基礎知識

公開日:2023/7/31
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就職ガイド –はたらく選択肢-

自閉スペクトラム症(ASD)の方に合ったはたらき方や仕事内容を紹介

自閉スペクトラム症(ASD)の方に合ったはたらき方や仕事内容を紹介

発達障害のひとつである自閉スペクトラム症(ASD)にはどのような特徴があり、この障害と向き合いながらはたらき続けるにはどのようなことに気をつければ良いのでしょうか。はたらく上でさまざまな悩みを抱えることがあるかもしれません。しかし、特性を活かしながら社会で活躍する方も数多くいます。自閉スペクトラム症(ASD)の方に合ったはたらき方や仕事内容を解説するとともに、ミラトレの就職事例や就労に向けて活用できる支援制度も紹介しますので、参考にしてください。

※参考:厚生労働省「ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)について

自閉スペクトラム症(ASD)の方の特徴

自閉スペクトラム症(ASD)の症状には個人差がありますが、主に下記のような特徴があります。

集中力が高い

時として高い集中力を発揮する特徴があります。いったん没頭すると、他のことが目に入らなくなったり体に負担がかかったりと、困りごとが生じる場合もあるでしょう。しかし、ひとつの目標に向かってコツコツと取り組むことで、豊富な知識や技術を身につけられる方もいます。

こだわりが強い

特定の物や場所、行動に愛着を持ちやすいといった「こだわり行動」も特徴のひとつです。例として、お気に入りの行動を繰り返したり、いつも同じ道順を歩いたりと、独自のこだわりを貫く傾向があります。また、体を前後にゆすったり、ひらひらと手を動かしたりといった動作を繰り返す「常同行動」も、こだわりのひとつとして挙げられます。

ルールに従うことが得意

ルールにしたがい正しい手順で物事を進めることを好む傾向もあります。さまざまなルールや業務マニュアルをしっかり守りたいという思いから、ルールに反していることや人に違和感をおぼえることもあります。製品の細かな違いや書類のミスに気づきやすいため、仕事内容によっては強みになることもあります。一方で、ルールや習慣に執着してしまうあまり、変化に対応できずにパニックになってしまうこともあるため、注意が必要です。

関連記事:「ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)の人の仕事選びのポイントや長くはたらき続けるコツ

自閉スペクトラム症(ASD)の方が抱えやすい仕事上の悩み

自閉スペクトラム症(ASD)の方は、はたらく上でどのような悩みを抱えやすいのでしょうか。一例を取り上げます。

臨機応変な対応が難しい

変化を好まない傾向があります。業務内容や職場のルール、人員配置に変更が生じると、不安を感じます。また、臨機応変な対応を苦手とする方もいます。

例として、準備された書類を入力する作業は得意でも、調べものやレイアウト変更など、独自のアレンジを求められると混乱してしまう方もいます。

上手にコミュニケーションを取れない

人間関係に悩む方もいるでしょう。相手の立場に立って考えたり、場の空気を読んだりすることが苦手な傾向があるようです。思ったことをそのまま言葉にしてしまい、職場で誤解を受けてしまうケースがあります。また、「あれ・これ・それ」や「少なめ・多め・適度」など、あいまいな指示は理解しづらいと感じることもあるかもしれません。

二次障害にも対処する場合がある

不安に敏感といわれる自閉スペクトラム症(ASD)の方のなかには、適応障害や社交不安障害などの二次障害に悩む場合もあります。二次障害を併発すると、併発した障害に合わせた対処も必要になってきます。そのため、ますますはたらき方に悩む方も少なくありません。

自閉スペクトラム症(ASD)の方が強みを発揮できる仕事・不得手な仕事

長期的にはたらくためには、仕事内容や職場環境とのマッチングが大切です。ここでは、向いている仕事と向いていない仕事を紹介します。

強みを発揮できる仕事

多くの方が面倒に感じる作業を着実かつ正確におこなえる傾向があります。ルールを正しく適用することが得意なため、マニュアルがしっかり整備されている書類チェック、文字校正、書類整理、データ入力、清掃などは向いている仕事といえます。

不得手な仕事

表情や言葉のニュアンスから人の気持ちを読み取ることが苦手な傾向にあります。コミュニケーションに難しさを感じる方は、営業職や受付などの業務は避けた方が良いでしょう。また、マルチタスクや臨機応変に対応しなければいけない仕事も不向きといわれています。
自分の適性を理解することによって活躍の場を見極めましょう。

自閉スペクトラム症(ASD)の方の就職事例

この章では、自閉スペクトラム症(ASD)の方の就職事例を紹介します。

メンタルトレーニングを重ね、再就職を果たすまで

対人関係に悩みを抱えて仕事を退職したCさんは、自閉スペクトラム症(ASD)という診断を受けた後も障害者支援を受けることにためらいを感じていました。就労移行支援事業所「ミラトレ」に通所したことがきっかけで、メンタルトレーニングや体調改善などの必要性を実感します。トレーニングの成果が現れた時点で就職活動を開始し、晴れて内定を獲得します。

関連記事:「自閉スペクトラム症(ASD)の30代男性Cさんの就職事例

はたらき方に対する視野を広げ、専門職の道へ

自閉スペクトラム症(ASD)のTさんは、設計の職に就いたものの、職場での人づきあいに抵抗感を抱いていました。「自分に合う職場環境を探したい」と退職し、就労移行支援事業所「ミラトレ」への通所を決意。コミュニケーションに関する講座や集団でおこなうトレーニングを通じて、コミュニケーションに関する苦手感を克服し、ビジネスの場における適切な対応を身に着けることができました。就職活動をスタートし実習に参加してみると、自分に合ったはたらき方が見えてきたそうです。自分の特性を理解した上で就職活動を進めた結果、専門職の仕事に就くことができました。

関連記事:「自閉スペクトラム症(ASD)の20代男性Tさんの就職事例

自閉スペクトラム症(ASD)の方が就職するための支援

自閉スペクトラム症(ASD)の方の就労に役立つ支援機関を紹介します。
各地域に設置されており、ハローワークや就労支援機関と連携を図りながら職業リハビリテーションサービスを提供する機関です。障害のある方に対し、就職相談やジョブコーチによるサポート、就労継続支援などを実施しています。
仕事を探している方に向けて、さまざまなサービスを提供する国の機関です。発達障害のある方に対し、チーム体制で就職に向けたサポートを実施しています。また、継続雇用へのきっかけづくりとして、働いた経験が乏しい方を対象として、常用雇用への移行を前提として行われるトライアル雇用という制度があります。これは、企業は3カ月間で仕事への適性を見極めて正式に採用するかどうかを判断するものです。

就労移行支援事業所

障害のある方が一般企業へ就職できるよう、職業訓練プログラムを実施しています。長くはたらくためのスキルと知識、メンタルコントロール法を身につけることができます。就職に向けた準備や就職活動をサポートしている他、事業所によっては就職後の定着支援もおこなっています。対象年齢は64歳までです。

自閉スペクトラム症(ASD)の方にも就労移行支援はおすすめ

自閉スペクトラム症(ASD)の方が長くはたらき続けるには、障害の特性を知り、自分に合った仕事内容や職場環境を選ぶことが大切です。

就労移行支援事業所「ミラトレ」では、自閉スペクトラム症(ASD)の特性を踏まえた職業訓練プログラムを実施し、「自分らしいはたらき方」を利用者の方と一緒に探します。無理なくはたらけるよう、生活習慣の改善やメンタルトレーニング、コミュニケーション能力の向上など、幅広い取り組みを展開。就職活動から内定後の定着支援までワンストップの支援をおこない、仕事に順応できるようサポートしています。

「はたらき続けることが難しい」「自分に合ったはたらき方がわからない」と感じている自閉スペクトラム症(ASD)の方は、一人で抱え込まずにお気軽にご相談ください。

執筆 : ミラトレノート編集部

パーソルダイバースが運営する就労移行支援事業ミラトレが運営しています。専門家の方にご協力いただきながら、就労移行支援について役立つ内容を発信しています。