基礎知識

公開日:2025/3/26
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就労移行支援の制度解説

精神障害者手帳3級を取得するメリットは?受けられるサービスや控除を解説

精神障害者手帳3級を取得するメリットは?受けられるサービスや控除を解説

精神障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)3級は、精神障害がある人に交付される障害者手帳の中でも、障害の程度が軽い人を対象にしています。「1級ならともかく、3級を取得してもメリットがないのではないか」「そもそも自分は精神障害者手帳の対象なのだろうか」と疑問に思う人もいるでしょう。そこで今回は、精神障害者手帳3級の判定基準や取得するメリットについて解説します。

精神障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)3級とは

精神障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)とは、一定の精神障害がある人に交付される障害者手帳です。障害がある人の自立と社会参加をうながすため、取得者にはさまざまな支援がおこなわれます。精神障害者手帳は3等級に分かれており、比較的、障害の程度が軽い場合に3級と判定されます。
3級の判定には具体的にどのような基準が設けられているのか、次の章でみていきましょう。
障害の程度 重い 軽い
等級 1級 2級 3級

精神障害者手帳3級の判定基準

精神障害者手帳は、うつ病などの精神疾患と診断されてから6カ月以上経っている人が交付対象です。3級の判定基準は、「精神障害であって、日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの」と定められています。具体的には、以下のようなイメージです。

普段は不自由なく生活できていても、強いストレスがかかる状況でサポートが必要な人は、3級と判定される可能性があるでしょう。申請方法については、以下の関連記事を参考にしてください。

※関連記事:『精神障害者保健福祉手帳とは?申請方法からメリットまでを解説
※引用:厚生労働省『障害者手帳
  • 判定基準
    ●自分で食事管理できるが、サポートがあるとより適切な食事を摂れる
    ●洗面や入浴、着替えなどを自分でおこなえるが、ときとしてサポートが必要
    ●自分でお金を管理できるが、助言があるとより計画的な使い方ができる
    ●通院や服薬を自分でおこなっているが、サポートが必要なこともある
    ●人とコミュニケーションをとったり、人間関係を築いたりすることが苦手
    ●不測の事態に自分で対処できるものの、サポートがあるとより望ましい
    ●社会的な手続きや公共施設の利用をおおむね自分でできるが、状況によってはサポートが必要
    ●余暇や趣味を楽しむときにサポートが必要な場合がある

精神障害者手帳3級を取得できないケースとは

本来、精神障害者手帳3級の対象となるはずの人が、手帳を取得できないケースもあります。その理由として次のようなことが考えられるでしょう。

※関連記事:『就労移行支援事業所の利用に必要な障害福祉サービス受給者証とは?申請方法とポイントを解説

  • 取得できないケース
    ●経済的な支援を受けられる
    ●障害者雇用枠への求職が可能になる
精神障害者手帳を申請する際は、医師に診断書を作成してもらいます。診断書には病状や生活能力の欄がありますが、問診で自分の状況をうまく伝えられなかった場合、医師が的確に記入できないこともあるでしょう。

また、精神疾患には波があるため、症状が安定している時期に申請すると、的確に判定されにくい可能性があります。ちなみに、適応障害はストレスの原因を取り除くと6カ月以内に症状が改善するといわれており、適応障害単独で手帳を取得できる可能性は低いといわれています。

手帳を取得できなかった場合、「生活能力があることの証」として前向きにとらえることもできるでしょう。しかし、「申請がうまくいかなかった」と感じる人には、対策をおこなってから再申請することをおすすめします。

たとえば、支援機関のスタッフや家族に医療機関へ同行してもらい、病状や生活能力について医師に説明してもらうのもひとつの方法です。医師との意思疎通がうまく図れない場合、主治医の変更という選択肢もあるでしょう。また、障害年金の請求が認められた後に、精神障害者手帳の申請をおこなうと、同じ等級の手帳が交付されます。

精神障害者手帳3級を取得するメリット

精神障害者手帳3級を取得すると、経済的な支援を受けられるほか、障害者雇用枠への求職が可能になります。各々について、具体的な支援策を紹介します。

税金控除や各種割引を受けられる

精神障害者手帳3級を取得すると、以下のような税金の控除があります。
支援の種類 控除の内容
所得税の控除 27万円
住民税の控除 26万円
預貯金の非課税 350万円までの預貯金の利子などが非課税(所得税)
相続税の控除 障害のある人が85歳になるまでの年数1年につき10万円
贈与税の非課税 3,000万円まで非課税
心身障害者扶養共済制度に基づく給付金の非課税 給付金→非課税(所得税)
相続や贈与による給付金を受ける権利の取得→非課税(相続税・贈与税)

また、以下のような割引を受けられます。
割引対象 内容
公共交通料金 鉄道、バス、飛行機、タクシー、高速道路などの利用料金が割引もしくは無料に
携帯料金 携帯電話会社ごとに対象や割引率が異なる
NHK受信料 世帯全員が住民税非課税の場合は全額免除
余暇施設利用 映画館や美術館、テーマパークなどの入館料が割引もしくは無料に
医療費 自治体によって対象や助成内容が異なる

税金の控除額は、2級と3級で大きな違いはありません。医療費の助成は1級、もしくは1~2級を対象としているケースが多いものの、中には3級を対象にしている自治体もあります。どのような割引を受けられるか、お住まいの市区町村役所の福祉窓口で確認してください。

※参考:国税庁『障害者と税

障害者雇用枠への求職が可能に

障害特性によるはたらきづらさを感じている人は、障害者手帳を取得し、障害者雇用枠ではたらくという道もあります。2024年4月、「障害者差別解消法」が改正され、民間企業でも障害のある人に合理的配慮を提供することが義務づけられました。それでもなお、一般雇用より障害者雇用の方が合理的配慮を期待できるでしょう。また、障害者雇用には、「一般雇用枠に比べ採用されやすい」「初めから障害を開示しているため心理的な負担が少ない」などのメリットがあります。

障害者雇用枠の中にも、公務員や短時間勤務などさまざまな選択肢があります。どのようなはたらき方が適しているのか、そもそも障害者雇用と一般雇用のどちらを目指すべきかは、人それぞれ異なるものです。障害者手帳を取得し、障害者雇用と一般雇用の両方を見据えた上で、自分にあうはたらき方を検討してみても良いでしょう。

精神障害者手帳の支援だけでなく福祉サービスも活用しよう

障害福祉サービスには、「介護給付」と「訓練等給付」があります。自分に役立つと思えるサービスは、積極的に活用しましょう。

介護給付

精神障害者手帳3級は、日常的な家事をおおむね自分でできる状態とされていますが、体調が悪いときには掃除や料理がおろそかになることもあるでしょう。そのようなときは、「居宅介護(ホームヘルプ)」の家事援助を活用すると、生活ストレスの解消を図れます。家事援助は、ホームヘルパーが料理や掃除、洗濯、買い物などを代行してくれるサービスです。

また、行き慣れた場所なら一人で外出できるものの、初めての場所に行くとストレスがかかってしまう人もいるでしょう。そのような人は、「行動援護」という福祉サービスの活用によって、外出時のストレスを減らせます。行動援護とは、外出時にガイドヘルパーが付き添い、見守りやサポートをおこなってくれるサービスです。

利用を希望する人は、お住まいの市区町村役所の福祉窓口で相談しましょう。

訓練等給付

精神障害者手帳3級の人が、生活能力やはたらくスキルを身につけて自立を目指すには、「訓練等給付」と呼ばれる福祉サービスを活用すると良いでしょう。

生活能力の維持・向上を目的とした「自立訓練(生活訓練)」もそのひとつです。プログラム内容は事業所によって異なりますが、家事やコミュニケーション、ビジネスマナーなど、さまざまな訓練がおこなわれます。

※関連記事:『自立訓練(生活訓練)とは?詳しく知りたい方へ利用方法や就労移行支援との違いを解説

また一人暮らしを考えている人には、「自立生活援助」の活用がおすすめです。自立生活援助とは、一人暮らしに近い状態で生活しながら、家事や金銭管理のサポートを受けられる福祉サービスです。ただし、利用可能期間は1年間に限られます。

※関連記事:『障害者グループホームとは?メリット・デメリットと利用方法を解説

一般企業への就職を目指すには、「就労移行支援」を活用すると良いでしょう。さまざまな講座でビジネススキルやコミュニケーションスキルを身につけ、実際の職場を想定した模擬就労を通してはたらく自信を養えます。就職活動のサポートや就職後の定着支援も受けられるため、職場での悩みを解消しながら長期就労を目指せるでしょう。利用可能期間は最長2年間です。

※関連記事:『就労移行支援とは

精神障害者手帳3級を取得するデメリット

「精神障害者手帳3級を取得しても意味がないのではないか」「取得することで仕事の採用や給与面で不利益をこうむるのではないか」と考える人がいるかもしれません。しかし、厚生労働省のサイトにも「精神障害者保健福祉手帳をもつことで、不利益が生ずることはありません」と明記されています。

一般雇用枠だけでなく障害者雇用枠にも応募できることを考えると、「就職に有利」といえるでしょう。また、障害者手帳の取得を理由に、賃金を下げたり福利厚生に差を生じたりすることは、法律で禁じられています。このようなことから、精神障害者手帳3級を取得するデメリットはないと言って良いでしょう。

※引用:こころの情報サイト『障害者手帳・障害年金

手帳の返還も可能

手帳を取得した後、メリットを感じなかったり、精神症状がなくなったりして不要になった場合は返還も可能です。また、手帳を返還したからといって、障害年金を受け取れなくなることもありません。

精神障害者手帳3級を取得後によくある質問

精神障害者手帳3級を取得した後も、不明点や疑問点は出てくるかもしれません。特に、以下のような事柄が気になるのではないでしょうか。

障害年金も請求できる?

精神障害者手帳の等級が3級でも、障害年金は申請できます。ただし障害年金は、精神障害者手帳の交付基準よりも審査が厳しいといわれており、手帳を取得しているからといって必ず支給されるとは限りません。請求については、お住まいの市区町村の年金事務所や年金相談センターで相談してみましょう。

2級への変更はできる?

申請が認められれば、3級から2級へ等級を変更できます。精神障害の状態が重くなったときは、医師に相談の上、お住まいの市区町村役所の福祉窓口で等級変更の申請をおこないましょう。手帳の有効期限内であれば、いつでも申請できます。

年末調整の障害者控除を受けるには?

精神障害者手帳3級を取得している人は、年末調整で申告すると所得金額から27万円差し引かれ、税金の還付を受けられます。「給与所得者の扶養控除等申告書」という書類の「障害者、寡婦、ひとり親又は勤労学生」という欄に必要事項を記入し、勤務先に提出しましょう。勤務先に障害のあることを公開していない場合や、年末調整で申告し忘れた場合は、確定申告で修正できます。

精神障害者手帳3級を取得すべきか専門家に相談を

精神障害者手帳3級を取得すると、税金の控除や公共料金の割引など経済的支援を受けられるほか、はたらき方の選択肢が広がります。手帳を取得しようか迷っている方は、かかりつけの医師や家族に相談してみましょう。

ただし、障害者雇用枠に就職するには、精神障害者手帳の取得が必須です。「手帳の取得手続きを進めながら、はたらく力を身につけたい」「一人で就職活動に取り組めるか不安」という方には、就労移行支援の活用をおすすめします。

「ミラトレ」は、体調の安定を図りながら、ビジネススキルやビジネスマナーを習得できる就労移行支援事業所です。障害者手帳を取得していない方も、通所者全体の16%を占めています。「障害者雇用枠ではたらきたい」という方には、手帳の申請や障害者雇用枠への求職をサポートします。ミラトレのサポートやプログラム内容について気になる方は、気軽にお問い合わせください。

執筆 : ミラトレノート編集部

パーソルダイバースが運営する就労移行支援事業ミラトレが運営しています。専門家の方にご協力いただきながら、就労移行支援について役立つ内容を発信しています。