就職事例

公開日:2022/2/25更新日:2023/3/29
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複数の企業実習に行き、自分の得意を活かせる仕事がわかった

事務職/運輸業
知的障害の20代男性Rさんの就職事例

知的障害の20代男性Rさんの就職事例

20代/男性/知的障害

今回紹介するのは、知的障害のある20代男性の就職事例です。はたらくイメージが持てないまま高校を卒業したRさんが、ミラトレを利用して訓練や実習を経験しながら徐々に意欲を高めていき就職を叶えたストーリーと現在の様子をご紹介します。

小さな頃から「みんなと違う」と感じていたRさんは、中学進学時に特別支援学級に所属されたそうです。特別支援学級への進学を機に診断を受け、知的障害があるとわかったといいます。高校は障害者手帳を取得し、特別養護学校へ進学。高校卒業前に3~4社ほどの企業実習を経験しますが、はたらくイメージが持てず、最終面接で就職の意思決定ができなかったそうです。卒業が迫る中、就労移行支援という方法があると知り、ミラトレへ見学に来られました。

母の強い勧めがあり、体験利用を経てミラトレへ

ミラトレに見学に来られる前に、お母様から問い合わせがありました。卒業が迫る中、就職が決まらずどうしようかと思っていたようです。お母様お一人で見学に来られた後、本人も一緒に見学に来られます。卒業間際には学校からも連絡があり、3日間の体験利用をしてもらいました。

本人はお母様に「連れてこられた」という印象で、お母様から「はたらくとはどういうことなのかイメージをつけた方がいい」と強く勧められ体験講座を受けている様子でした。他の就労移行支援事業所も見学された中で、ミラトレが一番厳しすぎずゆるすぎず、居心地がよいと感じたそうです。そして、2カ月間の体験期間を経て、正式に利用を開始することとなりました。

ミラトレの利用意欲も上げるためにまずは環境づくりから

お母様からは「就労意欲を上げてほしい」「就職に向けての必要最低限のスキルを付けて欲しい」などのリクエストがありましたが、本人の希望は特にありませんでした。そもそも就労への意欲があまりないということは、ミラトレの利用意欲も高くはないのだなと考え、まずはミラトレに慣れてもらうところから始めます。

ミラトレの支援員も、あなたの敵ではないという環境づくりから始め、コミュニケーションや息抜きを目的としたミラトレ全体でのレクリエーションを企画、実行するなど工夫しました。このような活動により、徐々に支援員とのコミュニケーションもとれるようになってきます。

通所開始当初の様子

ミラトレ利用開始当初から、週5日安定して通所ができたRさん。生活リズムの乱れもなく、体力的な問題もなく通所ができました。トレーニングを進める中では、まず漢字が読めないという課題がありました。講座で使う資料なども、どこまでの漢字が読めるのか確認しながら、必要に応じてサポートしていきます。また、指示を理解するのに時間がかかったため、口頭での指示ではなく、指示をメモして渡すなど工夫しました。それでもなかなか理解が進まなかったため、実際にやって見せる方法をとります。すると理解も深まり、早く覚えられるようになったのです。

ビジネスマナーについても、通所当初に比べると大きく成長しました。学校では、他の生徒の面倒を見る側だったので、敬語を使う機会がなかったそうです。ミラトレでの訓練を通して、敬語が使えるようになりました。支援員との面談の機会も多く設け、本人に並走するような形で支援していきました。

職能検査と実習でしっかりと準備を進めた就職活動

就職に向けては、疑似就労のプログラムだけでは実際にはたらく姿をイメージしきれていない様子でした。そのため、実習の機会を他の方よりも多く設けます。実習前には職能検査を受けてもらい、自分の得意と不得意を理解してもらうことから始めました。実習を通して、自分の得意を活かせる仕事がしたいという意識に変わっていく姿が見られるようになります。具体的には、事務作業よりも体を動かす作業の方が得意で、自分に合っていると感じてもらえたようです。

毎月就職していく他の利用者を見る中で、「そろそろ自分も」という就職に対する意識が芽生えるようにもなりました。支援員も動き始めを後押しし、予定していた実習がすべて終わったタイミングで、面接練習を始めます。

自分の得意を活かせる、昔から馴染みのある企業への就職が叶う

実習を通してわかった自分の得意な部分を仕事に活かせるように、支援員と協力しながら、応募先の企業を探しました。就職活動では、実習ありきの企業からは、体力面やビジネスマナー、挨拶の点で高く評価してもらえました。しかし、障害者向けの人材紹介サービスに登録しようとした際、キャリアアドバイザーから「何のためにはたらきたいか」問われましたが、うまく答えられずに登録に至りませんでした。この面談を通して、自分の気持ちの甘さに気づいたといいます。登録には至らなかったものの、改めて就職する意識付けにつながり、その後の本人の様子からも改善が見られました。

そして、ミラトレ通所開始から1年5カ月後、運輸業の契約社員として内定を得ました。小さい頃からよく利用していたので親しみがもて、仕事内容をイメージしやすかったことから志望された会社です。面接の最後には、しっかりと自己アピールもでき、内定に至りました。就職先には、「指示は短く明確にしてほしい」「長い指示の場合は事前にメールがほしい、または実際にやって見せてほしい」といった配慮を求めています。

支援員のサポートも受けながら、自分の強みを活かしてはたらく

内定をもらってから、これまで支援員にサポートしてもらっていたことも、自分でやらなければという意識に変わったというRさん。入社前は、内定者向けの契約書類の記入に苦戦していた様子も見られましたが、支援員に手伝ってもらいながら理解を深めていきました。入社後も引き続き、書類の確認などのサポートをしています。職場に慣れるまではコミュニケーション面でも不安があった様子だったため、ミラトレでも徐々に環境に慣れていったように、少しずつ慣れていけば問題ないとアドバイスしました。

何よりも、本人の強みと業務内容がマッチし、忍耐強さや体力面を高く評価してもらえたことが、現在もこの企業で活躍できている要因だと感じています。とにかく今は、休まずはたらき続けることを第一優先に考え、いずれ正社員登用も目指せればと話しています。支援員からは、「わからないことがあったらきちんとわからないと言うこと」「配慮事項が守られないことなどがもしあれば、支援員に相談する」ようアドバイスしています。

※プライバシー保護のため、事実を元に文章を一部再構成しています。

執筆 : ミラトレノート編集部

パーソルダイバースが運営する就労移行支援事業ミラトレが運営しています。専門家の方にご協力いただきながら、就労移行支援について役立つ内容を発信しています。