就職事例

公開日:2023/9/29
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「はたらきたい」という気持ちがあれば年齢の壁を越えられる~

人材業界/経理職
適応障害の50代男性Jさんの就職事例

適応障害の50代男性Jさんの就職事例

50代/男性/適応障害

適応障害を抱えながらはたらくことに、難しさを感じる方もいるのではないでしょうか。1人で自分の適性に合ったはたらき方を見つけたり、就職後の悩みと付き合ったりするのは大変かもしれません。パーソルダイバースの就労移行支援事業所「ミラトレ」を利用し、一般企業への就職を叶えた卒業生は多くいらっしゃいます。今回紹介するのは、適応障害のある50代男性の就職事例です。50代で離職し就労への自信を失いかけていたJさんが、就労移行支援を活用して就職するまでのストーリーと現在の様子を紹介します。

コロナ禍で失業したことをきっかけに体調が悪化してしまう

介護職のエキスパートを志していたJさんは、何度か転職を重ねながらキャリアアップを目指していました。しかし、職場環境になじめず体調を崩し、医療機関を受診したところ、うつ病と診断されました。それでも家族の生活を支えるために仕事を続けましたが、うつ症状がある状態ではたらき続けることは難しく、退職と転職を繰り返していました。

その後、製造業の仕事に就いていた時に新型コロナウイルス感染症の影響で事業活動が縮小し、会社都合で退職。「新型コロナウイルス感染症の影響はいつまで続くのだろう」「50代という年齢で再就職できるのだろうか」という将来への不安が、さらなる体調の悪化を招いてしまいました。医療機関で適応障害を併発していると診断され、自宅療養の日々を過ごします。

はたらき方を見直し、新たなスキル習得を目指してミラトレへ

半年ほど経った頃、少し体調が上向きになり、再就職に向けて就労移行支援を活用することにしました。年齢的に製造業への就職は難しいと感じていたため、一般事務のスキルを身につけたいと考えていたそうです。

インターネットで就労移行支援事業所を探したところ、目に留まったのが「ミラトレ」の公式ホームページでした。見学後、3日間の体験利用を経て通所を決意。決め手は、エクセルやタイピングを一から学べるパソコントレーニングプログラムと、就職サポートが充実している点でした。

トレーニングを重ねるにつれ、はたらく意欲がアップ

半年間の療養によって体調が上向きになったとは言え、通所を開始した当初は気力が低下気味で、口数も少ない様子でした。週2日から通所を開始し、体調の安定を最優先にしながらさまざまな取り組みをおこないました。

【取り組み1】通所手段を工夫し、通勤トレーニングを実施

Jさんには、閉鎖的な空間に不安を感じ、電車に乗れないという特性がありました。しかし、通所を決めたミラトレの事業所は、市街地に位置していたため駐車場がなく、近隣駐車場の料金も比較的高額でした。

そこで、事業所から徒歩30分の場所にある低価格の駐車場に車を停め、そこから歩いて通所することにしたのです。この通所手段は、通勤のトレーニングも兼ねていました。朝早く家を出て往復1時間歩くことで、毎日通勤できる体力と生活リズムを身につけていったのです。

【取り組み2】モチベーションを維持しながらパソコンスキルを向上

パソコン操作はほぼ未経験だったため、他の利用者の方と自分のレベルを比較して落ち込んでしまうことがありました。比べる対象は他人ではなく、昨日の自分だという考え方を伝え、トレーニングの成果を毎日記録してもらいました。記録したデータで過去の自分と比べることで成長を実感し、自己肯定感やモチベーションの向上につながったようです。

【取り組み3】自己発信力を身につけ、将来への不安を少しずつ軽減

ミラトレに通所する以前から、将来に対する不安が体調を悪化させる原因のひとつになっていました。支援員は、悩みや不安をひとりで抱え込まないよう、自己発信する習慣を身につけることが大切だと考えました。そこで、あえて声掛けせず、自分から相談してくれるよう促しました。

すると、「何度も転職を繰り返し、50代を迎えた自分が就職できるだろうか」という不安を打ち明けてくれました。支援員は、「10回以上転職経験があるのだから、自信をもってください。次は無理だと思う根拠はないはずです」と声を掛けながら、就職という目標に向かってともに歩み続けました。

もうひとつの悩みが、「自分より年下の利用者と打ち解けられるだろうか」ということでした。50代で転職する場合、一般的に自分よりも年齢が若い世代とはたらくことになるでしょう。ミラトレ卒業後に備え、年下の利用者ともコミュニケーションを取れるよう見守りました。通所を開始した当初は口数が少なかったものの、徐々に明るく活発な一面を見せてくれるようになったのです。

今の状態を言語化し、面接でありのままの自分を表現できた

通所開始から3、4カ月経った頃には週5日通所に切り替わり、そこから安定通所が3カ月続いたため、そろそろ就職活動を始めても大丈夫だと判断しました。

就職活動の第一歩として、自分の障害特性や現在の体調、体調不良のきっかけとなる内的要因と外的要因を他者に伝えられるよう、文字に書き起こすシートを作成してもらいました。そのシートをもとに模擬面接とフィードバックを繰り返すうちに、自己理解と自己発信の力が身につきました。

特性に合った就職先を提案

支援員の頭の片隅に「Jさんに向いているのではないか」と思える求人候補として、警備会社の庶務の求人がありました。候補に挙げた理由は3つあり、1つ目は業務に事務だけでなく体を動かす作業が含まれていたため、心身の安定を図りながらはたらけること。2つ目は、車通勤ができる企業のため、電車に乗る必要がないこと。そして3つ目は、賃金が比較的高く、家族がいるご本人にとっては経済面の安定につながることでした。

面接で人柄が伝わり、内定を獲得

面接と実習の結果、温厚で謙虚な人柄やコミュニケーション能力が高く評価され、内定を獲得。内定後、通勤手当などの条件や仕事内容に変更が生じることもありましたが、その都度、人事担当者への問い合わせやご本人との相談を重ね、双方納得の上で就職できました。

自分を知ることがはたらきやすさの糸口になった

ミラトレに来た当初、ご本人は転職回数や年齢が再就職のハードルだと考えていましたが、実は特性に対する理解不足が壁になっていたのです。特性を知り、自分に合ったはたらき方を見つけられた今は、「この会社で定年まではたらき続けたい」と意欲を見せてくれました。

最近は、「障害者・健常者の区別意識がない職場ではありますが、私が障害者だということを忘れられているようで、少し不安になります」と仕事上の悩みも打ち明けてくれました。障害のある方にとっては、「最近どうですか?」という何気ない一言も大きな支えとなります。体調に気を配ってもらえるよう人事担当者に相談するなど、定着支援をおこなっているところです。

※プライバシー保護のため、事実をもとに文章を一部再構成しています。

執筆 : ミラトレノート編集部

パーソルダイバースが運営する就労移行支援事業ミラトレが運営しています。専門家の方にご協力いただきながら、就労移行支援について役立つ内容を発信しています。