基礎知識

公開日:2024/6/27
  • X
  • Facebook
  • はてなブックマーク
  • LINE
  • Email

就職ガイド –はたらく選択肢-

自律神経失調症とは?原因や症状、仕事を続けるためのポイント

自律神経失調症とは?原因や症状、仕事を続けるためのポイント

自律神経失調症は、自律神経の乱れによって起こる体調不良です。原因不明の体調不良に悩まされ、「私は自律神経失調症ではないか」と疑っている人もいるかもしれません。自律神経失調症はストレスが原因の一つと考えられており、ストレス社会における現代病といえるでしょう。好調と不調の波があり、周囲から「気まぐれ」「怠け」と誤解されることがあるかもしれません。そこで今回は、自律神経失調症の原因や症状、仕事を続けるための対策について解説します。

自律神経失調症とは?原因や症状、仕事を続けるための対策

自律神経失調症とは、自律神経の乱れによって心と体に不調が現れている状態を指します。自律神経は、呼吸や血液循環、消化などの生命活動を支えている神経系です。自律神経には、体を活発に動かすときにアクセルのようにはたらく「交感神経」と、体を休めるときにブレーキの役目を果たす「副交感神経」があります。どちらも体じゅうをコントロールしているため、2つのバランスが崩れるとさまざまな器官がうまくはたらかなくなると考えられています。

自律神経失調症は検査で明らかになるものではなく、正式な病名ではありません。うつ病やパニック障害などの診断にいたらない場合、自律神経失調症と判断されることがあるようです。

参考:厚生労働省 こころの耳『自律神経失調症

自律神経失調症はなぜ起こり、どのような症状が現れるのか

自律神経失調症の原因は、ストレスや不規則な生活、環境の変化、女性ホルモンの影響、気温・気圧の影響などが考えられていますが、はっきりと特定されてはいません。ここでは、自律神経失調症の種類や現在考えられる原因、症状の特徴を紹介します。

自律神経失調症は4つの種類に分けられる

自律神経失調症には、大きく分けて4つの種類があります。
自律神経失調症の種類 原因 特徴

心身症型

日常生活のストレス やる気や食欲の低下など、心と体の両面の不調が現れる
神経症型 心理的な要因 繊細で神経質、体調の変化に敏感
本態性型 自律神経のバランスが乱れやすい生まれもっての体質 低血圧、体力がない、体が弱い
抗うつ型 慢性的なストレス 几帳面でまじめな人に多くみられ、うつ反応をともなう

自律神経失調症の原因は人によって異なりますが、体が弱い人や神経の過敏な人に発症しやすい傾向があります。また、4種類の中では心身症型自律神経失調症がもっとも多くみられるようです。

自律神経失調症にはどのような症状があるのか

自律神経失調症によって現れる体と心の症状を紹介します。ただし、症状の種類や程度には個人差があります。
心の症状 憂うつ感 不安感 焦り 恐怖心 イライラ 集中力の低下 記憶力の低下 やる気が出ない
体の症状

頭痛 頭重 微熱 めまい 立ちくらみ 不眠 耳鳴り ほてり 動悸 息切れ 肩こり 吐き気 背痛 手足のしびれ 腰痛 冷え性 生理不順 腹痛 下痢 便秘 汗を多くかく 残尿感 頻尿 倦怠感 疲労感

症状には波があり、やわらいだり再び現れたりするケースがあります。病院にかかろうと思ったとき、どの科を受診すべきか迷うかもしれませんが、もっとも不調が現れている器官に応じて選ぶと良いでしょう。たとえば、症状が憂うつ感や不安感の場合は心療内科、めまいや腹痛の場合は内科、症状が複数の場合は総合内科の受診をおすすめします。自律神経失調症だと思っていても別の病気が明らかになる場合もあるので、まずは現れている不調の原因を探りましょう。

自律神経失調症の人が仕事を続けるための対策3選

自律神経失調症の人は、疲れているときでも交感神経がはたらいて眠れなかったり、疲れが取れにくかったりすることがあります。ほかにも、仕事中に副交感神経がはたらいて、眠くなってしまうこともあるようです。

自律神経失調症の症状やその程度は人によって異なるため、周囲の理解を得にくい場合もあるでしょう。しかし、自律神経失調症はうつ病などの障害を招く可能性もあるので、無理は禁物です。症状と折り合いをつけながら仕事を続けるには、周囲の助言やサポートをあおぎながらストレスを減らす工夫をしましょう。

自律神経失調症と折り合うために、以下のような対策を試してみてはいかがでしょうか。
  • はたらき方の調整
    └定期的に休憩をとる
    └残業を控える
  • 生活スタイルの調整
    └規則正しい生活を送る
    └リラックス方法をとりいれる
    └不調が現れそうになったら、ストレス対処する
  • 適切な治療
    └医師の診断のもと心理療法をとりいれる
    └医師の診断のもと薬物療法をとりいれる

はたらき方の調整

自律神経のバランスが乱れた状態のまま長時間はたらくと、健康をそこなう可能性があります。可能であれば職場へ伝えて業務量を調整してもらい、残業を減らしたり、フレックスタイム制や短時間勤務制度、半日休暇制度などを活用して、休息をとりましょう。仕事の合間に短時間の休憩をはさむと、体調が回復しやすくなり、仕事の効率向上につながります。職場環境にもよりますが、可能であれば休憩時間にストレッチや散歩、深呼吸などをとりいれても良いでしょう。

生活スタイルの調整

食事や睡眠を決まった時間にとり、適度に運動すると、自律神経のバランスが整いやすくなります。寝る前はパソコンやスマートフォンを遠ざけて、デジタルデバイスと距離をおく「デジタルデトックス」を習慣化しましょう。また、日常生活にリラックスタイムを設けることもおすすめです。たとえば、アロマテラピーや散歩、ヨガ、マッサージ、瞑想など、自分が「心地いい」と思えるリラックス方法をとりいれてみてはいかがでしょうか。さらに、ぬるめのお湯でゆっくり入浴したり、朝日を浴びたりすると、体内時計がリセットされ、自律神経のバランス調整を促すといわれています。

適切な治療

医療機関を受診し、医師の診断のもとで薬物療法や心理療法をとりいれる場合もあります。処方される薬は、憂うつや不眠など症状に応じて、抗うつ薬、抗不安薬、睡眠薬、頭痛薬、鎮痛剤、漢方薬などさまざまです。身体の各部位の緊張と弛緩(しかん)を繰り返しながら、身体全体のリラクゼーションをおこなう漸進的筋弛緩法(ぜんしんてききんしかんほう)や自律訓練法などのリラクゼーション法が用いられることもあります。また、心理療法によってストレスをやわらげる治療もあるようです。

自律神経失調症で仕事を続けられないときは休職・転職・退職を検討

自律神経失調症は短い休養で治るものではありません。はたらき続けることが難しいと感じたら、休職や転職、退職という選択肢も検討しましょう。

まず休職の条件を確認する

休職できる条件や期間は会社によって異なるため、人事担当者に問い合わせるか就業規則に目を通しましょう。会社によっては診断書の提出を求められる場合があります。また、自律神経失調症の診断のみでは休職を認められない場合があるので、事前に休職条件の確認が必要です。早めにかかりつけの医師に相談し、必要に応じて診断書の作成を依頼しましょう。

退職も視野に入れる

はたらき続けることがつらいと感じたら、健康回復のためにいったん仕事から離れることを考えてみてはいかがでしょうか。休職しても症状が改善しない場合、退職という選択肢もあります。上司や家族、医師と相談のうえ慎重に検討しましょう。病気や体調不良で退職する場合、診断書は必須ではありませんが、会社によっては提出を求められる場合があります。法律で定められている退職の申し出期限は、退職希望日の2週間前です。しかし、なるべく就業規則に定められた申し出期限にしたがい、円満退職をめざしましょう。

はたらきやすさを考慮して転職先を選ぶ

転職を検討する場合、自分にとってのはたらきやすさをみつめ直しながら慎重に転職先を検討しましょう。たとえば、困りごとを気軽に相談できる社内窓口があったり、フレックスタイム制など仕事量を調整しやすい制度があったりすると、はたらきやすさを感じられる場合があります。ほかにも、専門家による無料カウンセリングが受けられるなど利用しやすいメンタルヘルスケアの福利厚生が充実している、自宅から通勤しやすい、という点も企業選びのポイントになるでしょう。

復職をめざす自律神経失調症の人におすすめの支援機関

自律神経失調症は正式な病名ではなく、障害とも認定されていません。そのため障害者総合支援法の対象に含まれず、一部の障害福祉サービスを受けられない場合があります。しかし、障害者手帳の有無にかかわらず利用できるサービスもあるので、上手に活用しながら仕事や生活のベースを整えましょう。

また、併発している病気が障害者総合支援法の対象に含まれる場合、利用できる障害福祉サービスの幅が広がる可能性があります。併発している病気が障害者総合支援法の対象かどうか、厚生労働省のホームページ「障害者総合支援法の対象疾病(難病等)」でご確認ください。

※就職事例:『仕事が長続きしないことから判明した発達障害

障害者就業・生活支援センター

障害のある人を対象に、求人の紹介や就職活動のサポート、就職後の定着支援などをおこなっています。仕事のことだけでなく、お金の管理や生活習慣、健康管理など、幅広いサポートをおこなっているので、生活面に不安がある人にもおすすめです。「精神障害者保健福祉手帳」「療育手帳」「身体障害者手帳」のいずれかをもつ18歳以上の人が対象ですが、障害者手帳をもっていなくても利用できる場合があります。

参考:厚生労働省『障害者就業・生活支援センターについて

地域障害者職業センター

病気や障害のある人を対象に職業リハビリテーションをおこなう支援機関として、全国47カ所(ほか支所5カ所)に設けられています。障害者手帳をもたない人でも利用でき、仕事に関する相談や訓練、職場復帰の支援などを通じてはたらきたい人をサポートしています。

参考:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構『地域障害者職業センター

就労移行支援事業所

障害のある人が、ビジネススキルや体調管理法などを学びながら就労を目指せる通所型のサービスです。就職活動のサポートや就職後の定着支援など、総合的な就労支援をおこなっています。利用するには、お住まいの地域の福祉窓口で、障害福祉サービス受給者証を発行してもらう必要があります。

関連記事:『就労移行支援とは

ハローワーク

職業相談や求人情報の提供、職業訓練など、就労に関する幅広いサービスをおこなっています。障害者手帳をもたない人でも利用できる障害者関連窓口では、専門知識のあるスタッフが病気や障害の特性に応じた支援をおこなっています。「自律神経失調症と折り合いながら仕事を探すにはどうすれば良いのか」「履歴書や採用面接で自律神経失調症を伝えるべきか」など、悩みや不安を感じる人は相談してみると良いでしょう。

参考:厚生労働省『ハローワーク

転職エージェント

転職したい人と求人している企業のかけ橋となって、人材のマッチングをおこなうサービスです。自律神経失調症などのメンタルヘルスに対して知識と理解のあるエージェントを選び、心身の負担が少ないはたらき方や仕事選びについて相談してみてはいかがでしょうか。

自律神経失調症と折り合いながらはたらき続けるために

自律神経失調症のある人が長くはたらくためには、規則正しい生活を送り、ストレスをためないことが大切です。自分のストレスサインを知った上で対処方法を実行することで、自律神経のバランスを整えやすくなります。自分にあったはたらき方を見つけるには、医師やカウンセラー、支援機関に相談し、適切なアドバイスを受けましょう。また、家族に不安や悩みを相談して理解を得ることや、家庭内で安心して休息できる状態を作ることも大切です。

仕事探しやビジネススキル、メンタル面など、トータルな支援を受けたい方には、就労移行支援の利用がおすすめです。就労移行支援事業所「ミラトレ」では、専門知識をもつ支援員が一人ひとりの特性に応じた就労サポートをおこなっています。体調の安定をはかりながら自分にあったはたらき方を見つけたい、という自律神経失調症の方はお気軽にご相談ください。

執筆 : ミラトレノート編集部

パーソルダイバースが運営する就労移行支援事業ミラトレが運営しています。専門家の方にご協力いただきながら、就労移行支援について役立つ内容を発信しています。