基礎知識

公開日:2024/10/31更新日:2026/5/31
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就職ガイド –はたらく選択肢-

適応障害で休職・退職する前に検討すべきポイントと退職の流れ

適応障害で休職・退職する前に検討すべきポイントと退職の流れ

近年、仕事によるのストレスでメンタルヘルスの不調を訴える方が増えています。厚生労働省の2024年度の「労働安全衛生調査(実態調査)」によると、仕事に強い不安やストレスを感じている人の割合は68.3%に上りました。
ストレスが原因で適応障害となり、意欲の低下や睡眠障害などさまざまな症状が現れるケースもあります。「どうしても会社に行く意欲が湧かない」と感じている場合は、心身に大きな負担がかかっている可能性があります。一方で、適応障害と診断されたものの、「経済的な不安から退職に踏み切れない」という方もいるでしょう。
後悔のない選択をするためにも、退職を決める前に検討す行うべきことや、退職後に活利用できる制度について把握理解しておくことが大切です。

本記事では、適応障害で退職をする前に検討しておきたいポイントや、円満退職のためのステップ、伝え方などを解説します。

【この記事で分かること】
●適応障害で退職を決断する前に検討したいポイント
●適応障害で退職する場合の流れ
●適応障害で退職した場合に活用できる失業保険や各種制度

※関連記事:『会社が怖いと不安を感じる人は適応障害の可能性も。うつ病との違いや対処法について
※出典:厚生労働省『令和5年 労働安全衛生調査(実態調査)の概況

目次

適応障害で退職をする前に検討すべきポイント

  • ポイント
    ●医師に相談する
    ●休職を検討する
    ●業務の調整について上司に相談する
    ●家族に相談する
    ●リワーク支援(復職支援プログラム)を受ける

適応障害によって「会社に行くのが怖い」と感じると、退職が頭に浮かぶこともあるでしょう。心身が不調のときは冷静な判断が難しくなり、決断を急いでしまうことがあります。しかし、のちのち後悔しないためにも、周囲に協力を求めながらじっくり検討しましょう。

医師に相談する

適応障害の背景に発達障害の特性が関係していたり、自分では適応障害だと思っていても別の疾患だったりする可能性があります。セルフチェックで判断せず、医師の診断を受けましょう。医師が健康状態を見極めながら、選択すべき勤務形態について助言してくれる場合もあります。

また、会社に業務調整の相談をする場合や、休職を選ぶ場合、診断書が必要とになるケースがあります。退職後に受けられる各種給付金の申請にも必要になることがあるため、必要に応じて診断書の作成を依頼しましょう。
産業医がいる会社であれば、面談の依頼をおすすめします。産業医からの助言・面接指導が、業務内容や職場環境の改善につながることがあるでしょう。

休職を検討する

適応障害は、ストレスの原因から距離をおくことで、6カ月以内の回復が見込まれる疾患です。休職や長期の有給休暇によってストレスの原因から離れることで、症状の改善が期待できます。心身の不調が強い状態で無理にはたらき続けると、症状が長引く可能性もあります。まずは十分な休息を取り、医師と相談しながら回復を優先することが大切です。

業務の調整について上司に相談する

適応障害は、ストレスの原因から離れることで改善します。ストレス因が人間関係の場合は部署異動、はたらきすぎの場合は業務量の調整といったように、根本的な問題解決が必要です。業務の調整については、上司や産業医、人事担当、メンタルヘルスケアの窓口などに相談しましょう。問題解決に時間がかかるようであれば、一時的に時短勤務やテレワークなどの勤務形態が可能か相談してみるという手もあります。

家族に相談する

家族に仕事の悩みを打ち明けましょう。家族の意見を聞くことで、より広い視野で仕事や健康について考えられるかもしれません。仕事を続けるかどうかは本人の意志が最優先ですが、退職は人生における大きな決断であり、本人だけでなく家族にも影響を与えるものです。一人で抱え込まず、家族に相談することをおすすめします。

※関連記事:『適応障害で仕事を続けるメリットデメリット
※関連記事:『長期休職中の方に必要なリワークとは?取り組み内容やリワークの効果について解説

リワーク支援(復職支援プログラム)を受ける

「休職の後、スムーズに復職できるか不安」という方には、復職に向けたリハビリテーション「リワークプログラム」の活用がおすすめです。リワーク支援では、スムーズな職場復帰ができるよう、生活リズムの調整や、模擬業務などの訓練を受けられます。復職に対する負担を減らし、安定してはたらき続けるための対処法を身につけることが可能です。
ただし、ストレスの原因となっている状況に変化がなければ、復職後に適応障害が再発する可能性もあるでしょう。業務内容や職場環境の改善が難しい場合は、転職や退職を含めて今後のはたらき方を検討することも必要です。

ミラトレでは、就労移行支援サービスの実績を活かしたリワーク支援プログラムをご用意しています。復職後に安定してはたらけるよう丁寧にサポートいたします。
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適応障害で退職をするのは逃げや甘えなのか?

適応障害は理解されにくいこともあり、逃げや甘えだと思われないか、心配になることもあるでしょう。適応障害は、ストレスが原因で心身に不調が現れる状態で、決して「甘え」や「弱さ」が原因ではありません。環境が要因となるケースもあるため、職場のストレスが大きな原因になっている場合は、退職も前向きな選択肢となります。
自分に合った労働条件や人間関係の職場に変わることで、安心してはたらきやすくなり、自分の能力を存分に発揮できる可能性が高まります。

重症化を防ぐためにも心身の回復が不可欠

無理を続けると症状が悪化し、日常生活に影響が出ることも考えられます。適応障害からうつ病に移行するケースもあるため、ストレスの原因から距離を置き、十分な休息を取りましょう。休職や退職を選ぶことは、自分の心身を守るための大切な判断になる場合もあります。

円満退職に向けたステップ

退職を決めた場合、スムーズに手続きを進めるためにも、まずは医療機関へ相談し、必要に応じて診断書の作成を依頼しましょう。また、退職の意思を上司や人事、家族にも伝える必要があります。退職が決まったら、社会保険の手続きの確認や、無理のない範囲で引継ぎを行いましょう。ここでは、円満退職に向けたステップを詳しく解説します。

ステップ1:医療機関で診断書の作成を依頼する

適応障害を理由に退職する場合、必ずしも会社に診断書を提出する必要はありません。一方で、診断書の提出によって、はたらくことが難しい状況であることを理解してもらいやすくなり、スムーズに退職手続きを進められる可能性があります。診断書の作成には通常2週間程度の期間が必要なため、なるべく早めに依頼しましょう。

ステップ2:退職の意思を家族に伝える

「家族に心配をかけたくない」と退職の意志を伝えそびれてしまうと、家族の気持ちを傷つける結果になりかねません。休養中も、次の一歩を踏み出すときにも、家族の支えが力になります。家族からの反対をおそれず、まずは退職の意志を伝えることが大切です。

ステップ3:退職の意思を上司に伝える

民法の定めでは退職の申し出から2週間経てば会社を辞められることになっていますが、一般的には1カ月~3カ月前を目安に申し出るケースが多く見られます。就業規則に退職手続きの記載がある場合は、会社が定める期日・方法に従うと良いでしょう。日常生活や体調に支障が出ている場合は、有給休暇の取得や退職日を早められるかどうか、相談することをおすすめします。

ステップ4:社会保険の手続きに向けた準備をする

退職すると社会保険を切り替える必要があります。会社の人事担当者に相談し、手続きの準備を進めましょう。
社会保険の種類 必要な手続き
社会保険(健康保険) 職場の社会保険(健康保険)に加入している場合、退職後の社会保険は下記のいずれかに変更します。保険料などを比較しながら選びましょう。
(1)現在の健康保険を任意継続する(協会けんぽは支部、健康保険組合は各組合へ相談する)
(2)国民健康保険に切り替える(市区町村の窓口に相談する)
(3)家族の健康保険に扶養加入する(家族の勤務先経由で加入する)
 
年金 会社の厚生年金に加入している場合、国民年金への切り替えが必要です。お住まいの市区町村役所の年金窓口や年金事務所で手続きします。保険料の納付が難しい場合は、免除の申請をおこないましょう。

雇用保険(失業保険)
退職前に最寄りのハローワークへ相談しましょう。

職場の社会保険を脱退する場合、退職日から5日以内に本人と被扶養者の健康保険証を会社に返却しなければなりません。保険は退職日まで適用されるため、有給休暇を消化する場合も退職日の後に返却します。ただし、返却のタイミングや方法は会社の定めに従うことが大切です。事前に会社の人事担当者に確認しましょう。

※参考:『全国健康保険協会 会社を退職するとき
※参考:『日本年金機構 会社を退職したときの国民年金の手続き

ステップ5:無理のない範囲で引継ぎを行う

無理のない範囲で、引継ぎを行うのも円満退職に向けたステップの1つです。マニュアルの作成や、資料の共有などを行うようにしましょう。心身の不調がある場合は、すべてを一人で抱え込む必要はありません。対応が難しい場合は、上司や同僚に相談しながら進めることも大切です。

適応障害で退職する際の伝え方

退職願は、書面で作成し直属の上司に手渡しする提出方法が望ましいとされています。ただし、心身の状態が安定せず退職願を手渡しできない場合、メールや郵送でも法的には問題ありません。なお、いきなりメールや郵送するのではなく、事前に対面または電話などで事情を説明し、許可を得た上で行うと良いでしょう。

会社に退職願の規定がある場合を除き、書き方に定めはありませんが、退職理由と退職日、名前は忘れず記載しましょう。退職理由として適応障害にふれる必要はなく、「一身上の都合」や「健康上の理由」で問題ありません。職場の人に感謝の気持ちを伝えたいときは、挨拶文を作成するのも良いでしょう。

「退職願」と「退職の挨拶」の文例を紹介します。
  • 【退職願 文例】
    このたび一身上の都合により、〇〇年〇月〇日をもって退職いたしたく、ここにお願い申し上げます。
  • 【退職の挨拶 文例】
    体調不良により長らく休職し復職の見通しが立たないため、誠に勝手ながら〇〇年〇月〇日をもって退職いたしたく、ここにお願い申し上げます。
    皆様方にご心配とご迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げます。末筆ながら、皆様方のご健勝と◯◯社の益々のご発展を心よりお祈りいたしております。
退職手続きに不安や不明点があるときは、以下の専門機関に相談してみてはいかがでしょうか。

労働条件相談「ほっとライン」
日本司法支援センター(法テラス)

適応障害で退職したら失業保険を受給できる?

適応障害で退職した場合でも、条件を満たすことで失業保険の受給が可能です。失業保険とは、退職した人が再就職するまでの期間、生活を保障する手当のことです。受給には、「退職前1年以上、雇用保険に加入している」「現在、求職活動を行っている」などの条件があります。給付の期間や金額は保険の加入期間によって異なるため確認が必要です。適応障害のようにやむを得ない理由で退職した場合、「特定理由離職者」として受給期間が長くなる可能性があるため、詳しくは最寄りのハローワークに相談してみましょう。

※参考:『ハローワーク 基本手当について

特定理由離職者

特定理由離職者の場合、2〜3カ月の給付制限期間が原則免除され、7日間の待機後に給付を受け取ることが可能です。特定理由離職者とは、有期雇用において本人が更新を希望したにもかかわらず契約が成立しなかった場合や、心身の不調などやむを得ない理由によって離職した場合に該当します。

就職困難者

身体障害や知的障害、精神障害がある方は、「就職困難者」に該当するケースがあります。例えば、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている場合、「就職困難者」の対象となり、失業手当の給付日数が最大300日~360日に延長できるケースがあります。この給付には、障害があることを証明する書類が必要になるケースが多く、精神障害者保健福祉手帳の提示を求められることがあります。

適応障害で退職した後に活用したいサポート

適応障害と診断された場合、自立支援医療制度や、傷病手当金、労災保険などのサポートを受けられるケースがあります。受給対象となる支援制度があるか、事前に確認しておくことをおすすめします。

自立支援医療制度

適応障害など精神疾患のある人を対象に、医療費の自己負担を軽減する制度です。入院費用は対象外ですが、通常3割負担の通院費用が1割に軽減されるほか、医療機関で受けるリワークプログラムも支援対象となります。自己負担の上限月額は、所得や症状の度合いによって異なるため、「自立支援医療の患者負担の基本的な枠組み」を参照してください。申請は、診断書や所得証明書などの必要書類を用意し、お住まいの地域の市役所福祉窓口で行います。

※参考:『厚生労働省 自立支援医療(精神通院医療)の概要

傷病手当金

給付対象者は、仕事以外の事由による病気やけがではたらけず、一定期間休職している健康保険加入者です。退職日からさかのぼって1年以上、健康保険に加入しており、すでに傷病手当金を受給している、もしくは受給条件を満たしている場合、退職後も給付される可能性があります。退職前に人事担当者や健康保険組合に問い合わせてみましょう。

労災保険

適応障害が仕事による強いストレスの影響と判断された場合、労災保険が給付される可能性があります。詳しくは、最寄りの都道府県労働局または労働基準監督署に問い合わせてみましょう。労災保険相談ダイヤルでも労災保険に関する質問を受け付けています。

※参考:『厚生労働省 労災保険相談ダイヤル

障害者手帳

障害のある人に就労支援や経済的なサポートを提供するための制度です。適応障害単独では障害者手帳を取得できません。ただし、症状が長期化しうつ病などの精神障害を併発している場合は取得可能になる場合もあるため、お住まいの地域の市役所福祉窓口で相談してみましょう。なお再就職先に障害者手帳取得の旨を伝えるかどうかは、就職者本人の自由です。

障害年金

障害年金とは、障害や病気によって仕事が制限された場合に給付される年金です。適応障害は障害年金給付の対象外ですが、うつ病などを併発している場合、障害年金を受給できる可能性があります。請求が可能かどうか医師に相談してみましょう。

生活保護

障害の有無にかかわらず、世帯収入が国の定める最低生活費を下回る人を対象に、最低限の生活費を保障する制度です。衣食住に必要な費用や医療費、就職のために必要な訓練費、教育費などを支援し、自立を促します。給付条件は自治体によって異なるため、最寄りの福祉事務所に相談してみましょう。

※関連記事:『適応障害の人の仕事選びのポイントや長くはたらき続けるコツ

適応障害の退職に関する「よくある質問」

Q.適応障害を理由に即日退職できますか?

A.会社と本人の合意があれば、即日退職は、違法ではありません。深刻な症状によって就労が困難である場合は、会社に診断書を提出して事情を説明し、退職日について協議しましょう。

Q.適応障害を理由とした退職は自己都合退職になりますか?

A.適応障害による退職は自己都合退職ですが、ただし「正当な理由のある自己都合により退職した者」として、「特定理由離職者」に認定される可能性があります。認定の判断はハローワークがおこなうため、まずは相談してみましょう。

※参考:『厚生労働省 特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準

Q.適応障害で退職しても、失業保険は給付されますか?

A.適応障害による退職も、失業保険の給付対象です。特定理由離職者に認定されると、失業保険の給付日数が手厚くなる場合があります。失業保険には1カ月間の給付制限期間がありますが、特定理由離職者は7日間の待機期間が過ぎるとすぐに給付されます。

就労移行支援でストレス対処法を身につけ、自分に合ったはたらき方を

適応障害の原因はストレスといわれていますが、「どのようなストレスに、どのような反応をするか」は、人によって異なります。適応障害を繰り返さないためには自己理解を深め、ストレス因や対処法を見つけることが大切です。治療や就職活動と並行して、自分に合った対処法を身につけることは、簡単ではないでしょう。「専門家のサポートを受けながらストレスコントロール法を身につけ、自分に合ったはたらき方を見つけたい」という方には、就労移行支援の利用をおすすめします。

就労移行支援事業所「ミラトレ」では、ストレスマネジメントをはじめとする健康管理法や、就職に必要なスキルを身につけるためのトレーニングを行っています。職場環境にスムーズになじめるよう、擬似就労などの実践的なトレーニングも実施しています。就職後も、仕事の悩みや不安を解消できるよう定着支援を行っています。また、各事業所では、休職中の方が安心して職場に戻れるよう「リワーク支援プログラム」を実施し、復職をサポートしています。プログラム内容や支援内容について知りたい方は、気軽にお問い合わせください。

監修者:戸田 幸裕(とだ ゆきひろ)

パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 事業戦略部 ゼネラルマネジャー
上智大学総合人間科学部社会学科卒業後、損害保険会社にて法人営業、官公庁向け営業に従事。2012年、インテリジェンス(現パーソルキャリア)へ入社し、障害者専門のキャリアアドバイザーとして求職者の転職・就職支援に携わったのち、パーソルチャレンジ(現パーソルダイバース)へ。2017年より法人営業部門のマネジャーとして約500社の採用支援に従事。その後インサイドセールス、障害のある新卒学生向けの就職支援の責任者を経て、2024年より現職。
【保有資格】
■国家資格キャリアコンサルタント
■障害者職業生活相談員