基礎知識

公開日:2023/9/30更新日:2026/7/31
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就労移行支援の制度解説

うつ病による退職でも失業保険は受給できる?条件や注意点、傷病手当金との違いを解説

うつ病による退職でも失業保険は受給できる?条件や注意点、傷病手当金との違いを解説

うつ病によって退職を考える際、今後の生活のために失業保険について知りたい方もいるでしょう。失業保険を受け取れるかどうかは、生活設計を立てるうえで重要な判断材料となるため、正しい知識を持って手続きを進める必要があります。

また、うつ病などの病気やけがで休職する方の生活を守る制度として傷病手当金がありますが、失業保険との違いがわからない方もいるかもしれません。
今回は、失業保険の給付条件や申請から受給までの流れ、傷病手当金との違いについて解説します。

うつ病が原因で退職した場合でも、一定の条件を満たせば失業保険(雇用保険の基本手当)を受給できる可能性があります。ただし、失業保険は「はたらける状態にあり、求職活動を行っていること」が条件となるため、療養中で就職活動ができない場合は受給できません。その場合は受給期間の延長や傷病手当金など別の制度の活用を検討するとよいでしょう。

  • この記事で分かること
    ●うつ病で退職した場合に失業保険を受給できる条件
    ●失業保険の給付日数と受給期間、支給額
    ●失業保険の申請から受給までの具体的な流れ
    ●傷病手当金と失業保険の違い

失業保険(雇用保険の基本手当)とは

失業保険とは、離職した方が安定した生活を送りながら再就職を目指せるよう、経済的にサポートする公的制度の一種です。正式名称は、雇用保険の「基本手当」ですが、失業保険や失業手当、失業給付金など、さまざまな呼び方があります。雇用保険は、1週間あたりの所定労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用見込みがある方が加入対象となります。雇用保険に加入している方が一定の条件を満たすことで、失業保険の給付を受けられる仕組みです。ただし、失業したら誰でも受け取れるわけではなく、給付条件や期間が定められています。

失業保険の給付条件

受給には、下記のように一定の条件があります。
  • 給付条件
    ●離職日以前の2年間に12カ月以上、雇用保険に加入していたこと(特定の条件にあたる場合は、1年間に6カ月以上)
    ●給付の申請をした後、ハローワークなどで求職活動をおこなっていること(公共職業訓練などを受けている場合は、求職活動をおこなっていなくても給付される場合がある)
給付を受けるには、「求職活動をおこなっていること」が条件のひとつです。そのため、下記の方は、基本的に給付を受けられません。

失業保険の給付を受けられないケース

  • 受けられないケース
    ●病気やけがのため、すぐ就職できない※
    ●妊娠や出産、育児のため、すぐ就職できない※
    ●離職した後、しばらく休養する予定※
    ●家事に専念する
    ●学業に専念する
    ●転職先が決まっている、あるいは自営業を始めるなどの理由で、就職活動を行わない(または行う必要がない)
    ●※印に該当する方は、申請することで受給期間の延長が可能

うつ病が原因で退職した場合は、失業保険を受給できる?

うつ病が原因で退職した場合でも、条件を満たせば失業保険を受給できます。受給者は「一般の離職者(自己都合退職者)」「特定受給資格者」「特定理由離職者」「就職困難者」の4つに分類され、うつ病による退職は、多くの場合「特定理由離職者」もしくは「就職困難者」に該当します。これらに認定されると、一般の自己都合退職者と異なり、給付制限がなくなる、または給付日数が優遇されるなどのメリットがあります。
それぞれの区分による違いを確認しておきましょう。

一般の離職者(自己都合退職者)

離職日以前の2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算して12カ月以上あることが条件です。自己都合による退職と判断された場合、原則として給付開始までに1カ月程の給付制限が設けられます。

特定受給資格者

会社都合の倒産や解雇などにより、再就職の準備をする時間的余裕がないまま離職した方が該当します。離職日以前の1年間に、雇用保険の被保険者期間が通算して6カ月以上あれば受給資格を得られます。

特定理由離職者

雇用契約が更新されなかった場合や、うつ病の発症など、正当な理由に該当する事情で自己都合退職をした場合に認定される区分です。特定受給資格者と同様、離職日以前の1年間に、雇用保険の被保険者期間が通算して6カ月以上あれば受給資格を得られます。正当な理由と認められれば、自己都合退職であっても給付制限は設けられません。

就職困難者

障害や精神疾患、社会的事情などにより一般の求職活動が著しく困難で、再就職に特別な配慮を必要とする方が対象です。離職日以前の1年間に、雇用保険の被保険者期間が通算して6カ月以上あることが条件となります。精神障害者保健福祉手帳を持っている方に加え、手帳がなくても医師の診断書などをもとに就職困難者として認定される場合があります。

受給できない場合

次のような状況では、失業保険を受給できません。
  • 失業保険を受給できない場合
    ●療養中で、はたらける状態まで回復していない段階
    ●求職活動を行う意思がない
    ●雇用保険加入期間が条件を満たしていない
    ●医師が「就労不可」と判断し、必要な意見書が発行されない
体調に不安が残る場合は、まず医師に相談し、はたらける状態にあるかどうかを確認することが大切です。

失業保険の給付日数・受給期間

【特定理由離職者の給付日数】
被保険者であった期間
離職時の年齢 1年未満 1年以上5年未満 5年以上10年未満 10年以上20年未満 20年以上
30歳未満 90日 90日 120日 180日
30歳以上35歳未満 120日 180日 210日 240日
35歳以上45歳未満 150日 240日 270日
45歳以上60歳未満 180日 240日 270日 330日
60歳以上65歳未満 150日 180日 210日 240日

【就職困難者の給付日数】
被保険者であった期間
離職時の年齢 1年未満 1年以上5年未満 5年以上10年未満 10年以上20年未満 20年以上
45歳未満 150日 300日
45歳以上65歳未満 360日

※出典:厚生労働省「離職されたみなさまへ

受給期間は原則として離職した日の翌日から1年間ですが、その間に病気などで30日以上連続してはたらけなくなった場合、その日数だけ受給期間を延長できます。延長できる期間は最長で離職日の翌日から4年以内です。

うつ病で「就職困難者」として認定されれば、最大360日受給ができる

就職困難者として認定されると、45歳未満で雇用保険の加入期間が1年以上ある場合は300日、45歳以上65歳未満であれば360日まで受給できます。認定を受けるには、精神障害者保健福祉手帳、または医師の診断書の提出が必要です。手帳を取得していない段階でも、診断書があれば「就職困難者」として扱われる場合があるため、ハローワークへの相談をおすすめします。

失業保険の支給額は?

失業保険の1日当たりの支給額は、離職日以前の賃金や年齢によって決められます。基本的には、離職日以前の6カ月間に支払われていた月給の合計を180で割った額の50%~80%(60歳~64歳については45~80%)です。50%~80%という幅がありますが、賃金の低い方ほど割合が高くなります。ただし、年齢ごとに上限額が決められており、30歳未満は7,450円、30歳以上45歳未満は8,270円、45歳以上60歳未満は9,110円、60歳以上65歳未満は7,830円(※)までです。

※令和8年8月1日時点の上限額
※参考:「ハローワークインターネットサービス 基本手当について

うつ病で退職した際の失業保険申請の流れ

失業保険の申請は、原則として受給期間内の「離職した翌日から1年間」と決められています。医師にはたらける状態かどうかを確認したうえで、必要な書類を用意し、ハローワークで手続きを行いましょう。
  • 申請に必要なもの
    ●雇用保険被保険者証
    ●離職票
    ●個人番号確認書類
    ●身元確認書類
    ●上半身の写真2枚(縦3.0cm×横2.4cm)
    ●本人名義の預金通帳またはキャッシュカード
    ※参考:「厚生労働省 全国ハローワークの所在案内
【失業保険の申請から給付金受け取りまでの流れ】
1回目の給付金受け取りの後は、4週間ごとにハローワークに行き、失業認定申告書と雇用保険受給資格者証を提出して、失業認定を受けます。再就職が決まるまで、失業の認定と受給を繰り返しますが、前の章でもご紹介した通り、給付期限は最長1年間です。この期間を過ぎてしまうと、所定の給付日数が残っていても給付が受けられなくなります。なるべく早めに申請しましょう。

経済的な支援は失業保険だけではない

経済的な支援は、失業保険だけではありません。その他の支援制度の活用も検討してみましょう。たとえば、失業保険の待期期間に無利子で貸付を受けられる「臨時特例つなぎ資金貸付制度」や、病気やけがによって日常生活や仕事が制限された場合に受け取れる「障害年金」などがあります。また、休職中で十分な収入を得られない場合は、健康保険の「傷病手当金」が生活を支える柱になります。それぞれの制度は対象者や条件が異なるため、体調や就労可能な状態に応じて適切な制度を組み合わせることが大切です。

失業保険と傷病手当金の違いは?

失業保険の対象者は「はたらける状態にあり、仕事を探している方」で、傷病手当金の対象者は「はたらけない状態にあり、仕事を休んでいる方」です。対象者が異なるため、2つの手当を同時に受給することはできません。

失業保険と傷病手当金の違い

失業保険 傷病手当金
対象 はたらける状態にあり、仕事を探している方 はたらけない状態にあり、仕事を休んでいる方
給付条件

・離職日以前の2年間に12カ月以上、雇用保険に加入していたこと
・給付の申請をした後、ハローワークなどで求職活動を行っていること

・業務外の病気やけがで療養中である
・療養のための労務不能である
・仕事以外の理由による病気やけがで、はたらけない状態である
・4日以上仕事を休んでいる
・給与の支払いがない
支給期間 最長1年 最長1年6カ月

傷病手当金を受給しながら休職する場合、1年6カ月経過すると、はたらけない状態が続いていたとしても、傷病手当金の支給は終了します。うつ病の状態によっては、傷病手当金の支給が終了した後も経済的サポートを受けられるよう、障害年金の申請を考えておいた方が良いかもしれません。

はたらける状態にまで体調が回復したけれども、元の職場に戻らず新しい仕事を探す場合、傷病手当から失業保険に切り替えるケースもあります。ただし、失業保険の受給が決定しても、すぐに支給されるわけではありません。手当が支給されるまで7日間の待期期間があるため、求職申込みができるようになったら同じタイミングで失業保険の申請を行いましょう。

うつ病で退職した方の再就職事例

うつ病で退職した後、就労移行支援を利用して再就職した事例を紹介します。

自分の得意なこと・不得意なことを受け入れ、前向きに就職活動ができた

40代男性のAさんは、クレーム対応業務が続いたことから体調を崩してうつ病を発症。休職期間を経て退職した後、長期就労を目指して就労移行支援事業所「ミラトレ」の利用を決めたそうです。通所を開始した頃は、障害特性を受け入れられない様子でしたが、トレーニングを重ねるうちに、自分の得意なことや不得意なことがわかってきたそうです。特性への理解が進んだことで、再就職への道が開けました。

※関連記事:「うつ病の40代男性Aさんの就職事例

不安への対処法が身につき、再就職に向けて勇気をもてた

持続性抑うつ障害と診断された20代女性のXさんは、仕事を辞めて1年間の休養期間を過ごしました。その後、就職活動に励み内定を獲得しましたが、出社することができなかったそうです。自己理解を深めるため「ミラトレ」への通所を決意。メンタルケア講座などを通じて体調のコントロール方法を身につけ、就職への自信を深めていきました。通所開始から11カ月後に内定を獲得し、現在は正社員として活躍しています。

※関連記事:「持続性抑うつ障害の20代女性Xさんの就職事例

うつ病のある方の失業保険に関するよくある質問

Q. うつ病で退職した場合、すぐに失業保険をもらえますか?

A. 医師の診断書やハローワークなどで、心身の疾病による正当な理由のある自己都合退職と認められると、「特定理由離職者」として扱われます。この場合、通常の自己都合退職にある給付制限がかからず、失業保険を受け取ることができます。

Q. 療養中でも失業保険はもらえますか?

A. 失業保険は再就職を支援するための制度であるため、療養中ではたらけない状態の場合は受給資格を満たせません。体調が回復し、就労可能と判断されてから申請が必要です。

Q. 傷病手当金と失業保険は同時にもらえますか?

A. 原則として同時受給はできません。はたらけない状態のときは傷病手当金、はたらける状態になり求職活動を行うときは失業保険というように、体調や就労可能な状態かどうかに応じて利用する制度が切り替わります。

うつ病のある方には就労移行支援の利用がおすすめ

うつ病のある方が一般企業への就職を目指す場合には、就労移行支援の利用をおすすめします。就労移行支援とは、「訓練等給付」と呼ばれる障害福祉サービスの一つで、障害のある方の就職と安定就労をサポートする制度です。失業保険と訓練等給付は同時に受給することが認められており、手当を受け取りながら就労移行支援事業所に通所できます。

就労移行支援事業所「ミラトレ」では、うつ病のある方も長くはたらくための力を身につけられるよう、一人ひとりの特性に応じたトレーニングを行っています。
生活リズムの安定や体調管理の方法を身につけながら、就労に必要なスキルや自己理解を深めることができます。

また、実際の職場を想定した擬似就労を通じて、自分に合ったはたらき方や仕事の進め方を実践的に学べることも特徴です。就職活動のサポートはもちろん、就職後の定着支援にも力を入れているため、「就職すること」だけでなく「長くはたらき続けること」を見据えて準備を進められます。

「うつ病からの再就職に不安がある」「自分の体調に合ったはたらき方を見つけたい」という方は、まずはお気軽に「ミラトレ」の支援員へご相談ください。

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監修者:戸田 幸裕(とだ ゆきひろ)

パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 事業戦略部 ゼネラルマネジャー
上智大学総合人間科学部社会学科卒業後、損害保険会社にて法人営業、官公庁向け営業に従事。2012年、インテリジェンス(現パーソルキャリア)へ入社し、障害者専門のキャリアアドバイザーとして求職者の転職・就職支援に携わったのち、パーソルチャレンジ(現パーソルダイバース)へ。2017年より法人営業部門のマネジャーとして約500社の採用支援に従事。その後インサイドセールス、障害のある新卒学生向けの就職支援の責任者を経て、2024年より現職。
【保有資格】
■国家資格キャリアコンサルタント
■障害者職業生活相談員