就職事例

公開日:2022/5/26更新日:2023/3/29
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できないことを認めた上で、できるようになるための工夫を凝らす

事務職/コンサルティング業
ADHD(注意欠陥・多動性障害)の30代男性Uさんの就職事例

ADHD(注意欠陥・多動性障害)の30代男性Uさんの就職事例

30代/男性/ADHD(注意欠陥・多動性障害)

今回紹介するのは、ADHD(注意欠陥・多動性障害)の30代男性の就職事例です。障害をオープンにしてはたらくことを決意したUさんが、ミラトレを利用し就職するまでのストーリーと現在の様子をご紹介します。

ミラトレを利用する以前は、お父様と共に家業を営んでいました。事務的な作業を担っていたそうですが、憂うつな状態が続き、気持ちが不安定となったことから病院を受診されます。
医師からはADHD(注意欠陥・多動性障害)であることが告げられました。幼い頃から忘れ物が多いなど、なんとなく感じていた生きづらさの原因がADHDであることがわかり、Uさんは安心したと言います。

ADHDと向き合いながら家業の仕事を続けていた矢先、お父様の病気が発覚。経済的に成り立たなくなったことから、一般企業への就職を決意されます。障害者向けの転職エージェントに登録したところ、就労移行支援事業所「ミラトレ」を紹介されました。
事務職としてはたらきたいけれど、未経験で自分に適性があるかわからなかったため、ミラトレで適性を見極めたいと考えたそうです。

強い使命感をもってミラトレの利用を決意

ミラトレ利用当初のUさんは、就職に対する強い使命感のようなものがあった様子です。障害者雇用の中でも高めの給与を希望されていましたし、その目標を叶えられるように自己研磨したいという強い気持ちが感じられました。

最初から事務職やPCを使う仕事を希望されていた背景には、長くはたらき続けたいという希望もあったのだと思います。
希望や目標が高い一方で、課題点もいくつか見受けられました。例えば、話が冗長的になりやすい、相手に対して上から目線で接するため不快感をもたれやすい、不注意によるミスが多いなどです。
また、制作物に対してこだわりを持って取り組むものの、納期に間に合わないといった課題も見られました。

もともと素直で前向きな方でしたので、支援員からのフィードバックも素直に聞いてくれました。
難しい課題に対しては、すぐに改善することこそできなかったものの、改善しようと努力する様子が見られます。

例えば、話が冗長的になりやすいという課題に対して、支援員が時間を決めて話すことや、あらかじめ話すことをメモしておくといったアドバイスを送ります。
時間はかかったものの、少しずつ改善が見られました。コミュニケーション面でも、グループワークを通して、当初に比べると相手の気持ちを考えたコミュニケーションができるように改善していきました。

通所開始当初の様子やその後の変化

もともとの生活リズムが安定していたため、通所開始当初よりスムーズに通所できた方です。体力面も問題なく、お休みすることもほとんどありませんでした。
障害受容に関しても、利用当初からある程度できていた印象です。ミスが多いことも自覚されていましたので、メモをしっかりと取るなどの対策を自身で工夫されてしている様子でした。

一方で、利用当初は目標にばかり目が向いてしまい、現状の自分を見ようとしない部分もありました。ミラトレでのトレーニングを通して、自分の特性に問題意識を持つようになります。
ややプライドが高い面もありましたが、それでは他の人とうまくいかないということに気づき、少しずつ改善が見られました。

高い目標よりも「安心」「長期」「ステップアップ」を重視

ミラトレを利用されて8カ月が経った頃から、就職活動を始めます。
通所が安定していたことと、自分から見た障害特性と他者から見た障害特性に相違がなくなったと支援員が判断したことから、就職活動開始に至ります。

家業に従事していたこともあり、本格的な就職活動は初めてだったUさん。
支援員は応募企業の選定からサポートをしました。本人はもともと目標を高く掲げていたため、給与面や知名度などを優先して選んでしまいがちでしたが、ある程度の定型業務があり、少しずつステップアップできるような企業はどうかとアドバイスを送ります。

そこからは「安心して長くはたらける職場」かつ「徐々にステップアップできる職場」を選ぶよう、意識が変化しました。
企業見学や実習前面談にも、積極的に参加されました。面接は支援員と共に練習を重ねます。
一人ではなく、複数の支援員と練習することにより、自分の意見をきちんと伝えられるようになりました。

実際の面接も経験を積むごとに、質問に対しても上手に答えられるようになっていく様子が見られました。そして、ミラトレ利用開始から1年後、希望していた事務職の就職を叶えます。

企業実習を通してはたらきたい気持ちが高まる

現在は、発達障害の方が多く所属されている外資系コンサルティング企業のサテライトオフィスで、契約社員として、事務の仕事を担当されています。

3日間の企業実習に参加し、「安心して長くはたける職場」であることや、「人と関わりながら仕事ができる」点から就職を希望されました。
実習時の企業からのフィードバックもポジティブなものばかりだったため選考に進んだ結果、内定を得ることができました。

就職先の企業には、「焦ってしまうことがあるのでメモを取る時間がほしい」「複数の指示がある場合、優先順位を確認する時間がほしい」といった2点を配慮事項として伝えています。

定着支援の中でのアドバイスも活かし、いきいきとはたらけている

就職後の定着支援の中では、完全在宅勤務となった関係で生活習慣に関する相談や、ミスの改善方法などの相談がありました。
生活習慣に関しては、もともと通勤に充てていた時間を使って運動するようアドバイスしました。ミスに関しては、どういうときにミスしてしまうのか一緒に振り返ります。

すると思い込みによるミスが多いことがわかったので、マニュアル通りに進めることを徹底するように伝えました。併せて、ミスを記録し上長と共有することもアドバイスした結果、同じミスを繰り返さなくなりました。

今では色々な工夫ができているようで、ミスもだいぶ減らすことができているようです。
きちんとフィードバックがもらえる職場環境も、本人が企業にフィットしたポイントだと感じています。

注意を受けた際も他責することなく、自身で改善しようとする意識が強いです。自分がミスした点は他の人もミスしやすいのではないかと感じ、マニュアルを改善するなどの工夫もできているとのことです。

就職してからは、自身のできないこともしっかりと認識した上で、できるようになるためのさまざまな工夫を凝らしている様子が見られます。

現在のUさんは、とても充実している様子で、自分ができるようになったことを嬉しそうに話してくれるのが印象的です。
はたらくことを楽しんでいるようで、課題に対しても前向きに取り組んでいます。業務上ではリーダーになることを目標としており、今はリーダー像との乖離を着実に埋めている最中だと言います。

自分に障害があると知ってから初めて、障害のある人たちの中に身を置くという経験をミラトレでしましたが、周囲の頑張りに励まされることも多かったと話してくれています。

※プライバシー保護のため、事実を元に文章を一部再構成しています。

執筆 : ミラトレノート編集部

パーソルダイバースが運営する就労移行支援事業ミラトレが運営しています。専門家の方にご協力いただきながら、就労移行支援について役立つ内容を発信しています。