基礎知識

公開日:2025/2/27
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就労移行支援の制度解説

就労移行支援を利用したいけれど生活費やお金が心配・・支援制度や対処法について解説

就労移行支援を利用したいけれど生活費やお金が心配・・支援制度や対処法について解説

就労移行支援を利用したいけれど、「生活費が心配」「お金がないから利用できない」と不安を感じている人もいることでしょう。しかし、雇用保険や傷病手当金、障害年金といった公的な支援制度を利用することで、就労移行支援利用中の生活費を補える場合があります。
この記事では、就労移行支援の利用中に使える公的支援制度に加え、お金がないときの相談窓口や対処法について詳しく解説します。まずは、利用可能な福祉制度について理解しておきましょう。

就労移行支援でかかるお金は?

就労移行支援を利用する場合、利用料や交通費などお金がかかる場合があります。ここでは、就労移行支援の利用でかかる費用について詳しく紹介します。

就労移行支援とは?

就労移行支援とは、障害や難病のある人が、一般企業への就職を目的としたスキル習得や実習の場の提供といった就職活動におけるサポートを受けられるサービスです。障害者総合支援法による障害福祉サービスのひとつに位置づけられています。

就労移行支援の通所期間は最大2年間の利用が可能となっており、その期間内で計画にもとづいたプログラムに取り組んで就職を目指します。

就労移行支援の利用料金は?

就労移行支援の利用料金(自己負担額)は厚生労働省によって定められており、前年の収入によって負担額の上限が決められています。収入は、18歳以上の場合は利用者とその配偶者の所得、18歳未満の場合は保護者の属する世帯(住民基本台帳上の世帯)の所得となります。
区分 世帯の収入状況 負担上限月額
生活保護 生活保護受給世帯 0円
低所得 市町村民税非課税世帯(※1) 0円
一般1

市町村民税課税世帯

(所得割16万円未満:※2)
※入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム等利用者を除きます。(※3)    

9,300円
一般2 上記以外 3万7,200円

※1 3人世帯で障害者基礎年金1級受給の場合、収入がおおむね300万円以下の世帯が対象となります。
※2 収入がおおむね600万円以下の世帯が対象になります。
※3 入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者は、市町村民税課税世帯の場合、「一般2」となります。

詳細はこちらのページをご覧ください。

利用料以外で必要なお金は?

就労移行支援の利用料以外に、人によっては以下のような費用がかかるケースがあります。

・就労移行支援事業所に通うための交通費
・実習や面接に行くための交通費
・飲み物や昼食など食事代
・資格取得のための教材費や受験料

食事代は午前と午後両方のプログラムを受講する場合に必要となりますが、中には昼食を無料で提供してくれる事業所もあります。交通費は自治体の補助金や障害者手帳による割引など、受けられる支援があるか事前に確認しておきましょう。

また、就労移行支援の利用とは関係なく毎月の生活費が必要となります。とくに一人暮らしの人は、家賃や光熱費、普段の食費などの生活費を確保した上で就労移行支援を利用しなければならないため注意が必要です。

就労移行支援を利用するために生活費を補う方法

就労移行支援の利用にあたって、賃金の支払いは発生しません。そのため、就労移行支援に通っている間は、別の収入源を確保するか貯金を切り崩す必要があります。

就労移行支援利用中の生活費を補う方法について、以下で詳しく紹介します。

アルバイト・副業

就労移行支援を利用しながらのアルバイトや副業は、自治体によっては禁止されている場合もあるので確認が必要です。就労移行支援は、就労を目指すための支援サービスのため、「アルバイト・副業=就労している」とみなされるケースがあります。

アルバイトや副業を認めている自治体であれば、就労移行支援に通所しながら生活費の一部をはたらいて補えるでしょう。ただし、平日の日中は就労移行支援に通うので、平日の早朝や夜間、もしくは休日のみと勤務時間は限られます。はたらける時間も自治体によって異なるため事前の確認が必要です。すでに就労移行支援に通所する予定が決まっている場合や、通所中の場合は、まず就労移行支援のスタッフへ相談することをお勧めします。

はたらき過ぎて疲れてしまう、体調を崩すなど、就労移行支援のプログラムに支障が出てしまっては本末転倒です。自身の体調と必要なお金とを考慮した上ではたらく時間を決めましょう。

雇用保険(失業保険)

雇用保険(失業保険)は、求職者の生活の保障を目的として支給される手当です。給付額は賃金日額の約50%〜80%で、失業前の給与額と年齢によって変動します。給付されるまでの待期期間は退職理由によって異なります。自己都合での退職の場合は、給付の申し込みから給付金が振り込まれるまで最短でも3カ月弱かかる点には注意が必要です。

また、障害のある人で「就職困難者」に該当する場合、失業給付を受けられる日数が5~12カ月に増える可能性もあります。それ以外の人は、通常3~11カ月です。雇用保険を受給しながら就労移行支援の利用を考えている人は、自分が受給できる日額や日数を確認しておくと良いでしょう。

傷病手当金

傷病手当金とは、けがや病気などではたらけなくなったときに支給される手当金です。支給額は給与の約2/3程度です。会社を辞めた場合でも支給開始日から通算して1年6カ月間支給されますが、雇用保険との併用はできません。また、再就職した時点で支給は止まります。

傷病手当金の支給期間終了後に雇用保険に切り替えることで、最大で約2年半ほど経済的な支援を受けられる可能性があります。傷病手当金の支給には細かな要件がいくつかあるので、詳細は公式のサイトなどで確認しましょう。

※参考:全国健康保険協会『病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)

障害年金

障害年金は、病気やけがによって生活や仕事に支障が出ている場合に受け取れる年金です。「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の2種類があり、診断を受けた日に加入していた年金制度によって異なります。傷病手当金と違い、雇用保険と組み合わせて受け取れるのが特徴です。

ただし、障害者手帳を取得していれば必ず受給できるとは限らず、障害者手帳の取得よりも認定が難しいといわれています。申請する際に必要となる書類が多いため、社会保険労務士などに相談する人も多くいます。社会保険労務士に書類作成を依頼する場合は、別途費用が発生します。支払金額や支払条件は、依頼前によく確認しましょう。

家族からの援助・仕送り

上記以外に、就労移行支援を利用している間の生活費を補う方法として、家族から生活費などを援助してもらう人も多くいます。金銭面の心配が軽減される分、職業訓練や就職活動に集中して取り組めるのがメリットです。

生活保護

生活保護は、生活に困窮している人に、最低限の生活を保障するための制度です。食費や光熱費、住宅費、医療費などが支給されます。前述してきたどの方法でも生活費が確保できない場合、生活保護の受給を検討しましょう。

受給できる金額は、住んでいる自治体や世帯人数によって決まります。障害者手帳を取得している場合、受給額の増額など、メリットも多くあります。

生活保護を受給するための条件や申請方法などの詳細は、お住まいの自治体に問い合わせてみましょう。

給付金や貸付金

自治体などが実施している給付金や貸付金制度を利用するのもひとつの方法です。
制度 対象者 支給額
住居確保給付金

・離職から2年以内
・就労意欲がある など

・賃料月額相当(上限あり)を支給(原則3カ月間、最大9カ月まで延長可)
総合支援資金
(生活福祉資金貸付制度)

・低所得者世帯

・失業や減収により生活が困窮している など 

   ・生活支援費の貸付(原則3カ月)

・住宅入居費の貸付
・一時生活再建費の貸付(上限あり)

臨時特例つなぎ資金

・住居がない離職者

・離職者を支援するための公的な給付制度または貸付制度を申請している など

・上限10万円の貸付

お金に困ったときに相談できる生活困窮者自立支援制度

生活困窮者自立支援制度は、お金に困ったときに誰でも無料で利用できる相談窓口です。最低限の生活を維持するための包括的な支援が受けられます。相談者一人ひとりの状況に応じた支援プランを作成してくれます。
  • 主な支援内容
    ・自立相談支援
    ・家賃相当額の支給(住居確保給付金)
    ・6カ月~1年の就労支援
    ・就労訓練
    ・家計改善支援
    ・子どもの学習・生活支援
    ・一時的な衣食住の提供

お金がないときの対処法

お金がないときの対処法として、「お金を減らさない」ことも大切です。就労移行支援の利用中は、収入源も限られるため、以下のような工夫や心構えが求められます。

支出を減らして節約する

日常生活に必要なお金を見直して、不要な支出がないか確認しましょう。とくに家賃や光熱費、通信費など固定費の見直しは、支出の中でも割合が大きいため効果的です。そのほか、外食やコンビニでの買い物、衝動買いなどもできるだけ控え、支出は必要最小限に抑えましょう。

やってはいけないこと

お金がほしいからといって、つぎのようなことはやってはいけません。
  • やってはいけないこと
    ・ギャンブル
    ・リスクの高い投資(仮想通貨・FX)
    ・宝くじ
    ・カードローン(キャッシング)
    ・闇バイト
    ・闇金融 など
ギャンブルやハイリスクハイリターンの投資、宝くじなどは、余裕のある資金でやるものであり、生活費を稼ぐための方法ではありません。また、高額報酬のバイトなども注意が必要です。最悪の場合、知らないうちに犯罪行為に荷担させられてしまう恐れがあります。どうしてもお金が必要になった場合は、前述した相談窓口(生活困窮者自立支援制度)を利用するなど公的な機関を頼りましょう。

就労移行支援事業所「ミラトレ」を利用して自分らしいはたらき方を見つけよう

就労移行支援利用中の生活費を補う方法について解説しました。雇用保険や障害年金など生活費を支援する制度のほか、お金に困ったときの相談窓口を活用すると、経済的な安定を図れる可能性があります。まずは、自分が使える制度があるのかどうかを知ることが大切です。

就労移行支援事業所「ミラトレ」では、障害のある方が自分らしいはたらき方を見つけ、長くはたらき続けられるようサポートしています。利用者の障害特性を理解した上で一人ひとりの課題や能力に配慮しながら、就職までの準備はもちろん、職場への定着までを総合的に支援します。

また、お金の管理方法や公的制度の活用方法についても助言やサポートをおこなっています。ミラトレの利用方法やサービスについて気になる方は、気軽にお問い合わせください。

執筆 : ミラトレノート編集部

パーソルダイバースが運営する就労移行支援事業ミラトレが運営しています。専門家の方にご協力いただきながら、就労移行支援について役立つ内容を発信しています。