今回紹介するのは、統合失調症・ADHD(注意欠如・多動症)の20代男性の就職事例です。自分に合う仕事がわからず職を転々としてきたSさんが、ミラトレを利用して体調不安を克服し就職するまでのストーリーと現在の様子をご紹介します。
専門学校を卒業後就職したものの、不注意からのミスが多く数カ月単位で職を転々としていたというSさん。気になるところがあり、インターネットで調べると、障害の可能性が浮かび上がりました。病院を受診すると、まず軽度の統合失調症であることがわかります。続いて、ADHD(注意欠如・多動症)であることもわかりました。
診断を受け、障害者雇用枠に応募し、就職。データ入力などの事務補助業務を担っていましたが、契約満了に伴い退職されます。自分自身でも業務内容が合っていないかもしれないと感じる部分があったそうです。
障害を抱えての就職に不安感
今まで長期間の就労経験がなかったため、長期的にはたらき続けたいと考えたSさん。長くはたらき続けるために、自分に向いている仕事が知りたい、コミュニケーションスキルやビジネスマナーを身につけたいとの思いから、就労移行支援事業所の利用を検討されたそうです。
また、障害者のための転職支援サービスにも登録し、ミラトレの利用を勧められたことから、ミラトレへと見学に来られます。他の就労移行支援事業所と比較し、通いやすさや相性のよさを感じてもらえたことから、ミラトレの利用を決めていただきました。
通所開始当初の様子やその後の変化
利用開始当初は、新型コロナウイルス感染症の影響から、ミラトレの支援も在宅支援に切り替えていた時期でした。Sさんもオンラインでの利用を始めていただきます。しかし、プログラムを受けても集中できていなかったり、休憩する時間が長かったりと、プログラムに取り組めるようなコンディションではありませんでした。
在宅支援の期間が明けて、通所利用が始まってもその状態は続き、机に突っ伏してしまうこともあったのです。
支援員は本人の状況を詳しくヒアリングしたり、主治医や公的機関とも連携したりして、対応策を検討しました。同時に、本人との関係性づくりに力を入れます。支援員間でも相談し、担当の支援員だけでなく「みんなで支援する」との意識統一をしました。
さまざまなはたらきかけをしていく中で、生活費に対する不安から体調を崩しがちであることがわかります。それを踏まえ、障害年金の申請を検討したり、地域の生活支援センターなどとのつながりをつくったりすると、不安の一因が消え、徐々にコンディションも落ち着いていきました。ミラトレ利用開始からの約8カ月間は、試行錯誤を繰り返しながら、本人のコンディションを整えた期間だったといえます。
体調が安定してからは意欲的に取り組めた
ミラトレを利用しながら、医療・行政などからのサポートを受けている中で、統合失調症であることも判明しました。服薬治療を始めたことにより、体調が徐々に安定していきます。同時に、トレーニングを進めるにつれ、ご自身の障害を受け入れられてきた様子もありました。自分なりに工夫しながらトレーニングを受けていたように感じています。
体調が安定してからは、どの講座も意欲的に取り組んでいましたが、メンタル講座は特に熱心に取り組んでいた印象があります。「アンガーコントロール講座」については、本人も必要性を認識していたようで、講座を通して得た知識を活かそうと頑張っている様子も見られました。頑張りすぎて疲れてしまうこともあったので、支援員が声をかけ、振り返りをしながら一緒に向き合うように伴走しました。
そのような関わりの中でも、支援員は見守る姿勢を心がけたといいます。依存を生まないように、程よい距離感を意識してサポートし続けました。
福祉的就労(就労継続支援A型)と企業就労で悩んだ就職活動
統合失調症の薬の効果もあってか、体調が安定し、プログラムにもきちんと参加できるようになったタイミングで、就職活動に目を向け始めました。まずは、福祉的就労(就労継続支援A型)と企業就労のどちらがよいかから検討することにします。
就職活動には積極的で、自分に合いそうな事業所を自分で探すことができていました。その中から気になる就労継続支援A型の事業所へ、2週間の実習に行くことになります。2週間という期間ではありましたが、遅刻や早退もなくしっかりと通うことができ、事業所からも高い評価を得ることができました。
この事業所から「企業就労でも問題ないのではないか」との言葉をもらったことで、企業就労の実習にも挑戦します。職場見学から2日間の実習に行き、こちらの企業からも高い評価を得ることができました。企業就労と福祉的就労のどちらかで最後までとても悩んでいましたが、支援員と相談しながら、最終的には本人に決めてもらいます。
そして、ミラトレ利用開始から1年10カ月後、2日間の実習に参加した企業への就職を果たします。
実習を通して自信につながった企業へ就職
現在、屋外型農園で軽作業のアルバイトとして就労されているSさん。こちらの企業への就職を決めた理由として、作業内容が自分に合っていること、実習中もきちんと仕事をやりきれたことで自信につながったこと、丁寧に仕事を教えてもらえる環境であること、マニュアルがしっかりしていて安心できることなどを挙げています。
就職先には、「マルチタスクに対応するのが難しいので、シングルタスクで作業させてほしい」「口頭のみの指示だと理解が難しいことがあるので、初めての作業のときには一緒に作業してほしい」といった配慮事項を伝えています。
自分に合った環境ではたらけている
就職先の企業はマニュアルやルールなど明確なものがあるため、ルールを守りながらはたらける点が本人に合っているようです。面談が週に1回あるため、相談しやすく、不満なども溜め込めずにはたらけているといいます。また、現在の生活は充実している様子で、就職先のことや生活についてなどもにこやかに話をされているのが印象的です。
就職したことで経済的不安も軽減し、趣味に使えるお金ができたことも嬉しそうに話してくれました。仕事に対するモチベーションもあるようで、担当している作業をしっかりとやることに尽力したいといいます。
※プライバシー保護のため、事実を元に文章を一部再構成しています。
執筆 : ミラトレノート編集部
パーソルダイバースが運営する就労移行支援事業ミラトレが運営しています。専門家の方にご協力いただきながら、就労移行支援について役立つ内容を発信しています。