就職事例

公開日:2022/9/29更新日:2023/3/29
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時間をかけて自己理解を深めた

情報サービス業
持続性抑うつ障害の20代女性Xさんの就職事例

持続性抑うつ障害の20代女性Xさんの就職事例

20代/女性/持続性抑うつ障害

今回紹介するのは、持続性抑うつ障害の20代女性の就職事例です。長くはたらき続けるためにきちんと自身と向き合い、自己理解を深めたいという希望のあったXさんが、就職するまでのストーリーと現在の様子をご紹介します。

診断後もはたらき続けたが周囲からの指摘で退職

大学在学中、心身の不調を感じることがあり違和感を覚えていたそうです。その違和感を隠しながら卒業後は正社員としてはたらき始めましたが、やはり不安を拭いきれずにメンタルクリニックを受診。そこで持続性抑うつ障害と診断されました。

もともと責任感が強い上に、業務内容も責任ののしかかる仕事だったため、自宅に帰ってからも仕事のことが頭から離れなかったと言います。主な業務内容はコールセンターでの受注業務で、企業や顧客との日程調整から、資料作成などの事務作業も担っていたそうです。持続性抑うつ障害と診断を受けてからも頑張ってはたらき続けていたそうですが、家族や友人から「以前と比べて様子がおかしい」と様子の変化や体重の減少を指摘され、これ以上はたらき続けることが困難と判断し退職に至りました。

自分の考えの癖と向き合い、今後の生き方を考えたい

前職を退職後、1年間自宅で休養する期間を過ごしました。その後、体調が安定したため就職活動を開始。無事内定をいただけたそうですが、入社日当日どうしても会社へ行くことができなかったそうです。

アルバイトでの社会復帰も検討したXさんですが、同じことの繰り返しは避けたいという思いから、長期的にはたらくために人生相談もできるような場所で自分をしっかりと見つめ直したいと考えました。インターネットで検索したり、通っているメンタルクリニックにあったリーフレットを見たりし、就労移行支援事業所の存在を知ります。今後の生き方や自分の考え方の癖ともしっかりと向き合いたいと考え、就労移行支援事業所の利用を決意されました。

通所開始当初の様子やその後の変化

1年間自宅療養をしており、社会生活にブランクがあったことから、最初の3カ月間は週3日の午前中のみの利用からスタート。通所当時は、体力的にも午前中だけで疲れてしまうような状況でしたが、3カ月経過以降は徐々に時間を長くしていきました。4カ月目からは週4日通えるようになり、5カ月目には週5日と順調に日数も時間も増やすことができました。

この期間に、毎日チェックシートを記入してもらい自身の体調をウォッチングしてもらいます。睡眠の状況や日々の疲労感などを記入し、前日の過ごし方で翌日にどのような影響が出るかチェックし、原因を探ってもらったのです。このチェックシートへの記入はミラトレ卒業まで続けてもらい、月に2回くらい原因なく不調になることにも気づけました。

自己理解を深め、困りごとへの対処方法も身につけられた

ミラトレ利用当初から、職業スキルを身につけるよりも自己理解を深めたいという希望のあったXさん。面談の機会を多く設け、支援員と共に前職の振り返りを行いました。過去の振り返りは本人にとっても辛いことだったので、対応する支援員をその時々で変えたり、今後やりたいことなど未来の話も織り交ぜたりといった工夫も施します。そして、疑似就労の中で成功体験を積んでもらい、自信へとつなげていきました。

メンタルケア講座は本人にとっても効果的だったようで、完璧を求めすぎてしまうことや頑張りすぎてしまうという考え方の癖にも気づいてもらえたようです。困りごとや落ち込みに対してどのような対策をとるか、不安になったときにどのように対処するかなども、身につけていただくことができました。

幅広い業務を任せてもらえる企業ではたらきたい

ミラトレ利用開始から約9カ月、週5日の安定通所ができるようになり、前職の課題整理や対処法が身についたタイミングで就職活動を開始しました。障害者向けの転職支援サービスに登録し、キャリアアドバイザーと面談しながら求人を紹介してもらいます。本人は、障害者雇用枠での就業であっても業務が制限されるのは避けたいと感じており、幅広い業務を任せてもらえる企業を希望していました。

しっかりと自己理解を深め言語化してきたものを面接でも発揮

就職活動では、9カ月かけて自己理解を深めた成果を発揮でき、質問に対して自分の考えで答えることができました。もともとコミュニケーション能力の高い方だったので、面接練習をたくさんこなしたわけではありませんが、自己理解を深めるために支援員との面談を通して言語化してきたものを、きちんと面接でも伝えられていた印象です。

しかし、前職を1年半で退職しているため、職務経験が浅く書類審査がなかなか通らない一面もありました。本人に不安もあったようですが、支援員が「職歴は変えられない」「自分に合う企業を根気強く探していこう」と声がけすることで、自分のペースで就職活動を進められました。そして、ミラトレ通所開始から11カ月後、情報サービス業の企業から内定を得ます。

前向きにチャレンジしてくれる姿勢が評価された

現在、情報サービス業の事務としてはたらいているXさん。契約社員として入社後、1年経たずして正社員登用を果たしています。こちらの企業はオープンポジションの募集だったことから、本人の幅広い仕事をしたいという希望とマッチ。一次面接の時点で企業から内々定の打診があり、トントン拍子で就職が決まりました。

面接での企業からの評価も、自分のことをきちんと話してくれてやりたいことが明確であり、「何をお願いしても前向きにチャレンジしてくれそう」と高く、とても気に入ってもらえたのが印象的です。面接後は支援員も同行しオフィス見学へ行き、直属の上司となる方ともお話させていただきました。本人も「自分のスキルや適性を考慮してもらえるオープンポジションで、幅広い仕事ができる」と実感し、不安もあるけれど飛び込んでみようと就職を決意しました。

前職が責任のある仕事で、自分と顧客のやり取りだけで契約が確定することに強い不安のあったXさん。就職先企業には「仕事の進捗確認や相談のできる窓口を設けてほしい」「一人で抱え込むのが怖いためチームで仕事をさせてほしい」「ダブルチェックをお願いしたい」といった配慮を求めています。

障害者雇用の促進に関わり、同じ境遇の人が長くはたらける手助けをしたい

就職当初、企業の担当者からは、頑張りすぎてしまわないか、業務量をどこまでお願いしたらよいか掴みにくいといった不安があったようですが、定着支援の中でミラトレの支援員が間に入り調整をしました。本人からは業務面での相談は特になく、企業と何でも話せる関係性ができているのだと感じています。障害の特性上、睡眠に不安があるようですが、主治医に相談したり安眠グッズを取り入れたりと、自分なりに工夫している様子です。

そして、最初に配慮してほしい事項を伝えておいたからこそ、小さなことでも相談しやすく、企業ともよい関係性を築けているのだなと感じます。相談・報告をさせてほしいという点は、本人だけでなく企業の安心にもつながったのでしょう。企業としても、相談しながら前向きにチャレンジしてくれる姿勢を評価し、正社員登用に至ったのだと感じています。現在の本人の様子は、毎日とても充実しているようです。本人の希望通り、さまざまなことを担当させてもらっていて、仕事にもやりがいを感じていると言います。

今後は、自社での障害者雇用の促進に関わりたいと話しているXさん。自分が経験してきたことを他の人にも伝えることで、同じ境遇や悩みを持つ人が長くはたらけるようにしていきたいと話してくれています。ミラトレを利用した11カ月間を振り返り、時間をかけて自己理解を深められたことで正社員になれたと感じてくれており、ミラトレを利用してよかったとの感想も伝えてくれています。

※プライバシー保護のため、事実を元に文章を一部再構成しています。

執筆 : ミラトレノート編集部

パーソルダイバースが運営する就労移行支援事業ミラトレが運営しています。専門家の方にご協力いただきながら、就労移行支援について役立つ内容を発信しています。