基礎知識

公開日:2023/3/31更新日:2026/9/29
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就労移行支援の制度解説

療育手帳とは?等級(A・B)の違いや判定基準、申請方法とメリット・デメリットを解説

療育手帳とは?等級(A・B)の違いや判定基準、申請方法とメリット・デメリットを解説

療育手帳は、知的障害のある方が各種支援やサービスを受けやすくするために交付される手帳です。取得することで、経済面や生活面、就職面などさまざまな支援を受けられます。
「療育手帳はどのような人が対象になるの?」「取得するとどのようなメリットがある?」など、制度について詳しく知りたい方もいるのではないでしょうか。療育手帳の対象者や判定基準、申請方法、取得するメリット・デメリットなどを分かりやすく解説します。

療育手帳は、知的障害のある方が福祉サービスや各種支援を受けやすくするための手帳です。障害の程度に応じて等級が判定され、税金の控除や運賃割引、就労支援などを利用できるようになります。制度の内容や利用できる支援は自治体によって異なるため、事前に確認することが大切です。

【この記事で分かること】
・療育手帳の対象者や判定基準
・療育手帳の申請・取得方法
・療育手帳を取得するメリット・デメリット

目次

療育手帳とは

療育手帳とは、知的障害のある方へ交付される障害者手帳です。療育手帳の交付に関する法律はなく、「療育手帳制度」のガイドラインに基づいて、各自治体によって運用されています。そのため、自治体によって交付の基準や支援内容が異なります。

療育手帳の目的と自治体独自の名称

療育手帳は、知的障害児や知的障害者に対し、一貫した指導や援助を受けやすくするために交付されるものです。取得すると障害者総合支援法の対象となり、障害福祉サービスや旅客運賃の割引など、国や自治体によるさまざまな支援を受けられます。

運用は各自治体によって行われているため、「療育手帳」ではなく独自の名称を使用しているところもあります。以下に例を挙げます。
  • 例
    ●「愛の手帳」(東京都、横浜市)
    ●「愛護手帳」(青森県、名古屋市)
    ●「みどりの手帳」(埼玉県(旧称))
お住まいの自治体ではどのような名称で呼ばれているか、確認してみてください。

障害者手帳3種類の違い

障害者手帳には「身体障害者手帳」「精神障害者保健福祉手帳」「療育手帳」の3種類があります。これらは、対象となる障害や根拠となる法令、等級、更新の有無などがそれぞれ異なります。療育手帳との違いを表にまとめました。
項目 身体障害者手帳 精神障害者保健福祉手帳 療育手帳
対象 身体に障害のある方 精神障害のある方 (発達障害を含む) 知的障害のある方
根拠 身体障害者福祉法 精神保健福祉法 法律の定めはなく、厚生労働省の通知に基づき自治体が運用
等級 1~6級 1~3級 A(重度)とB(その他)の2区分が基本(自治体によりさらに細分化)
更新 原則不要 2年ごと 原則2年ごと (自治体により異なる)

※参考:厚生労働省「障害者手帳」

療育手帳の等級と判定基準

療育手帳の交付対象となるのは、知的障害があると判定された方です。児童相談所または知的障害者更生相談所において、知的障害であると判定された場合に交付されます。判定方法は自治体によって異なりますが、主な判定基準として下記が挙げられます。
  • 主な判定基準
    ●おおむね18歳以前に知的機能障害が認められ、それが持続している
    ●知能指数(IQ)が75以下である(自治体によっては70以下)
    ●日常生活や社会生活に支障が生じている

    ※参考:厚生労働省「療育手帳制度について」

等級はA(重度)とB(その他)の2区分

また、療育手帳には障害の程度を表す等級が記載されています。重度を示す「A」と、それ以外を示す「B」の2つです。厚生労働省が定めた基準により、障害の程度に応じて判定されます。自治体によって、以下のように独自に判定基準を定めたり、等級を表す記号を設けたりしている場合もあります。
障害の程度 一般的な等級 自治体ごとの等級(一例)
最重度 A A1 1度
重度 A A2 2度
中度 B B1 3度
軽度 B B2 4度

等級によって受けられる支援も異なるため、自治体窓口で説明を受けましょう。
※参考:厚生労働省「障害者手帳」

A判定の判定基準

A判定は、知的障害の程度が重度と判断された場合の区分です。国の基準では、知能指数(IQ)がおおむね35以下で、食事や着脱衣、排便、洗面などの日常生活で介助を必要とする場合や、異食・興奮などの問題行動がある場合などが該当します。
また、IQがおおむね50以下で、視覚障害や聴覚障害、肢体不自由などの身体障害を伴う場合も、A判定の対象となります。ただし、具体的な判定基準や区分は自治体によって異なる場合があります。

B判定の判定基準

B判定は、国の基準では「A(重度)以外」とされています。そのため、A判定の基準には該当しないものの、知的障害があると判定された場合にB判定となるのが基本です。
ただし、B判定の区分も自治体によって異なります。たとえば、「B1:中度」「B2:軽度」といった障害の程度に応じて細分化している自治体もあります。

療育手帳の判定はIQだけで決まるわけではない

療育手帳の判定は、知能指数(IQ)の数値だけで決まるとは限りません。IQに加えて、日常生活や社会生活の状況なども考慮して、障害の程度が判定されるケースがあります。
IQの基準値や等級の区分、具体的な判定基準は自治体によって異なります。そのため、自分や家族がどの等級に該当するか詳しく知りたい場合は、お住まいの自治体の基準を確認しましょう。

等級(A判定・B判定)による支援の違いと注意点

療育手帳を取得すると、手当や税金の控除、公共交通機関の運賃割引など、さまざまな支援を受けられます。利用できる制度や支援内容は療育手帳の等級によって異なることがありますが、自治体や各制度によっても利用条件が定められています。そのため、A・Bの等級だけで利用できる支援が一律に決まるわけではありません。

手当・経済的支援の違い

療育手帳を取得している方は、障害の程度や所得などの要件を満たすことで、各種手当や税制上の控除を受けられる場合があります。
たとえば税制上、A判定など重度の知的障害者と判定された場合は「特別障害者」として特別障害者控除の対象となります。一方、B判定など重度以外の場合は、障害者控除の対象となります。A判定とB判定では、適用される控除の区分や控除額が異なる場合があります。
なお、療育手帳の制度とは別に、特別児童扶養手当などの支給対象となる場合もあります。療育手帳のA・B判定だけで、支給の可否や金額が決まるわけではない点に注意しましょう。

運賃・公共料金割引の違い

鉄道やバスなどの公共交通機関では、療育手帳を提示することで運賃の割引を受けられる場合があります。A判定の場合は、本人だけでなく介護者も割引の対象となることがあります。一方、B判定では本人のみが割引対象となるなど、等級によって割引の適用範囲が異なる場合があります。
また、NHK受信料などの公共料金には、療育手帳を持つ方を対象とした免除制度があります。世帯の課税状況や障害の程度、世帯主・受信契約者であるかなどの条件によって、全額免除または半額免除の対象となる場合があります。

等級を問わず受けられる支援

就労に関する支援や、日常生活自立支援事業などは、療育手帳の等級を問わず利用できます。ハローワークの障害者向け窓口の利用や、障害者雇用枠の求人へ応募する際などにも療育手帳を活用できます。

利用条件や支援内容は制度や自治体によって異なるため、自分や家族が利用できる制度については、お住まいの自治体や各サービスの窓口で確認しましょう。

※参考:厚生労働省「障害者手帳」

療育手帳を取得するメリット・デメリット

療育手帳を取得する主なメリットは、手当や税金の控除、各種料金の割引、就労・生活に関する支援などを受けられることです。一方、取得したことが自動的に周囲へ知られるものではなく、基本的には自分から提示したり伝えたりする必要があります。利用できる制度や条件は自治体、療育手帳の等級などによって異なるため、事前に確認しておきましょう。

療育手帳を取得するメリット(手当・税控除・割引・就労支援・生活支援)

療育手帳を取得することで、主に以下のような支援を受けられる場合があります。
  • 手当・経済的支援:要件を満たすことで、特別児童扶養手当や心身障害者扶養共済などを利用できる場合があります。
    ※参考:特別児童扶養手当について
    ※参考:障害者扶養共済制度(しょうがい共済)について
  • 税金の控除・減免:所得税や住民税、相続税などについて、障害者控除をはじめとした税負担を軽減する制度を利用できる場合があります。
    ※参考:障害者と税について
  • 料金の割引・減免:鉄道・バスなどの運賃、公共施設の利用料金、NHK受信料などの割引・減免を受けられる場合があります。自治体や事業者によっては、医療費の助成や水道料金、携帯電話料金などが対象となることもあります。
    ※参考:NHK_障害を要件とする受信料の免除について
  • 就労支援:ハローワークの障害者向け窓口を利用したり、障害者雇用枠の求人へ応募したりする際に活用できます。
  • 生活支援:利用要件を満たすことで、日常生活自立支援事業など、日常生活を支える福祉サービスを利用できる場合があります。
    ※参考:日常生活自立支援事業
利用できる支援や割引、その適用条件は自治体や事業者などによって異なります。詳しくは、お住まいの自治体や各サービスの窓口で確認しましょう。

療育手帳を取得するデメリット(提示しない限り周囲に知られない)

療育手帳を取得することによる大きなデメリットは基本的にありません。また、療育手帳を取得したことが、自動的に職場や周囲の人へ知られることもありません。手帳を利用する際など、自分から提示したり伝えたりする場面を除けば、取得していることを周囲に知られる機会は限られます。

一方、療育手帳を取得するためには申請や判定などの手続きが必要となるため、時間や手間がかかる点はデメリットといえます。ただし、療育手帳の取得は強制されるものではないため、利用できる支援や手続きにかかる負担などを踏まえて、自分や家族にとって必要かどうかを検討しましょう。

療育手帳を取得する流れ

療育手帳は、自治体の窓口で申請したあと、児童相談所や知的障害者更生相談所などで判定を受け、交付の可否や等級が決定されるのが一般的な流れです。必要な手続きや書類は自治体によって異なるため、事前に窓口へ確認しておきましょう。
  • 一般的な流れ
    1.必要な書類を用意する
    お住まいの自治体の窓口へ相談し、申請方法や必要書類を確認して、申請に必要な書類を用意します。
    2.各自治体窓口に申請する
    用意した書類を自治体の窓口へ提出して申請し、療育手帳の判定を受けるための予約を取ります。
    3.判定を受ける
    申請後は、18歳未満の場合は児童相談所、18歳以上の場合は知的障害者更生相談所などで判定を受けます。
    18歳以上で初めて判定を受ける場合は、子どもの頃の発育状況などを確認するため、保護者などへの聞き取りや客観的な資料の確認が行われることもあります。
    4.療育手帳の交付を受ける
    判定や審査を経て、療育手帳の交付可否や等級が決定されます。交付が認められた場合は、自治体からの案内に従って指定された窓口で療育手帳を受け取りましょう。
療育手帳の申請に必要な主な書類のチェックリスト
申請書(※各自治体によって記入内容は異なります。) □
顔写真(縦4cm×横3cm) □
印鑑 □
マイナンバーが分かるもの(マイナンバーカードまたは通知カード) □
保険証など身元が確認できるもの □
その他、自治体から指定された書類 □

療育手帳を取得したら知っておきたいこと

療育手帳は、2年ごとの更新が原則とされていますが、実際の時期や頻度は自治体によって異なります。また、療育手帳が不要になった場合は返還できます。

療育手帳の更新はあるか?

療育手帳の更新は、厚生労働省において原則として2年ごとと定められています。障害の程度について改めて判定を行い、区分を見直すためです。なお、国の基準では原則2年ごとですが、更新の時期や頻度は自治体ごとに定められており、18歳未満は2〜4年ごと・18歳以上は更新不要とする自治体もあります。

更新が必要な場合は手帳に「次の判定年月」が記載されているほか、自治体によっては更新時期が近付くと再判定通知を送付してくれます。更新せずに期限を過ぎてしまうとサービスを受けられなくなる場合があります。申請から発行まで約2カ月かかるので、早めに再判定の予約を入れましょう。また、障害の程度が変わった場合は、更新時期を問わず再判定を受けられます。

療育手帳は返還できるか?

療育手帳が不要となった場合は、返還が可能です。更新時の判定で基準を満たさなくなったなど、本人が交付の対象者として該当しなくなった場合や亡くなった場合は、交付を受けた本人またはその保護者が返還します。

※参考:厚生労働省「療育手帳制度の実施について」

療育手帳に関するよくある質問

Q.療育手帳のAとBはどう違いますか?

A.療育手帳のAとBは、一般的にAは重度、Bは重度以外とされています。A判定の場合は、B判定と比べて手当や税金の控除、公共交通機関の割引などで、より手厚い支援を受けられる場合があります。ただし、等級の区分や利用できる支援は自治体や制度によって異なります。

Q.IQがいくつだと療育手帳をもらえますか?

A.療育手帳の判定基準は自治体によって異なりますが、知能指数(IQ)75以下などを目安としている場合があります。ただし、IQの数値だけで取得できるかどうかが決まるとは限りません。日常生活や社会生活の状況なども考慮して判定される場合があるため、詳しい基準はお住まいの自治体に確認しましょう。

Q.療育手帳の等級は途中で変わることがありますか?

A.はい、再判定や更新の結果によって等級が変更される場合があります。 知的能力や日常生活での支援の必要性などを総合的に評価し、A判定からB判定、またはB判定からA判定へ見直されることがあります。

Q.大人になってから療育手帳を取得できますか?

A.大人になってからでも取得できる場合があります。 ただし、多くの自治体では18歳未満から知的障害があったことを確認するため、過去の診断記録や学校の資料などを求められることがあります。

療育手帳を取得した方の就職とはたらき方

療育手帳を取得すると、障害の程度や状況に応じたさまざまな支援を受けやすくなります。知的障害のある方が就労を目指す場合は、就労移行支援を活用することも選択肢の一つです。なお、障害福祉サービスを利用する際は、お住まいの自治体による支給決定が必要です。療育手帳は、障害の程度や状態を証明する書類として活用できるため、必要な支援につながりやすくなります。

ここでは、就労移行支援事業所「ミラトレ」を利用して就職をかなえた人の就職事例をご紹介します。

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※2024年度実績

監修者:戸田 幸裕(とだ ゆきひろ)

パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 事業戦略部 ゼネラルマネジャー
上智大学総合人間科学部社会学科卒業後、損害保険会社にて法人営業、官公庁向け営業に従事。2012年、インテリジェンス(現パーソルキャリア)へ入社し、障害者専門のキャリアアドバイザーとして求職者の転職・就職支援に携わったのち、パーソルチャレンジ(現パーソルダイバース)へ。2017年より法人営業部門のマネジャーとして約500社の採用支援に従事。その後インサイドセールス、障害のある新卒学生向けの就職支援の責任者を経て、2024年より現職。
【保有資格】
■国家資格キャリアコンサルタント
■障害者職業生活相談員