アサーションとは、相手の考えを尊重しつつ、自分の意見もしっかり伝える表現方法です。「言いたいことがうまく言えない」という人は、アサーションを身につけることで自分の気持ちを表現しやすくなり、職場や家庭の人間関係をより良くできるかもしれません。就労移行支援事業所のミラトレでは、コミュニケーションスキル向上の一環としてアサーショントレーニングをおこなっています。今回は、アサーションを身につけるメリットや、その方法を解説します。
アサーションとは
アサーションとは、相手と自分のどちらも大切にしながら自分の意見を伝えるコミュニケーション方法です。元々は1950年代のアメリカで、コミュニケーションや対人関係に悩む人のための行動療法として生まれました。「人は誰でも自分の意見を主張する権利がある」というアサーションの考え方は、1960年代から1970年代、人種差別を受けていた人に勇気を与えたともいわれています。1980年代になると日本にも広まり、教育や医療などさまざまな場面で活用されるようになりました。
アサーションの主なポイントとして下記が挙げられます。
アサーションの主なポイントとして下記が挙げられます。
- 自分のコミュニケーションのタイプ(傾向や特徴)を知る
- 自分の気持ちに気づき、言葉にする
- 相手の言動から、相手の気持ちを考える
また、アサーションを実践できている状態や人のことを「アサーティブ」といいます。
アサーションを身につけるメリット
障害のある人がアサーションを身につけることで得られる4つのメリットについて解説します。
自分を守れる
コミュニケーションが苦手な人は、自分の考えを発言できないことで相手の意見に従う形になり、残念な思いをした経験があるかもしれません。アサーションを身につけることは、自分の意見を相手に伝えたり正当な権利を主張したりと不利益から身を守るきっかけになるかもしれません。
ストレスを減らせる
上司や同僚のひと言に傷ついたり、自分の考えを伝えられずに後悔したりと、毎日の仕事の中でストレスが積み重なることもあるでしょう。しかし、「相手がなぜそのような発言をしたのか」を考え、「その言葉によって自分はこのような気持ちになった」と表現できるようになると、感情が整理されてストレスの軽減につながります。
人間関係がよくなる
アサーションの4原則は、「誠実」「率直」「対等」「自己責任」です。自分の気持ちに正直になることで、相手に対しても誠実になれます。また、良かれと思って遠まわしな言い方にするよりも、相手との関係性を意識し、適切な言葉にすることで、より良い形で相手に伝わるでしょう。自分の発言に責任をもつために、自分と相手の状況を考えて言葉を選び、角の立ちにくい表現方法を身につけると、公私を問わず人間関係が良くなります。
仕事のパフォーマンスが向上する
職場の人やクライアントに遠まわしな表現をすると、大切な内容が伝わらずトラブルになったり、報告・連絡・相談がスムーズに進まなくなったりするかもしれません。アサーションを身につければ自分の意図が相手に伝わりやすくなり、トラブルを避けられる可能性があります。情報のインプットとアウトプットがスムーズになり、スキルや職場環境の向上にもつながるでしょう。
アサーションにおける3つのタイプ
アサーションのトレーニングは、自分のコミュニケーションタイプを知ることから始まります。コミュニケーションタイプは以下の3つに分けられます。
アグレッシブ(攻撃的タイプ)
自分の考えが正しいと信じ、強く主張して相手を従わせようとするタイプです。相手の意見に耳を傾けなかったり、反論に対して攻撃的になってしまったりする傾向があり、人間関係に悪影響を及ぼすことがあります。
ノン・アサーティブ(非主張的タイプ)
自分の考えをはっきりと主張できず、あいまいな返答をしたり、自分の考えに反して相手の意見を受け入れてしまったりするタイプです。言いたいことを言えずに苦しい思いをしてしまうことや、どっちつかずの態度で相手を困らせてしまうことがあるかもしれません。やさしさがある反面、自信のなさが隠れている場合があります。
アサーティブ(バランスタイプ)
相手の発言に耳を傾けながら、自分の意見も言えるタイプです。自分の考えとは異なる意見も尊重し、妥協点を見いだせるよう歩み寄りができます。
アサーションの身につけ方
アサーションを身につけるためには、基本的な考え方を知り、日常会話の中で意識することが大切です。アサーションに役立つ理論を4つ紹介します。
アサーションに役立つ理論
■ I(アイ)メッセージ
I(アイ)メッセージとは、相手(YOU)ではなく私(I)を主語にした表現方法のこと。たとえば、遅刻が多い相手に対して「あなたは遅刻が多い」という言い方よりも、「時間通りに待ち合わせができると私は助かる」という言い方を選ぶ方法です。「あなた」を主語にすると非難や断定のニュアンスが強くなりますが、「私」を主語にすると対話の余地が生まれます。
I(アイ)メッセージとは、相手(YOU)ではなく私(I)を主語にした表現方法のこと。たとえば、遅刻が多い相手に対して「あなたは遅刻が多い」という言い方よりも、「時間通りに待ち合わせができると私は助かる」という言い方を選ぶ方法です。「あなた」を主語にすると非難や断定のニュアンスが強くなりますが、「私」を主語にすると対話の余地が生まれます。
■ DESC法(デスク法)
DESC法は4つのステップを大切にしながら、相手を不快にさせずに自分の意見を伝えるコミュニケーション方法です。
DESC法は4つのステップを大切にしながら、相手を不快にさせずに自分の意見を伝えるコミュニケーション方法です。
- D(描写):自分の気持ちや憶測を交えずに、相手の行動や状況をありのまま伝える
- E(表現):描写した事柄に対する自分の気持ちを率直に表現する
- S(提案):状況をより良くするためのアイディアを提案する
- C(選択):提案に対する相手の答えを受けて、次の行動を選択する
たとえば、職場で予定外の仕事を頼まれたとき、「無理です」というひと言ですませずに、「16時が締め切りの作業で手がいっぱいです」と状況を描写します。そして、断る際には「お力になれなくて心苦しいのですが」と自分の気持ちを伝えると良いでしょう。さらに、「16時以降であればとりかかれますが、いかがでしょうか」と代替案を提案すると、相手を尊重する気持ちが伝わります。相手がYESと返答すれば代替案を行動に移し、返答がNOであれば16時までの作業を後ろ倒しできるか確認するなど別の行動を検討・相談しましょう。
■ 非言語コミュニケーション
非言語(言葉以外)から伝わることもたくさんあります。同じ言葉を口にしても、声のトーンや表情、身振り手振りなどで印象は変わります。たとえば、話を聞いている最中に視線が泳いでいたり、メモを取る場面でペンを持たない・キーボードから手を離して頬杖をついていたりすると、やる気がない印象を与えてしまいます。他にも、知らず知らずのうちに強い口調になっていないか、不機嫌な表情になっていないかなど、自分自身でチェックしてみましょう。
非言語(言葉以外)から伝わることもたくさんあります。同じ言葉を口にしても、声のトーンや表情、身振り手振りなどで印象は変わります。たとえば、話を聞いている最中に視線が泳いでいたり、メモを取る場面でペンを持たない・キーボードから手を離して頬杖をついていたりすると、やる気がない印象を与えてしまいます。他にも、知らず知らずのうちに強い口調になっていないか、不機嫌な表情になっていないかなど、自分自身でチェックしてみましょう。
■ 依頼形
お願いごとがあるときは、命令形ではなく依頼形を用いるようにしましょう。たとえば、「この書類を30部コピーして」ではなく、「この書類を30部コピーしてもらえますか」と言い換えます。その際に、「もし手が空いていたら」「忙しいところ申し訳ないけれど」などのクッション言葉を添えると、相手への気づかいが伝わります。
理論を知っていても、実行に移すのはやさしいことではありません。何もかも一度に実践しようとせず、理論を頭の片隅に置いて、ときどき自分の会話を振り返ってみると良いでしょう。
お願いごとがあるときは、命令形ではなく依頼形を用いるようにしましょう。たとえば、「この書類を30部コピーして」ではなく、「この書類を30部コピーしてもらえますか」と言い換えます。その際に、「もし手が空いていたら」「忙しいところ申し訳ないけれど」などのクッション言葉を添えると、相手への気づかいが伝わります。
理論を知っていても、実行に移すのはやさしいことではありません。何もかも一度に実践しようとせず、理論を頭の片隅に置いて、ときどき自分の会話を振り返ってみると良いでしょう。
アサーションを身につける上で気をつけること
アサーションを身につける上で大切なことは、思い込みをなくすことです。たとえば、「人に言い負かされるのははずかしい」「上司の意見に反論してはいけない」「意見がぶつかったとき、相手にゆずらないのは頑固だ」といった思い込みをもっていると、アサーティブになれません。コミュニケーションに困ったときは少し立ち止まって、自分を見つめなおしましょう。
また、会話の結果を気にしすぎないことも大切です。たとえば、「相手を不快にさせたらどうしよう」「自分の発言が間違っていたらどうしよう」と心配して発言を控えてしまうと、アサーションにはつながりません。失敗は誰にでもあることなので、まずは話しやすい人に対して、気持ちや考えを素直に口に出す練習をしてみましょう。
また、会話の結果を気にしすぎないことも大切です。たとえば、「相手を不快にさせたらどうしよう」「自分の発言が間違っていたらどうしよう」と心配して発言を控えてしまうと、アサーションにはつながりません。失敗は誰にでもあることなので、まずは話しやすい人に対して、気持ちや考えを素直に口に出す練習をしてみましょう。
具体的なアサーションの事例
具体的なコミュニケーションの事例をタイプ別に見ていきましょう。
状況 | アグレッシブ | ノン・アサーティブ | アサーティブ |
---|---|---|---|
並んでいた列の前方に、割り込んできた人がいるとき | 「割り込むな」と怒る | 黙ってがまんする | 「私が先に並んでいたんです。並びなおしていただけませんか」と説得する |
相手が話すことの意味が理解できなかったとき | 「あなたの発言はわかりにくいです」と指摘する | わからないまま相槌を打つ | 「私の認識が間違っているかもしれないので、もう一度説明していただけますか」とお願いする |
仕事でミスをし、上司から感情的に怒られたとき | 同じように感情的になり、強い口調で言い訳する | 上司の気持ちが鎮まるように謝る | 「以後、気をつけます。申し訳ありません」と、まずは丁寧に落ち着いて謝る。自分の態度により、上司自身に、自分が感情的になっていることを気づかせる |
このようにアサーティブなタイプは、相手を攻撃せずに自分の意見や気持ちを伝えます。
障害のある人がアサーションを身につけ長期就労を目指すなら、ミラトレがおすすめ
企業ではたらくということは、考え方の異なる人と意見を交換しながら、より良い道を一緒に探す工程の繰り返しです。アサーションは、一人ひとりの意見に耳を傾ける「聞く力」と、自分の考えを発言する「話す力」を養う上で、取り入れたいスキルのひとつです。アサーションはストレスの軽減やセルフケアにも役立つので、障害と折り合いながら長くはたらきたい人にとっても役立ちます。職場だけでなく、家族や友人との人間関係にも良い変化をもたらすでしょう。
ミラトレでは、障害のある人がより良い人間関係を築けるよう、メンタルケア講座の一環としてアサーショントレーニングをおこなっています。講座を受講した上で実際に人と人で練習できるため、社会に出る前にアサーティブな考え方を意識した状態で就職活動に進めます。「自分自身のコミュニケーションタイプがわからない」「コミュニケーションや人間関係に悩んでいる」という人は、ミラトレにご相談ください。
次回のミラトレノートでは、ミラトレで実際におこなっているアサーショントレーニングの様子を紹介します。
ミラトレでは、障害のある人がより良い人間関係を築けるよう、メンタルケア講座の一環としてアサーショントレーニングをおこなっています。講座を受講した上で実際に人と人で練習できるため、社会に出る前にアサーティブな考え方を意識した状態で就職活動に進めます。「自分自身のコミュニケーションタイプがわからない」「コミュニケーションや人間関係に悩んでいる」という人は、ミラトレにご相談ください。
次回のミラトレノートでは、ミラトレで実際におこなっているアサーショントレーニングの様子を紹介します。
執筆 : ミラトレノート編集部
パーソルダイバースが運営する就労移行支援事業ミラトレが運営しています。専門家の方にご協力いただきながら、就労移行支援について役立つ内容を発信しています。
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