基礎知識

公開日:2024/12/27
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就職ガイド –はたらく選択肢-

吃音とは?仕事選びのポイントや長くはたらき続けるコツ

吃音とは?仕事選びのポイントや長くはたらき続けるコツ

話し言葉がなめらかに出てこない「吃音」は、100人のうち1人程度に現れるといわれる発達障害のひとつです。吃音がある人が就職に向けて、「面接の場でうまく話せないのではないか」「吃音があってもはたらきやすい仕事はなんだろう」と悩むことがあるかもしれません。しかし、吃音と折り合いながら長くはたらき続けている人もいます。そこで今回は、吃音がある人の仕事選びや、仕事を続けるためのポイントについて解説します。

吃音とは

吃音とは言葉がなめらかに出づらい発達障害のひとつで、大きく分けて子どもの頃に発症する「発達性吃音」と、青年期を迎えた後に発症する「獲得性吃音」があります。吃音の9割に上る発達性吃音の原因として遺伝的要因や環境的要因が考えられていますが、はっきりと明らかになっていません。獲得性吃音は、頭のけがや病気、心的ストレスなどがきっかけで発症します。

症状は大きく分けて、「連発」「伸発」「難発」の3種類です。「わ、わ、私は」のように同じ音や言葉を繰り返す症状を「連発」と呼び、「わーーたしは」のように音を引きのばす症状を「伸発」と呼びます。また、言葉が詰まってなかなか出てこない症状が「難発」です。どれかひとつの症状が現れることもあれば、併発するケースもあります。

支援制度を活用して、仕事の基盤を整えよう

吃音の治療は健康保険の適用範囲に含まれていますが、有効な治療法は確立されていません。吃音の程度が重く仕事や日常生活に支障が出る場合は、さまざまな福祉制度の活用を検討すると良いでしょう。

障害者手帳

障害者手帳とは、一定以上の障害があると認められた人に交付される手帳のことです。手帳を取得すると、公共料金の割引や税金の免除など、さまざまなサービスが受けられるほか、障害者雇用枠への求職ができるようになります。吃音の初診から6カ月以上経過すると、3種類ある障害者手帳のひとつ「精神障害者保健福祉手帳」の申請が可能です。しかし、申請が認められるかどうかは、吃音の種類や程度によって異なります。申請が可能かどうか、まずはかかりつけ医に相談してみましょう。

※関連記事:『精神障害者保健福祉手帳とは?申請方法からメリットまでを解説

就労移行支援

就労移行支援とは障害福祉サービスのひとつで、障害や病気と折り合いながら一般企業に就職したいという人を対象に、就労トレーニングや就職活動のサポートをおこなっています。受給者証の申請が必要ですが、必ずしも障害者手帳は必要ありません。利用料の補助制度があるため多くの人が無料で通所しており、2年(標準利用期間)の間に吃音への対処方法を身につけ、はたらく力を高められます。

障害年金

障害年金とは、障害者手帳の有無にかかわらず、病気や障害で生活が制限されている人が受給できる年金です。ただし、障害の程度や年金保険料の納付状況によって、申請が認められない場合もあります。就労移行支援事業所への通所を検討している、あるいは通所している人は、申請方法などを支援員に相談すると良いでしょう。

※参考:日本年金機構『障害年金

自立支援医療

自立支援医療とは、精神疾患の通院治療を続ける必要がある人の医療費を軽減する制度です。通常、医療保険による医療費の自己負担は3割ですが、自立支援医療が適用されると原則1割に抑えられます。吃音治療のために定期通院をしている人は、お住まいの市区町村役所に設置された福祉窓口で相談すると良いでしょう。

吃音の人が仕事をスムーズに進めるためのポイント

吃音はハンディのひとつではありますが、心のもち方や工夫ひとつではたらきやすくなる可能性があります。ぜひ試してほしいポイントを紹介します。

はたらき方の調整を相談する

吃音によって、どのような場面でどのような困りごとが起こりがちなのか、書き出してみることをおすすめします。困りごとが起こりがちな場面は、「電話」「発表」「会議」「放送」「初対面の人とのコミュニケーション」など人によってさまざまでしょう。

「電話対応を免除してほしい」「発言以外の方法で発表したい」「話し出すまで待ってほしい」など、希望する配慮事項も整理しておきます。それらの整理事項をもとに、業務の内容や配置、コミュニケーションツールなどを調整できるか、上司に相談してみると良いでしょう。

職場で吃音を公表するかどうかは本人の意向によりますが、公表している人の方が職場での理解を得ている、という調査結果があります。上司に公表したくない人は、産業医や社内カウンセラーに相談してみるのもひとつの方法です。

※出典:厚生労働省『障害者の利用者負担

事前準備によって心の負担を軽減する

吃音のある人は、商談やミーティングの前に、議題やそれに対する考え、質問、提案などをまとめておくことをおすすめします。吃音は緊張や不安などによって現れやすくなることがあるので、事前準備は不安の軽減に役立つでしょう。また、事前に伝えたいことを整理しておくことで、発音が苦手な言葉を避けたり、言葉ではなく視覚的な資料で伝えたり、自分の特性に合わせたコミュニケーション手段を取りやすくなります。

話すことより伝えることを意識する

話し方よりも伝え方を工夫することが大切です。症状が現れてもあきらめずにゆっくり話したり、それでも伝えきれなかった場合はメールやチャットで補足したり、自分なりの方法で考えを伝えるようにしましょう。

そのためには、必要な情報だけを整理する要約力などのコミュニケーションスキルが役立ちます。また、表情やジェスチャーは、コミュニケーションを円滑にする上で言葉以上に大きな役割を担ってくれます。笑顔で相づちを打ったり、相手の目を見て話したり、身振り手振りを取り入れたりすることで、場の雰囲気がやわらぎ、自分の思いも伝わりやすくなるでしょう。

向いている仕事・向いていない仕事

吃音のある人は、営業やサービス業など人との接点が多い仕事は不向きだといわれることがあります。吃音のある人に向いている仕事として、データ入力のようなバックオフィス業務や、一人の作業時間が多いフリーランスが挙げられることが多いようです。

●吃音のある人に向いている仕事の例
データ入力、電話応対や来客応対を含まない事務、工場などの軽作業 など

バックオフィス業務やフリーランスであっても、クライアントや仕事関係者とのコミュニケーションは避けて通れません。どのような仕事でも吃音への対処方法が必要になるのであれば、やりがいを感じられる仕事のほうが吃音と折り合いやすくなるでしょう。興味関心のある分野があれば、積極的にチャレンジすることをおすすめします。適性を考えることも大切ですが、コミュニケーションを避けることより吃音と折り合うことに注力すると良いでしょう。

就労移行支援事業所「ミラトレ」で、はたらく自信を身につけよう

吃音があると人と話すことがストレスになり、不安障害やうつ病などの二次障害につながることがあります。特性への理解を深め、自分に合う対処方法を見つけることが大切です。吃音をカバーするコミュニケーションスキルやストレスコントロール方法の習得も、大きな助けになるでしょう。

就労移行支援事業所「ミラトレ」では、吃音のある人が自分らしいはたらき方を見つけ、長くはたらき続けられるようサポートしています。パソコンスキルやビジネスマナーなどのビジネススキルだけでなく、コミュニケーションスキルを高める講座も充実。相手に好印象をもってもらえる伝え方や、情報を的確に伝える方法などを学び、実際の職場環境を想定した擬似就労で実践的に身につけられます。

また、面接対策から就職後の定着支援まで総合的な就労支援により、「自分らしくはたらく道を見つけたい」という方をバックアップします。ミラトレの利用方法やサービスについて気になる方は、気軽にお問い合わせください。

執筆 : ミラトレノート編集部

パーソルダイバースが運営する就労移行支援事業ミラトレが運営しています。専門家の方にご協力いただきながら、就労移行支援について役立つ内容を発信しています。