基礎知識

公開日:2024/9/27
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就職ガイド –はたらく選択肢-

リワークとは。実施機関や利用料金など活用ポイントをわかりやすく解説

リワークとは。実施機関や利用料金など活用ポイントをわかりやすく解説

リワークとは、精神的な不調によって休職した人の復職を目的としたリハビリテーションプログラムのこと。休職している方は、「生活リズムが不安定になりがち」「集中力や体力が低下しそう」と不安に感じることがあるかもしれません。リワークを活用することで、スムーズな職場復帰や体調の安定を図れる可能性があります。今回は、リワーク利用前に知っておきたい基礎知識と、休職を繰り返さないためのポイントを解説します。

リワークとは

リワークとは、精神的な不調によって休職している人を対象とした、復職や職場復帰のためのリハビリテーションプログラムを指します。プログラム内容は事業所によって異なりますが、ストレスに対処するためのセルフケアや対人コミュニケーション能力を向上するグループワーク、仕事に必要な注意力や集中力を維持するためのオフィスワークなどさまざまです。

心理療法日本うつ病リワーク協会が公表している調査結果によると、リワークを利用して復職した人の約83%が1年後も仕事を続けており、リワークの有効性が認められます。具体的な取り組み内容やリワークの効果については、以下の関連記事を参考にしてください。

※関連記事:長期休職中の方に必要なリワークとは?取り組み内容やリワークの効果について解説

リワークの基礎知識

リワークの対象者や、プログラムを実施している機関、利用料金など、実施概要を紹介します。

リワークの対象者

リワークを利用できるのは、うつ病や適応障害など精神的な不調によって休職しており、心身の状態がある程度安定してきた人です。症状が不安定な段階でリワークに参加すると、かえって体調を崩したり、病状を悪化させたりする可能性があるため、リワークプログラムを受けられる状態かどうかは専門医が判断します。

リワークを実施している機関

リワークは、主に次の4つの機関で受けられます。ただし、職場リワークはすべての企業や自治体で実施されている状況ではありません。また、医療機関や就労移行支援事業所のリワークも実施の有無は施設ごとに異なるため、確認が必要です。
実施機関 地域障害者職業センター(職リハリワーク) 医療機関(医療リワーク) 就労移行支援事業所 企業内(職場リワーク)
支援の概要 職場への適応に向けた休職者・事業主への支援 再休職の予防を目的に、病状の回復と安定をめざした治療 就労トレーニングのノウハウを活かした支援 復職してもよいかの見極め
費用 無料 無料~月額2万円 無料~月額3万7,200円 無料
適用される保険・補助 労働保険 健康保険、自立支援医療制度 市区町村の補助金 企業負担

リワークの利用期間

職リハリワークは12週~16週、医療リワークは3カ月~7カ月かけて復職をめざします。ただし、実施期間は個人の状況によって異なり、短い場合は数週間、長くて1年以上かけて実施する場合もあります。

リワークの料金

職リハリワークは無料で利用できます。医療リワークは健康保険が適用され、自己負担は3割程度です。さらに自立支援医療制度を利用すると、自己負担1割程度で利用できます。条件によっては無料で利用できる場合もありますが、月額2,500円~2万円程度と考えておけば良いでしょう。

就労移行支援事業所のリワーク利用料金には、市区町村の補助金制度があります。自己負担額は前年度の世帯収入によって異なり、生活保護受給世帯や低所得世帯は無料、市町村民税課税世帯は月額上限9,300円。それ以外の世帯は月額上限3万7,200円と定められています。

どの機関でも交通費や昼食代は自己負担ですが、補助が受けられる場合もあるため事前に確認しましょう。

リワーク利用までの流れ

リワークを利用するおおまかな流れは、以下の通りです。
  • リワーク開始までの9つのステップ
    (1)医師に相談し診断を受ける
    (2)実施している施設を医師に紹介してもらう、もしくは自分で探す
    (3)見学・説明会・体験利用などに参加する
    (4)利用申し込み手続きをおこなう
    (5)支援スタッフから面談を受ける
    (6)通所によって体調の安定や能力の向上を図る
    (7)医師の診断を受け、復職の可否を判断する
    (8)職場と復職の調整をおこなう
    (9)復職
リワークは、病状が安定期を迎え、復職を見据えられる状態でなければ利用できません。まず、かかりつけ医や専門医に相談し、リワークを利用できるか確認してもらいます。実施施設は医師が紹介してくれる場合もありますが、なるべく見学や体験を利用し、複数の施設を比較検討すると良いでしょう。

利用前に支援スタッフと面談をおこない、本人の状況やプログラム内容について情報を共有します。不安な点や不明な点があれば積極的に質問しましょう。復職に向けた課題を整理し、支援計画を作成すれば正式なプログラムのスタートです。

数カ月の利用を通じて復職に必要な体力や能力が回復し、医師から安定した状態が続いていると判断された後、復職の準備を整えます。復職を考える目安は一人ひとりの事情によって異なりますが、厚生労働省「改訂 心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」では、以下のような例を挙げています。
  • 復職を検討する目安
    ●本人が十分な意欲を示している 
    ●通勤時間帯に一人で安全に通勤ができる
    ●決まった勤務日、時間に継続してはたらける
    ●業務に必要な作業ができる
    ●作業による疲れが翌日までに十分回復する
    ●決まった時間に睡眠・起床できる、昼間に眠気がない
    ●業務に必要な注意力や集中力が回復している など
勤め先と、復職後の勤務時間や仕事内容、復職時機について話し合う必要がありますが、多くの場合、支援スタッフが勤め先と連携を図ってくれるでしょう。施設によっては、安定してはたらけるよう復職後もフォローアップしてくれます。

復職と休職を繰り返さないための注意点

リワークの最終目標は復職ではなく、再休職の予防です。そのためには、休職の根本的な原因を見つめ直し、ストレスの要因を取り除く必要があります。休職の原因は、離婚や死別など仕事と無関係の場合もあるでしょう。

しかし、職場の人間関係や役職へのプレッシャー、はたらき過ぎなどが原因である場合、配置転換や業務量の調整などでストレス因子を取り除ける可能性があります。復職前にストレス因子を見つめ直し、勤め先と復職後の仕事内容や職場環境について調整をおこないましょう。

その際に大切なことは、一人で抱え込まないことです。フォローが必要だと感じたら、支援スタッフや医師など周囲の人を頼りましょう。また復職後、仕事量を制限した状態から通常勤務への移行にうまく適応できないケースもあります。不安を感じたら、すぐ支援スタッフや上司、家族に発信することが大切です。

一歩ずつ着実に復職をめざすことが大切

リワークは、自分自身や仕事について見つめ直す良いチャンスだととらえることができます。自分自身を磨き、自分らしいはたらき方を実現するためのステップとなるでしょう。そのためには、「焦らないこと」「無理をしないこと」が大切です。復職をゴールとせず、長く安定してはたらき続ける道を切り拓くには、自分のペースで歩みを進めましょう。

就労移行支援事業所「ミラトレ」では、障害の特性と折り合いながら長くはたらくための支援をおこなっています。事業所によっては、就労移行プログラムや定着支援プログラムだけでなく、リワークプログラムも実施しています。「心身の安定を図りながらはたらくスキルを身につけたい」という方は、気軽にお問い合わせください。

執筆 : ミラトレノート編集部

パーソルダイバースが運営する就労移行支援事業ミラトレが運営しています。専門家の方にご協力いただきながら、就労移行支援について役立つ内容を発信しています。