基礎知識

公開日:2023/10/30
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就職ガイド –はたらく選択肢-

適応障害で仕事を続けるか休職するかを迷っている人へ

適応障害で仕事を続けるか休職するかを迷っている人へ

適応障害のある方は、「仕事を続けられるのか」「休職や退職を検討した方がいいのか」という悩みをもっているかもしれません。心身の不調に対処しながらはたらくことはむずかしいと感じる方もいることでしょう。しかし、適切な対処をおこなうことで、長くはたらき続けることができるかもしれません。適応障害の特徴や、仕事を続けるメリット・デメリットについて解説しながら、長くはたらき続けるためのポイントを紹介します。適応障害のある方が今後のはたらき方を考える上で、この記事が参考になれば幸いです。

適応障害とは

適応障害とは、日常生活の出来事や状況にストレスを感じ、心と体に不調が表れて、社会生活に困りごとが出る状態のことをいいます。明確な原因があり、それがストレスとなって短期間の不適応反応が起こるストレス障害のひとつです。誰にでも起こりうる反応ですが、日常生活や対人関係に困りごとが出るほど過敏な状態になると、適応障害と診断されます。

適応障害の原因

ストレスの原因となる出来事や状況は、家族や友人との死別、職場の異動や人間関係、災害など人によってさまざまです。悪い出来事や不安をともなう出来事に限らず、恋愛や進学、就職、出産・育児など一般的に祝い事とされている出来事でも、ストレスになることがあります。

適応障害の症状

適応障害は、心と体にさまざまな不調をきたします。主な精神症状や身体症状は以下の通りです。
【精神症状】
  • 抑うつ、不安、怒り、焦り、緊張、意欲低下、集中力の低下、心配性、神経過敏 など
【身体症状】
  • 頭痛、腹痛、食欲不振、不眠、発汗、めまい、動悸、手の震え など
個人差はありますが、集中力や判断力が低下して業務上のミスをしたり、感情の起伏が大きくなって周囲の方とのコミュニケーションに影響が出たりするケースもあります。また、言葉遣いや運転が荒くなる、無断欠勤をするなどの行動が表れる方もいるそうです。

ICD-10の診断ガイドラインには、「発症は通常生活の変化やストレス性の出来事が生じて1カ月以内であり、ストレスが解消してから 6カ月以上症状が持続することはない」とあります。ストレス因を避けられない状況で慢性化した症状が続くと、診断名がうつ病や不安障害などに変わることがあります。つまり、適応障害はうつ病などの前段階の可能性があるのです。治療には、ストレスに適応する力を身につけるための認知行動療法や問題解決療法、薬物療法が取り入れられることもあります。

※関連記事:「適応障害の人の仕事選びのポイントや長くはたらき続けるコツ
※参考:厚生労働省「適応障害

適応障害を抱えながら仕事を続けるメリットとデメリット

適応障害と診断されたら、仕事を続けるべきか迷う方もいることでしょう。仕事を続けるメリットとデメリットを取り上げます。

適応障害のある方が仕事を続けるメリット

第一のメリットは、経済的な安定を図れることです。一定の収入があるということは、経済面はもちろん精神面の支えにもなります。定職と安定した収入をもっていることで、家族を安心させられる点もメリットのひとつです。

第二のメリットは、職歴に空白ができないことです。退職して療養すると、再就職に向けて活動する際、ブランクをどのように説明すべきか悩んだり、ブランクが長くなるほど再就職にためらいを感じたりするケースもあるでしょう。職歴に空白期間を作りたくない人にとっては、仕事を続けることがメリットになります。

適応障害のある方が仕事を続けるデメリット

適応障害があっても、周囲の人には病気だとわかりにくく、無理をしてしまいストレスをため込んでしまう場合があります。そのような状況が続くと症状が悪化し、仕事にミスが出たり、休みがちになるなど、職場での評価に影響を及ぼす可能性があるでしょう。また、無理にはたらき続けると、体調を崩して長期間の療養が必要となる場合もあります。

適応障害と向き合いながら仕事を続けるための対策

適応障害の方が仕事を続けるためには、どのようなことに気をつければ良いのでしょうか。

生活リズムを整える

適応障害の改善には、適切な睡眠や食事をとり、規則正しい生活を送ることが大切です。夜に眠れない場合は適度な運動を取り入れ、日中の活動量を増やすことも対策のひとつです。あまり眠れなくても気に病まず、決まった時間にベッドに入るようにしましょう。

気分の浮き沈みがあることを理解する

適応障害があると、日によって気分が浮き沈みします。一日の中で上下することもあり、午前中は気分が良いが午後になると落ち込む、逆に午前中は気分が重く午後になると晴れる、という人もいます。気分の波がある場合は、なるべく調子の良い時間帯にはたらく工夫をすると良いでしょう。

周囲の理解を得る

適応障害があると不安を感じやすいため、誰かに相談できる環境が大切です。家族や友人に仕事の悩みを打ち明けることでストレスを緩和できれば、気持ちの安定につながるでしょう。

職場へ相談する

職場にも理解してくれる人がいると、はたらく上で心強いものです。ストレス因が職場にある場合、上司や人事担当者と面談してもらい、異動や業務調整が可能かどうか相談しましょう。勤務時間の変更や在宅ワークへの移行といった業務調整によって、症状を改善できる場合があります。

職場に産業医がいれば、面談を申し込むのもひとつの道です。自分から上司に業務調整をお願いしづらい時は、まず産業医に相談してみてはいかがでしょうか。

※参考:厚生労働省「ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等

無理をしない

適応障害のある方は「無理をしない」「我慢しない」ことも大切です。長く仕事を続けるためにも、心身の調子が優れない時には勇気をもって休むことが大切です。また、長期プロジェクトよりは短期スパンの仕事を担当するなど、自分にとって負担が少ない業務に携われると良いでしょう。

仕事を続けるのがむずかしければ、休職・退職を検討

適応障害によって仕事を続けるのがむずかしいと感じたら、まずは休職を検討しましょう。ストレスの原因を解決しようと無理をするよりも、避けた方が良い場合があります。また、職場にストレス因がなくても、休職した方が症状を長引かせず、結果的に早期改善へつながることもあります。

休職期間や条件は企業ごとに異なるため、就業規則や人事担当者を通じて確認しましょう。休職中は、職場との報告連絡相談を定期的におこなうことが理想ですが、何より体調の安定を最優先として、焦らずに療養することが大切です。会社とのやりとりを負担に感じるなら、しばらくはメールを活用したり、負担に感じない程度に連絡頻度を少なくしてもらうことも良いでしょう。

復職時期を見極めることも大切です。ご自身の体調や気持ち面の回復について、しっかりと医師に相談し、会社とも今後のはたらき方について打ち合わせした上で、最適な時期を見計らいます。復職ではなく退職を視野に入れている方は、家族や医師と相談しながら慎重に検討しましょう。

復職の際は、リワーク制度(デイケア)の活用を検討してみてはいかがでしょうか。医療機関や就労移行支援事業所で実施しており、生活リズムの安定や障害特性の理解、職場復帰を支援してくれます。

※「適応障害でお悩でしたら、ミラトレに相談してみませんか

就労移行支援ミラトレでの適応障害の方の再就職事例

適応障害の方が再就職を目指す場合、就労移行支援制度を利用すれば、障害理解に基づく対処方法や就職活動において専門的なサポートを受けられます。就労移行支援事業所ミラトレで自分に合ったはたらき方を見つけた方の事例を紹介します。

職場でのコミュニケーション課題を逆手に、再就職のチャンスをつかめた

建設業に従事していたOさんは、建設現場の音がストレス因となって適応障害を発症しました。退職後、症状の改善を機に就労移行支援事業所「ミラトレ」への通所を決意。話し好きで一方的にしゃべりすぎてしまうという課題を逆に活かせるよう、コールセンターの会社に応募しました。面接で生き生きと話す様子が評価され内定を獲得し、正社員を目指して仕事に励んでいます。

※関連記事:「適応障害の30代男性Oさんの就職事例

20日間の実習を通じて自信をつけ、職業適性に合ったあこがれの職種と出会う

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適応障害と診断された後も一般雇用枠ではたらいていたGさんは、「自分のやりたい仕事を見つけて長くはたらきたい」と就労移行支援事業所への通所を決意。一人でがんばりすぎてしまう傾向があったため、「ミラトレ」ではタスクを手放すトレーニングや周囲に相談する習慣づけをおこないました。ものづくりが好きだというGさんは、はたらきながらCADを学べる企業に内定。就職後は定着支援によって人間関係を構築しながら、専門スキルを磨いています。

※関連記事:「適応障害の30代女性Gさんの就職事例

適応障害の方が長くはたらくには就労移行支援がおすすめ

「自分にどのような仕事が合っているかわからない」「長くはたらき続けることがむずかしい」という適応障害の方には、就労移行支援の利用をおすすめします。就労移行支援は、障害のある方の就職をサポートする障害福祉サービスのひとつです。

「ミラトレ」は、体調の安定を図りながらはたらく力を身につけられる就労移行支援事業所です。スキル向上に向けたトレーニングだけでなく、就職活動支援や職場体験実習、職場定着支援など、長くはたらき続けるためのサポートをおこなっています。「ミラトレ」で受けられるトレーニングや支援について知りたい方は、気軽にお問い合わせください。

執筆 : ミラトレノート編集部

パーソルダイバースが運営する就労移行支援事業ミラトレが運営しています。専門家の方にご協力いただきながら、就労移行支援について役立つ内容を発信しています。