基礎知識

公開日:2024/6/27
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就職ガイド –はたらく選択肢-

大人の発達障害グレーゾーンとは?困りごとへの対処や仕事探しのポイント

大人の発達障害グレーゾーンとは?困りごとへの対処や仕事探しのポイント

日本では、約10人に1人が発達障害のグレーゾーンにいるのではないかといわれています。子どもの頃、「発達障害とはいえないが、その傾向がある」と診断されたものの特別な配慮を受けずに過ごしてきた人もいるのではないでしょうか。また、「大人になって社会に出たとたん困りごとが増えた」「なんとなく周囲から浮いている」と感じ、自分は発達障害かもしれないと悩んでいる人もいることでしょう。そこで今回は、発達障害の基礎知識や、グレーゾーンにいる人が感じやすい困りごと、仕事探しのコツを紹介します。

大人の発達障害グレーゾーンとは

発達障害のグレーゾーンとは、発達障害の特性がみられるもののすべての診断基準を満たさない状態を指す通称です。また、「自分には発達障害の傾向があるかもしれない」と思いながらも専門的な医療機関を受診していない人が、自分の状態をグレーゾーンと表現する場合もあります。

発達障害の種類と特性

発達障害は大きく3つに分類されますが、複数の障害が重なって現れることもあります。また、同じ障害でもどのような特性がどの程度現れるかは人それぞれです。
発達障害の種類 主な特性
ASD(自閉スペクトラム症) コミュニケーションが苦手 限定的なこだわりの強さ 特定の行動における反復性 感覚が過敏(もしくは鈍い) 他人への関心が薄い
ADHD(注意欠如多動症) 不注意 多動性 多弁 衝動性
LD(学習障害) 読み書きが苦手 計算が苦手

グレーゾーンの人は発達障害と診断された人に比べ「症状が軽い」「困りごとが少ない」とみられがちでやすが、そうとは限りません。たとえば、9つある診断基準のうち5項目しか当てはまらず発達障害と診断されなかったとしても、5項目のなかに大変強い特性があれば、発達障害と診断された人と同じように困りごとを感じるでしょう。

発達障害のある人がグレーゾーンと判断されることも

発達障害のある人でも、発達障害と診断されないこともあります。特性の現れ方は体調や環境に左右されるので、受診日にたまたま特性が目立たなかったというケースがあるためです。日を改めて再度受診したり、セカンドオピニオンを受けたりすると、診断結果の正確性が高まる場合があります。

また、受診時に医師は患者から子ども時代に発達障害の特性がみられたかどうかを聞き取りますが、患者の記憶があいまいだと正確な診断を下せないこともあるようです。聞き取り(問診)の際は、子ども時代の成績表や連絡帳などの資料を持参すると良いでしょう。

※参考:政府広報オンライン『発達障がいって、なんだろう?

グレーゾーンにいる人が仕事や生活で感じやすい困りごと

グレーゾーンの人は、発達障害のある人と同じような困りごとを感じることが多いようです。また、障害のある人に対しては合理的配慮が義務づけられていますが、グレーゾーンの人は周囲の配慮を得られにくいことがあります。「相談先や支援先がわからない」「特性に対する理解や配慮を求めづらい」「変わったところのある人とみられてしまう」など、グレーゾーン特有の悩みをもつ人もいるのではないでしょうか。大人になり、仕事や複雑な人間関係と向き合うようになってから困りごとが増えたという人もいるかもしれません。ここからは、グレーゾーンの人が、職場や日常生活で感じやすい困りごとについて取り上げます。

仕事での困りごと

ASDの傾向がある人は、はたらく上で「あいまいな指示を理解できない」「予定変更にうまく対処できない」などの困りごとを感じることがあるかもしれません。また、ADHDの傾向がある人には、「不注意」「多動性」「衝動性」という特性が単独もしくは重複して現れます。不注意の傾向がある人は「ケアレスミスが多い」、多動性の傾向がある人は「じっと座って仕事を続けられない」という悩みをもつことがあるでしょう。LDの傾向がある人は、「資料を読む」「計算をする」など特定の作業にむずかしさを感じることがあります。

生活での困りごと

ASDやADHDのある人は、人間関係で困りごとを感じることがあります。たとえば、相手の気持ちや立場に配慮できず思ったことをそのまま口に出してしまったり、場の空気にふさわしくない発言をしてしまったり、コミュニケーションをうまく取れないことがあるようです。また、相手の発言の一部ばかりが気になって質問を繰り返し、会話を中断させてしまうケースもあります。「不注意」という特性のあるADHDの人は、「約束を忘れてしまう」「遅刻してしまう」「忘れ物やなくし物が多い」などの困りごとによって、対人関係や生活に不便を感じることがあります。

関連記事:『大人の発達障害とは。職場での困りごとや対処方法と相談先

グレーゾーンにいる人が困りごとに対処するには

医療機関を受診して発達障害の傾向が明らかになったら、どのような特性があるのか説明してもらい、医師と相談しながら対処方法を考えましょう。発達障害の特性に合わせた対処方法は、本やインターネットでも調べられます。

人間関係に困りごとを感じる人は、ソーシャルスキルトレーニング(SST)やアサーティブなどのコミュニケーション手法を勉強するのもひとつの方法です。また、アプリやソフトウェアを上手に活用してみるのもおすすめです。たとえば、仕事の段取りが苦手な人にはタスク管理アプリ、資料を読むことが苦手な人は読み上げアプリが役に立つかもしれません。

関連記事:『言いたいことを上手に伝えるスキル、アサーションとは?

グレーゾーンの人が仕事を探す際のポイント

これから仕事探しをするグレーゾーンの人に向けて、参考にしてほしいポイントを紹介します。

特性への理解が大切

グレーゾーンの人が仕事で困りごとを感じる原因は、努力不足などではなく仕事内容や環境が特性に合っていないからかもしれません。グレーゾーンの人が長くはたらくには、自分の特性を理解し、特性に合った仕事を探すことが大切です。自分の強みと弱みを客観的に見つめなおし、強みを活かせる仕事を探しましょう。自分の強み・弱みを理解していると、就職活動の自己アピールや入社後の体調管理にも役立ちます。発達障害のある人が自分の特性にマッチするお仕事に就くことで、すぐれた能力を発揮するケースもあるようです。

支援機関の活用がおすすめ

自分一人で特性への理解を深めることは簡単ではないでしょう。家族や医師、支援機関に相談してみることをおすすめします。たとえば、「発達障害者支援センター」では生活や仕事に関する相談に乗ってくれるほか、必要に応じて福祉制度や医療機関を紹介してくれます。診断を受けていなくても利用できるので、大人になってから「自分は発達障害かもしれない」と思っている人は利用してみてはいかがでしょうか。

ハローワーク」には障害者手帳を取得していなくても利用できる「障害者専門窓口」があり、専門的な知識をもつスタッフが相談や支援をおこなっています。また、「若年コミュニケーション能力要支援者就職プログラム」はコミュニケーションに困りごとを感じる若年者を対象に、相談や対人トレーニングをおこなう支援制度です。

そのほか、「障害者就業・生活支援センター」や「障害者職業センター」も、障害者手帳がなくても利用できる場合があります。相談先に迷ったら、お住まいの地区の福祉窓口で紹介してもらうと良いでしょう。

グレーゾーンの人は特性を知り、能力を最大限に活かしましょう

大人になってから「自分には発達障害の傾向があるかもしれない」と悩んでいる人は、まず医療機関を受診して、発達障害の有無や自分の特性を明らかにしてみてはいかがでしょうか。医療機関を受診する際は発達障害の診療をおこなっているかどうか、事前に確認することをおすすめします。発達障害の傾向はあるものの診断には至らず、いわゆるグレーゾーンという判断によって障害者手帳を取得できず、もどかしさを感じる人もいることでしょう。しかし、家族や医師、支援機関と相談しながら対処方法を見つけることで、特性を強みに変えられる可能性があります。自分の可能性を信じて、能力を最大限に発揮できる道を見つけてください。

執筆 : ミラトレノート編集部

パーソルダイバースが運営する就労移行支援事業ミラトレが運営しています。専門家の方にご協力いただきながら、就労移行支援について役立つ内容を発信しています。