就職事例

公開日:2023/7/26
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自分を客観視することが就労への第一歩になった

清掃職/環境整備業
ASD(自閉スペクトラム症)の20代男性Hさんの就職事例

ASD(自閉スペクトラム症)の20代男性Hさんの就職事例

20代/男性性/ASD(自閉スペクトラム症)

ASD(自閉スペクトラム症)を抱えながらはたらくことに、難しさを感じる方もいるのではないでしょうか。1人で自分の適性に合った就職先を探したり、就職後の悩みと付き合ったりするのは大変かもしれません。パーソルダイバースの就労移行支援事業所「ミラトレ」を利用し、一般企業への就職を叶えた卒業生は多くいらっしゃいます。今回紹介するのは、ASD(自閉スペクトラム症)の20代男性の就職事例です。社会人としてのマナーに課題のあったHさんが、就労移行支援を活用して就職するまでのストーリーと現在の様子を紹介します。

コミュニケーションが課題で退職し、就労移行支援の利用を決める

子どもの頃、ASD(自閉スペクトラム症)と診断されたHさんは、通常学級で学び大学に進みました。就職活動にも意欲的に取り組み、10社以上に応募した結果、商品販売の会社に就職します。接客を担当されましたが、お客様への対応や上司とのコミュニケーション、レジ業務などに難しさを感じ、3カ月で退職されました。

障害者雇用のある企業ではたらいた方が良いのではないかと考え、障害者手帳を取得。その際、ASD(自閉スペクトラム症)だけでなく、注意欠如多動症(ADHD)もあることがわかり、ご家族からの勧めもあって、就労移行支援を利用することにしたそうです。インターネットで就労移行支援事業所について調べたところ、ミラトレを知り、体験に来てくれました。

自己理解やパソコンなど、さまざまなプログラムを3日間体験した結果、ミラトレへの通所を決意されました。数ある候補のなかからミラトレを選んだ理由は、プログラムの内容とスタッフの対応、自宅からの距離だったそうです。あえて自宅から少し離れた場所にあるミラトレに通うことで、通勤のトレーニングになると考えてのことでした。

はたらく上での課題と向き合い、トレーニングをおこなう

体調が安定し、意欲もあったことから、週5日の通所からスタート。大らかな性格や、大きな声でハキハキと話す様子、周囲の人とのフランクなコミュニケーションが印象的でした。しかし、大らかな性格が時にルーズな行動につながったり、人に失礼な印象を与えてしまったりと、はたらく上では課題になることがわかってきました。

【課題1】ルーズな行動

トレーニング中、時間や締切を気にかけないことがありました。遅刻することがわかった時点ではなく、定時まぎわに連絡を入れるなど、時間を守ることへの意識が低かったようです。また、こちらからの声掛けに対して言い訳をしてしまうことも課題のひとつでした。

ビジネスマナーの基本として、やむを得ない事情を除いた遅刻や、指摘を受けた際に言い訳をすることは印象が悪くなることをわかってもらう必要がありました。ルーズな言動が見られたときはすぐに伝えられるよう、支援員全員で声掛けの仕方を共有しています。「その言動は周囲の人にどんな印象を与えると思いますか?」「もし、誰かからそう言われたらどう感じるでしょう?」と問いかけ、自分の行動を客観視してもらいました。身についた習慣を変えるのは大変でしたが、少しずつ改善する様子が見られました。

【課題2】言葉遣い

相手の年齢を問わずにフランクに会話できるところは長所のひとつでしたが、敬語をうまく使えないという課題でもありました。就職後、同僚やお客様に不快な印象を与えないよう、敬語を身につける必要があります。そこで、年齢にかかわらず敬語で話すトレーニングを実施。持ち前のハキハキとした話し方も活かせるよう配慮しながら、少しずつ社会人としての言葉遣いを身につけていきました。

就職活動の中で自分の適性に気づく

通所から1年を過ぎると、さまざまなスキルが身についただけでなく、物事への取り組み方にも変化が見られるようになりました。

はたらき方に対する視野を広げた就職活動

通所を開始した当初は独断で進めてしまうこともありましたが、自分から支援員に相談できるようになりました。報連相の基礎ができてきた頃、就職活動に踏み出すことをご本人に提案します。Hさんの希望は事務職でしたが、トレーニングを通じて、体を動かす作業も向いているのではないかと感じていました。そこで、事務職にしぼらず、さまざまな職種を比較検討していただくことに。転職エージェントにも登録し、キャリアアドバイザーから特性に合った職業をいくつか提案してもらいました。

実習を通じて適性とやりたいことがマッチ

複数の会社への応募を並行して進めるため、支援員と一緒にやることリストを作成してスケジュール管理をおこないます。実際の職場の雰囲気を体験できるよう、環境整備業の実習にも参加してもらいました。その結果、長時間座った状態が続く仕事よりも、場所を移動しながらはたらける環境整備業が自分に合っていると感じたようです。

環境整備業への就職を目指して、面接練習にも取り組みました。支援員は、「良く通る声だから、特に言葉遣いに気をつければ、好印象をもってもらえますよ」とアドバイスします。本番では、練習の成果と快活でやさしい人柄も伝わったようで、パートタイム雇用の内定をいただきました。通所開始から1年6カ月、社会人として再スタートを切ったのです。

就職後も支援員のサポートでビジネスマナーを向上

就職後は定着支援をおこなうことで、職場には伝えにくい相談もミラトレの支援員に相談できる環境があります。就職先は自宅から少し距離はありますが、ミラトレ通所期間中に通勤トレーニングもしていたおかげで、問題なく通勤できていると話してくれました。

ご本人の特性に合わせて特にビジネスマナーの習得に力を入れましたが、実際にはたらく現場でしか学べないこともあります。職場のルールで迷うこともあるかもしれませんが、少し時間がかかっても、都度確認しながら対応していくことが大切です。企業担当者やご本人との定期的な面談では、同僚とのコミュニケーションについて相談もありました。そのような時は、「みんなはこんな風に思っているのでは?」と、ほかの人の立場で考えてもらえるようアドバイスをしています。

勤務中の表情にはまだ硬さも見られますが、休日にミラトレに来た時には「ここでなら何でも話せる」と笑顔を見せてくれました。今後は「正規雇用を目指したい」と意気込みを語ってくれました。目標に向かって前進するHさんを、これからも応援し続けます。

※プライバシー保護のため、事実をもとに文章を一部再構成しています。

執筆 : ミラトレノート編集部

パーソルダイバースが運営する就労移行支援事業ミラトレが運営しています。専門家の方にご協力いただきながら、就労移行支援について役立つ内容を発信しています。