基礎知識

公開日:2024/3/28
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就職ガイド –はたらく選択肢-

ミラトレで学べる「アサーション」とは?実際の講座を体験レポート!

ミラトレで学べる「アサーション」とは?実際の講座を体験レポート!

就労移行支援事業所「ミラトレ」では、考え方や思い込みのクセに気づいたり、ストレスを減らして気持ちを楽にする方法を学ぶメンタルケア講座をおこなっています。今回は、メンタルケア講座のひとつ「アサーション講座」を紹介します。アサーションとは、自分も相手も大切にするコミュニケーション方法のこと。相手を尊重しながら、自分の考えや気持ちを伝える方法なので、職場の人間関係をより良くするために役立ちます。ミラトレで開催した講座を受講し、その内容や参加者の様子をレポートします。

ミラトレのアサーション講座

アサーションとは、「自分のことも相手のことも大切にするコミュニケーション方法」です。ミラトレでは利用者の方が「伝える力」を養えるよう、2015年からアサーション講座を始めました。現在は、大学院で心理学を専攻していたミラトレ上野センター長が講師をつとめ、毎年計3回のシリーズで講座を開いています。

講座では、アサーションの考え方や身につけ方についてわかりやすく解説するとともに、利用者自身が考えながら取り組めるよう、解説だけでなくグループワークの時間を多く設けています。アサーション講座は、利用者の方一人ひとりのコミュニケーションタイプを知り、より良い対人関係の構築につなげられるため、利用者にとって有意義な時間です。今回はミラトレ上野を拠点に8カ所の事業所をオンラインでつなぎ、10代から50代まで幅広い世代の利用者約130名がアサーション講座を受講しました。

アサーション講座の目的

まず、参加者にアサーション講座の目的とゴールについて伝えます。今回の講座の目的は、より良い対人関係をつくるためのコミュニケーション方法を身につけること。そして、自分のコミュニケーションタイプを知り、アサーションに対する理解を深めることをゴールに設定しました。
最初に目的とゴールを伝えておくことで、「アサーション」という言葉に耳なじみがなかった参加者も、どのような気持ちで参加すると良いのかが見えてきた様子でした。
アサーション目的

アサーションとは

次に、アサーションとはどのようなものか説明をおこないました。過去に受講した方もいましたが、約8割の方が初参加。アサーションという言葉を初めて聞いた方にとってもわかりやすいよう、スライドを使いながら丁寧に解説しました。

アサーションの考え方

アサーションとは「自他尊重のコミュニケーション」のこと。簡単にいうと、自分もOKで、相手もOKな状態になる伝え方のことです。相手の言うことをすべて聞き入れて自分が我慢してしまったり、反対に相手の言うことに耳を貸さず自分の意見を強く主張してしまったりすると、人間関係に悪い影響を及ぼすことがあります。より良い人間関係を築くためには、コミュニケーションのバランスをとることが大切で、バランスのとれた考え方を「アサーティブ」といいます。アサーションの考え方を知っていても、アサーティブなコミュニケーション方法を身につけるには時間が必要です。

ここで、アイスブレイクをはさみます。インプットが続く講座の合間にアイスブレイクをはさむことで、参加者の緊張をときほぐしました。この後に続くグループワークの雰囲気づくりにもつながります。事業所ごとに4、5名のグループをつくり、「自己紹介」と「冬から連想するものをたくさんあげる」というトークセッションをおこないました。自己紹介のテーマは事業所によって異なりましたが、好きな食べ物や最近あった良かったこと、楽しみにしている予定などについて語り合い、参加者それぞれの人柄が垣間見えました。「冬から連想するもの」も、かまくらや駅伝、サンタクロースなど、事業所ごとにバラエティに富んだ発言が飛び交いました。

関連記事:「障害のある人の就職にも役立つアサーションとは?言いたいことを上手に伝えるスキル」

アサーションのポイント

アサーションの1つ目のポイントは、「自分のコミュニケーションのタイプを知ること」。コミュニケーションのタイプには大きく分けて3種類あります。自分よりも他者を優先する「他者優先タイプ」と、自分のことを優先する「自己優先タイプ」、そして自分も他者も大切にする「アサーティブタイプ」です。時と場合によりタイプが変わる人もいると思いますが、たとえば少しストレスを感じているときに、自分はどのタイプに当てはまるのか考えてみるとわかりやすいかもしれません。

そして、2つ目のポイントは、「自分の気持ちに気づき、言葉にすること」。自分がなぜイライラしているのかうまく説明できないときに、自分の心の状態を表現してみるとアサーションの練習につながります。心がざわつく原因は、意外と言葉にすることは難しいものです。ミラトレの支援員との面談で自分に合った言葉を見つけていくこともできますが、自分で言葉にできると相談するのもスムーズになり、就職後に役立ちます。

3つ目のポイントは、「相手の言動から、相手の気持ちを考えること」。自分のことだけでなく、相手のことも考えないとアサーションは成立しません。相手がなぜこのような表情をしているのか、なぜこのような発言をするのか、考えてみることが大切です。

グループワーク1「自分のタイプはどちらか」

ここで自分はどのタイプだと思うか発表する時間を設けました。アイスブレイクで発言しやすい雰囲気づくりをし、無理なく発言できるように支援員がサポートしています。また、利用者同士でフォローし合うことも大事にしているため、意見交換が活発におこなわれます。

参加者からは、「家族で献立を決めるときに、“お寿司かカレーはどう?”と自分で選択肢を設定してしまうので、自己優先タイプだと思う」「コロナ禍で在宅支援に切り替わったことがきっかけで、人の意見を聞かずに自分で実行してしまいがちだと感じた」などの声があがっていました。

ほかの参加者からは、「自分が食べたいから”お寿司かカレーはどう?”って聞くのは自己優先タイプだけど、相手が回答しやすいように選択肢を出してあげているのであれば他者優先タイプと言えるかもしれませんね」といった意見があり、参加者は自分でも気づけなかった一面を見出せたようです。そして、「場所や状況が変われば、他者優先と自己優先の現れ方も変わってくる」「タイプは変わっていくものなので、今の自分がどうなのか考えてみることが大切」などの意見が交わされました。

アサーティブな考え方の流れ

講座の後半では、アサーティブな考え方を身につけるための流れについて説明をおこないました。

アサーションを身につけるステップ

アサーションの流れ
まずは、自分の気持ちに気づいて言葉にすることが感情のコントロールにつながります。ここで大切なのは、その場にふさわしい表現を考えることです。親しい家族や友人にはふさわしい表現でも、職場の同僚や上司に同じ対応をすると印象が悪くなってしまう場合もあるためです。また、自分の気持ちや考えが整理できたら、実際に発信することが大切です。

グループワーク2「相手の気持ちに気づくために」

ここで、アサーションの流れを実際に体験するためのグループワークを実施。「相手の気持ちに気づくために」をテーマに、どのような点から相手の気持ちを考えているのか、参加者に問いかけました。それぞれのグループで「相手が置かれている状況を見て、相手の気持ちを考える」「言葉だけでなく、表情や声色、態度から想像する」「あいさつの仕方や服装を見て、相手の気分を察する」といった意見が出てきました。

グループワーク3「言いたくても言えないとき」

続いて、「言いたくても言えないとき」をテーマに、自分のエピソードを振り返る時間を設けました。このテーマで最も多くあがった声は、「相手がいそがしそうなときに自分の意見を伝えられない」でした。ほかにも「相談することが恥ずかしいから」「相手に迷惑をかけてしまうかもしれないため」という理由で、自分の意見を言い出せないケースもあるようです。講座に参加する支援員から、「相手が忙しそうなときには、相手のデスクにメモを置いておくのもひとつの方法です」といった声掛けもありました。ミラトレでは擬似就労の中で利用者の方から支援員に報告・連絡・相談をおこなっていただきますが、そのトレーニングもアサーションの一環です。

ケーススタディ

最後に、講師がホームワークを提示しました。コミュニケーションが難しいケースを取り上げて、自分ならどのような反応や対処をするか考えてみる練習です。お題は以下の4つでした。
  • 1.レストランで注文したものと違うものが届きました。食べられなくはないものです。あなたはどうしますか?
  • 2.仕事の休憩中にプライベートの連絡先を聞かれました。気が進まない相手です。あなたはどうしますか?
  • 3.仕事の休憩時間に先輩から話しかけられると疲れてしまいます。ゆっくり休みたいと思っています。あなたはどうしますか?
  • 4.今取り組んでいる仕事で手がいっぱいですが、上司に新たな仕事をお願いされました。残業しないと対応しきれなさそうです。あなたはどうしますか?
この記事を読んでくださっている方も、アサーティブな回答を考えてみてはいかがでしょうか。1問目の回答例は、「もしかしたら自分が勘違いしているのかもしれないのですが、ペペロンチーノを注文したと思うので確認いただけますか?」でした。相手が間違っていると決めつけず、自分の責任もあるかもしれない、と前置きすることがポイントです。

アサーション講座のまとめ

まとめの時間では、大切なポイントを4つ取り上げて振り返りをおこないました。
  • アサーションは自他尊重のコミュニケーションのことです
  • 自分のコミュニケーションのタイプを知りましょう
  • 何を伝えたいのか整理して、自分も相手もOKという状態を目指しましょう
  • 実践できるようになるには、多くの場合、練習が必要です
今回は8つの事業所をオンラインでつないで開催しましたが、各事業所の個性が現れた意見が出てきました。それぞれの個性を尊重しながら、意見の共通点を見つけたり、一緒にゴールを目指したり、調和を図れるところも合同講座ならではの良さです。

アサーション講座も受けられるミラトレを活用してみては

「自分の考えを発信できるようになりたい」「角の立ちにくい話し方を身につけたい」という方は、アサーションを取り入れてみてはいかがでしょうか。アサーションは、面接や企業実習などの就職活動はもちろん、人間関係をより良く保ち、長くはたらき続ける上でも役立つスキルです。

ミラトレでは、アサーションをはじめとするメンタルケアやコミュニケーション、体調管理などのトレーニングもおこなっています。障害と折り合いながら自分に合った仕事を見つけ、安定した就労を目指す方は、ミラトレの利用を検討してみてはいかがでしょうか。3日間の無料体験利用を活用して、ミラトレの講座内容や雰囲気が自分に合っているか検討いただけますので、お気軽にご相談ください。

執筆 : ミラトレノート編集部

パーソルダイバースが運営する就労移行支援事業ミラトレが運営しています。専門家の方にご協力いただきながら、就労移行支援について役立つ内容を発信しています。