うつ病を抱えながらはたらくことに、難しさを感じる方もいるのではないでしょうか。1人で自分の適性に合ったはたらき方を見つけたり、就職後の悩みと付き合ったりするのは大変かもしれません。パーソルダイバースの就労移行支援事業所「ミラトレ」を利用し、一般企業への就職を叶えた卒業生は多くいらっしゃいます。今回ご紹介するのは、うつ病の40代女性の就職事例です。ストレスをため込みがちだったKさんが、就労移行支援を活用して就職するまでのストーリーと現在の様子を紹介します。
オーバーワークと職場の人間関係にストレスを感じて退職
大学卒業後、事務や経理、企画などさまざまな職に従事し、キャリアを積み重ねていたKさん。国家資格を取得し、講師としてはたらきはじめた後は、人手不足を補おうと長時間勤務や自宅に仕事を持ち帰るなど率先してはたらいてきました。
上司の感情的な言動がきっかけで体調を崩す
過労によるストレスを抱えながら仕事を続けていましたが、職場内で上司が同僚を叱責する様子を見聞きしたことがきっかけで、体調を崩してしまいました。体が思うように動かなくなったことでかかりつけ医を受診すると、うつ病と診断されました。
仕事を辞めて自分のはたらき方を見つめなおしたとき、「キャリアを活かしてバリバリはたらきたい」という気持ちと、「はたらき方を変えなければ無理をし続けてしまう」という気持ちがせめぎ合ったそうです。障害者雇用も視野に入れて障害者手帳を取得し、次の就職に向けて就労移行支援制度を活用することにしました。
再就職に向けて就労移行支援事業所「ミラトレ」への通所を決意
事業所選びで何より重視したのは「人柄」。講師としてはたらいた経験上、信頼できるスタッフにサポートしてほしいという思いが強かったといいます。1カ月半かけて情報収集し、複数の事業所を見学した結果、スタッフのスキルや人柄が自分に合っていると感じ、「ミラトレ」への通所を決意されました。
就労に向けたトレーニングを通じて心の状態に気づき、対処法を身につけた
当初は体の倦怠感があったため、週3日から通所を開始しました。社会人としてのキャリアが長く、ビジネス面のスキル不足はありませんでしたが、トレーニングを通じ3つの課題が見えてきました。
【課題1】がんばりすぎのサインに気づく
Kさんは、タスクをすべて引き受けてストレスをため込んでしまう傾向があり、その結果体調を崩してしまうことがわかりました。そこで、がんばりすぎる自分にブレーキをかけられるよう、個別支援計画書を作成。頭痛や腹痛、だるさなどのストレスサインによって、黄信号から赤信号に変わる前に自分で気づけるよう、トレーニングを開始。徐々に支援員から声掛けしなくても自分でストレスサインに気づけるようになり、自分のキャパシティを上回る仕事は手放せるようになりました。
【課題2】はたらく体力を向上する
うつ病になってから活動量が減っていたため、体力の向上も課題のひとつでした。余暇に軽いジョギングを取り入れたり、ミラトレのヨガプログラムに参加したりと、無理のない範囲で楽しみながら体力の向上を図りました。体力が向上するにつれ体調も安定し、一般的な企業で週5日就業する土台づくりができました。
【課題3】過去の自分と向き合う
人との接し方に敏感になってしまう一面がありましたが、その背景には家族との関係性がありました。1カ月に3~4回の頻度で面談の場を設け、ゆっくり過去をひもときながら、つらかった出来事やそのときに抱いた感情を話してもらいました。閉じ込めていた感情を言語化し、過去と折り合いをつけることで、人間関係やタスクにこだわらず、周囲の人とほど良い距離感を保てるようになりました。
やりたいことと、今の自分ができることに葛藤した就職活動
読書家でメンタルケアにも関心が深かったKさんは、アンガーコントロールなどの知識も豊富。理論上は理解していたものの、ミラトレで実際に講座を受けてみると、自分の感情を抑圧していたことに気づいたそうです。ミラトレに通所しはじめてから8カ月後、負の感情をもつこと自体が悪いのではなく、受け止め方が大切だと気づき、気持ちが安定したタイミングで就職活動を開始しました。
キャリアと進路に悩みながらも、「話す」ことで気持ちを整理
ミラトレに通所するまでの経験から就職活動に必要な知識やマナーは心得ていましたが、進むべき道を決めかねていました。障害の特性を考えて事務の道へ進むべきか、自分のやりたい企画・営業の道に進むべきか、なかなか答えが出ませんでした。支援員やかかりつけ医と対話し、自分の気持ちを整理するよう声掛けした結果、事務職も視野に入れる決心がついたそうです。
面接では、転職回数の多さを前向きな言葉で説明
履歴書に記入した転職回数の多さから、書類選考を通過することが第一の壁となりましたが、2社から通過の知らせを受け、面接選考に進みました。面接では、障害発症の背景やきっかけについても質問を受けましたが、「今の自分なら別の見方ができる」「経験を今後のはたらき方につなげたい」と、前向きに返答できました。過去としっかり向き合い整理できていたからこそ、自分の気持ちを言語化できたのだと思います。
ワークライフバランスを保ちながらステップアップも目指している
前向きな姿勢と経歴を企業に評価され、事務職で採用されることになりました。Kさん側は、面接時に冷静に相手を尊重できる担当者と出会ったことで、前向きな姿勢で再就職のスタートを切ります。
ご本人にミラトレでの日々を振り返ってもらった際、「やるべきときはやる、楽しむときは楽しむ、というメリハリのある環境が良かったです。自分にとっては気分転換できる憩いの場でした」と語ってくれました。ミラトレでは年代や症状、キャリアなどが自分と近い利用者に出会えたため、悩みを分かち合いながら就職活動に取り組めたことが糧となっていたようです。
現在は、正社員登用を目指してはたらきながら、ミラトレ時代の友人との交流や読書など余暇の時間も大切にしている様子。仕事とプライベートをちょうど良いバランスで両立できているため、この状態を保ちながら長くはたらき続けるという新たな目標とともに歩んでいます。
※プライバシー保護のため、事実をもとに文章を一部再構成しています。
執筆 : ミラトレノート編集部
パーソルダイバースが運営する就労移行支援事業ミラトレが運営しています。専門家の方にご協力いただきながら、就労移行支援について役立つ内容を発信しています。