就職事例

公開日:2023/6/27
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長期就労を阻む原因を見つけ憧れの職種に

医療業界/オペレーター職
適応障害の30代女性Gさんの就職事例

適応障害の30代女性Gさんの就職事例

30代/女性/適応障害

障害を抱えながらはたらくことに、難しさを感じる方もいるのではないでしょうか。1人で自分の適性に合った就職先を探したり、就職後の悩みと付き合ったりするのは大変かもしれません。パーソルダイバースの就労移行支援事業所「ミラトレ」を利用し、一般企業への就職を叶えた卒業生は多くいらっしゃいます。今回紹介するのは、適応障害の30代女性の就職事例です。自分に合った仕事を見つけられず、職場でのストレスを抱えたGさんが、就労移行支援を活用して就職するまでのストーリーと現在の様子を紹介します。

障害の特性を考えずに就職しても長く続かなかった

正社員として就職したGさんが仕事の悩みを感じ始めたのは、研修の担当を任された頃でした。県外への出張や深夜勤務が重なり、疲れがピークに達したことから転職の道を選びます。しかし、事務の仕事に就いたものの、体と心の不調が続き、職場の人の勧めで医療機関を受診されました。

医師による適応障害という診断結果を受け入れられないまま、2度目の転職を決意します。再び事務の仕事を選びましたが、相談環境が整っていない職場で、電話対応をはじめとするマルチタスクに追いつかず、ストレスを感じるようになります。再び体調を崩し、やむなく退職されました。

なかなか長期就労に結びつかない現実と向き合い、徐々に障害を受け入れた頃、就労支援という選択肢が見えてきたそうです。そのような中、インターネット検索でミラトレを見つけ、見学した事業所の和気あいあいとした雰囲気に安心感を覚え、通所することを即決されました。

「可視化」と「言語化」のトレーニングで、課題に取り組む

「なぜこれまで長期就労ができなかったのか、客観的なアドバイスを受けながら適職を見つけたい」と、前向きな姿勢で通所をスタート。初めは週4日の通所でしたが、穏やかで落ち着いた性格のGさんはすぐに周りの人と打ち解け、週5日の通所に切り替えられました。基本的なトレーニングと擬似就労に取り組んでいただく中で、さまざまな課題が見えてきます。

【課題1】自分のせいだと考えやすい

「うまくいかない原因は、環境ではなく自分のせい」と考えてしまう傾向があり、それが不調を招く原因の一つになっていたようです。物事を一歩引いた視点で眺められるよう、紙に書き出す取り組みをおこないました。

憶測ではなく事実として起こったことや結果を書き出し、「この時どうするべきだったのか」「この時どんな気持ちだったのか」「こうしていれば別の結果になっていたのでは」と、一つひとつ整理する試みです。この取り組みを通じて、「すべて自分のせいにしなくても、考え一つで結果が変えられる」と前向きな言動が増えるようになりました。

【課題2】一人でがんばりすぎてしまう

前職では、マルチタスクを抱えながら職場の人に相談できず、ストレスをため込んでしまいました。考えや悩みを打ち明ける習慣が身につくよう、面談の機会を多く設けます。

支援員から「手放すことの必要性」についてお話しするとともに、「やらないことリスト」の活用を提案しました。やるべきことを書き出し、その中から「やらなくてもいいこと」をチェックしていくリストです。これによって、タスクの優先順位や自分で処理できるキャパシティをつかめるようになりました。徐々に一人でがんばりすぎないようになり、ミラトレを退所する頃には人に任せることまでできるようになったのです。

【課題3】自分のやりたいことがわからない

仕事に対する希望がはっきりしないまま転職を繰り返したため、長期就労につながりませんでした。そのため、通所当初から「自分のやりたい仕事を見つける」ことが、ミラトレでの大きな目標だったのです。どのようなことに興味があって、どのような環境ではたらけると充実しているのか自分の気持ちを主軸に考えてもらうために、支援員が就労への道すじをつくるのではなく、ご本人が見つけるまでしっかり寄り添いサポートすることにしました。

職業適性検査を受けていただいた結果、空間認識能力が高いことがわかり、本人も「そういえば、昔からものづくりが好きだった」と話してくれました。「CADに興味がある」と打ち明けてくれたのもその時です。しかし、未経験の分野だったため、まだこのタイミングではCADへの挑戦は現実味を帯びていませんでした。

自己理解が深まり、自信がついたタイミングで就職活動を開始

「本当にやりたい仕事を見つけて長くはたらき続けたい」という意向を受け、仕事に対する視野を広げられるよう、実習への参加を提案しました。約20日間の実習を最後までやり抜き、就労に対する自信が生まれたようでした。実習期間中、困りごとを支援員に相談してくれたことにも大きな成長を感じました。一人で抱え込まず、周囲を頼りながら仕事を進める姿が見られた頃、本格的に就職活動を開始します。

伝える力を磨き上げた面接練習

元々コミュニケーション力はあったものの、考えを簡潔にまとめることが苦手なようでした。そこで、面接練習に重点を置き、面接問答集を使って質疑応答をおこないました。

最初は受け答えをコンパクトにまとめられませんでしたが、「本当に伝えたいのはどの部分?」と声掛けをし、伝える項目ごとに分けた上で優先度をつけるなど工夫し、余分な部分をそぎ落としていったのです。何度も練習を繰り返すうち、要点をしぼって話せるようになりました。

あこがれの職種と運命の出会い

ミラトレを卒業した後、一人で抱え込まずに仕事を進められるよう、相談体制の整った会社を探しました。経験のある事務職にしぼって2社に応募したところ、1社から内定をもらいます。しかし、実習に参加して、本当にやりたい仕事かどうか自分に問いかけた結果、辞退することにしました。この時、一度立ち止まって自分の気持ちを確認できたことは、ミラトレに通所する前に転職活動をしていた頃よりも大きく成長したと感じています。

ちょうどその頃、支援員がCADの求人を見つけました。実務に入るまでに半年間の研修期間が設けられており、有給でCADの技術を身につけられるという求人です。ご本人のやりたい分野であり、空間認識能力を活かせる求人ではありましたが、内定を辞退したばかりのタイミングだったので、少し緊張感をもちながらご本人に伝えました。支援員の不安とは裏腹に、理想の求人に出会えてとても喜んでいる様子でした。

新しいキャリアのスタート

CADの求人に応募し、熱意をしっかり伝えた結果、晴れて医薬品製造業の企業から内定をいただくことができました。ミラトレ通所開始から13カ月、本当にやりたい仕事と出会えるまで妥協せずに努力した成果だと感じています。

就職はゴールではなく、新たなスタートです。長期就労に向けて障害とうまく付き合えるよう、ミラトレで実践した「やらないことリスト」や気持ちの言語化トレーニングを今も続けています。

支援員も定着支援に力を入れ、就職後から定期的に続けているオンラインミーティングでご本人と企業担当者からお話を伺っています。自己発信力が身についたおかげで、体調や業務のことをしっかり話してくれますが、それでも上司には相談しにくいこともあるようでした。週に一度お電話にて勤務状況の報告をいただく中で、「仕事上の悩みは早めの相談が大切ですよ」と声掛けしたところ、人間関係の悩みを打ち明けてくれました。三者面談を通じて人事異動の調整などをお願いしたところ、悩みの解決につながったそうです。

今は人間関係のトラブルを乗り越え、職場のメンバーと一つのものをつくり上げる達成感を実感しているというGさんは、「ミラトレで新しいキャリアを始められた。長くはたらき続けながら、プライベートも充実させていきたい」と笑顔で語ってくれました。

※プライバシー保護のため、事実をもとに文章を一部再構成しています。

執筆 : ミラトレノート編集部

パーソルダイバースが運営する就労移行支援事業ミラトレが運営しています。専門家の方にご協力いただきながら、就労移行支援について役立つ内容を発信しています。