基礎知識

公開日:2025/4/30
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就職ガイド –はたらく選択肢-

就労移行支援と職業訓練の違いは?併用できるかも解説

就労移行支援と職業訓練の違いは?併用できるかも解説

就労移行支援と職業訓練(ハロートレーニング)について、「何が違うのか」「どんな人が対象か」「併用できるのか」といった疑問をもっている方もいるかも知れません。どちらも就労を目指して必要なスキルを身につけるための支援制度ですが、対象者や習得できるスキルに違いがあり、それぞれにメリット・デメリットがあります。この記事では、就労移行支援と職業訓練(ハロートレーニング)の対象者や利用期間、利用料金などの違いを一覧で解説するとともに、メリット・デメリットを踏まえた上でそれぞれのおすすめポイントや、併用できるかどうかについても詳しく説明します。

就労移行支援とは

就労移行支援とは、障害や難病のある人が、一般企業への就職を目的としたスキル習得やトレーニングといった就職活動におけるサポートを受けられるサービスです。障害者総合支援法による障害福祉サービスのひとつに位置づけられています。

就労移行支援では、以下のようなトレーニングや支援が受けられます。
  • トレーニングや支援について
    ・一般企業または特例子会社などへの就労のために必要な知識の習得
    ・はたらくための能力を向上する訓練
    ・職場実習など、生産活動や仕事の現場を実体験する機会の提供
    ・就職・転職・復職に関する支援
    ・障害特性や症状に応じた職場探しのサポート
    ・就職後、安定してはたらくための相談・サポート など

就労移行支援の対象者

就労移行支援を利用できる対象者は、以下に該当する人です。

  • 就労移行支援の対象者
    ・精神障害・発達障害・知的障害・身体障害・難病(障害者総合支援法の対象疾病)のある人
    ・利用開始時に18歳以上65歳未満の人(18歳未満の場合、児童相談所長の意見書があれば利用可能)
    ・一般企業への就職を希望する人
    ※障害者手帳がなくても医師の診断・定期的な通院があれば申請可能な場合があります。

    就労移行支援の対象者についての詳細はこちら

就労移行支援の利用期間や料金

就労移行支援の通所期間は最大2年間となっており、その期間内で計画に基づいたプログラムに取り組んで就職を目指します。

また、就労移行支援の利用料金(自己負担額)は厚生労働省によって定められており、前年の収入によって負担額の上限が決められています。収入は、18歳以上の場合は利用者とその配偶者の所得、18歳未満の場合は保護者の属する世帯(住民基本台帳上の世帯)の所得となります。
区分 世帯の収入状況 負担上限月額
生活保護  生活保護受給世帯     0円
低所得 市町村民税非課税世帯(※1) 0円
一般1 市町村民税課税世帯
(所得割16万円未満:※2)
※入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム等利用者を除きます。(※3)
9,300円
一般2 上記以外 3万7,200円

※1 3人世帯で障害者基礎年金1級受給の場合、収入がおおむね300万円以下の世帯が対象となります。
※2 収入がおおむね600万円以下の世帯が対象になります。
※3 入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者は、市町村民税課税世帯の場合、「一般2」となります。

詳細はこちらのページをご覧ください。

職業訓練(ハロートレーニング)とは

職業訓練とは、希望する職業に就くために必要なスキルや知識を習得するための、公的な就職支援制度です。正式名称を「公的職業訓練(ハロートレーニング)」といい、ハローワーク(公共職業安定所)が提供しています。

職業訓練は大きく分けて、雇用保険(失業給付)の受給者を対象とする「公共職業訓練」と、雇用保険を受給していない求職者を対象とする「求職者支援訓練」の2種類があります。

職業訓練で受けられるコース内容には、以下のようなものがあります。
  • 職業訓練で受けられるコース例
    ・事務処理スキル習得科
    ・経理実務
    ・パソコン操作科
    ・パソコン実務科
    ・実践就労体験科事務系コース
    ・Webエンジニア・プログラミング習得科
    ・Webデザイナー養成科
    ・CAD/CAM技術科
    ・介護サービス科
    ・電気設備技術科
    ・自動車整備科 など
上記はあくまで一例で、ほかにもさまざまなコースが用意されています。なかには障害者向けのコース「ハロートレーニング(障害者訓練)」もあり、障害の状況に配慮した訓練が実施されています。

詳しくはハローワークの「職業訓練検索」ページで確認してみてください。

また、職業訓練とあわせて、訓練開始から終了後まで、訓練機関の職員から求職活動のサポートも受けられます。

職業訓練(ハロートレーニング)の対象者

職業訓練は、はたらく意思のあるすべての人が対象となります。具体例として、以下のような状況の人が挙げられます。
  • 職業訓練(ハロートレーニング)の対象者
    ・失業中の人
    ・前の職場で雇用保険に加入していなかった人
    ・学校を卒業後、求職活動をしている人
    ・スキルアップを目指す、在職中の人
    ・求職中の障害のある人 など
職業訓練を利用するには、ハローワークで申し込み手続きをおこない、書類選考および筆記試験や面接を受けて合格する必要があります。倍率が高いコースもあるため、申し込みをした全員が受講できるわけではない点は念頭に置いておきましょう。

職業訓練の利用期間や料金

職業訓練の利用期間や料金は、種類や選択するコースによって異なります。
公共職業訓練 求職者支援訓練
受講料 無料(テキスト代は自己負担) 無料(テキスト代は自己負担)
訓練期間 3カ月~2年程度 2カ月~6カ月程度
手当
※支給要件あり
・通所手当(月上限42,500円)
・受講手当(1日500円/上限20,000円)
・雇用保険の延長
・通所手当(月上限42,500円)
・職業訓練受講手当(月10万円)
・寄宿手当(月10,700円)
・雇用保険の延長
就職サポート あり あり

※手当を受け取るには、支給要件を満たしている必要があります。
※参照:厚生労働省『求職者支援制度のご案内

職業訓練と就労移行支援の違い

職業訓練と就労移行支援の違いについて、一覧にまとめました。検討する際の参考にしてください。
就労移行支援 職業訓練(ハロートレーニング)
サービス概要 障害者総合支援法に基づいて就労を支援する障害福祉サービス 職業能力開発促進法に基づいて職業能力の向上を支援する公的制度
期間 最長2年 約2カ月~2年
対象者     ・障害や難病のある求職者(利用開始時に18歳以上65歳未満の人。ただし、18歳未満の場合でも、児童相談所長の意見書があれば利用可能)
・休職中の在職者 など
・すべての求職者
障害への配慮 あり 「障害者訓練」ではあり
利用資格 障害福祉サービス受給者証が必要 審査(書類・筆記・面接など)が必要
利用料 前年度収入により異なる テキスト代を除いて無料
交通費負担 自治体によって異なる 通所手当あり※支給要件あり
申請手続き 居住地である市区町村の福祉課に申請 ハローワークに申請

就労移行支援と職業訓練はどちらの方が良い?

就労移行支援と職業訓練では、どちらの方が良いのでしょうか。各制度のメリット・デメリットを踏まえて解説します。

就労移行支援のメリット・デメリット

就労移行支援の主なメリット・デメリットとして、以下のようなものが挙げられます。
  • 就労移行支援のメリット
    ・適切な自己管理方法を学べる
    ・障害特性や疾病に応じた合理的配慮が受けられる
    ・自分の障害特性など自己理解が深められる
    ・円滑な対人コミュニケーション力の向上が図れる
    ・同じ目標をもった仲間ができる
    ・就職後も「職場定着支援」を受けられる など
  • 就労移行支援のデメリット
    ・通所開始から就職まで数カ月~2年かかる
    ・通所期間中のアルバイトは月10万円未満と定められているが、就労の可否は自治体の判断による
    ・事業所の雰囲気やトレーニングのレベル感が合わない場合がある
    ・前年度の収入によっては利用料金の自己負担がある など
※関連記事:『就労移行支援の概要

就労移行支援では、障害や難病に関する知識をもったスタッフが在籍しているため、配慮を受けながら就職活動がおこなえるのが大きなメリットです。
また、同じ目標に向かう仲間ができるのも、就労移行支援の利点といえます。年齢や経験は異なっても、障害や困りごとをもつ人と事業所で出会うことは、大きな支えとなるでしょう。

さらに就労移行支援には、企業に就職後もサポートが受けられる「定着支援」サービスがあり、職場での困りごとや悩みを相談できるのも安心材料です。

就労移行支援を利用して就職するメリットについて、以下の記事で実際の成功事例とともに詳しく解説しているのでぜひご覧ください。
※関連記事:『就労移行支援を利用して、就職するためのポイントと成功事例を紹介

一方、就労移行支援では、就職まで最長2年間通所しなければならない点や、自治体の判断によってはアルバイトができない点などがデメリットとして挙げられます。ただし、収入がなくても、傷病手当や失業手当、障害手当などを受給しながら利用できます。通所期間中の生活費に不安がある人は、事業所の支援員に相談してみましょう。
※関連記事:『就労移行支援を利用したいけれど生活費やお金が心配・・支援制度や対処法について解説



また、就労移行支援は、事業所の雰囲気やトレーニングのレベル感が合わない場合がある点も注意が必要です。ひと口に就労移行支援といっても、サービス内容や設備、雰囲気は事業所によって異なるため、自分に合った事業所選びが重要です。ほとんどの事業所では見学や体験利用を受け付けているので、できれば複数の事業所を見学して自分の目で確かめることをおすすめします。
※関連記事:『就労移行支援の利用前に知っておきたい、事業所選びのポイント

職業訓練のメリット・デメリット

職業訓練の主なメリット・デメリットとして、以下が挙げられます。
  • 職業訓練のメリット
    ・基本的に無料で受講できる
    ・給付金(職業訓練受講手当、通所手当など)を受けられる場合がある
    ・数カ月でスキルを身につけられる
    ・さまざまなコースがある
    ・就職支援を受けられる
    ・託児サービスを利用できる場合がある など
  • 職業訓練のデメリット
    ・選考を通過しなければならない
    ・就職するまで時間がかかる
    ・クラスになじめない場合がある
    ・同時に複数のコースを受講できない
    ・障害者向けのコースが少ない など
職業訓練は、最短2カ月~数カ月で就職に必要なスキルの習得が無料ででき、場合によっては給付金を受けながら受講できるのが大きなメリットといえます。受講するコースによっては託児サービスの利用もできます。

一方で、同時に複数のコースを受けられない、受講するには審査を通る必要がある、障害者向けのコースが少ない点がデメリットとして挙げられます。

障害のある人には、職業訓練と就労移行支援どちらがおすすめ?

障害のある人には、職業訓練と就労移行支援どちらがおすすめ?
障害のある人に就労移行支援と職業訓練のどちらがおすすめかは、個人によって異なります。障害の程度や特性の違い、経済的事情、身につけたいスキル、一般雇用か障害者雇用かなど、一人ひとりの状況や就職における条件が違うためです。

就労移行支援では、一人ひとりの障害特性や悩み、困りごとなどにあわせた支援がおこなわれます。そのため、「日常生活や就労に関して困難を感じている」「自身の障害特性を理解して対処法を知りたい」「障害者雇用枠での就職も検討している」人などは、障害に理解がある就労移行支援がおすすめといえます。

一方、障害や難病があっても日常生活や就労に関する困りごとがなく、「短期間でスキルアップがしたい」「給付金をもらいながらスキルを習得したい」人などには職業訓練がおすすめといえるでしょう。

後悔しないためにも、自身の状況に合った制度を選びましょう。


就労移行支援と職業訓練は併用できる?

障害や難病のある人のなかには、「就労移行支援と職業訓練を併用したい」と考える人もいるかもしれません。しかし、就労移行支援と職業訓練の併用はできません。

就労移行支援と職業訓練は、基本的に平日週5日の通所となるためです。時間も基本的に朝から夕方まで1日かかります。併用はできないため、どちらかひとつの制度を選ぶ必要があります。

実際に、就労移行支援での一日のスケジュールについて知りたい人はこちら

就労移行支援と職業訓練の違いを理解して、自分に合ったサービスを利用しよう

就労移行支援と職業訓練の違いや併用できるのかどうかについて解説しました。どちらの制度もメリット・デメリットがあります。就職活動を成功させるためには、自身の障害特性に適したサービスの選択が必要です。そのためにも、それぞれの違いを理解して見極めることをおすすめします。

就労移行支援事業所「ミラトレ」では、障害のある人が自分らしいはたらき方を見つけ、長くはたらき続けられるようサポートしています。利用者の障害特性を理解した上で一人ひとりの課題や能力に配慮しながら、就職までの準備はもちろん、職場への定着までを総合的に支援します。

また、就労移行支援の利用を検討している方に向けて、見学や利用体験をおこなっています。ミラトレの利用方法やサービスについて気になる方は、気軽にお問い合わせください。

執筆 : ミラトレノート編集部

パーソルダイバースが運営する就労移行支援事業ミラトレが運営しています。専門家の方にご協力いただきながら、就労移行支援について役立つ内容を発信しています。