基礎知識

公開日:2024/1/26
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就職ガイド –はたらく選択肢-

「会社が怖い」と不安を感じる人は適応障害の可能性も。うつ病との違いや対処法について

「会社が怖い」と不安を感じる人は適応障害の可能性も。うつ病との違いや対処法について

「会社が怖い」と感じ仕事に行くのが困難な人は、適応障害の可能性があるかもしれません。適応障害とは、何らかのストレスが原因で社会生活に悪影響が出ている状態のことで、主な症状は、不安感や抑うつ気分、緊張、無気力、食欲不振、不眠などです。多くの場合、ストレス要因が発生してから3カ月以内に発症するといわれています。「適応障害かもしれない」と感じたら、なるべく早く専門家に相談するとともに、ストレスを避けることが大切です。今回は、適応障害を発症しやすい人の傾向やうつ病との違い、適応障害かもしれないと感じたときの対処法を解説します。会社に不安を感じたり仕事に支障が出ている人は、この記事を参考に仕事が続けられる方法を見つけていただければ幸いです。

適応障害の原因になりやすい仕事のストレス因子

「会社に行きたくない」と感じることは、誰にでも起こりうることです。しかし、「会社に行こうとすると体が動かない」「会社に対して強い不安を感じ、食事や睡眠を十分にとれない」など、生活に支障が出ている場合は、適応障害の可能性を考えてみた方が良いかもしれません。

適応障害の発症には、必ず何らかのストレスが関わっています。「会社が怖い」と感じる人は、仕事や職場に対して悩みを抱えていることが多数です。
  • 仕事のストレス因子の一例
    ●人間関係の悩みがある
    ●業務内容に苦手意識がある
    ●業務量が多い
    ●環境の変化になじめない
    ●はたらき方に変化があった
たとえば、「チームに溶け込めない」「上司とうまくコミュニケーションが取れない」と感じる場合、人間関係がストレスになっている可能性があります。また、「周囲と比べて業務スピードが遅く自分を責めてしまう」「業務時間内で対応しきれない量の仕事をまかされる」など、業務の内容や量がストレス因子というケースもあるでしょう。異動や転勤、昇進の後に症状が現れた人は、環境の変化がストレスになっている可能性があります。

適応障害は、原因となっているストレスを取り除けば快方に向かうといわれています。具体的なストレス因子を明らかにすると気持ちが安定することがあるようです。ストレス因子の追及が症状緩和への第一歩ですが、自分の心と向き合うことがつらい場合もあるでしょう。周囲の人や専門家を頼りながら、ゆっくりと始めてみてはいかがでしょうか。

適応障害になりやすい人の性格傾向

適応障害は誰にでも起こりえますが、性格が発症の確率を左右するといわれています。ストレスをためやすいタイプの人は、適応障害のリスクが高まるでしょう。

たとえば、周囲に相談ができずに黙々と仕事に取り組むまじめな人は、知らず知らずのうちにストレスをためてしまいがちです。また、他人の評価が気になる人や完璧主義の人は、「ミスをしてはならない」というプレッシャーがストレスにつながるでしょう。

利他的な人は、自分よりも他人を優先するあまりフォローアップに努めたり、他人の痛みを我がことのように感じてしまったり、仕事量や精神的負荷が増えることがあります。他にも、繊細で気持ちの切り替えが苦手な人も、ストレスをためやすいといわれています。

「まじめ」や「几帳面」であることは美徳ともいえますが、その一方でストレス耐性が低い傾向にあるといわれています。個性や性格を大切にしながら、ストレスの回避法や解消法を身につける必要があるでしょう。

関連記事:「適応障害の人の仕事選びのポイントや長くはたらき続けるコツ

適応障害とうつ病との違い

適応障害は、抑うつ気分やだるさ、不眠など、うつ病とよく似た症状が現れることがあります。しかし、うつ病との大きな違いは「ストレス因子との距離」です。

適応障害の発症原因はストレスであり、ストレス因子から遠ざかれば6カ月以内に症状が収まるといわれています。しかしうつ病は、ストレス因子を取り除けば症状が改善するというものではありません。また、適応障害における抑うつ状態は一時的なものですが、うつ病の場合は抑うつ状態が長く続きます。

ただし、適応障害は6カ月経てば必ず改善するというわけではなく、ストレス因子への対処や適切な治療が必要です。適応障害の症状が悪化したり長引いたりした場合、診断名がうつ病などに変わる事例もあるため、「うつ病の予備軍」といわれることもあります。

適応障害かもしれないと思ったときに取るべき行動

「仕事に行こうとすると体調が悪くなる」「会社が怖くてたまらない」と感じた際、まずはどのような行動を取ると良いのか気になる人もいるでしょう。以下を参考にしてみてください。

ストレス因子を明らかにするための行動

まずは、一人で悩まず家族や友人、仕事仲間など、身近な人に相談してみてはいかがでしょうか。専門家の意見や視点が必要だと感じたら、主治医や産業医との面談をおすすめします。上司との意見交換も大切ですが、上司への相談がためらわれる場合は、人事担当者や同僚に相談するのも良いでしょう。誰かと会話するうちにストレス因子が明らかになってくるかもしれません。

メンタルヘルスの不調を周りに知られたくないという人は、自治体の相談窓口や厚生労働省のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」「こころの健康相談統一ダイヤル」「こころの健康相談統一ダイヤル」などから相談できます。

相談しても心の安定が得られないときや、周囲に相談できる相手がいないようであれば、早めに医療機関を受診しましょう。心療内科と精神科の両方に対応している医療機関がおすすめです。心療内科も精神科もメンタルヘルス不調を対象にしていますが、心療内科は体に現れた症状、精神科は精神に現れた症状に対して治療をおこないます。どちらかを選ぶ必要がある場合、めまいや動悸など身体症状が気になる人は心療内科を、抑うつ気分や不安など精神症状が気になる人は精神科を受診してはいかがでしょうか。

ストレス因子から離れるための行動

ストレス因子を取り除くには、「立ち向かう」よりも「避ける」方が症状改善の近道かもしれません。たとえば、上司からの威圧的な言動にストレスを感じている場合、上司に直談判するよりも配置転換を申し出た方が、時間的にも精神的にも負担が少ないでしょう。業務の内容や量がストレスの原因であれば、業務量や勤務時間の調整を勤務先に相談してみることをおすすめします。

とは言え、仕事上のストレスを回避しようとすると、業務に支障をきたす場合もあります。そのようなときは、健康を最優先して仕事そのものから離れることも視野に入れましょう。年次有給休暇制度や休職制度を活用して、心と体をリフレッシュしてください。病気を理由に4日以上会社を休む場合、「傷病手当金」の支給を申請することも可能です。有給休暇とは別に「病気休暇制度」が導入されている会社の場合、制度を活用することで収入や仕事を失うことなく療養に専念できます。制度の有無や運用ルールは会社ごとに異なるので、人事部に確認してください。

適応障害での異動や退職の際に診断書は必要?

仕事の環境を整えるために異動を申し出る場合、必ずしも診断書は必要ありません。しかし、医師の診断書があると、会社側も異動や職務変更の判断を下しやすくなるといわれています。医師と相談の上、診断書に「異動が必要」などの所見を記入してもらうと、会社側からの配慮を得やすくなる可能性があるでしょう。また、有給休暇や休職を申請する際に診断書を添えることで、会社も状況を理解してくれることもあるそうです。

仕事の調整や休職によって症状が改善しない場合は、退職を検討することも一つの手段です。無理をし続けると症状が長期化し、うつ病などに移行する可能性がないとはいえません。ただし、適応障害は判断力の低下を招く場合もあるので一人で判断せず、家族や医師と相談しながら慎重に検討しましょう。退職の場合も診断書が必須ではありません。しかし、退職の理由を口頭で説明するのは気が重いという人は、診断書を用意しておくと説明を短縮できる場合があります。また、診断書があると休養の必要性が会社側に伝わり、退職までの日数を短縮してくれるケースがあるようです。

関連記事:「適応障害で仕事を続けるか休職するかを迷っている人へ

適応障害のある人が再就職を目指すには就労移行支援がおすすめ

適応障害によって退職したら、まずは治療と休養に専念することが大切です。体調が安定した後、医師と相談しながら再就職活動の開始時機を見計らいます。

「新たな職場で業務や人間関係になじめるだろうか」と不安に感じ、再就職に向けた第一歩を踏み出しづらいこともあるでしょう。そのようなときは、就労移行支援の利用を検討してはいかがでしょうか。就労移行支援は、職業訓練から就職後の定着支援までワンストップのサービスを受けられる通所型の障害福祉サービスです。アドバイスやフィードバックを受けながら支援員と一緒に再就職を目指せるため、「一人では不安」「冷静な判断ができないかも」という適応障害の人におすすめします。

就労移行支援事業所「ミラトレ」では、支援員が一人ひとりに寄り添い、特性や体調に合わせたサポートをおこなっています。適応障害の人は再発を防ぐためにも、一人でタスクをため込まないことが大切です。支援員のアドバイスの下、体調を整えながら自分の適性に合ったはたらき方を見つけましょう。就労トレーニングや就職活動、職場実習など、再就職に向けたステップを支援員と一緒にのぼるうち、はたらき方のイメージが固まることもあります。「はたらきたいけれど適応障害が再発しないか不安」「自分に合ったはたらき方がわからない」という人も、まずはミラトレにご相談ください。

執筆 : ミラトレノート編集部

パーソルダイバースが運営する就労移行支援事業ミラトレが運営しています。専門家の方にご協力いただきながら、就労移行支援について役立つ内容を発信しています。