今回は、うつ症状のある20代女性の就職事例をご紹介します。障害をクローズにして一般雇用ではたらいていたために、うつ症状が出た際、周囲に説明ができないことに悩みを感じていたBさん。障害者雇用枠での就職に挑戦することを決意し、ミラトレを利用して就職するまでのストーリーと現在の様子をご紹介します。
人間関係での困りごとから症状が強くなり退職
Bさんがうつ病を発症したのは大学生の頃でした。一時期は家族と生活することも困難で、祖父母と暮らしたこともあったそうです。
自身の障害と向き合いながら、福祉サービス事業所の支援員としてはたらき始めたBさん。支援業務だけでなく営業も担当するなど、幅広い業務に対応していました。障害があることをクローズにし、一般雇用枠でのパートタイマーとしてはたらいていましたが、次第に人間関係での困りごとが生じるようになります。マネージャーと現場担当社員の意見が異なり、どちらの指示に従えばよいのか混乱してしまったそうです。その影響で、もともとあったうつの症状が強くなってしまい、徐々に出社が困難になり、会社を退職することになります。
「障害者雇用」というはたらき方を考え、就労移行支援事業所の利用を決意
障害をクローズにしていると、うつ症状が出たときに勤務先に相談できないことを経験したBさんは、障害をオープンにしたはたらき方に変えようと考えます。「障害者雇用」にシフトするためにも、就労移行支援事業所を利用すべきではないかと思い、パーソルダイバースの就労移行支援事業所「ミラトレ」に相談に来られました。
お話をお聞きすると、若い頃に障害を発症していたこともあり、自身の障害に対する受容はしっかりできているようでした。前職でのトラブルに関しても、事実をもとに落ち着いた様子でお話をされます。一方で、他人の目を気にしたり、相手の気持ちを考えすぎたりする傾向が強く見られました。また、自分から積極的に発信することも苦手に感じているようでした。
個別プログラムでは疑似就労を通した人間関係の構築や自己発信をトレーニング
「人間関係の悩み」によって症状が強くでる傾向にあるBさんには、基本プログラムに加え、疑似就労を通して人間関係を構築するトレーニングを個別プログラムとして取り入れました。疑似就労では、利用者同士で役割を分担したり協力したりしながらのやり取りを行うため、仕事を想定した人間関係をイメージすることが可能です。
トレーニングを進めていく中で、他人の目を気にしすぎるあまり、疑問点や意見を自己発信できずに飲み込んでしまう姿が見られました。その積み重ねにより症状が表れてしまうため、自分から発信してもらうようはたらきかけを行っていきました。また、支援員との日々のコミュニケーションの中で信頼関係を築いていき、相談がしやすい環境を整えていきました。
通所開始当初の様子やその後の変化
ミラトレを利用し始めた最初の1カ月は、問題なく通所ができたBさんですが、翌月はほとんど来ることができなくなってしまいます。環境の変化によって、疲労感からうつの症状が強く出てしまったのです。そんな状況に対して支援員は、連絡を途絶えるさせることなく根気よく声がけを続けました。その結果3カ月目から、少しずつ通所できるようになっていきます。この時のことを振り返った際に、Bさんは「自分は諦めそうになったけれど、支援員やスタッフが諦めないでいてくれたことが支えになった」と話しています。
もともと人間関係の悩みを抱えていたため、他の利用者との関係性も最初は緊張している様子が見られました。しかし、疑似就労を通してさまざまな人と関わりを持つ過程で、疑似就労以外の場面でもコミュニケーションを取っている姿が見られるようになりました。症状のコントロールもできるようになり、相手によっては一定の距離を保つなどの工夫もできるようになったそうです。新しいメンバーが加わった際にも、丁寧かつ親切に教えている姿が印象的でした。
自信のなさや焦りから最初はうまくいかなかった就職活動。トライアル雇用を経て変化
Bさんが就職活動を始めたのは、安定して通所できるようになり半年程経った頃からでした。就職活動開始当初は、自信が持てなかったり、家族からのプレッシャーが焦りになったりして、空回りしてしまうこともあったようです。そのため、家族の話し合いの場で、当初決めていた「就職の期限」を取り払うようにお伝えします。期限がなくなったことで焦りからも解放され、落ち着いて就職活動を進めることができました。
トライアル雇用にチャレンジして得た多くの気づき
就職活動ではトライアル雇用にも挑戦しました。トライアル雇用の最中、「ダメだと思われているのではないか」「陰口を叩かれているのではないか」と不安に感じることもあったようです。ところが、実際の企業側からの評価は高く、そのまま採用したいという話に至りました。結果的にBさん本人の希望で辞退したものの、トライアル雇用での経験は自信につながったようです。
この経験で、就職活動での優先順位にも変化が生じました。これまでは業務内容を重視して企業を選んでいましたが、はたらく環境をより大切にしていきたいと気づきます。満員電車が苦手だったBさんは、トライアル雇用時の通勤で、「どの時間帯だと安心なのか」「どの程度の移動だと支障がないのか」など、自分なりの克服方法を見つけ出したそうです。トライアル雇用は、多くの気づきを生む経験となったことは間違いないでしょう。
「自分らしくはたらける環境」で選んだ就職先
ミラトレに通所開始から1年10カ月後、ある特例子会社への就職を叶えます。就職先を決めた最大の要因は、「自分らしくはたらける環境」だと話すBさん。障害のある人への配慮が細やかで、定期的な面談を設定してくれていることや、担当者が1名ではなく複数名いてサポートしてくれることが決め手となったようです。
入社から数カ月でコロナ禍による在宅ワークが始まり、社内の人たちと顔を合わせる回数が少なくなったことへの不安感があったようですが、Webでの面談などを通し、丁寧に対応してもらっているとのことでした。仕事が丁寧かつ気遣いができることから就業先企業からの信頼も得ているそうです。仕事に対しても前向きで、後から入社された人に対しても、教える立場になったという自覚を持って接することができています。 現在もミラトレの定着支援を受けているというBさんですが、企業とミラトレが連携を取りながらサポートしていく中で、はたらきやすい環境を整えられているようです。
※プライバシー保護のため、事実を元に文章を一部再構成しています。
執筆 : ミラトレノート編集部
パーソルダイバースが運営する就労移行支援事業ミラトレが運営しています。専門家の方にご協力いただきながら、就労移行支援について役立つ内容を発信しています。