能力に配慮しながらはたらき続けられるようサポートします。続けられるか不安、きちんとスキルが身につくのか不安という方も、まずはお気軽に資料請求や事業所見学をご検討ください。

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監修者:戸田 幸裕(とだ ゆきひろ)

パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 事業戦略部 ゼネラルマネジャー
上智大学総合人間科学部社会学科卒業後、損害保険会社にて法人営業、官公庁向け営業に従事。2012年、インテリジェンス(現パーソルキャリア)へ入社し、障害者専門のキャリアアドバイザーとして求職者の転職・就職支援に携わったのち、パーソルチャレンジ(現パーソルダイバース)へ。2017年より法人営業部門のマネジャーとして約500社の採用支援に従事。その後インサイドセールス、障害のある新卒学生向けの就職支援の責任者を経て、2024年より現職。
【保有資格】
■国家資格キャリアコンサルタント
■障害者職業生活相談員