就職事例

公開日:2022/12/26更新日:2023/3/29
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できること、できないことを認めると可能性が広がった

不動産業
うつ病の40代男性Aさんの就職事例

うつ病の40代男性Aさんの就職事例

40代/男性/うつ病

今回紹介するのは、うつ病の40代男性の就職事例です。自分の特性や障害を受容できなかったAさんが、就労移行支援を活用して就職するまでのストーリーと現在の様子を紹介します。

体調を崩したことがきっかけでうつ病を発症し退職

不動産関連の企業で建築業に就いていたAさんは、クレーム対応業務が続いたことから心身ともに体調を崩してしまいます。病院を受診するとうつ病と診断され、休職期間を経て退職されました。退職後は2年間の療養生活を送りました。

その後、家族もいるため経済面に不安を感じ、すぐにはたらけそうな派遣や短期の仕事を始めます。しかし、自分にとってのはたらきやすさを考慮して就職活動をしていなかったこともあり、いずれも長期就労には至らなかったそうです。

就職活動をする中で就労移行支援を知る

再就職を目指す中、インターネットで初めて就労移行支援の存在を知りました。自分の障害を認めたくない気持ちもありましたが、うつ病発症後は就職活動や長期的な就労に課題を感じていたことから、就労移行支援事業所の話を聞いてみたいと考えてミラトレに電話をかけます。

支援員の電話対応に話しやすさを感じ、さらに話を聞いてもらいたいという想いが溢れてきたそうです。この電話がきっかけでミラトレを見学していただくことになり、対面でじっくりとお話を聞かせてもらうことになりました。当時は一般枠で就職したいという気持ちを持っていたAさんですが、自分の考えを整理する期間にしようと就労移行支援の利用を決めます。

通所開始当初は「できる」自分でいたい気持ちが強かった

トレーニングに意欲的で、何でもできる状態でいたい傾向にあることから、最初から週5日の通所を開始しました。しかし、当時を知る支援員は無理をしていないか心配だったといいます。目標設定やモニタリングの際に涙を流したり、苦手な相手をシャットアウトしたりと感情の起伏が大きいことから、がんばりすぎないように適宜声をかけるようにしました。

例えば、土曜日の開所日にも通所した時には、「来週は平日のどこか1日を休もうか」と休みを促すような声掛けをしながら様子を見ていくなどです。徐々に自身も情緒が不安定であることを認識し、自分には課題が多いと気付きます。苦手なことを認めたくなかった気持ちが強かったので、できることとできないことを認めるトレーニングを始めました。

トレーニングと面談を重ね、見えてきた課題や障害を受け容れる

ミラトレのトレーニングのひとつである擬似就労に取り組んでいく中で、得意なことと苦手なことが見えてきます。例として、目で物を追ってしまう癖があるため、目を開けていると隣で説明を受けても集中できずに聞き取れないことがありました。説明を聞く時に目を閉じたり耳をマッサージしたり工夫をすると、説明を聞くことに集中できました。

他には、マルチタスクや聞きながらまとめる作業が苦手だったので、対応してもらう時間の長さに気をつけてお願いすることもありました。このように、さまざまなトレーニングと面談を重ねて自分の特性に気付いてもらいます。

障害者手帳を取得して就職を目指すことに

ミラトレに通所してからも一般枠で就職する希望を持っていたAさんは、「できないこと=格好悪い」という思い込みがあり、障害を受容することに強い抵抗がありました。今後の就職活動ではたらき方の可能性を広げるため、支援員は「特性に合う求人があった時に、障害者手帳がないと応募できないこともあるんだよ」「チャンスを増やすという考え方で手帳を取得し、一般枠で就職が決まった時は返却してもいい」と声掛けをします。

この言葉がきっかけで、これまで踏み切れなった障害者手帳の申請をすることになりました。自分にできないことがあるという事実を受け入れると、ミラトレ内でも格好悪い自分を見せられるようになり、率先して楽しい雰囲気をつくる様子も見られました。

「この会社ではたらきたい」という想いが企業に伝わる

通所開始から10カ月が経つ頃、合同面接会に前職のグループ企業が参加していたことがきっかけで就職活動を始めます。合同面接会後の二次面接では、「またこの会社ではたらきたい」という本人の強い想いが担当者に伝わり、三次面接では企業の代表とお話しする機会をいただきました。

ミラトレ通所から11カ月が経過したころ、面接を受けた建設業でフルタイム正社員の内定をいただきます。その際、企業の担当者に時間をつくっていただき、Aさんの特性やうつ病について説明させていただきました。周りの方の様子が気になってしまう特性を伝えると、「席はこうした方がいいかな」と担当者から提案をいただくなどの意見交換ができました。他には、根性論でがんばりすぎてしまう際の対応や、聴覚過敏なので周りの音が気にならないようにイヤホンをつけてもよいかなど、特性にあわせたはたらき方の相談をさせてもらっています。

はたらく可能性を広げて長期的な就労を目指している

就職後、定着支援の面談には企業の担当者も同席してくれるなど、Aさんのことを理解したいという姿勢が伝わってきます。社内に自分のことを考えてくれる存在がいることは、本人にとっても安心してはたらきやすい大きな価値といえるでしょう。定着支援をおこなう中で、「ミラトレと離れるのは寂しい」「ずっとつながっていたい」と話す姿から、就労移行支援を受けてよかったという気持ちや現在の生活が充実している様子を感じられました。

また、就職をきっかけにかかりつけ医を変更すると、新たに発達障害と診断されました。発達障害であるとわかり、診断に合わせた治療が始まったことで、「頭の中がスッキリした」と体調が安定したそうです。ミラトレへの通所当初は自分の特性や障害を認めたくなかったところからスタートしましたが、できる自分とできないことがある自分のどちらも受容することで可能性を広げていきました。今後は資格を取得し、定年まではたらくという目標も語ってくれています。

※プライバシー保護のため、事実を元に文章を一部再構成しています。

執筆 : ミラトレノート編集部

パーソルダイバースが運営する就労移行支援事業ミラトレが運営しています。専門家の方にご協力いただきながら、就労移行支援について役立つ内容を発信しています。