基礎知識

公開日:2023/2/28
  • X
  • Facebook
  • はてなブックマーク
  • LINE
  • Email

就職ガイド –はたらく選択肢-

うつ病による休職期間はどのくらい必要?休職から復職・退職までの流れについて

うつ病による休職期間はどのくらい必要?休職から復職・退職までの流れについて

うつ病によってはたらき続けることが難しくなってしまった場合、退職ではなく、ひとまず休職するという選択肢もあります。休職して療養に専念すれば、復職に向けたステップを踏み出しやすくなるかもしれません。しかし休職にあたって、どのくらいの期間休職できるのか、休職にはどのような手続きが必要かなど、多くの疑問が出てくるでしょう。回復した後に無事復職できるのか、不安に思うこともあるかもしれません。今回は、うつ病で休職する場合、どのような手続きを踏めば良いのか、休職期間中どのように過ごせば復職を目指せるのか説明します。

うつ病で休職したいと思ったときは、どうすれば良いか

うつ病になると、さまざまな身体症状や精神症状が現れて、仕事を続けることが難しくなります。休職する際の流れを紹介します。

医師の診断を受ける

「うつ病かもしれない」と感じたら、ひとりで悩まず、早めにかかりつけの医師や専門のクリニックに相談しましょう。相談するタイミングを逃してしまうと、つらい状態が長引いたり、生活に支障が出たりすることもあります。医師に病状や職場環境を明確に説明し、治療が必要か、仕事を続けるべきかといった判断を仰ぎましょう。休職には医師の診断書が必要です。診断書の発行には初診から数カ月かかる場合もありますので、早めの受診をおすすめします。

かかりつけの医師や産業医がいない場合、お住まいの地域の保健所や保健センター、精神保健福祉センター(こころの健康センター)でも相談を受け付けています。また、すべての都道府県・市区町村に設置されている社会福祉協議会でも、社会福祉士や健康保険福祉士が幅広い情報やサービスを提供しています。病院を受診することにハードルの高さを感じている方は、まず各自治体相談窓口を利用してみてはいかがでしょうか。

休職に向けて家族や上司に相談する

医師の診断を受けたら、家族にその経過を報告しましょう。「家族に心配をかけたくない」「理解してもらえるだろうか」と不安に思う方もいるかもしれませんが、治療に専念するためにも家族に病気のことを理解してもらい、サポートを求めることをおすすめします。伝え方について思い悩まず、診断書を見せ、医師の言葉をそのまま伝えてみてはいかがでしょうか。

次に、勤め先の上司に相談しましょう。「上司に相談すると職場にいづらくなるのでは」と、不安に思う方もいるかもしれません。しかし、うつ病と診断された場合は、療養期間とその後30日間は解雇できないことが労働基準法で定められており、相談をきっかけに職場環境の見直しや改善がおこなわれるケースもあります。診断書をもらった上でストレスの原因や症状を説明するとともに、休暇申請や部署移動、勤務形態の変更など、自分なりの解決策を提示すると前向きな姿勢が伝わるでしょう。上司と一対一で話すことに抵抗がある場合は第三者に立ち会ってもらうほか、口頭で伝えることに抵抗を感じる場合はメールなどを活用し、自分にとって一番話しやすい環境で伝えてみてはいかがでしょうか。

就業規則を確認する

家族や上司に相談した後、休職を検討する場合は就業規則を確認しておきましょう。かならず確認しておきたいのは、休職中の給与と休職可能な期間です。企業によって、また正規か非正規かといった雇用形態によっても、支給の有無は異なります。有給だった場合でも、一定期間を越えると減額されることもあるため、支給条件を確認しておきましょう。休職期間が6カ月と定められている企業もあれば、1年以上認められる企業もあります。休職期間が勤続年数に含まれるのかどうかといった条件も、事前に確認しておくと安心です。

最後に、人事担当者や産業医と話し合いましょう。産業医とは、職場で労働者の安全や健康を守る医師のことで、ストレスチェックや面談、医療機関の紹介、業務調整など、さまざまなサポートをおこなっています。個人情報を上司に共有せず、産業医との面談にとどめることもできるでしょう。

勤務先との連絡方法を決めておく

休職期間中は、医師の定期診断を受けた後で勤め先に診断結果を報告するのが一般的ですが、義務的な連絡が心の負担になることもあるでしょう。休職期間中は心のケアが最優先です。ご自身の状態を見極めながら、連絡の手段や頻度、時間帯、担当者について希望を伝えておきましょう。また、必要に応じて、家族が連絡を代行できるようにしておくと、ストレスの軽減につながることも。無理のないペースで勤め先とコミュニケーションを図れると、回復後の職場復帰に向けた相談がよりしやすくなるかもしれません。

休職期間の過ごし方について

休職期間に入って生活スタイルが変わってしまうと、戸惑いや不安が湧いてくるかもしれません。休職期間中に気をつけておきたい事柄を挙げてみます。

心と身体を休ませる

一般的に、まじめで責任感の強い方は、うつ病にかかりやすい傾向にあると言われています。休職期間中、「会社に迷惑がかかっているのではないか」「自分だけ休んでいて良いのだろうか」と感じてしまう方もいるかもしれません。しかし、人員配置や業務配分は上司の仕事であって、休職中の方が心配する必要はありません。「十分な睡眠」と「バランスの良い食事」をとりながら、心と身体を休ませることが大切です。うつ状態には波があるので、調子が良いからといって活動量を増やさないようにしましょう。

医師の指示に従って治療する

うつ病の治療は、休養とともに薬物療法が欠かせません。主な治療薬はSSRIなどの抗うつ薬のほか、個々の症状に合わせて、抗不安薬や睡眠導入薬といった薬が処方されます。ご自身の判断で薬の量を減らしたり、服薬の頻度を減らしたりすると、副作用が起きたり症状が慢性化したりする可能性があるので医師の指示に従いましょう。また、薬物療法のほかに精神療法や運動療法など、さまざまな治療法をおこなうことがあります。

復職のために休職中にすべきこと

回復期を迎えても復職を焦る必要はありません。再発を防ぐためにも、下記の段階を踏みながら復職できる態勢をじっくり整えましょう。

ステップ1:復職の意思表明

うつ病は、主に治療専念期・リハビリ期・職場復帰準備期・職場復帰後という4つの段階を経て徐々に回復していきます。リハビリ期を乗り越えて職場復帰準備期にいたった方が、医師に復職の意思を伝えるところから復職準備がスタートします。医師から日常生活に支障がないと診断された場合も、職場復帰できるレベルに達しているとは限りません。復職しても差し支えないレベルまで回復しているか医師に正しく判断してもらえるよう、勤め先から復職後の業務内容や職場環境について相談する機会をつくってもらえると良いですね。厚生労働省の手引きに、職場復帰できるかどうかの判断基準が示されているので、参考にしてはいかがでしょうか。

ステップ2:生活リズムを整える

うつ病のリハビリ期は休養が大切なので、たとえ昼夜の生活が逆転してしまっても眠りたい時に眠ることをおすすめします。しかし、職場復帰準備期に入って復職を目指すのであれば、朝は太陽の光を浴び、昼間の活動時間を増やすなどして、生活リズムを整えるようにしましょう。休職前と同じ時間帯に起きて近所を散歩するなど、睡眠と覚醒、活動と休息のリズムを規則正しく繰り返すうちに、少しずつ体内時計が正常に戻り、体力や集中力が回復します。非定型うつ病の場合は過眠傾向にあり、昼間に眠気を感じることが多いかもしれません。不眠に陥らないよう、気長に取り組むことが大切です。

復職に向けてリワークをおこなう

上記のステップを踏んで復職の自信が芽生えたら、医師の診察を受けて職場復帰が可能かどうかの判断を仰ぎます。「復職可能」と診断されたら復職診断書を勤め先に提出し、上司や人事担当者、産業医とはたらき方について話し合いましょう。企業によっては、試し出勤や短時間勤務、出張制限、残業禁止などの配慮が得られる場合もあります。

リワークプログラムを利用すると、復職への自信をいっそう深められます。リワークプログラムとは、実際の業務に近い作業をおこなう訓練や心理療法、レクリエーションなどを通じて、スムーズな復職を図る取り組みのこと。リワークプログラムは復職支援プログラムともいわれ、医療機関や地域障害者職業センターで実施しています。地域によっては、就労移行支援でもリワークとしての活用を認めてくれる場合もあります。就労移行支援事業所ではリワークだけでなく定着支援もおこなっているので、復職後もサポートを受けられます。

リワークプログラムを活用すると、退職を選択した場合でも再発予防や再就職に役立てることができるでしょう。復職と退職どちらを選択するか迷ったときは、リワークについて検討してみると良いかもしれません。ご自身にとってメリットがありそうな制度やサポートは、積極的に取り入れてみてはいかがでしょうか。

休職中も退職できる

休職は復職を前提とした制度」と捉え、休職中は退職できないと考える方もいるかもしれません。結論から言うと、休職中でも退職は可能です。

休職制度について

休職とは、雇用関係を維持したまま、労働を免除、または停止することです。「雇用関係を維持」しているからといって、休職中に退職してはいけないわけではありません。うつ病から回復して発症の原因を探ってみると、業務量や業務内容、人間関係、職場環境など、なんらかの問題が浮かび上がってくるかもしれません。うつ病を再発させないためには、退職する、あるいは他の職場を選ぶといった選択肢もあります。退職申請などの必要書類を準備すれば、復職せずに退職しても問題はありません。
うつ病によって退職した場合も、失業保険を受け取りながら就労移行支援事業所への通所が可能です。就労移行支援事業所では、退職後のメンタルケアや再就職に向けた準備をサポートしてくれます。自治体の福祉課に相談の上、就労移行支援事業所への通所を検討してみてはいかがでしょうか。

退職後も傷病手当金は受給できる

休職期間中に退職した場合、受給している傷病手当金がどうなるのか気になる方もいるのではないでしょうか。下記の要件を2点とも満たしていれば、退職後も傷病手当金を受け取ることができます。

・被保険者の資格喪失の前日までに、1年以上健康保険に継続加入していること
・資格喪失時に傷病手当金を受けていること(または受けられる状態であること)

ただし、受給期間は最長1年6カ月ですのでご注意ください。

うつ病による休職に専門的なサポートが必要な時は、支援機関に相談を

うつ病と向き合いながら復職を目指すには、症状の特性を理解して、課題を一つひとつクリアしていくことが大切です。自分ひとりで準備を進めることが難しい場合は、専門の支援機関を利用しましょう。

就労移行支援事業所「ミラトレ」では、トレーニングを通して障害理解・自己理解を促し、はたらくための力を身につけられます。就職を目指すためのトレーニングだけでなく、就職活動の支援やはたらき続けるための就職後の定着支援もおこなっていますので、うつ病に対処しながら長くはたらくことを前提に支援しています。就労移行支援についての疑問、ミラトレに関するご質問やご相談など、お気軽にお問い合わせください。

執筆 : ミラトレノート編集部

パーソルダイバースが運営する就労移行支援事業ミラトレが運営しています。専門家の方にご協力いただきながら、就労移行支援について役立つ内容を発信しています。