基礎知識

公開日:2022/11/25更新日:2026/5/31
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就職ガイド –はたらく選択肢-

軽度知的障害のある方が仕事を長続きさせるには?向いている仕事や支援機関を紹介

軽度知的障害のある方が仕事を長続きさせるには?向いている仕事や支援機関を紹介

軽度知的障害があることから、職場でのコミュニケーションや仕事の覚え方に悩み、なかなか長続きしないと感じている方もいるのではないでしょうか。あるいは、大人になってから軽度知的障害であることが判明し、転職活動や就職活動の進め方に戸惑っている方もいるかもしれません。軽度知的障害のある方はも、適切な仕事の選び方や支援機関の活用によって、安定したはたらき方を実現できます。一人で悩まずに、自分の特性に合った環境を整えることが、仕事を長続きさせる第一歩です。この記事では、軽度知的障害の基礎知識や特徴とともに、向いている仕事、無理のないはたらき方や就職する時に使える支援機関をご紹介します。

【この記事で分かること】
●軽度知的障害の特徴と程度別の違い
●知的障害のある方の雇用状況
●軽度知的障害のある方が向いている仕事
●就職・転職時に活用できる支援機関と就労移行支援の概要

目次

知的障害とは

知的障害とは、発達期(概ね18歳未満)に知的機能と社会生活への適応機能の遅れがあらわれ、日常生活に支援が必要な状態を指します。
知的機能の水準はIQ(知能指数)によって評価されることが多く、一般的にIQ70未満が知的障害の目安とされています。加えて適応機能は、日常生活で必要とされるコミュニケーション能力、対人スキル、仕事・学業への対応力などを指します。知的障害のある方は、同年齢に比べ読み書き・計算などの知能に遅れや停滞があり、集団のルールを守ったり、他人とよい関係を築いたりといった適応が難しいことがあります。そのため、知的障害のある方は特別な支援や配慮が必要です。

幼少期~青年期の発達期にあらわれるとされる知的障害ですが、中等度以上の場合は3歳児健診までにわかることが多いと言われます。しかし軽度の場合は、小学校入学時期にわかることや、学習内容が難しくなる中で明らかになることもあるようです。18歳を過ぎてからの知的能力や適応能力の低下は知的障害と診断されないため、大人になってからの診断には、子どもの頃からの困りごとなどのエピソードが必要となることが多いようです。

知的障害は、医療機関で問診と簡単なテストを行うことで診断されます。診断にはアメリカ精神医学会の「DSM-5」や世界保健機関(WHO)の「ICD-11」などの客観的な基準があり、検査結果から総合的に判断されます。また、知能検査と適応能力検査の2つによって総合的に診断がされるようです。

知的障害の程度別の特徴(軽度・中等度・重度・最重度)

知的障害のあらわれ方は、人によってさまざまです。症状の程度により「軽度」「中等度」「重度」「最重度」の4段階に分類されます。ここでは、大人の知的障害の場合に症状の程度別に見られる特徴を見ていきましょう。
知的障害の程度 特徴
軽度

・おつりの計算や暗算、計画を立てること、優先順位をつけることは苦手
・コミュニケーションや言葉の使い方が同年代に比べ未熟
・身の回りのことは自分でできることが多い
・買い物や家事、金銭管理、健康管理は、支援があればできることが多い

中等度 ・字を読むこと、お金の概念は小学生レベルでとどまっていることが多い
・単純なコミュニケーションはとれるが、難しい判断や意思決定には支援が必要
・身の回りのことは部分的にはできるが、状況に応じた判断は難しい場合がある
(衣類の着脱はできるが、気温や季節に合わせた選択・調整は難しい等)
・買い物や家事を一人でできるようになるまでには、長い時間をかけて支援する必要がある
・職場や環境において支援があれば、自立して仕事できる
重度 ・字を読むことやお金の概念は、ほとんど理解が難しく、常に支援が必要
・簡単なあいさつや受け答え以外のコミュニケーションは苦手
・情緒の発達が未熟で、身の回りのことを一人でするのは難しい
・食事や身支度、入浴などは、支援や介助が必要になる場合もある
最重度 ・言葉の発達が未熟で、声を出す程度にとどまることがほとんど(ただし訓練により、簡単な単語なら言えるようになるケースもある)
・身振りを使ったコミュニケーションは、家族などの限られた範囲であれば理解できる場合もある
・ひとりで身のまわりのことを自分でするのは難しい
・食事や身支度、入浴などすべての日常生活上の行動は、支援や介助が必要

知的障害があると診断を受けた場合は、「療育手帳」が交付されます。療育手帳は都道府県・政令指定都市が発行するもので、各種福祉サービスの利用や障害者雇用枠でのはたらき方に活用することができます。取得することで、各種手当や料金の割引、就労支援サービスの利用、障害者雇用枠での就職・転職など、さまざまなサービスを利用できます。

※関連記事:「療育手帳とは?申請方法やメリット・デメリット、受けられるサービスについて解説します!

知的障害のある方の雇用状況

厚生労働省の令和5年度障害者雇用実態調査によると、従業員規模5人以上の事業所に雇用されている知的障害者数は27万5,000人に上り、平成30年調査の18万9,000人と比較して45.5%もの大幅な増加となっています。社会全体として障害者雇用への意識が高まっており、知的障害のある方が活躍できる場が着実に広がっていることが分かります。

平均勤続年数・雇用形態

知的障害がある方の平均勤続年数は、前回調査の7年5カ月から9年1カ月へと増加しており、職場への定着が進んでいることを示しています。また、雇用形態については20.3%が正社員としてはたらいており、安定した就労を実現している方も一定数いることがうかがえます。

賃金・労働時間

労働時間については、週30時間以上の労働が64.2%を占めており、多くの方がフルタイム、またはそれに近い形態でのはたらき方をしています。平均賃金は、13万7,000円となっています。

参考:厚生労働省「令和5年度障害者雇用実態調査

知的障害がある方の3つのはたらき方とは?

知的障害がある方のはたらき方の選択肢には、大きく分けて「一般雇用枠での就労」「障害者雇用枠での就労」「福祉的就労」の3つがあります。自身の障害の程度や特性、希望するはたらき方に応じて、最適な方法を選ぶことが重要です。

一般雇用枠での就労

軽度知的障害がある方の場合、障害の程度によっては一般雇用枠で就職できるでしょう。一般雇用枠は職種や待遇の選択肢が多く、昇進や昇給のチャンスがある点はメリットです。しかし、障害があることをオープンにしていなければ、体調や苦手なことへの配慮を望めない可能性があります。周りの同僚と同じような成果や作業スピードを求められることもあるでしょう。

障害者雇用枠での就労

次に、障害者雇用枠というはたらき方もあります。療育手帳などの障害者手帳を持っていれば、障害者雇用枠への応募ができます。障害者雇用枠ではたらく場合、障害の特性や得意なこと、苦手なことを伝えた上で必要な配慮を得ながらはたらけます。自分に合った環境や仕事量、仕事内容であれば、特性があっても長く安心してはたらきやすいでしょう。

※関連記事:「障害者雇用ではたらくとは?一般雇用との違いや障害者手帳の種類についてまとめました

福祉的就労

知的障害のある方は、就労継続支援事業所A型、B型での福祉的就労というはたらき方もできます。すぐに一般企業ではたらくことが難しい人や、訓練を受けながら就職の準備をしたい人が、生活指導員や職業指導員からアドバイスを受けながら、実践的な仕事を通して成長できる場です。はたらいた時間や仕事の成果によって、給与や工賃がもらえます。A型、B型では、雇用契約や報酬制度に違いがあるため、自分に合ったはたらき方を選択する必要があります。
就労継続支援事業所 A型 B型
雇用契約 あり なし
報酬制度 給与 工賃
年齢制限 65歳未満の方 65歳未満の方

軽度知的障害のある方が仕事をする上で抱えやすい悩みは?

軽度知的障害のある方が仕事で直面しやすい困り事には、以下のようなことが挙げられます。ただ、特性は人それぞれ異なるためあくまで一例であり、すべての方に当てはまるものではありません。
  • 抱えやすい悩み例
    ・仕事を覚えるのに時間がかかる
    ・仕事上のルールやマナーを守れない
    ・仕事の報告・連絡・相談がうまくできない
    ・指示の理解が難しい
    ・障害理解や配慮のない業務・配置に悩む

仕事を覚えるのに時間がかかる

業務の手順や操作方法を覚えるのに時間がかかることがあります。また、一度覚えた作業でも手順が変更されると対応が難しくなる場合があります。作業手順をメモにまとめる、チェックリストを活用するなど、視覚的に確認できる工夫が有効です。

仕事をする上でのルールやマナーを守れない

仕事における職場の暗黙のルールや対人マナーを理解しにくいことがあります。明示されていない慣習やルールは把握が難しく、知らないうちに職場での信頼を損ねてしまうケースもあります。具体的で明確なルールを提示することで、適切に行動しやすくなります。

仕事の報告・連絡・相談がうまくできない

業務上の報連相(報告・連絡・相談)について、適切なタイミングや伝え方に戸惑うことがあります。「何をどこまで伝えれば良いか」が分からず、情報共有が遅れてしまうことも少なくありません。報告のタイミングや様式をあらかじめ決めておくことが助けになり、円滑な情報共有につながります。

指示の理解が難しい

口頭のみで伝えられた複数の指示を同時に理解・記憶することが困難な場合があります。一度に多くの情報を処理することが負担になるため、指示を一つずつ丁寧に伝えてもらうことや、書面・メモでの補足があると理解しやすくなります。

障害理解や配慮のない業務・配置に悩む

軽度知的障害の場合、見た目からはわかりにくく、周囲が特性を理解していないことも多いため、適切な配慮のない業務内容や配置に悩んでしまうことがあります。職場の担当者などに障害があることを開示し、理解を得ることも選択肢になります。

軽度知的障害のある方が向いている仕事の例

軽度知的障害のある方には、ルーティンワークが中心で、変化の少ない仕事が向いています。決まった手順を繰り返す業務や、一人で黙々と取り組める仕事は比較的ミスが少なく、定着しやすい傾向にあります。具体的な職種例は以下のとおりです。
  • 具体的な職種例
    ・データ入力中心の事務職
    ・製造業・物流業のライン作業・点検業務
    ・清掃業
    ・卸売り・小売業(卸売業)のバックヤード業務

データ入力中心の事務職

データ入力はマニュアルやフォーマットが決まっていることが多く、定型的な作業を繰り返して行えます。臨機応変な対応を求められにくく、落ち着いて業務に取り組めることから軽度知的障害のある方に向いている職種です。

製造業・物流業のライン作業・点検業務

工場でのライン作業、梱包、仕分け、点検、検査業務は、決まった工程を繰り返すルーティンワークが中心です。体を動かしながら取り組める仕事が多く、毎日同じ流れで作業することができ、安定してはたらきやすい環境といえます。

清掃業

ビルや施設の清掃業は、決まったエリアを決まった手順で清掃するルーティンワークがメインです。一人で作業することが多く、対人コミュニケーションへの負担が少ない点も、軽度知的障害のある方にとって取り組みやすい特徴の一つです。

卸売り・小売業(販売業)のバックヤード業務

店舗の在庫管理・商品補充・梱包・仕分けといったバックヤード業務は、接客のような臨機応変な対応が求められません。商品を決まった場所に補充したり、整理・ラベル貼りをしたりと、手順に沿って作業できる点が軽度知的障害のある方に向いています。

上記はあくまで一例であり、個人の特性や職場の環境・理解度によってできる仕事の幅は大きく広がります。自分の強みや興味を活かせる職種を、支援機関のスタッフと一緒に探していくことをおすすめします。

軽度知的障害のある方が就職時に活用できる支援機関

軽度知的障害のある方が就職時に活用できる支援機関としては、主に以下が挙げられます。
  • 活用できる支援機関
    ・ハローワーク
    ・地域障害者職業センター
    ・障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)
    ・就労移行支援事業所

ハローワーク

ハローワークは、国が運営する仕事探しの機関です。障害特性に詳しい専門員がいて、障害者専門窓口もあります。求人数や就職件数が多く、障害者雇用枠の求人紹介のほか、障害のある方を対象にしたはたらき方に関する相談や面接対策なども行っています。

地域障害者職業センター

地域障害者職業センターは、障害者一人ひとりに合わせて、職業評価・職業準備支援などの支援を行う機関です。仕事を探している人の支援だけでなく、はたらく中で悩みや不安を持つ人や仕事に復帰したい人の支援も行っています。全国の都道府県に1カ所ずつ設置されており、軽度知的障害があり就職を目指す方も気軽に相談できます。

障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)

障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)は、障害のある方の就業面と生活面の一体的な相談・支援を行っている機関です。就職に向けた準備支援から職場実習の紹介、就職後の職場への定着についての支援も行います。ハローワークや特別支援学校、地域障害者職業センターなどの各機関との連絡・利用調整なども含めて、軽度知的障害のある方の就職を広く支援してくれるでしょう。

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所は、一般企業への就労を目指す障害のある方に対して、就労に必要な支援を行う機関です。就労に必要な知識の習得支援や、スキルアップのための訓練、就職活動の支援を行います。事業所に通いながら、自分の障害特性の理解を深めたり、ビジネスマナーを身につけたり、面接練習や履歴書対策などの就職活動のサポートを受けられます。就労移行支援事業所では、就職後の定着支援により、長くはたらき続けるためのサポートもしています。

※関連記事:「就労移行支援事業所って何?利用を検討する際のメリットと8つの判断チェックポイントを紹介

軽度知的障害のある方の就職事例

就労移行支援事業所「ミラトレ」を利用し、異業種への転職を実現したS.Rさんの事例をご紹介します。
S.Rさんは軽度知的障害の特性から、仕事の段取りやケアレスミスの多さに課題を感じており、ミラトレへの通所を決意しました。ミラトレでは支援員のサポートによるトレーニングを受け、基本的なビジネススキルから一般社会のマナーなどを学び、段階的に自信をつけていきました。はたらく上での自己理解を深めた結果、異業種企業への転職を見事実現されました。就労移行支援を活用したことで、障害者雇用ではたらき続けるための学びを深め、長期の安定就労へつながったと語っています。

※関連記事:「就労移行支援のミラトレ 就職者インタビュー

軽度知的障害がある方の仕事に関するよくある質問

Q.軽度知的障害がある場合、一般企業に就職することはできますか?

A. 一般企業への就職は可能です。障害の程度や職場環境によっては、一般雇用枠でのはたらき方も選択肢の一つです。また、障害を開示して合理的配慮を受けながらはたらく障害者雇用枠の活用も、安定した就労継続のために有効な方法です。

Q.軽度知的障害のある方は障害者雇用枠を利用した方が良いですか?

A. 療育手帳を持っている方は、障害者雇用枠を活用することで「合理的配慮」を受けながら安定してはたらきやすくなります。職場へ配慮を求める根拠が明確になるため、長期的な定着にもつながりやすいといえます。一般雇用か障害者雇用かは、自分の特性や希望する環境に応じて選択することが大切です。

軽度知的障害の特性があり仕事・就職でお悩みの方は就労移行支援事業所「ミラトレ」に相談しよう

軽度知的障害のある方も、さまざまな支援機関や福祉サービスを利用しはたらくことが可能です。自分に合ったはたらき方がわからない場合には、これらの支援機関に相談してみるとよいでしょう。また、就労移行支援事業所などではたらく準備やトレーニングを積むことにより、自分自身の特性や得意なこと、苦手なことを知ることもできます。自分の特性に合わせたはたらき方を選択ぶことは、長くはたらき続けることにもつながるでしょう。
就労移行支援事業所「ミラトレ」は、軽度知的障害をはじめとするさまざまな障害のある方が、安定した一般就労を実現するための支援を行っています。「仕事がなかなか続かない」「転職の面接で落ちてしまう」「はたらき方や就職活動の進め方が分からない」といったお悩みをお持ちの方は、ぜひミラトレへご相談ください。

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監修者:戸田 幸裕(とだ ゆきひろ)

パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 事業戦略部 ゼネラルマネジャー
上智大学総合人間科学部社会学科卒業後、損害保険会社にて法人営業、官公庁向け営業に従事。2012年、インテリジェンス(現パーソルキャリア)へ入社し、障害者専門のキャリアアドバイザーとして求職者の転職・就職支援に携わったのち、パーソルチャレンジ(現パーソルダイバース)へ。2017年より法人営業部門のマネジャーとして約500社の採用支援に従事。その後インサイドセールス、障害のある新卒学生向けの就職支援の責任者を経て、2024年より現職。
【保有資格】
■国家資格キャリアコンサルタント
■障害者職業生活相談員