就職事例

公開日:2023/11/30
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誰かと不安を共有することが自分と向き合う一歩になった

人材業界/金融業界
うつ病・パニック障害の50代女性Lさんの就職事例

うつ病・パニック障害の50代女性Lさんの就職事例

50代/女性/うつ病・パニック障害

うつ病やパニック障害を抱えながらはたらくことに、難しさを感じる方もいるのではないでしょうか。1人で自分の適性に合ったはたらき方を見つけたり、就職後の悩みと付き合ったりするのは大変かもしれません。パーソルダイバースの就労移行支援事業所「ミラトレ」を利用し、一般企業への就職を叶えた卒業生は多くいらっしゃいます。今回紹介するのは、うつ病・パニック障害の50代女性の就職事例です。不安が強く、完璧を求めがちだったLさんが、就労移行支援を活用して就職するまでのストーリーと現在の様子を紹介します。

身体的な不調により退職後、うつ病・パニック障害を発症

DTPオペレーターに従事していたLさんは、神経性疲労疼痛症候群を発症したことで業務を続けることが難しくなり退職しました。その後、精神面の不調も生じていたため医療機関を受診したところ、うつ病とパニック障害であると診断されます。以降、行政主催のお仕事体験に参加したものの、長くはたらくイメージができず、職歴に10年ほどの空白期間がありました。

そのような中、インターネットで就労移行支援を知り、自宅の近くにあったミラトレを見つけたそうです。見学に来てくださった時は、自分がまたはたらけるようになるのか不安という気持ちを伝えてくれました。神経性疲労疼痛症候群の症状もあるため、体調を整えて見学の半年後からミラトレへの通所を始めることになりました。

ご本人と相談し、無理のない範囲で通所をスタート

週3日フルタイムでスタートするも、Lさんの身体的疲労感が強いことから、午前のみの通所に変更。通所当初は数十分間隔で身体の向きを変えるなど、同じ姿勢が続かないように気をつけていましたが、徐々に活動時間を延ばせるようになりました。少しずつ1日あたりの時間を延ばしていき、通所から8カ月後には午後のグループワーク(擬似就労)に参加できるほどになりました。

うつ病・パニック障害に関しては、通院や服薬を続けていること、参加したコミュニケーション講座で対策を身につけたことから大きな症状が出ることはありませんでした。

トレーニングを通じて見えてきた2つの課題と対処法

これまでの社会人経験からビジネススキルは身についていました。しかし、ミラトレでトレーニングを重ねていくうちに2つの課題が見えてきました。

【課題1】強い不安を感じて溜め込んでしまう

周囲の方とスムーズにコミュニケーションが取れているように見える一方で、ご本人の中には不安が隠れていました。不安が強くなると身体症状も出てきたり、体の調子が悪くなると不安が強くなったりと、心と体のバランスを崩してしまうことがあったのです。

自分から不安を打ち明けることは難しい様子だったので、定期的に面談の機会をつくりました。気負いせず心の状態を打ち明けやすいように、雑談ベースで面談をしていくうちに、少しずつ自分や家族のこと、将来に対する思いを打ち明けてくれました。「これからは人に頼っていくことも大切ですよ」と声掛けをし、気持ちの切り替えとともに体調を記録してもらうようになると、不安が強くなる前に自分から支援員へ相談するなど行動を起こせるように変化していきました。

【課題2】完璧を求め、ルールに厳しすぎる

自分の中の理想像があり、完璧を求めるあまり厳しすぎる一面もありました。周りの方へは、自分に対するほどの厳しさはないもののルールに沿って行動してほしいという思いが強かったです。納得できないと感じた時に意見できるのは長所でもありますが、これから企業に所属してはたらくことを考えると、このままでは苦しさを感じてしまうのではないかと考えました。

就職先で疑問を感じたり、納得できなかったりする場面はあるかもしれません。しかし、会社のルールや制度などにはつくられた時の背景や理由があります。時には折り合いをつけてくことも必要だと伝えると納得してくれました。

今の自分にとってのはたらきやすい環境と向き合った就職活動

週5日のフルタイムで安定して通所ができた頃、ご本人の希望と主治医の判断もあり就職活動をスタートします。

重視したいポイントは「相談のしやすさ」だと気付く

就職先を探す際、一番大事にしたのは相談がしやすいことでした。不安が大きくなると体調を崩してしまうLさんにとって重要なポイントです。こまめに面談の機会をつくってくれる環境ではたらきたいという希望に沿って求人を探しました。

はじめての障害者雇用での転職活動。これまでの選考とは異なる部分も理解・言語化していく

これまでのはたらき方と大きく異なるのが、障害者雇用であること。障害の発症経緯や現在の自分の状態、企業にお願いしたいことを面接時に伝える必要があります。自己理解をした上で言語化し、それを自分の言葉で面接当日に伝えるため、作成してもらった文章をもとに面接練習をおこない、フィードバック、文章の修正を何度もくり返すことで本番もスムーズに面接をおこなえました。

企業にお願いしたいこととして、こまめに面談の機会を作ってほしいことの他に、身体症状に合わせて業務中に定期的にストレッチをさせてもらいたいことなど、神経性疲労疼痛症候群の症状への対処につながる内容も伝えられました。

心と身体のバランスをとりながら、やりがいをもってはたらいている

ミラトレ通所から1年11カ月が経過した頃、参加した企業説明会で不安が取り除けたことがきっかけで応募した金融関係の企業から内定をもらいます。希望していたこまめな面談は、環境に慣れるにつれて少なくなっています。体調の記録を継続しながら事務の仕事に取り組んでいます。

時々不安が強くなることもありますが、仕事に支障が出るほどではなく、セルフケアを続けているそうです。得意な分野を活かして作成したマニュアルが周囲の方の役に立っているなど、やりがいをもってはたらいています。

ご本人にミラトレでの日々を振り返ってもらった際には、「仕事以外の話ができる相手がいることは安心感がある」「あの時、ミラトレに相談して通所をしたから、こうやってはたらけています」とLさんは語ってくれました。

現在は体調も整って正規雇用に切り替わり、フルタイムではたらいています。体力もついてきて、長時間座っていられるようになっただけでなく、神経性疲労疼痛症候群になったことで諦めていた趣味のマリンスポーツも再開できるかもしれないと、将来の希望を話してくれました。

※プライバシー保護のため、事実をもとに文章を一部再構成しています。

執筆 : ミラトレノート編集部

パーソルダイバースが運営する就労移行支援事業ミラトレが運営しています。専門家の方にご協力いただきながら、就労移行支援について役立つ内容を発信しています。