基礎知識

公開日:2025/3/25
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就労移行支援の制度解説

精神障害者手帳2級を取得するメリットとは?控除や利用できるサービスを詳しく解説

精神障害者手帳2級を取得するメリットとは?控除や利用できるサービスを詳しく解説

精神障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)2級を取得すると、税金の控除や公共料金の割引などさまざまな支援を受けられます。経済的なメリットがあるだけでなく、はたらき方の選択肢も広がるでしょう。精神障害者手帳には3等級あるため、「2級の判定基準が気になる」「2級にはどのようなメリットがあるのだろう」と疑問に思うかもしれません。そこで今回は、精神障害者手帳2級の判定基準や取得のメリットについて紹介します。

精神障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)2級とは

精神障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)とは、精神障害があることを認定する手帳のことで、一般的に障害者手帳と呼ばれています。精神障害者手帳には、障害の程度に応じて1級から3級まであり、障害の程度が重くなるほど等級の数字は小さくなります。
障害の程度 重い 軽い
等級 1級 2級 3級

精神障害者手帳2級の判定基準

精神障害者手帳の交付対象者は、該当する疾患の初診から6カ月以上経ち、生活に困難が出ている人です。厚生労働省では、2級の判定基準を「精神障害であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」と定めています。具体的には、次のようなケースで2級と判定される可能性があるでしょう。
つまり、日常生活を送る上でさまざまなサポートを必要とする場合、2級と判定される可能性があります。申請方法については、以下の記事を参考にしてください。

※関連記事:『精神障害者保健福祉手帳とは?申請方法からメリットまでを解説
※引用:厚生労働省『障害者手帳
  • 判定基準
    ●通い慣れた場所には一人で外出できるが、それ以外の場所に出かけるにはサポートが必要
    ●栄養バランスを考えた食事を摂ることやていねいな掃除、入浴、洗面を自分でおこなうことが難しい
    ●お金の管理や計画的な買い物をおこなうにはサポートが必要
    ●通院や服薬を自分で続けることが難しい
    ●人とコミュニケーションをとることが難しく、良好な人間関係を築けないことがある
    ●不測の事態から身を守るにはサポートが必要
    ●自分一人では、さまざまな手続きや公共施設の利用が難しい

精神障害者手帳2級を取得する3つのメリット

精神障害者手帳2級を取得する主なメリットは、次の通りです。
各々について紹介します。

  • メリット
    ●経済的な支援を受けられる
    ●障害者雇用枠への求職が可能になる

1.「税金の控除」や「公共料金の割引」が受けられる

精神障害者手帳2級を取得すると、次のような税金の特例を受けられます。
支援の種類 控除の内容
控除の内容 27万円
住民税の控除 26万円
預貯金の非課税 350万円までの預貯金の利子などが非課税(所得税)
相続税の控除 障害のある人が85歳になるまでの年数1年につき10万円
贈与税の非課税 3,000万円まで非課税
心身障害者扶養共済制度にもとづく給付金の非課税 給付金→非課税(所得税)
相続や贈与による給付金を受ける権利の取得→非課税(相続税・贈与税)

また、以下のような割引を受けられます。
割引対象 内容
公共交通料金 鉄道※、バス、飛行機、タクシー、高速道路などの利用料金が割引もしくは無料に
携帯料金 携帯電話会社ごとに対象や割引率が異なる
NHK受信料 世帯全員が住民税非課税の場合は全額免除
余暇施設利用 映画館や美術館、テーマパークなどの入館料が割引もしくは無料に
医療費 自治体によって対象や助成内容が異なる

※JRでは、2025年4月から精神障害者割引制度を導入。2級の取得者が1人で利用する場合、片道100km以上の普通乗車券が5割引きになるなどの割引を実施

税金の控除額は、2級と3級で大きな違いはありません。ただし、医療費の助成は1級のみ、もしくは2級以上を対象としている自治体が多いようです。

※参考:国税庁『障害者と税

2.自治体独自のサービスを受けられる

自治体によっては、精神障害者手帳2級を取得している人を対象に、独自の手当をおこなっています。ただし、所得や居住期間などの支給要件が設けられている場合もあるため、確認が必要です。
精神障害者手帳2級を取得することで、手当に限らずさまざまなサービスを受けられる可能性があります。詳しくは、お住まいの市区町村役所の福祉窓口で確認してください。

3.障害者雇用枠への求職が可能になる

精神障害者手帳を取得すると、一般雇用枠だけでなく障害者雇用枠での求職も可能になります。2024年4月、「障害者差別解消法」が改正され、民間企業でも障害のある従業員に対し合理的配慮をおこなうことが義務化されました。また、一般雇用枠より障害者雇用枠の方が障害に対するサポート体制の整備が進んでおり、無理なくはたらける可能性が高いでしょう。

在宅ワークを中心とした障害者雇用の求人もありますが、「PCスキルが必要」「求人数が少ない」などの理由で就労のハードルが高い傾向にあります。就労移行支援を活用してPCスキルを磨き、就職活動の支援を受けながら目指すのもひとつの方法です。また、就労移行支援を利用することで通勤への自信がつき、在宅ワークからオフィス勤務の求職に切り替えるケースもあります。

精神障害者手帳2級を取得した人は福祉サービスを活用しよう

障害のある人が自立した生活を送るには、精神障害者手帳による経済的支援と合わせ、さまざまな福祉サービスを活用すると良いでしょう。おすすめの福祉サービスを取り上げます。

居宅介護(ホームヘルプ)

居宅介護は、「障害者総合支援法」にもとづき、障害がある人に家事援助や身体介護をおこなうサービスです。家事援助を利用すると、料理や掃除、洗濯などを代行してもらえるため、快適な生活を送りやすくなります。

重度訪問介護

「行き慣れない場所に出かける際、誰かに付き添ってほしい」「誰かに生活を見守ってもらい、必要なときにはサポートしてほしい」という人は、重度訪問介護の利用を検討すると良いでしょう。障害支援区分が4以上、認定調査において行動関連項目の合計点数が10点以上ある場合、重度訪問介護を利用できる可能性があります。

障害者グループホーム

障害者グループホームとは、障害のある人たちと一緒に共同生活を送る住居のことです。世話人が食事や入浴をサポートしてくれるほか、生活に関する相談に応じてくれます。入居することで生活費を抑えられたり、人と交流する機会をもてたり、さまざまなメリットがあるでしょう。

※関連記事:『障害者グループホームとは?メリット・デメリットと利用方法を解説

就労継続支援

一般企業への就職が難しいと感じる人は、就労継続支援の活用を検討してみると良いでしょう。就労継続支援とは、障害や病気によってはたらくことが難しい人を対象に、はたらく場やスキルアップの機会を提供する福祉サービスです。

就労継続支援の利用者をみると、精神障害者手帳取得者の中では2級の人が最も高い割合を占めています。就労継続支援には最低賃金が保障されているA型と、無理のないペースで通所できるB型の2種類ありますが、どちらも障害への配慮を受けながらはたらけるでしょう。

※関連記事:『就労継続支援A型とは?利用方法や他サービスとの違いについて
※関連記事:『就労継続支援B型とは?事業所の選び方や就労移行支援との違いも解説
※出典:厚生労働省『就労移行支援及び就労継続支援サービスの提供実態に関する調査

就労移行支援

就労移行支援とは、「一般企業ではたらきたい」という障害や難病のある人を対象に、就労に向けたトレーニングや就職活動のサポートをおこなう福祉サービスです。就労継続支援を利用している人が、就労移行支援に切り替えることもできます。

厚生労働省が企業を対象に実施した調査によると、精神障害のある雇用者のうち精神障害者手帳2級の人が35.5%を占めており、2級取得者の多くが社会で活躍していることがわかります。「一般企業で長くはたらきたい」という人は就労移行支援の活用を検討してみると良いでしょう。

※関連記事:『就労移行支援とは
※出典:厚生労働省『令和5年度障害者雇用実態調査結果報告書

精神障害者手帳2級を取得するデメリット

精神障害者手帳2級を取得すると保険やローンを組めなくなる、と言う人もいます。たしかに精神疾患があると、生命保険や住宅ローンの審査に通りにくくなる可能性があるでしょう。しかし、手帳の有無や等級に関係なく、審査を受ける人はみな健康状態について告知する義務があります。

また、障害受容に抵抗のある人にとっては、手帳の取得が精神的な負担になることもあるでしょう。しかし、手帳をもっていることを周囲に公表する必要はありません。一般雇用枠の仕事に就くときも、採用担当者や上司、同僚に、障害のあることを伝えるかどうかは、本人の自由です。障害者手帳の取得を理由に、給与が下がることもありません。さまざまな経済的支援が受けられることを考えると、デメリットよりメリットの方が大きいと感じる人が多いのではないでしょうか。

手帳の返還も可能

手帳を取得しても自分には不要だと感じれば、いつでも返還できます。返還の手数料もかかりません。

精神障害者手帳2級の取得後によくある質問

精神障害者手帳2級を取得した後も、必要な手続きをおこなって、必要な支援を受けましょう。以下のQ&Aを参考にしてください。

障害者手帳を取得しているけれど、障害年金も請求できる?

精神障害者手帳を取得したあとも、障害年金の請求は可能です。障害者手帳と障害年金は別の制度なので、障害者手帳を取得すると自動的に障害年金が支給されるわけではなく、年金の請求手続きをおこなわなければなりません。

また、障害者手帳と障害年金の等級が同じになるとは限りません。ただし、先に障害年金を受給している人が障害者手帳を申請する場合、新たに診断書を作成してもらわなくても、障害年金と同じ等級の障害者手帳が交付されます。

1級への変更はできる?

症状が変化した場合、等級の変更申請をおこなうこともできます。サポートがなければ日常生活を送れない状態にある人は、等級が1級に上がる可能性があるでしょう。変更申請は、手帳の更新時期を待たずにおこなえるので、お住まいの市区町村役所の担当窓口に相談してください。

年末調整の障害者控除を受けるには?

年末調整の際に障害者控除を申告すると、27万円分の所得税が控除されます。「給与所得者の扶養控除等申告書」に、「障害者、寡婦、ひとり親又は勤労学生」という欄があるので、必要事項を記入して勤め先に提出しましょう。会社に障害のあることを伝えていない人や個人事業主の人は、確定申告で申告すれば控除を受けられます。

精神障害者手帳2級を取得すべきか専門家に相談を

精神障害者手帳2級を取得することによって得られるメリットなどを紹介しました。取得の手続きについてわからないことがあれば、専門機関に相談しましょう。お住まいの市区町村役所の福祉窓口や精神保健福祉センター、地域包括支援センターなどで相談できます。

また、これから障害者手帳を取得して障害者雇用枠の就職を目指したいという方は、就労移行支援事業所に通所しながら、障害者手帳を取得すると良いでしょう。就労移行支援事業所「ミラトレ」でも、通所者の方に障害者手帳に関する情報やサポートを提供しています。

精神障害者手帳は障害がある人の暮らしを支援する制度のひとつです。返還もできるので、障害によって生活に難しさを感じている人には申請をおすすめします。

執筆 : ミラトレノート編集部

パーソルダイバースが運営する就労移行支援事業ミラトレが運営しています。専門家の方にご協力いただきながら、就労移行支援について役立つ内容を発信しています。