基礎知識

公開日:2023/3/31
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就労移行支援の制度解説

療育手帳とは?申請方法やメリット・デメリット、受けられるサービスについて解説します!

療育手帳とは?申請方法やメリット・デメリット、受けられるサービスについて解説します!

療育手帳とは障害者手帳の一種で、この手帳を取得することで経済面や生活面、就職面など多方面で支援を受けられます。対象となるサービスを受ける際は、この手帳を本人証明書類として提示するだけなので、常に所持すると良いでしょう。療育手帳の対象者や申請方法、取得によるメリットやデメリットについて紹介します。

療育手帳とは

療育手帳は、知的障害のある方へ交付される障害者手帳です。身体障害者手帳や精神障害者保健福祉手帳と異なり、根拠となる法律はなく、療育手帳制度に基づいています。しかし、取得すると障害者総合支援法の対象となり、さまざまな支援を受けられます。

目的・名称

療育手帳は、国が作成したガイドラインをもとに、都道府県や政令指定都市などの各自治体がサービスを運用しています。交付の基準や支援内容は自治体によって異なります。手帳の名称は療育手帳と定められていますが、自治体によって独自の名称で呼ばれることがあります。下記に一例を挙げてみましょう。
  • 「愛の手帳」(東京都、横浜市)
  • 「愛護手帳」(青森県、名古屋市)
  • 「みどりの手帳」(さいたま市)
お住まいの自治体ではどのような名称で呼ばれているか、確認してみてください。

交付対象者

療育手帳の交付対象者は知的障害があると判定された方です。判定方法は自治体によって異なりますが、主な判定基準として下記が挙げられます。
  • おおむね18歳以前に知的機能障害が認められ、それが持続している
  • 知能指数(IQ)が75以下である(自治体によっては70以下)
  • 日常生活や社会生活に支障が生じている
子どもの頃から知的な障害の傾向がみられ、18歳以降に障害が明らかになった場合も交付の対象となります。しかし、成人になってから事故や病気で高次脳機能に障害が生じた方は、交付が認められません。

一方、発達障害のある方は交付対象者となるのか、疑問に思われる方もいるかもしれません。療育手帳は、知的障害をともなう発達障害の方には交付されますが、高機能自閉症のように知的障害をともなわない発達障害の方は交付対象にみなされない場合があります。しかし、発達障害によって生活に支障が出ている場合、交付されるケースもあります。自治体によって基準が異なりますので、ご自身が療育手帳取得の対象となるのか知りたい場合は、各自治体窓口で相談してみましょう。

療育手帳の申請方法

療育手帳を申請するには、どのような書類や手続きが必要なのでしょうか。

申請から交付までの流れ

交付までのおおまかな流れは下記のようになります。まずは、各自治体窓口に申請が可能か相談しましょう。

1.申請する
申請することになったら、必要な手続きや書類を確認します。自治体によって異なりますが、主に下記の書類が必要です。
  • 申請書※各自治体によって記入内容は異なります。
  • 顔写真(縦4cm横3cm)
  • 印かん
用意した書類を自治体窓口へ提出し、交付可否の判定の予約を取りましょう。

2.判定を受ける
18歳未満の方は児童相談所で、18歳以上の方は知的障害者更生相談所で判定を受けます。判定は精神科医や心理判定員、小児科医といった専門家がおこない、所要時間はおおむね3時間です。

18歳以上の方が初めて療育手帳の判定を受ける場合、子どもの頃から知的障害があったかを調べます。知能検査や心理検査、本人との面談に加え、保護者からの聞き取りなどがおこなわれます。本人との面談が難しい場合、保護者や主治医から聞き取りをおこなうこともあります。

医学的見地だけでなく、本人の様子や子どもの頃の発育状況、現在の困りごと、客観的資料などをもとに、総合的に判定することが多いようです。

交付を受ける

判定の結果をもとに精神保健福祉センターで審査がおこなわれ、交付の可否や等級が決まります。申請から交付までにかかる期間は、およそ2カ月です。交付が認められたら、福祉課窓口や福祉保健センターなど指定の窓口で受け取ります。その際、利用できるサービスや使い方、更新などについて説明を受けましょう。

判定と等級について

療育手帳には障害の程度を表す等級が記載されています。自治体によって判定基準や等級を表す記号は異なりますが、区分はおおむね以下の通りです。
等級によって受けられる支援も異なりますので、自治体窓口で説明を受けましょう。
障害の程度 一般的な等級 自治体ごとの等級一例
最重度 A A1 1度
重度 A A2 2度
中度 B B1 3度
軽度 B B2 4度

更新について

療育手帳の更新は、自治体ごとに時期や頻度が定められており、更新せずに期限を過ぎてしまうとサービスを受けられなくなる場合があります。多くの自治体では、18歳未満はおおむね2~4年ごと、18歳以上は原則的に更新不要となっているようです。

更新が必要な場合は手帳に「次の判定年月」が記載されているほか、自治体によっては更新時期が近付くと再判定通知を送付してくれます。申請から発行まで約2カ月かかるので、早めに再判定の予約を入れましょう。障害の程度が変わった場合は、更新時期を問わず、再判定を受けられます。

療育手帳を取得するメリットとデメリット

療育手帳を取得するとどのようなメリットやデメリットがあるのか紹介します。

療育手帳取得のメリット

療育手帳を持っていると、特別手当や免税、公共料金の割引など、さまざまな援助を受けられます。自治体や等級によって援助内容は異なりますが、厚生労働省では下記のような支援を各自治体に求めています。
  • 特別児童扶養手当
    └20歳未満で精神又は身体に障害を有する児童を家庭で監護、養育している父母等に支給されます。
    ※参考:特別児童扶養手当について
  • 心身障害者扶養共済
    └障害のある方を育てている保護者が毎月掛金を納めることで、保護者が亡くなった時などに、障害のある方に対し、一定額の年金を一生涯支給するというものです。
    ※参考:障害者扶養共済制度(しょうがい共済)について
  • 国税、地方税の諸控除及減免税
    └障害のある人やその家族が所得税や住民税、相続税などの税金の負担を減らすことができる制度です。
    ※参考:障害者と税について
  • 公営住宅の優先入居
    └障害のある方が公営住宅に申し込んだ場合、優先的に入居ができる仕組です。
  • NHK受信料の免除
    └「日本放送協会放送受信料免除基準」に該当する場合は、NHK放送受信料の全額または半額が免除となります。
    ※参考:NHK_障害を要件とする受信料の免除について
  • 旅客鉄道株式会社などの旅客運賃の割引
    └各鉄道会社にて割引を受けられます。
  • 医療費の助成
  • 水道料金の割引
  • 公共施設の割引
    └博物館や公共宿泊施設など
  • 交通料金の割引
  • 携帯電話基本料金の割引
また、「日常生活自立支援事業」の対象となり、日常生活費の管理や定期的な訪問など、生活面でのサポートを受けられる場合があります。

さらに就職や転職に際して就労支援を受けられます。ハローワークの障害者用窓口を利用して、特例子会社や一般企業の障害者雇用枠、就労継続支援事業所など、「障害者求人」への応募も可能です。はたらき方の選択肢が増えるだけでなく、はたらく上で必要な配慮も受けやすくなるでしょう。

療育手帳取得のデメリット

療育手帳を持つデメリットは「ない」といって良いでしょう。「取得すると周囲からの見方が変わってしまうのでは」と、ためらいを感じる方もいるようです。しかし、療育手帳を取得したことは、自ら見せたり話したりしない限り、他人に伝わることはありません。

知的障害があるからと言って必ずしも療育手帳の取得は強制されるものではありませんが、申請の手間がかかったとしても持つメリットが多いです。なお、療育手帳は、必要がなくなった場合には返納することもできます。

就職事例

知的障害をお持ちの方が就労を目指すには、就労移行支援を活用するのもひとつの方法です。就労移行支援事業所「ミラトレ」を利用して就職を叶えた方の就職事例を紹介します。

【3つのステップで自分の特性や適性との付き合い方を身につけたYさんの就職事例】
知的障害とADHDの症状をもつYさん。ミラトレで、初期・中期・後期と段階を踏みながら就労プログラムに取り組み、集中力とビジネススキルを身につけていきます。自己理解が進んだことでご自身の特性に合ったアルバイト先を見つけ、就職から半年後には契約社員にステップアップ。国家資格取得にもチャレンジするなど、高い向上心をもって仕事に取り組んでいます。
【自分自身を知るところから、集団の一員として物事を捉えられるようになったVさんの就職事例】
知的障害があるという認識をあまり持てなかったVさんが、ミラトレ入所をきっかけにご自身の現状を把握し、就職のための課題を見出していきます。トレーニングを通じて集団の中で果たすべき役割や周囲への配慮を学び、企業への就職を実現。就労後もミラトレの定着支援と理解ある上司の助言を受けながら、正社員を目指して自分らしくはたらいています。

療育手帳取得が就労への近道になることも

知的障害によって生活に困難を感じている方は、お住まいの自治体窓口で療育手帳の制度内容や申請の可否について相談してみると良いでしょう。療育手帳を取得すると、障害福祉サービスの利用対象者となり、就労移行支援や就労継続支援、就労定着支援を活用できます。ひとりで就職活動をすることが難しいと感じる方、就職に必要なスキルを身に着けたい方など、仕事に関するお悩みがあれば、就労移行支援事業所に相談してみてはいかがでしょうか。

執筆 : ミラトレノート編集部

パーソルダイバースが運営する就労移行支援事業ミラトレが運営しています。専門家の方にご協力いただきながら、就労移行支援について役立つ内容を発信しています。