基礎知識

公開日:2023/8/31
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就職ガイド –はたらく選択肢-

うつ病で退職する前に検討するべき5つのポイントと退職までの流れを解説

うつ病で退職する前に検討するべき5つのポイントと退職までの流れを解説

うつ病ではたらき続けることに困難を感じている方は、「退職したいけれど収入がなくなることが不安」「退職するにはどうしたら良いのだろう」という悩みをもっているかもしれません。うつ病の方が仕事の悩みを解決するには、退職や休職、転職など、さまざまな選択肢を検討してみる必要があるでしょう。

休職や退職の際は、体調を最優先に考え、適切なサポートを受けることも大切です。今回は、うつ病の方が退職前に検討するべきことや、退職を選んだ場合の手続きなどの流れ、退職後に受けられるサポートについて解説します。うつ病で退職した後、専門機関のサポートを受けながら再就職した方の実例もあわせて紹介するので、退職すべきか迷っている方は参考にしてください。

うつ病で退職する前に検討すべき5つのポイント

一般的なうつ病の症状として、体力や気力が続きにくい傾向から、はたらきづらさを感じることがあります。
うつ病の進行を抑えるには、休養が大切です。うつ病と向き合いながらはたらくことが難しいと感じている方は、休職や退職を選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。

ただ、うつ病によって判断力が低下する場合があるため、退職のような大きな決断は焦らず慎重に考えた方が良いでしょう。退職する前に下記の5つをおこなってみたうえで、自分にとってより良い選択をしてください。

家族に相談する

自分はうつ病ではないかと感じた時点で、家族に不安な気持ちを相談しましょう。心身状態や仕事の現状、仕事に対する考えについて話すことで、頭の中を整理できたり、気持ちが楽になったりすることもあります。

医師に相談する

家族や身近な人に相談した後は、心療内科や精神科を受診することも大切なステップです。医療機関へ行くことに、ためらいを感じるかもしれませんが、一生のうちにうつ病を経験する人は約15人に1人というデータもあり、だれでもなりうる病気です。

また、この先うつ病を理由に休職や退職をする場合、医療機関の受診歴や診断書が必要になることもあります。うつ病という診断があることで、休職しやすくなったり、さまざまな支援を受けやすくなったりすることもあるでしょう。あまり気負わずに、医療機関を受診してみることをおすすめします。

退職以外の選択肢も考える

うつ病ではたらきづらさを感じていても、仕事内容や職場環境が嫌いなわけではない、という方もいるでしょう。「自分が仕事を続けることで職場の人に迷惑をかけるのではないか」と考えて退職し、後悔する方もいるようです。退職を決める前に、仕事を続けられる可能性を探してみてください。

はたらき方の変更

勤務時間の短縮や休憩時間の調整によって仕事を続けられそうであれば、上司や人事担当者に相談してみてはいかがでしょうか。仕事内容や職場環境が自分に合っていないと考えている場合は、部署異動や業務内容の変更希望を検討した上で相談してください。

休職

労働条件を変えることが難しい場合や、労働条件を変えても体調が回復しなかった場合は休職を検討しましょう。休職を視野に入れた方は、会社の就業規則から休職制度の有無や内容を確認しましょう。事前に引き継ぎ事項について話し合っておけると安心して休職に入りやすいです。

休職後は心と体の状態が整ってから、復職や退職について検討しましょう。うつ病のある方が復職を目指す場合、リワークプログラムと呼ばれるリハビリテーションを活用できます。

※関連記事:「うつ病になったら仕事はどうする?仕事を続けるメリットとデメリット
※関連記事:「休職中の方に必要なリワークとは

うつ病で退職する時の4つのステップ

業務調整などでもはたらきづらさの解消に結びつかない場合や、休職によって根本的な原因を解決できない場合は退職もひとつの手段です。ここでは、うつ病により仕事を辞めるときの流れをステップ別に解説します。

ステップ1:医療機関で診断書をもらう

退職を決めたら、かかりつけの医療機関で診断書をもらいましょう。病気を理由に退職する場合、会社によっては診断書が必要です。また、退職後に経済的支援や復職支援を受ける際に、診断書を求められる場合があります。

ステップ2:家族に伝える

家族の理解と協力が得られれば、退職準備やその後の生活をサポートしてもらえることもあります。治療や休養に専念するためにも、家族に退職の意向や具体的な期日を伝えた上で会社に申し出ましょう。

ステップ3:上司に伝える

診断書が手元にあり、家族にも話した上で、直属の上司に退職の意志を伝えます。法律上は退職日の14日前までに伝えれば問題ありませんが、就業規則に定めがある場合はその期日に従いましょう。うつ病のようなやむを得ない事情の場合、即日退職が認められる場合もあります。

ステップ4:社会保険の手続きの準備をする

退職すると社会保険の切り替えが必要なため、職場の人事担当者へ相談しながら準備を進めておきましょう。社会保険を任意継続する場合、退職日から20日以内に申請する必要があります。
社会保険 対応内容
健康保険

職場で社会保険に加入している場合、下記のいずれかに変更します。

・国民健康保険に切り替える

・現在の健康保険を任意継続する

・家族の健康保険に扶養加入する

手続きは、市区町村の役所でおこないます。

※参考:「厚生労働省 国民健康保険制度

年金

職場の厚生年金に加入している場合、国民年金への切り替えが必要です。
手続きは、退職後に市区町村の役所でおこないます。

※参考:「日本年金機構 国民年金

雇用保険(失業保険)

受給できる期間は、原則として離職日の翌日から1年間ですが、受給期間の延長を申請できる場合もあります。

退職前に、ハローワークで相談しておきましょう。

※参考:「厚生労働省職業安定局 雇用保険手続きのご案内

うつ病による退職を会社に申し出る際の伝え方

会社に退職を申し出る際、どのように伝えれば良いのか悩む方もいるでしょう。伝え方や押さえておきたいポイントを紹介します。

伝える手段

本来であれば直属の上司に退職願を手渡し、退職の意思を伝えますが、うつ病の症状によって難しい場合は、電話やメール、郵送で伝えても問題ありません。退職の意思を伝えた証拠が残るよう、なるべく内容証明郵便を活用します。退職の意思表明をする心のゆとりがない場合は、家族や退職代行の力を借りましょう。

うつ病による退職願の一例

退職願には、うつ病が理由である旨を記載する必要はなく、「一身上の都合」や「体調不良により」という書き方で問題ありません。下記に文例を取り上げます。
  • 【文例1】
    このたび一身上の都合により、勝手ながら〇年〇月〇日をもって退職いたしたく、ここにお願い申し上げます。
  • 【文例2】
    長らく休職させていただき申し訳ありません。体調が思わしくなく復帰の見通しが立たないため、誠に勝手ながら〇年〇月〇日をもって退職させていただきたく思います。これまでのご指導に感謝申し上げます。

うつ病による退職後に活用したいサポート

退職後は、経済的支援やヘルスサポートを受け、安心して休養できる環境をつくりましょう。また、体調が安定した後に再就職を目指す際に受けられるサポートもあります。上手に活用して退職後の生活基盤を整えましょう。
  • 医療費のサポート
    └自立支援医療(精神通院医療)
     精神科の治療のため、定期的・継続的に通院している人を対象に、医療費を補助する制 
     度です。所得に応じて1月当たりの負担額が設定されています。
  • 暮らしと社会生活のサポート
    └精神障害者保健福祉手帳
     税金の優遇制度や交通機関の割引、公営住宅への優先入居など経済的・福祉的なサービ  
     スを利用できます。
  • 生活費のサポート
    └障害年金
     病気やケガによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に受け取れる年金
     です。受給には審査があります。
  • 就労のサポート
    └就労移行支援事業所・ハローワーク・地域障害者職業センター
     障害者就業・生活支援センター
  • さまざまな相談ごとのサポート
    └市町村保健センター(厚生労働省 地域保健
    └精神保健福祉センター(全国精神保健福祉センター一覧
    └医療機関の患者会や家族会(みんなねっと

うつ病で退職した方の再就職事例

うつ病のため退職した方が、就労移行支援事業所を利用して再就職を叶えた事例を紹介します。

心地良い職場環境を求めて、異業種に挑戦

多忙な仕事にストレスを感じてうつ病を発症した40代男性のQさんは、医師の勧めで退職を選びました。休養後に就労移行支援事業所「ミラトレ」を利用し、社会復帰に向けたトレーニングを開始。さまざまなプログラムの受講を通して、「前職とは違う職種の方が自分に合っている」という自己理解のもと転職活動に取り組み、事務職として再就職後はサブリーダーとして活躍しています。

※関連記事:「うつ病の20代女性Bさんの就職事例

はたらき方を見つめ直し、再就職を実現

コロナ禍によるはたらき方の変化によってうつ病を発症した20代女性のBさんは、「自分に向いている仕事が知りたい」と就労移行支援事業所「ミラトレ」への通所を決めます。通所当初は気持ちの波がありましたが、グループワークやアンガーコントロールなどを受講するうち、自分の気持ちをうまく伝えられるようになりました。「自分が長くはたらくためには業務量が重要」だと気づいたBさんは、はたらきやすい職場と出会い、再就職を叶えます。

※関連記事:「うつ病の40代男性Qさんの就職事例

うつ病と向き合いながら再就職を目指すなら、就労移行支援がおすすめ

うつ病のある方が再就職を目指す場合、自分の特性を知り、自分に合ったはたらき方を見つけることが大切です。就労移行支援事業所「ミラトレ」では、長くはたくための力を身につけられるよう、就労に向けた基本的なプログラムに加え、一人ひとりの特性に応じたトレーニングをおこなっています。

就職活動の支援や就職後の定着支援によって、障害と向き合いながら長くはたらき続けたいという方をサポートします。就労移行支援についての疑問や、「ミラトレ」についてのご質問、障害に関するご相談など、お気軽にお問い合わせください。

執筆 : ミラトレノート編集部

パーソルダイバースが運営する就労移行支援事業ミラトレが運営しています。専門家の方にご協力いただきながら、就労移行支援について役立つ内容を発信しています。